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▽レス始

!警告!壊れキャラ、男男の絡み有り

「へたれアシュシリーズ最終話〜祭り〜(GS)」

柳野雫 (2004-12-22 06:21/2004-12-25 04:48)


  ──────祭りは、終わる。
 


        祭りは、始まる──────────・・・・・・

 


 「なー、政樹兄ちゃん、今日俺んチで遊ばん?」
 「んー?ええけど・・何して遊ぶ?」
 「横っち!!俺も混ぜてぇなっ!!」
 「あきゃっ!?・・って銀ちゃん〜・・いきなり後ろから抱きつくなや〜」
 「ええやないか♪俺新しいゲーム買ったんやで〜!!一緒にやろうやvあ、鬼道さんもな」
 「はは、そうやな。しかし仲ええなぁ、二人共」
 「幼馴染みやもん♪」
 ほのぼのとした、いつもの光景。
 小学生位の少年二人と、中学生位の少年が一人。
 それぞれ笑みを浮かべつつのじゃれあいをして。
 そこにもう一つ、既に日常の範疇となった少しばかりの変化も訪れる。
 「フフフ、今日もいい日和だねっ!!相変わらずラブリーで何よりだ忠夫クンっ♪さて、私も混ぜたまえっ!!」
 「邪魔やカス!!」

   げしっ!!

 「また足蹴っ!!」
 ・・なんか変な兄ちゃんも出てきた(爆)
 「・・芦優太郎・・オドレ、横っちに近寄るなゆーたろーがぁっ!!」

   げしげしげしっ!!

 「あうあうあうっ!!助けてぇっ忠夫クン!!ヘループ!!」
 「・・銀ちゃん、優兄嫌いやもんなぁ・・。俺もけっして好きとは言えへんけど」
 「あうち!!」
 「・・犯罪者一歩手前やったからな。・・取り敢えず優太郎、今度アホな真似したら説教五日いくからな?」
 「カンベンシテーーー!!!」
 「ヒイィ・・!!」
 「・・なんで二人とも、そんなに政兄の説教コワイんや?五日ゆーても、他の時間一緒にメシ食ったりフロ入ったりして楽しいのになぁ?」
 「・・それは忠夫クンだけデスヨ?」
 「・・横っちは鬼道さんにはいい子やもんな〜」
 「・・なんやねん、それ〜」
 ぶーたれる少年に密かに萌えてたりする二名はともかく。
 「横島クーン♪」
 「忠夫ー♪」
 新たなる者達、来襲。
 「あ、令姉ちゃんに蛍ちゃん」
 「おお!!年増に妹よ!!また私の邪魔をしにっ!?」
 「誰が年増だっ!!私はまだ中学生よ!!」
 「兄なら兄らしく妹の幸せを優先してよっ!!てゆーか血は繋がってないじゃないっ!!」
 「精神的に年くってそうだしな!!そして、こればかりはマイシスターといえど譲れん!!・・血は繋がってなくてもマイシスターはマイシスターなんだぁっ!!こんちくしょう!!」
 「「この変態親父っ!!」」
 「酷ッ!!・・むぅぅ、失敬な!!確かにお前達よりかなり年上である事は認めるが・・」
 そして更に。
 「ふざけんなよテメーら!!忠夫は俺と友情を育むんだ!!そしてゆくゆくはよーしえんぐみっ!!ママも喜ぶぜっ!!」
 「ふざけているのはそっちだろう雪之丞!!忠夫クンは僕とーーー!!」
 「あ、雪、ピート。また何かよくわかんねー事言ってんなー?」
 「忠夫お兄ちゃん、あそぼー♪」
 「ただにー♪」
 「横っちの周りは相変わらず賑やかやねー」
 「あ、おキヌちゃん、燐華、夏子」
 続々と、色々と少年の周りに集まってくる。
 「ぽー♪ぽぽー♪」
 「ぽー♪」
 「あ、ハニ達ー♪」
 ・・色々と。
 「・・まーたわいて出おったな・・。横っちに事ある毎に引っ付きおって・・」
 「くっ・・土くれの分際でっ!!」
 「アンタ達、主人差し置いてーーー!!!」
 「相変わらず表情よく解らない癖してーーー!!!」
 「くそぉっ、テメーら勝負しやがれっ!!」
 「くっ・・ハニワに出し抜かれるとはっ!!」
 「忠夫お兄ちゃーんv」
 「このどさくさに、ただにーにだきつくでちゅー♪」
 「おっ、ええ事言うなぁ、燐華ちゃんっ♪」
 「なんやなんやーーーっ!?」
 「・・皆、いつもながら元気やなぁ・・」
 ・・そんなこんなと、色々ありつつ騒ぎつつ。
 交戦している一同を、いつもの様に眺めながら。
 「・・なんか、ずーーーっと昔から、こんなんやっとった気もするなぁ・・」
 「あ、政樹兄ちゃんも?俺もー。・・なんでやろ?」

 
 


 ・・こんな感じで続いていく日常を。
 

 


                  ────────夢に見た。

 

 


 「・・それにしても災難とゆーか・・大変だったねぇ、西条君」
 「まぁ・・東京湾に三回も浮かぶハメになるとは思いませんでしたね、流石に」
 教会で茶飲み中。
 メンバーは教会の主である唐巣と、仕事の合間に息抜きに来た西条だ。
 「・・ま、でもその分、あの二人の方には大して向いてませんからね。ルシオラ君も認めた訳ですし、そう手出しはしない・・いえ、できないでしょうが、それでも溜まってはいるでしょうし。ストレス解消の一環になってくれてれば、あんな事をあの場でベラベラ喋った甲斐もあったってモンですねー」
 お気楽に言ってくる西条に、
 「・・気付いていたのかい?聞かれてた事に」
 「・・さぁ?」
 唐巣の問いに対し、にっこり笑って流し、淹れられた茶を啜る西条。
 そんな西条の様子に息を吐きつつ、こちらも茶を啜る唐巣。
 「・・ところで、ピート君はどうしてます?」
 「・・エミ君に拉致られたらしいね」
 「・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・」
 沈黙。
 「・・ま、あの二人に危害が加えられないのならまぁ・・問題ないでしょう」
 「・・そうだね」
 アッサリと切り捨てた。
 そして、各々の茶を啜る音しかしない、静かな空間の中。
 「・・平和だねぇ」
 「・・平和ですねぇ」
 何だかんだときっちり横島の"味方"である二人は、その
『平和』を満喫していた。
 そのまま、世間話をする様な気安さで。
 「・・あぁ、そういえば」
 「はい?」
 「この前、あの二人にチョッカイかけよーとしていた魔族の事なんだが・・」
 「・・いましたねぇ、そんなの」
 「・・何故タライが空から落ちてきたんだろーね?」
 「・・某元魔神の仕業じゃないですか?何かうっすらと高笑い聞こえましたし」
 「・・やっぱりそーかなー・・」
 ・・元魔神、何気に誓った通り、横島を護っているらしい。
 「しかし・・タライで圧死・・は悲しい最期でしたねぇ、流石に・・」
 「・・何千個もいっぺんに落ちてきちゃあねぇ・・」
 遠い目で二人が呟く。
 「まぁ、でも・・」
 「そうですねぇ・・」
 共に頷きつつ、結論。
 「「自業自得だし」」
 ハモった。
 そしてまたもや茶を啜る音のみの教会。
 「・・ところで・・夢を見たんですが・・」
 「・・奇遇だね。私もだよ。・・どっかで見たよーな光景だったねぇ・・」
 「・・唐巣神父・・。一つだけ、どうしても納得出来ない事があるんです」
 嫌な予感全開。
 「・・何かな?」
 何となく内容を察しつつ、神父が促す。
 「・・何で僕があの夢の中に出てきてなかったんでしょう?」
 沈黙。
 何かもう、とっても痛々しい空気が満ちる。
 しかし、そんな空気の中、ふっ、と息をついて。
 「・・きっとどこかにいたさ。・・蛍と呼ばれていた子に抹殺されてなければネ!!」
 イイ笑顔と共にサムズアップをかました唐巣がのたもうた。
 「やっぱりそんな役か僕はーーー!!!」
 ──その日。
 絶叫響く教会に、近付く者はいなかった。

 


 「・・くすんくすん」
 「もー・・いつまでも泣いてんじゃないの!!」
 「だってぇぇ〜〜〜!!!」
 美神令子除霊事務所。
 泣きべそかいているのは美神令子。
 そして、それを叱咤しているのはルシオラ。
 アシュタロスに付いていったベスパ。
 妙神山へ引き取られたパピリオ。
 その中で、行く所も、特に行きたいと思う所も無いルシオラは、只今GSの保護観察下に置かれている。
 とどのつまり。
 「うちのいそーろーの分際でー!!」
 ・・美神令子が面倒を見ているという事である。
 確かに事務所にはいるものの、面倒を見ているのは・・精神的な立場としては逆の様な気もするが。
 「大体アンタは本当にアレでいーのっ!?」
 「んー・・西条さんぶっとばして結構スッとしたし♪」
 ケロッとそんな事を言うルシオラ。
 「・・お兄ちゃんがイケニエに・・」
 「・・自業自得だもん」
 美神の呟きに、ぷうっと頬を膨らませるルシオラ。それに命まではとってないもん、とか付け加えて。
 「初恋は実らないものなんでしょ?ヨコシマの事、今でも大好きだけど・・鬼道さんも嫌いじゃないもの。私は認めちゃったんだから・・仕方無いわ」
 鬼道に宣言していた通り、ルシオラは鬼道を殴った。
 一発。本気でだ。
 それでも、不平不満など一切言わず、唇の端から血を垂らしつつも、その強くて真摯な瞳で真っ直ぐに見詰めてきた事を覚えている。
 だから、もうそこで、終わったのだ。
 終えようと思ったのだ。この想いは。
 「・・私は・・私はまだ認めてないわよっ!!そりゃあ、一時的にはアイツに預けたけど、横島クンは私の丁稚だもん!!・・その内、帰って来る筈よっ!!」
 子供の様に、じたばたと。身体全部を使って、感情を出しまくる。
 ぎゅうっ、と眼を瞑り、その端には涙が浮かんで。
 拳も握ってじたばたじたばた。
 「・・ダダッコねー・・」
 呆れた様にルシオラが溜め息をつく。
 「何よばかー!!」
 「あのねぇ・・」
 どう言ったものかと思案する。
 本当は、美神も解っているし、もう認めてはいるのだ。
 自分から動いてないのがその証拠。
 だが、素直にそんな事を言える筈も無く。
 「・・シロちゃんとタマモちゃんは、ちゃんと現状を受け入れてるじゃない。・・みっともないわよ?年長者のクセに」
 「うぐぅ・・」
 シロとタマモは、人狼の里へ行ってたりする。
 二人はきちんと横島の選んだ幸せを受け入れているのだが、美神がこんな状態の為、一時的に避難しにである。
 落ち着けばまた事務所に戻ってくるだろう。
 シロは修行の為に。タマモは元々美神に保護されているのだから。
 「・・あ、あのコ達は・・子供だもん。よく解ってないの!!」
 「ちゃんとヨコシマの事考えてる時点でアナタより大人です〜」
 「ううっ・・ルシオラのいぢめっこぉ〜!!」
 「誰がいぢめっこよ!?」
 ぎゃあぎゃあと言い合って。
 「もう・・。ヨコシマは、ちゃんと言ってくれたじゃない。皆、大切だって。美神さんなんて、ずっと丁稚でいてくれるって言ってもらえたも同然なのよ!?・・選んではもらえなかったけど・・十分、特別って事じゃない。・・『今回』は、それで良いじゃない」
 「・・ルシオラ・・」
 「・・アナタも見たでしょ?あの夢」
 「・・うん・・でも・・本当にああなるのかどうかは・・」
 「私達の魂が、ヨコシマの事欲しないとでも?」
 「・・有り得ないわ」
 「でしょ?」
 微笑む。
 微笑い合う。
 悲哀は微か。寂しさもあるけれど。
 「『次』は負けないわ!!アナタにも鬼道さんにもね!!」
 「それはこっちの台詞よ!!私は美神令子なのよっ!!」
 ──久し振りに、事務所からは元気な声が響いていた。


 因みにその外では。
 「入れなさいよアンタ!!美神さんの失恋の痛手を癒すのはアタシなんだからー!!」
 <駄目です。今、美神オーナーとミス・ルシオラは大事な話を──おや、終わった様ですね>
 「ああっ!?何か元気になってるっ!?くっ、あの魔族、アタシの美神さんをかどわかすつもりねーーー!!!」
 <・・それは貴女にそっくりそのままお返しします>
 「何よーーー!!!」
 ・・某変態妖精と人工幽霊一号が何やら言い合っていたりした。

 

 妙神山。
 「はぁ・・」
 溜め息をつくのは、竜神の姫。
 「私は何て臆病だったのでしょう・・」
 儚げに呟いて。
 「ああっ、今からでも鬼道さんを冥府に送って横島さんをかっ攫いたい!!」
 危険発言かましやがった。
 「小竜姫・・そーゆー痛々しい冗談はシャレにならないからやめるのね〜・・」
 横にいたヒャクメが疲れた様に突っ込む。
 「・・痛々しかったですか?でも本気でそう思ってはいますよ?横島さんが悲しみますから絶対にやりませんけど」
 アッサリと小竜姫。
 ・・吹っ切れてはいる様である。
 「・・まーいけどねー・・。ところであの夢・・」
 「・・私も絶対に加わります。ええ、絶対に。どんな形でも、何をしてでも!!」
 拳握り締め、バックに炎。
 本気である。
 そんな小竜姫に苦笑して。
 「また賑やかになりそうなのね〜」
 お気楽そうに、のほほんと言う。
 全てを見通す眼を持っていたが為に、己の想いも出せなかったヒャクメ。
 そんな暇も与えられず、背を押したヒャクメ。
 『今度』は、自分もちゃんと、あの中に入りたいと思いつつ。
 微笑った。


 「・・もうあの夢、確定っぽいですねぇ、姉上」
 「仕方無いだろうな。何せ、私達全員が見ているのだから。しかし、一番厄介な相手は・・」
 「・・魔王、ですね・・」
 無駄に緊張感を漂わせながら会話しているのは、ワルキューレとジーク。
 ハッキリ言ってサッパリ目立てなかったこの姉弟、『次』に賭けているらしい。
 「くっ・・次こそは、次こそはーーー!!タダオくーーーん!!!」
 「姉上相変わらずそこですかーーー!!?」
 ・・何か『次』もダメっぽいが。


 「・・天龍、もう天界に帰っちゃうんでちゅか?」
 「・・うむ。まぁ・・しかしちょくちょく来るぞ?その時はまた遊び相手になってやろう。ゲームとは言え、負けっぱなしではおれんからな!!・・だから・・そんな顔をするな」
 パピリオと天龍童子である。
 騒動は終わったのだ。天竜童子も、いつまでも此処で遊んでいる訳にはいかない。
 だが、寂しそうに俯いているパピリオを見ていると心が痛む。
 ただでさえ、大好きな横島は鬼道を選んで、初めての失恋と言うべきものを体験して。
 姉であるベスパとは離れ離れ。ルシオラも一応保護観察下に置かれている訳だし、パピリオだって似た様なものである。おいそれと会う事も出来ない。
 アシュタロスは・・まぁ微妙な所だが、一応親と呼べる存在だ。会えないのは多少なりとも寂しいだろうし。
 そんな想いで出た言葉だった。
 「・・天龍は・・平気なんでちゅか?」
 だが、パピリオの口から漏れたのはそんな問い。
 「・・横島は、微笑っておったではないか。幸せそうに」
 「・・でちゅ」
 解っているのだ、パピリオは。
 もうちゃんと、認めている。
 パピリオも、鬼道を一発、殴っている。
 それはもう、豪快に吹っ飛んだ。
 それでも、その時に一番痛そうな顔をしていたのはパピリオで、泣いていて。
 ・・頭を撫でて、謝って。それでも譲れないとしっかりと瞳を合わせて伝えたのは、鬼道。
 横島も、その想いをきちんと伝えてくれたから。
 「・・夢・・見たでちゅ」
 「余も見たぞ」
 「・・『次』は、勝つでちゅ!!」
 「・・余も負けん」
 「・・天龍も加わる気でちゅか?」
 「当然じゃろう。余とて、横島の事は好いておる」
 「・・その割に、すぐ諦めてたじゃないでちゅか」
 「横島が幸せならそれで良いと思ったからじゃ。好いた者の幸せを優先してこそ漢!!」
 「・・天龍・・魔王みたいになっちゃダメでちゅよ・・」
 「余を何だと思っとるのだお主はーーー!!?」
 そこはかとなく、どこかの誰か(某魔王)に失礼な会話を交わして。
 「・・それでは、余は行く。またな、パピリオ」
 「・・うん」
 やはり、寂しそうなパピリオではあったが──
 「・・またね!!」
 「・・うむ!!」
 頭を振った後、明るい笑みを見せてそう言い、天龍もそれに応え。
 手を振って別れた後、その表情は暗くはなかったのだから。
 「・・さ、また天龍が来た時にコテンパンにしてやる為に、ゲームの特訓でちゅ!!」
 前には進んでいけるだろう。


 「・・のぅ、右の・・。結局あの大騒動は、一体何だったのだろーか・・?」
 「・・左の・・もう終わった事よ。それに・・はっぴぃえんど、らしいのだから・・良いのではないか?」
 「・・そうか・・そうだな・・」
 「うむ・・そうだ・・」
 鬼門達は相変わらず門に顔を張り付かせながら、そんな事を言っていた。
 因みに、途中でリタイアし、妙神山に送還された鬼門達だったが──そのお蔭でハヌマンに余分な力を使わせず、妙神山からあの場へ連れて行けた鬼門達。
 実は何気に役に立っていたりした事に、二人は気付いていなかったりする。


 そして一人、ハヌマンは。
 「・・やれやれ・・どこまでいっても、あの小僧の周りは騒がしくなりそうじゃのぅ・・」
 やはり『夢』を見たのか、呆れた様に呟いていた。
 勿論、ゲームをしながら。

 

 「いや〜、本当にあの時はどうなる事かと思いましたノー。けど、また魔理さんに会う事ができて、ワッシは幸せですジャー!!」
 「タ、タイガー・・。何言ってんだよ、恥ずかしいだろ!?もう・・」
 一方こちらはバカップル。
 ぶっちゃけ横島の関わらなかったカップルはこの二人だけだったりする。
 希少だ。
 しかし──幸せなまま終わってくれないのは宿命か運命か。
 「雪之丞!!まだあの人の事を狙ってるんですのっ!?私というものがありながらっ!!大体その事を尋かれてナチュラルに、さも当然の様に愛してるで?なんて何を今更な感じでそれはもう不思議そうにきょとーんとしながらアッサリ言い切る様な天然な鬼道先生相手に貴方みたいな直情暴走アホ男が敵う訳がありますかーーー!!!」
 「酷ぇっ!!い、いや待て弓、俺はお前も大切だとは思うんだが、横島に対する想いはなんてーか、特別でーーー!!!」
 「お黙り三下ァァッ!!!」
 「また酷ぇぇっ!!?」

   どっかーん

 他のカップルの痴話喧嘩に巻き込まれました(爆)
 「ああっタイガー!?」
 「ぐふっ・・魔理しゃん・・ワッシは魔理しゃんに会えて・・幸せでし・・」
 「何言ってんだタイガー!!傷は浅いぞ、しっかりしろ!!」
 「ま・・魔理しゃ・・」
 持ち直そうとするタイガー。
 しかし、またも──
 「ピートの馬鹿ァァッ!!そんなに横島がいいワケ!?確かに鬼道さんに寄り添ってた横島は可愛かったけど!!ずっとアプローチしてきた私の立場はどーなるワケ!?ピートの・・ピートのおたんちんーーー!!!」
 「エミさーん!!泣いて文句を言いながら呪いかけるのやめて下さいーーー!!!」
 「吸血鬼は灰にーーー!!!」
 「わ゛ーーー!!?」

   ちゅどーん

 「タイガー!!!」
 「・・ま、巻き込まれ人生・・」
   ガクリ
 「タイガー!!しっかりー!!」
 ・・まぁ、大丈夫だろう、タイガーだし(酷)

 

 てくてくてくと。
 学校帰り。
 学校では、担任である鬼道と静かに、笑顔で問答。
 いつも、こちらから。
 作った笑顔で、その心を、気持ちを、決意を、誓いを試す。
 試しには、あちらも笑顔で返してくる。
 プレッシャーを掛けて、ただ圧し潰そうとしているだけだから。
 けれど、質問には、真摯に。真剣に。真っ直ぐに。
 ・・返してくる。
 横島を、愛しているのかと。
 そう尋けば、真剣に。・・こちらも、表面上は笑っていても、この上無く真剣だから。
 ・・もう、疑う余地は無い。もう、解っている。
 いや、既に、解っていた事。
 未だに、悔しい。
 納得なんて、したくない。
 それでも──もう心は、認めてしまっている。
 何よりも。
 「・・横島さん、幸せそうだったもの・・」
 言葉が漏れる。
 あの微笑みを見てしまったら。
 鬼道の傍らで、幸せそうに微笑う横島を見てしまったら。
 ・・もう、言える事など無い。
 「・・そうね。それで、十分──」
 足を止め、空を見上げる。
 「横島さんが幸せに微笑ってくれるのなら・・それで、いいもの」
 そう言うおキヌの顔には、微かな悲哀と──優しげな、柔らかい微笑が、ひっそりと浮かんでいた。

 そして、てくてくてくてく、歩いていく。
 「・・『次』は、負けないし」
 おキヌの通った道には、そんな呟きが残った。

 

 「ふえええ〜ん!!お母様のいぢわるぅ〜〜〜!!!」
 六道家。
 式神のコントロールを母親に奪われ、プレッシャーを掛けられている冥子の泣き声が響く。
 「何言ってるの〜!!冥子、アナタの塔での様子は鬼道君に聞いてるのよ〜!?」
 「あぅっ!?」
 「私もお説教されちゃったのよ〜!?冥子を甘やかしすぎだとか〜、修行全然させてないとか〜、母親として教育する気が無いのかとか〜!!も〜恥ずかしくて恥ずかしくて〜〜〜!!!」
 六道当主までも鬼道の説教の餌食になったらしい。
 「だって〜!!」
 「だってじゃないの〜!!アナタがそれじゃあ、いくらウチ(六道)の教師が魔神を調伏したなんて言っても〜、何の意味も無いでしょ〜!?横島クンも鬼道クンが私に会わせようともしてくれないから〜、取り込む事も出来ないし〜・・またお説教されそうだし〜!!」
 「え〜?・・それはダメよ〜お母様〜」
 「・・冥子〜?」
 先程まで怯え、頭を抱えつつ泣きべそをかいていた冥子が、きょとん、としながら首を傾げる。それと共に出た言葉に、ぷりぷり怒っていた当主もきょとん、としてしまう。
 「マー君と横島クンは、一緒にいるんだから〜、他の人が入っていったら、ダメなの〜」
 「・・冥子・・」
 ほわほわとした笑顔で、冥子が言う。
 目覚めた後。全てはもう、終わっていて。
 何があったのかはよく解らなかったが、幸せそうだったから。
 自分も幸せな気がして、いつの間にか、にこにこ笑っていた。
 何故か胸が痛くなって、涙も零れたのだけれど。
 それでも、笑っていた。笑っていたかったから。
 冥子は、二人共大好きだ。
 だから、二人の笑っている顔は。
 二人で笑っている顔は、大好きなのだ。
 『次』では、あの中に入って、自分も一緒に笑いたいけれど。
 「あ、そうだ〜。私、令子ちゃんの所に行くの〜。令子ちゃん寂しそうだったし、ルシオラちゃんとも話してみたいから〜。行ってきま〜す♪」
 「──はっ!?」
 いつの間にか、式神のコントロールは冥子に戻っていて。
 式神ぞろぞろ引き連れて、部屋を出て行く娘の背中を見送って。
 「・・少しは成長、したのかしら〜?」
 当主は、首を傾げて呟いた。

 

 「ふっふっふ・・。研究資金はたんまりあるからのぅ・・。いやはや、何をしよーか迷うのー♪」
 怪しげな地下研究室でごそごそと。
 愉しそうなドクター・カオスのその横で。
 「・・・・・・・・・・・・」
 無言で佇むのはマリア。
 その様子には気付きつつ。
 「・・マリア。・・お主は、転生したいと思うか?」
 「・・ドクター・カオス?・・ノー・私は・転生・しません」
 「・・ならば、その身体をヒトと同じモノにしてやろう。・・小僧が転生した時に、あれに入っていける様にな」
 「・・ドクター・カオス!?」
 いつもの無表情ではあるが、声音と瞳にはどこか驚きを含んでいて。
 「まぁ、心配するな。わしはヨーロッパの魔王、ドクター・カオスじゃぞ!!『次』は負けぬわ!!」
 「・・イエス・ドクター・カオス」
 かっかっか、と快活に笑うカオスに応えたマリアは、微かに、だが確かに──微笑んでいる様に、見えた。

 

 「・・ふー・・」
 収録は、一段落。
 休憩中に、水分補給。
 今日は野外でのロケだ。
 空は、青い。
 なんとはなしに空を見上げ、思う。
 ──想う。
 遠く聞こえるスタッフやら監督やらの声。
 それらより意識が向くのはやはり、今でもやっぱり一番大切な、姫の事。
 「・・・・・・んー・・・・・・」
 納得も、理解もしている。
 ただ、やっぱり。
 (・・未練、か・・?いや、ちゃうな・・)
 ・・少し、寂しい。
 思い当たって、苦笑した。
 「近畿クン、どーしたのー?元気なくないー?」
 「そんな事ありませんよー」
 近くにいたスタッフに声を掛けられ、ころっと明るい調子でそう返す。
 「そう?それじゃ、次のシーンいくよー」
 「はーい」
 やはり明るくそう返事をして。
 一歩踏み出し。
 (・・ま、しゃーないわな)
 心の中ではあっけらかんと。
 (行ってくるで、横っちv)
 空を見上げて、横島へと言葉を向けた。
 そして、笑みながら、仕事場へ戻る。
 (『次』が愉しみやしなっ♪)
 ・・そんな呟きと共に。

 

 ──そうして。
 周りに影響与えつつ。横島と鬼道は共に。
 で、その後はと言えば──────・・・・・・

 「本当にこの度はっ・・!!」
 「いや、そんな・・頭上げて下さい」
 突然だが。
 一緒に住む様になった鬼道と横島の家──元々鬼道の暮らしてたマンションの一室にて。
 「本当にご迷惑をかけてっ・・!!」
 「いや、ですから・・」
 土下座する女性と、それを前にして困っている鬼道がいた。
 「別に・・これはボクが勝手にした事ですんで、そんな土下座なんてせんでも・・」
 「いいえっ!!親として何も出来なかった私達です・・。謝罪と感謝はさせて下さいっ・・!!・・本当なら、何をしてでも駆け付けなければいけなかったというのに、私達は・・!!」
 「・・百合子さん・・」
 土下座をしているのは横島百合子。横島の実の母親である。
 情報規制のせいで現状を知るのが遅れた上、その行動も色々制限されてしまい。
 ・・結局、自由に行動出来る様になったのは、全てが終わった後だった。
 一時は、どこかの飛行機でもジャックしようかと思ったものだが──結局は、これである。
 まずナルニアから出ようとするも、飛行場は閉鎖されるわ、他の移動手段はことごとく潰されてるわ、恩を売ってある相手を使おうとしても連絡がつかないわ。
 どうやら世界は、というか──"上"の連中も、これ以上の生贄を出す気は無かったらしい。
 何故ってメンツに関わるから(爆)・・まぁ、大人しく生贄になるかどうかは解らなかったが。
 因みに、当時静観を決めていた連中は既にそこからは飛ばされている。・・役職としてだったり物理的にだったり。
 それはともかく。
 「・・ボクの方から、お願いしたい事があります。それはとても身勝手で、親御さんには心配の種になる事やと思うんですが・・」
 真剣な声に、伏せていた顔を上げる。
 少しの緊張を纏った、真剣に、真っ直ぐな瞳で百合子を見詰める鬼道の姿。
 「・・何でしょう」
 姿勢を、改めて正す。
 静かな空気の中で、言葉が紡がれる。
 「・・息子さん、ボクに護らせて下さい。・・一生」

 

 「・・んで、あの男とくっついたんか、お前は」
 「・・悪いか」
 ベランダ。
 父子の会話が交わされていた。
 「・・ま、俺達に言える事じゃねぇわな。・・お前を護ってくれてたんだろ?・・庇護を求めてってのはあんま許容したくはないが」
 「庇護じゃねぇ。一緒にいたいだけだ」
 向かい合ってはいない。
 父である大樹は、ベランダの柵に背を預け、空を見上げながら。
 横島はその隣、柵に手を掛け、真っ直ぐに前を見詰めながら。
 「・・あの男といたいか、お前」
 「・・離れたくねぇ」
 「・・ホモめ」
 「やかましい」
 深くは話さない。
 ただ、解る。
 だから。
 「・・勝手にしろ。後で泣き付いてきても知らんけどな」
 「誰が泣き付くか。クソ親父」
 それで、終わる。
 それだけで、いいのだから。


 「・・私達の代わりに、護って下さる、と?」
 鋭く細められた瞳が、鬼道を捕らえる。
 強く、強く、強い、瞳。
 それを真正面から受け止め、鬼道は口を開く。
 「・・いいえ。貴女方の代わりではなく、ボクが、です」
 キッパリと、ハッキリと。
 「・・これはボクのエゴです。横島は、ボクが護ってやらなアカン程弱くはありませんから。・・それでも」
 百合子を見据え。
 「護っていきたいです。自分が」
 そして。
 「・・共に、生きて」


 

 


 ──それは、祭りだった。
 派手で、騒がしくて、世界を巻き込んだ祭り。
 それでも祭りは終わる。
 一つの祭りが終わって。
 皆が歩き出す。
 それぞれが主役の、祭りへと。
 きっと。


 

 


 そして。

 「・・祭りは、また始まるものだろう?」

 誰かが何処かで呟いた。


 

 


 祭りは、人数が多い方がいい。
 祭りは、長い方が楽しめる。

 

 「はっはっは!!そんなワケで再び参上!!」

 「「「そんなワケって何やねんっ!!?」」」

   べしいぃぃぃっ!!! ×3

 「はぶうっ!!」
 条件反射の如く、三者三様ハリセン炸裂。
 現れたのはアシュタロス。
 いや、人間形態、芦優太郎。
 ハリセンを振るった三人にとっては、最早馴染みの姿である。
 ・・で。
 「・・そんで?何でお前が此処にいんだよ、アシュ」
 「ふふふ、よくぞ聞いてくれたね、横島クン!!しかし今の私の名は芦優太郎だ!!そしてこれからは地上で横島クンを護りつつ暮らす事に決定したよ!!」
 「はぁぁ!?」
 満面の笑みで何なんだその報告、とか。
 大体いきなりすぎて訳解らん、とか。
 もっと順序立てて話さんかい、とか。
 色々突っ込みたい事はあるのだが。
 「・・『あっち』から見守るんやなかったんか?オドレ」
 取り敢えず銀一がジト目で突っ込んでみる。
 「無論、そうだとも!!しかし、立場やら何やらのせいで、横島クンを覗き見・・げふんげふん。見守る時間が少ないのも事実!!と、ゆーワケでっ!!ただの一魔族として、いや、人間、芦優太郎として!!横島クンの側にいて護ろうとっ!!」
 「・・最高指導者達のお墨付きやな?」
 「・・フッ。当然!!きっちり正規で任命されたぞ!!」
 「・・正規ねぇ・・」
 溜め息を吐きながら呟きを漏らす銀一。

 ──色々と、あったのだ。

 取り敢えずアシュタロスに与えられた仕事は、己に向かってくる連中の鎮圧と、横島達を狙う連中の殱滅。
 ぶっちゃけ、己の巻き起こした騒動に関係する事柄全ての後始末。
 迷惑をかけた関係各所に謝罪して廻ったりもした。
 勿論ぶっとばされたりもした訳だが──今回の騒動では、神魔界共に大して被害は出なかった為(建造物破壊、崩壊、消滅、負傷者はともかく死者は出ていなかったりする)思った程風当たりは強くなかった。
 それに──どこから流出したのやら、塔内部での生活風景が記録されたビデオやらDVDやら、そういう類の物が出回っていた為、逆にぽむ、とか肩を叩かれてあたたかい瞳で見られてみたり。
 ・・これには別の意味でヘコんだが。


 そしてそれらの仕掛け人は──
 「それにしても・・ハニワさん達に、映像記録能力まで備え付けていたなんて思いませんでしたねー」
 「俺も気付いたんは途中やったけどな。ま、人間界にさえ出回らん様にしてもらえれば、儲け分アンタらで分けてもらってえーから」
 「・・別に僕はいーけど?あの魔神のアホっぷりは堪能したし。僕はただ、妙神山の誰かにうっかりアレを渡しちゃっただけだしねぇ。・・一番の功労者は魔鈴君だろ?異界空間で売って広めたの彼女だし」
 「待て!!ならばハニワ兵から記録ダビングして編集したわしに取り分を多くっ!!わしの技術がなければ、あんな短期間で売り出す事などできんかったのだぞ!!」
 「ドクター・カオス。興奮すると・血圧・上がります」
 ・・某魔王達やら某公務員やら某魔女やら。
 どっかで交わされてたこんな会話は、多分この先、他の誰にも知られる事は無いだろうが。


 一方教会。
 「・・ま、良い事が無かった訳じゃないしね。各国家、核兵器は完全に廃棄する事に決まった様だし」
 ──核兵器を数多く、アシュタロスに奪われた事。それに便乗したのかなんなのか、それらを管理していたコンピューターやらにハッキングかけたりウイルス流したりしてトドメに『コレじゃいつ誰に奪われてもおかしくないなー。人類滅ぼしてみるか?人類を滅ぼしてみたい人間より♪』とかいうふざけた言葉が流され、一時的とは言え、コントロールが完全に奪われたりした(犯人→某魔王達)為に。
 「・・そーですねー」
 「・・塔や魔神、横島クン放棄を決めた人間界の連中は、色々と排除されたしね」
 「・・そーですねー」
 「・・大半を排除したのは君だけどね」
 「・・そーですねー」
 「・・連中排除に暴走・・いや、奔走しまくって・・力抜けたかい?」
 「・・そーですねー」
 「・・だめだこりゃ」
 唐巣が溜め息をついていると、来訪者の声が掛けられた。
 「すいません、神父。引き取りに来ましたー」
 「んきゃああぁっ!!?いやーっごめんなさいごめんなさいーーーっ!!!」
 「ハッハッハ、もうしないよ、美智恵vあんまり騒ぐとひのめが起きちゃうだろ?」
 朗らかにそう言うのは、美神公彦。
 ひのめは美智恵の傍らで、すやすやと就寝中だったり。
 「・・公彦君・・何したんだい?」
 「・・さぁ?」
 にっこり。
 「きゃうーーーっ!!縄は嫌なの〜〜〜っっ!!!」
 「ハッハッハ。錯乱しすぎだよ、美智恵?・・またお仕置きがお望みかな?次は首輪、使ってみようか?」
 「みきゃーーーーーっっ!!?」
 (タチ悪くなったね・・公彦君・・)
 ・・ちょっぴり異様な空気が漂っていた。


 ・・とまぁ、そんなこんなと色々あって。
 アシュタロスを個人的な理由で狙ってくる輩は粗方鎮圧、捕獲し、片付けたのだが。
 横島達を狙う輩はまだ出てくるだろうし、他の空間から見守っているだけでは、満足に護れないだろうと。
 その為、人間界へと赴き、姫達を護れと。
 そういう話であったりする。
 人間形態、芦優太郎の姿で過ごす事と。己の力を、姫達を護る事以外で使わない事を条件に。
 ──因みに。
 人間界での直接的な被害はぶっちゃけ核兵器の盗難(略奪?)のみ、しかもそれが核の廃棄に繋がったとして、この話を通すのに一役買ったりしていたりする。
 ・・南極の氷とかはちょっぴり抉れたりしてたが。

 「そーゆーワケだ!!宜しく頼むぞ!!姫達よ!!」
 「・・何か役に立つんか?オドレ」
 「魔神だった時も鬼道と銀ちゃんにコテンパンだった癖になー」
 「酷ッ!!?ううっ、姫までー!!」
 いきなりへたれ炸裂(爆)
 ──と。
 「・・で」
 今まで声を発しなかった鬼道が口を開いた。
 「覗き見って、何や?」
 にっこりと、笑顔で。
 元魔神へと。
 「・・ハハハ、ナンデモアリマセンヨ?」
 先程の失言、きっちり聞かれていたらしい。
 「・・取り敢えず、せ・い・ざ♪」
 「笑顔がコエーーーーーッッ!!!」
 「ヒイィィィ・・・・・・」
 「あーあ・・」
 ・・どうやら、久々に説教大会が開催されそうである。

 

 ──その頃。
 「・・・・・・・・・・」
 玉座に座る現魔神。
 とは言え、魂の牢獄に組み込まれる程の力は持ってはいない、ぶっちゃけ帳尻合わせで力を得た、元一魔族。
 塔でトリモチにまみれてしくしく泣いていた所を回収され、気が付けばこの状態だった。
 その目の前をぽーぽー言いつつ走り回るはハニワ兵。
 傍らには何故か白い蛇。
 そして、漏れる呟きは。
 「・・何だこの展開・・」
 全くだ。

 一方、こちらはハニワ兵。
 「ぽー・・(姫ー・・)」
 「ぽぽー!!(元気出せ!!次は俺達の番だろ!!)」
 「ぽぽーぽー♪(そーだよー。交代で姫の所行けるんだからー♪)」
 「ぽー!!(その為にも我等は職務を全うせねばな!!)」
 「ぽぽー!!(姫の為に頑張るぞー!!)」
 『ぽー!!(おー!!)』
 ・・やっぱり姫第一であるらしい(笑)

 

 説教だけでは終わらずに。
 頭のてっぺんからぷすぷす煙を上げ倒れ伏す元魔神。
 「・・ええい、相変わらず容赦のない・・。・・しかし、純粋な"保護者"であった頃と比べると、更に強力になったよーな・・」
 頭を撫でつつ起き上がる。
 「当然やろ」
 その言葉に、けっ、と吐き捨てて。
 「まぁ、基本的にはあのまんまやけど、全部同じやったら俺が諦めてやった甲斐がないやないか。横っちの事では、誰にも負けんくらいになってもらわんと困るわ」
 面白くもなさそうに銀一。
 「・・あの人にとっては、"唯一"やなくても、"一番"にはしてもらわんとな、横っちの存在と──優先順位。・・ま、横っちも"唯一"やあらへんし」
 自分は"唯一"。
 たった一人の為に、何を犠牲にするのも厭わない。
 ・・相手が望まぬとしても。
 だから、自分では駄目なのだと。
 溜め息を一つ零して。
 「・・ま、取り敢えず・・横っち泣かせたりしたら、今まで通り、誰であったとしても・・許さんけどな・・」
 恐ろしげな笑みと共に呟く。
 「・・ナニスルキデスカ?」
 思わずカタカナ語で優太郎。
 「・・別に?そこらの悪霊とか引っ張ってきて、何かの薬で弱らせた身体の中に入れて精神乗っ取られんよーに頑張ってもらうとか、ハニワ達に頼んで異次元の扉開いてもらってその中に閉じ込めて、自力で帰ってこられるか試すとか、そんな試練を課すだとかは考えとらんで?」
 とってもステキな爽やかエセ笑顔でのたまう銀一。
 (魔王は続くよどこまでもーーーーーーーーーーっっ!!!)
 元魔神、思わず心の中で絶叫。
 恐怖の為か、微妙に意味不明。
 (あああっ魔王健在!!怖ッ!!めっさ怖ッ!!!・・しかし二人のガチンコバトル・・いつぞやの塔での睨み合いのみでアレだったのだから、さぞかし地獄絵図に・・)
 そこまで考え、浮かぶのは魔王と妙神山一行が繰り広げていた塔での一コマ。
 (・・この星は大丈夫か?)
 ・・一体銀一と鬼道は何者なのか。

 そんな所にひょこひょこと。
 「・・取り敢えず茶淹れたけど、飲むかー?」
 「ぽー♪」
 何故かハニワ兵を抱えながら横島。
 勿論一番付き合いの長い、魔体の額から出てたアイツだ。
 優太郎と一緒に来ていたらしい。
 「・・すまんな。やりすぎたわ」
 鬼道も些か気まずそうに出てきた。
 (・・二人揃ってお人好しやからなぁ・・)
 (・・危機感を持つとか警戒とかはせんからなぁ・・この二人は)
 少しばかり、呆れつつも。
 「・・もらうわ、横っち♪・・ま、そのヘタレにやりすぎたやなんて反省はいらんと思いますけどね、俺は」
 「ぐはっ!!・・ま、魔王めー!!」
 「ああ!?文句あるんかヘタレ!?魔神いう肩書きもの
うなった、ただのヘタレ野郎が!!」
 「酷ッッ!!?」
 「やめろって・・」
 「ノリが同じやなぁ・・」
 それを見守る一つの影。
 「ううっ、アシュ様ぁ・・」
 ・・ベスパも来てました。


 ──そんなこんなと。
 日々は、続く。

 

 そうして過ぎる日々の中。

 「・・つーか・・まだ結ばれてないらしい」

   ゴンッ!!

 「・・・・・・・・・・ハイ?」
 思わず前に倒れてテーブルに頭を打ちつけたアシュタロス──芦優太郎が、深刻な表情のままでいる目の前の男に、姿勢を戻して聞き返す。
 「・・まだやっとらんのやと・・。まぁ、鬼道さんマジメやからなー。高校出るまでは手ェ出せん言うとるし」
 「・・・・・・・・理性の塊だな・・」
 「まー、オドレの変態プレイの数々で横っちがそーゆーコトに恐怖心とか持っとるのもあるしな」
 「げふぅっ!!」
 己の過去の悪行をさらっと言われて撃沈。
 「けどまぁ・・」
 にやり、と笑んで。
 ふっ、と息を吐いて。
 「成人になるまでガマンできんと思うけどな!!」
 何故か輝かんばかりに爽やかな笑顔を浮かべて言い切った。
 横っちは我慢きかん程に可愛いからな!!とか付け足しつつ。
 しかもサムズアップかましてたり。
 そして。

   ぐりぐりぐりぐり

 「あだだだだっ!?」
 こめかみぐりぐりこぶしでこーげき。
 「・・本人の前でそういう話は感心せんなあぁぁぁぁぁぁ?」
 ・・鬼道先生でした。
 「「あああっスンマセンスンマセンッ!!」」
 思わずアシュタロスまで・・いや、元魔神、今は人間形態、芦優太郎まで謝る鬼道の迫力である。
 こめかみに浮かんだ青筋はなかなかに怖い。
 更にその顔は引き攣った笑みであったりするものだから、倍増だ。
 ・・色々とストレスが溜まっているのかもしれない。
 「図星やからって実力行使はいかんと思いますよ、鬼道さん・・」
 あだだだだ、とか漏らしながらこめかみをさする銀一。
 鬼道のこめかみに青筋一本追加。
 「むぅ・・。確かに私のせいでもあるか・・。よおしっ!!私が行ったプレイの数々よりもっとカゲキにステキなプレイをすればそっちの方が強烈に残って愛の日々がっ!!ふふふ、姫が幸せになるというなら私の未だ衰えぬこの想いさえ押し隠し、協力しようではないかっ!!まずは道具の調達かっ!?」
 ・・何だかんだと、応援する気はあるらしい・・が。
 鬼道の反応は──
 「・・ふ・・ふふふ・・ふふふふふふふ・・・・・・」
 俯き、見える口から漏れるのは低い笑い声。
 「「・・・・・・アレ?」」
 何故か姿を現す夜叉丸と。
 「・・オドレ等・・」
 いつの間にやら握り締められたハリセンに、冷たい汗が流れるのを自覚する二人の前で。
 「「・・・・・・・・・・ハイ?」」
 とても綺麗な、ステキ笑顔で。
 「逝け」
 深く静かにキレました。


 ・・で。
 「・・またお前等鬼道怒らすよーな事やったのかー?いーかげんにしろよなー」
 呆れた様な横島の声に。
 「・・世の中、ままならんなぁ・・」
 「ううう・・頭はたきながらの説教の嵐は勘弁して下さい・・パブロフの犬の様に身体が固まりマスヨー・・」
 ・・遠い目をして呟く、頭にでっかいコブを生やして大の字に寝転がっている銀一と、トラウマ全開、頭抑えてぶるぶる震えている芦優太郎。
 「ううっ、アシュ様・・」
 ベスパは何もできず泣いてたり。
 「・・また阿呆な事言うただけや。・・今度言うたら一日ぶっ続けやからな。覚悟しい・・」
 「「モウイイマセンヨー!?」」
 「あ〜あ・・」
 相変わらずの力関係と、いつぞやとダブる場面。
 答は出したけれど、流れる空気が大して変わっていないこの日常は、嫌いではなく。
 横島は苦笑しながらも、楽しそうだった。

 

 

 ──それは、続く。
 いつまでも。

 いつまでも続く大騒ぎ。
 ある意味お祭り、終わりなく。
 ・・それが終わるがどの時か。
 それは誰にも解らない。

 あの祭り程騒がしくは無く。
 比べてしまえば穏やかで。
 それでも楽しい、賑やかな。

 人が揃えば、それだけで。
 それは確かに、お祭りで──────

 

 

 「・・ま、人生終わった訳やないですし。これから横っち狙う連中、まだまだ来ると思いますよ、鬼道さん」
 「・・そら怖いな。もしかして君もその内の一人か?」
 「さぁ?」
 朗らかに、和やか、とさえ言える雰囲気で二人。
 口調は軽いが、内に何が込められているのかは見えない。
 ・・と。
 「むぅ!!ならば私もその中の一人にっ!!うまくすればまたあの愛欲の日々が再来っ!?」
 「「オドレにだけはやらん♪」」
 「ああっ笑顔でハモられたぁっ!?」
 にっこり笑顔で二人に言い切られる元魔神、頭を抱えつつ涙噴出。
 こういう時の笑顔は怖い。
 大抵怒りの裏返し。
 ・・塔で学んだ一つの現実である。
 「それにしてもいきなり出てくるのやめいや。大体そんな事ほざいとるとベスパさんに逃げられるでー」
 「折角付いて来てもろとるんやから、きっちり大切にせんとバチ当たるでー」
 「・・何故そーいう話になるっ!?」
 「「愉しいから?」」
 「疑問形!?とゆーかハモリっ!?」
 「だってオドレ、ベスパさんの話すると変に慌てまくって笑えるしなー」
 「何か端から見とったら新婚に見えるし」
 「なにょおおお!?」
 「・・ところで鬼道さん。マジな話、横っちに他に好きな奴できたらどないします?」
 何やら混乱の極みに呻く優太郎を放置し、銀一が鬼道に尋く。
 実際の所は──きっちり認めている、自分達。
 動くとしたら、当人の心一つ。
 本当に横島の心が鬼道から離れる様な事さえなければ──今の状況は不動だと、銀一は確信している。
 だからこれは──試しと揺さぶり。
 と、ゆーか・・ぶっちゃけ、ただの軽い意趣返し。
 「どないって・・そうなったら仕方ないやろ。・・送り出したるよ、笑顔で」
 あっさりと、そう言って。
 「・・まぁ、けど──・・」
 穏やかな笑みが、鋭いものに変わる。
 瞳に宿る光が、純粋なまでに、危険な程に、真っ直ぐに。
 殺気や威圧、そんなものを感じる程に強い意思と、想いと。
 それらを告げる様に、二人を貫いて。
 決意の強さと重さとを教えるかの様に。
 「・・そんな事態にさせる気はあらへんよ」
 明確な、意思表示。
 意志をもって。
 そして、それを受けた二人は──
 (ウワーイ、コワーイ♪)
 元魔神、強制的に混乱状態から引き戻されて、今度は別の所へ逝っちゃった。
 (ふふふ、横っちー、俺デザートはちょこぱへがえーな〜♪)
 魔王様、妄想の世界へ逃避。
 鬼道の怖さ、以前より遥かにUP(爆)
 ・・やはり立場の違いだろうか。

 

 別の日。
 「・・あるイミ修羅場だな、コレは・・」
 もきゅもきゅサラダをつまみながら、汗ジトで元魔神。
 「・・ま、これで正式に横っちと鬼道さんの仲は認められたゆー訳やな。百合子さん敵に回したら痛いメ見るしなー。まだ諦められん連中も手出しできなくなるやろ」
 ポップコーンをつまみながら銀一。
 「・・いや、やめなよ、こーゆーのは・・」
 呆れと諦めの入り混じった顔でベスパ。
 何故か横島と鬼道の隣のお部屋の住人さん達だ。
 銀一はただの客(の筈)だが。
 目の前にはハニワ兵。
 目から映像カタカタと。
 ・・いつぞやの横島の両親と鬼道の対面時の映像を、映画の様な感じで鑑賞中。
 どうもこういうプライベートな面は覗き見出来なかったらしい元魔神。今までの事をハニワ兵に尋く内にこんな事になった訳だが。
 ・・公認の隠し(?)カメラになってる様な気がするぞ、ハニワ兵。
 「・・認められたのか?お義母様は何だか醸し出す空気が怖いぞ?」
 「・・『お義母様』言うなやボケへたれ。つーか、ここまできて認めんのならそれはハッキリ言って無能のアホや」
 「いやボケへたれて!!」
 「銀一・・キツイよ・・。でもさぁ、男同士は人間の世界じゃタブーなんだろ?魔族や神族にとってはそれ程じゃないけどさ」
 「アンタ等一応父娘やもんな。そんでもフツーにデキとるし」
 「「デキとるて!!」」
 「てかんなモン今更やろが。大体そんモンで反対する程クソやないで、横っちの両親は」
 「「無視デスカ!!」」
 「やかましいわ、へたれボケカップル」
 「「へたれボケカップル!?」」
 息はピッタリ、へたれボケカップル(爆)
 「・・ま、そーなったらそーなったで俺もまた参加したかったとこやけどなー。そんでも、俺のポジションはもう決まっとるし。あの二人にはきっちり幸せになってもらわんと、俺が今までやってきた事ムダになるし」
 へたれボケカップルは無視しっぱなしで。
 「・・ま、不当な理由であの二人の邪魔する気なら、俺は百合子さん達ともケンカするで?」
 ・・魔王の笑みで、愉しそうに、呟いた。
 ((魔王ーーーーー!!!))
 そしてその姿を目の当たりにし、へたれボケカップルは手を取り合ってぶるぶる震えていたりしていた(爆)

 更に。
 「・・いないと思ったら・・ハニ!!何見せとるかー!!」
 「ぽっ・・ぽー!!」
 「逃げるなー!!」
 「・・アッハッハッハ三人共ー、せ・い・ざ♪」
 「「「キターーーーー!!?」」」
 姫と最強保護者、来襲。


 ──外。
 「・・どう思う?」
 「・・どうって・・相変わらず?」
 苦笑し合って。
 「これじゃー今日は無理ね〜」
 「ま、今度は皆集めてまた来ましょ」
 「・・ええ、そうね。こんないい女フッてくっついたんだから、アレは私達に任せてもらうわ!!」
 「勿論よ!!」
 ぎらりっ、と瞳を光らせて、視線を合わせ。
 美神とルシオラは、拳を握って振り上げて。
 「「卒業と同時の結婚式を挙げさせる為にっ!!」」
 唱和した。


 ・・卒業後、それは決行され。
 横島が男のまんまでウェディングドレスを着る事になって暴れたり、文珠で女性化してお色直しする事になって頭抱えたり、式では皆して咽び泣いたりやっぱり暴れたり暴走したり。
 それでも無事に式は終わって初夜だぁ!!な時に二人の泊まったホテルの隣に一同がこっそり盗み聞きして(覗きは流石に躊躇われたので)バレて説教地獄に突入したり横島に怒られてヘコんだりハニワマンにもぽこぽこ殴られたりする事になるのだが──まぁ、別の話である。

 

 これもまた別の話で。
 ──何故かメドーサも横島姫の護衛として派遣されました(爆)
 「何で私がー!!」
 「ハッハッハ、頑張れ!!」
 「ウワーン!!」
 ・・大変だ。

 ところでその時期は春で。
 「花見だ!!てなワケでメドーサ、場所取り宜しくな!!」
 「何で私がぁぁ!?」
 「頑張りなメドーサ!!・・ハッキリ言って暇なのアンタだけだしさー。アシュさ・・いや、優太郎さん、会社なんて作っちまったもんだからもー・・」
 何やってるのやら。
 「ハッハッハ。働かざる者食うべからずだからな!!」
 「・・さいですか」
 るるる〜と涙を流しつつ、諦め気味のメドーサである。
 そんなこんなで。
 「んじゃメドーサ、これ弁当とゴザな。皆の分は後で持ってくから、それは食っといていーぜ。昼飯用だから」
 「・・あ、ああ・・」
 横島から弁当手渡されて場所取りへ。


 大きな桜の下ゲット!!
 昼。
 「おう、蛇。横っちが持たすの忘れたて。飲み物や」
 「きゃわー!!魔王ーーー!!?」
 「・・何やその反応は。・・ったく。まーええわ。こっちが緑茶、こっちがミルクティー、こっちがオレンジジュースやと。好きなモン飲め言うとったで。マメやわー、本当」
 感心と呆れの混じった苦笑を浮かべる銀一を、不思議そうに見上げるメドーサ。
 そんなメドーサに頓着せず、
 「それと、紙コップと紙皿持ってきてやったで。この後来る連中の分や。全く・・横っち目当てやないやろな、あの連中・・」
 荷物を渡してブツブツ言っている銀一を、やっぱりメドーサは見上げながら。
 「・・パシリ?」
 「皮剥いでハンドバッグがご所望かゴラァァ!?」
 「ヒィィィィ!!ゴメンナサイーーーーー!!!」
 「・・ったく・・。とにかく、夜には俺も来るからな。ちゃんと場所取りしときや!!」
 仕事の合間に来たらしく、足早に去ろうと──
 「・・と、そうや。コレやるわ。暇潰しに聞いとけ」
 「?」
 携帯ラジオとウォークマンを渡された。
 「ほなな!!」
 そうして、今度こそ去って行く。
 それを些か呆然と見送って。
 「・・・・・・・・・・」

   ぱく   あむあむあむ・・   ずず・・

 「・・けっこーうまい」
 お気に召したらしい。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・」

   〜〜〜♪

 「・・ふーん・・」
 曲の方は・・どうだったかは解らないが。


 夕方。
 「お、メドーサ。場所取りごくろーさん」
 「・・もう来たのかい?」
 「いや、生徒の研修先廻っとってな。これから学校戻って一仕事せなアカン。様子見と、コレ持ってきただけや」
 言って、抱えていた物を渡される。
 「・・毛布・・?」
 「日ィ暮れると寒ぅなるからな。冷やすんやないでー」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 夜。
 「酒だぁ!!さぁ、飲むがいい!!」
 「ア、アシュ様・・」
 「強要はダメですよ?アシュ様」
 「むぅ。私は芦優太郎だとゆーのに!!ベスパまで!!ぶーぶー!!」
 「かわいくねーぞ、アシュ」
 「どっちにしろ大して変わらんやろ、アホもそのまんまやし」
 「ダメやで、ワガママは」
 「むごー!!」
 「・・てゆーか、私もベスパのままなんですけど・・メドーサも・・」
 「はっ!?しまったぁ!!」
 「アホやな。脳味噌腐って考えなアカン事も考えられんか」
 「酷ォッッ!!?」
 「ま、まーまー・・」
 「・・容赦無いなぁ、アンタも・・」
 「あぁ、アシュ様ぁ・・い、いえ、優太郎様・・」
 相変わらずのの面々を眺めつつ。
 「・・何やってんだか・・」
 呆れた溜め息を吐きながら。
 メドーサの顔には、微笑が浮かんでいたりした。


 ──そんな花見の席にいるのは、様々で。


 男の人の傍で、幸せそうに横島さんが笑っています。
 とっても、とっても幸せそうで・・悔しいです。
 ・・でも──
 「・・小鳩・・泣いたらアカン。泣いたら駄目なんやー!!」
 隣では、貧ちゃんがお酒を飲んで、大泣きしながら叫んでいます。
 ・・有難う、貧ちゃん。
 でも、でもね・・。
 「大丈夫よ、有難う、貧ちゃん。小鳩は、負けないから」
 もう、あの中には入れないけれど。
 ずっと、何も知らなかった。
 横島さんを追っていく事もできなかった。
 だから、だからね。
 「・・『次』は、きっと・・あの中に入ってみせるから」
 ・・小鳩は、負けません。
 今回は、横島さんと一緒には生きられないけれど・・頑張って、幸せになるから。
 ・・でも。
 『次』はきっと。
 横島さんと一緒に──


 「・・はぁ」
 溜め息が零れる。
 だって、仕方ないじゃない?
 私は、何も知らなくて。
 いつの間にか、こんな事になっていて。
 ・・あーあ、もう。
 横島クンを見る。
 ・・楽しそうな、馬鹿騒ぎ。
 幸せそうに、笑いながら。
 ・・何があったのかは知らない。
 知っても、どーしよーもないだろーし。
 ・・あんな笑顔見せられちゃあね・・。
 ・・この失恋も、青春って言うのかしら?
 所詮私は妖怪で。
 報われるなんて希望は抱いていなかったけれど。
 でも、もしかしたら、なんて。そんな事も思ってみたりして。
 ・・結局、駄目だったけど。
 ま、仕方ないわ。
 でも──『次』は、いけるかしら?
 その時に私がどうなっているか、解らないけれど。
 せめて、『次』は。
 ・・あの中に、入って。
 横島クンと、一緒に──


 ・・次の祭りは、今回以上に騒がしくなりそうである。


 「しかし・・姫と一緒になったのだから、『最強保護者』ではおかしくないか?」
 他の連中に囲まれる二人を眺めつつ、優太郎が漏らす。
 「周りが勝手にそう呼んどるだけやし、ええんやないか?認識としてそーなっとるんやし、今更やろ」
 己の認識は『魔王』の銀一、アッサリ返す。
 「・・大体、一緒になってもあんま変わらんしなー」
 苦笑しながらそう付け加え、つまみに手を伸ばす。
 本当の所はどうか知らないが、認識がそのままなのだから、別にいいのだろう。
 「むぅ、確かに。『姫』も『姫』だしなー」
 はぐはぐカラアゲ喰いながら優太郎。
 「・・それは横っちの方が嫌がっとると思うが・・」
 「・・『横っち』はどーなのだ?」
 「・・俺は一生『横っち』呼ぶが何か文句あるかコラ?」
 「何故にワンブレス!?穏やかな笑みと抑揚の無い声はミスマッチで怖いのデスガー!?」
 「やかましいわボケ!!」
 そんな光景眺めつつ。
 「うぅ・・またアシュ様が魔王にいじめられてるよぅ・・」
 ちびちび酒を飲みながら、ベスパがしくしく泣いてたり。
 「コラァそこの蜂ーーー!!」
 「蜂言うなぁ!!うちの娘を!!」
 「うわーん!!アシュ様のいけずーーーっっ!!!」
 「何故泣いて逃げるマイドーター!?」
 そんな二人に、呆れた眼差しを送りつつ、銀一が呆れ切った口調で。
 「・・オドレ・・普段あないなへたれボケカップル振り発揮しとるくせにまだそないな事を・・」
 「へたれボケカップル言うなぁーーー!!!」
 ・・何やってんだか。
 取り敢えず優太郎にベスパを追わせて、桜を見上げる。
 「やれやれ・・」
 苦笑する。
 「・・あんな事言うて・・娘のまま見てられるんかぁ・・?」
 ハッキリ言って、最初は敵。
 ただの敵。
 今でも、あの馬鹿のした事は許せないし、クソだと思う。
 それでも、まぁ。姫がもう許している事は知っているから。
 せいぜい幸せになれ、とも思う。
 「・・俺も横っちのお人好しに感化されたかぁ・・?」
 有り得んなー、と心の中で即答して。
 笑う。
 「・・何だい、酒飲んでないのかい?」
 「・・一応未成年やからな。職業柄、ハメ外しすぎるとヤバイんや。・・んで?どーかしたんか?オドレから話し掛けてくるなんぞ、天変地異の前触れか?蛇」
 「・・私の名はメドーサだ!!全く、どいつもこいつも・・」
 ぶつくさ言うメドーサにくくっ、と笑って、散る桜に目を移す。
 「・・オドレは、『次』、どーする?」
 「・・私は・・」
 俯き、沈黙する蛇に構わず、静かに口を開いた。
 「・・『次』は、取り敢えず──最初に鬼道さん抹殺やな♪」
 「魔王ーーーーーーーーーー!!!!!」
 「ハッハッハ、勿論冗談やでー♪」
 ・・どうにも魔王には勝てそうにないメドーサだった。

 

 桜の下で。
 「・・本当は・・姫の事・・どう思っているのですか?」
 感情の見えないベスパの問いに。
 「・・愛しているぞ?きっちり幸せになってもらわんと、我慢できん位には、な」
 優太郎は、笑んで、そう返す。
 幸せそうに、笑って。
 言葉は、澱みの無いものだった。

 

 何はともあれ、一緒に帰って来たベスパと優太郎で。
 そんな二人が魔王を筆頭に揶揄われまくったりしたのも、また。
 幸せな日常の、幸せな祭りの一つ。

 

 


 ──今は、準備期間。
 あの祭りに参加するまでの。
 それまで、きっと。
 違う祭りの中にいる。
 人生は、祭りだ。
 あんなデカくて賑やかで楽しくて派手な祭りは、希有だろうが。
 だから、あの祭りに胸を張って、堂々と参加できる日を想って。

 

 今の祭りを、楽しもう。
 だってまだまだ、祭りは続く。
 祭りはまだ──終わらない。

 

 「・・楽しーぞ、生っ♪」
 満面の笑みで言うのは、アシュタロス。芦優太郎。

 所詮魔族である事には変わりなく。
 必ず別れはやってくる。
 皆、己の生の尽きる前に、逝く。
 それでも。

 姫を看取った後、一魔族として働いて──姫の転生時に、共に転生させてもらう、と。
 その約束を胸に。
 ただ今は、姫の傍ら。
 姫を護り、その幸せを願いつつ。
 生を謳歌する、元魔神であった。
 

 

 


 おまけ

 「・・主は我等に一丁の武器(某ヨーロッパの魔王より進呈)を与えたもうた・・」
 「ハッ!?しまった!!神父が暴走モードにっ!?」
 「ハッハッハ。何を言っているんだい西条君?・・アレは、殱滅するべき敵じゃあないか?・・我等の姫に仇為す者には永劫の滅びっ!!それが宇宙と最高指導者共の意志!!」
 「・・『共』ときましたか・・」
 「堕ちたまえ・・アーメン!!」
 発射ァ!!

   ちゅどーん   どっかーん   へろへろへろ〜   ぽてっ

 「・・ふっ・・悪は滅びたよ・・アーメン」
 「・・さようなら神父・・」
 いろんな意味で涙を流しながら、神父へ敬礼する西条であった。

 ところで。
 「・・ふっ・・所詮我等は茶番劇の悪役・・」
 ・・撃墜された馬鹿が何かをほざいていたりする。
 どうも、"姫"に関わったが故に魂の牢獄から抜け出せたという噂が広まってた為来た奴だったらしい。
 それを撃墜させた神父だが──・・もう姫を含めた関係者は皆こんな感じなので、問題は無い(爆)


 何はともあれ、アシュタロスだけ特例という訳にもいかず、この後最高指導者達は大変そうだ。
 頑張れキーやん!!負けるなサッちゃん!!

 君達の未来は真っ暗だ!!

 「殺生やぁぁーーーーー!!!」
 「・・うう・・私の信者が・・」
 そんなサッちゃんとキーやんの声は、唐巣や西条の耳にも聞こえたのだが──無視された(酷)

 まぁ、塔の様子を収めたDVDやらを観せればこういう輩は減るだろう。


 因みに後日。
 皆の手に負えない相手は最高指導者達の元へ直で送れるという力を優太郎が渡され。
 「・・ストレス溜まってるんで、ぼてくりまわす相手が欲しいに一票」
 『同感』
 ・・物の見事に見抜かれていたりするのは、別の話だ。


 

 

 


終わりました、壊れなへたれ魔神の物語が。姫と、最強保護者と、魔王の物語が。皆様の納得のいく結末だったでしょうか?『来世』、『次』に拘りすぎてしまった感もありますが(汗)
・・蛇足な部分も多くあったと思いますが、こうなりました。
祭りは、形を変えて、続いていく様です。『次』のデカイ祭りも控えてますが。
それでは、こんな全体的にもこの最終話だけでも(汗)長い話を読んで頂き、有難うございました。
操り人形様と読者様方に感謝しつつ、終わらせて頂きます。
・・怒られませんよーに(祈)


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