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▽レス始

「魂の在処は? 4(GS)」

小町の国から (2004-12-21 21:08)


ここは妙神山の横島の部屋、時刻は朝の5時になるところである。

「うっうう………あーーー!」

ガバッ!

目が覚め、すごい勢いで上半身を起こす横島。

「あっ危なー、もうちょっとでイッテまうとこやったー」

横島が妙神山を頼って来てから1週間、アシュタロスの事件から数えると約1月が経過していた。

「こんな時になって、夢の中にルシオラが下着だけを着た姿で出てくるんだもんなー、もう少しで飛び掛かってしまうとこやったー。」

そう呟きながら未だ毛布に包まれたままの己の下半身を見る。
そこには横島よりも早起きの『息子』がいた。

「はー! これ以上は眠れそうにないし、『こいつ』が落ち着いたら顔でも洗いに行くか。」


魂の在処は? 4


早朝妙神山の廊下を洗面所を目指し歩く横島。妙に腰が引けており、端から見ると不審者のようである。
そのうえ今の横島は修行着を着ている。もはやトレードマークであるジーンズの締め付けや摩擦にも抵抗できないところまで来ていた。

「うう、我ながらみっともねぇ。」

そう呟きながらも洗面所を目指す。とにかく頭を冷やしたかった。


何とか洗面所に着き、頭から水をかぶる。先程まで見ていた夢の内容も流れていってくれれば良いのだが…。
水をかぶるのを止め、また「はー!」とため息をつく。

(ヒャクメの調査結果はまだだし、アレが溜まってるせいもあってろくに集中もできず修行もはかどらないし、どうすりゃいいんだ?)

洗面台に両手を置き、頭から水を滴らせたままで考え込む横島。そこへ、

「どうしたんですか横島さん?」

小竜姫の心配そうな声が掛かる。
横島が振り返ると、既に管理人の服装に着替えた小竜姫が立っていた。

「ああ、おはようございます小竜姫様。今日もお美しいですね。」

無理に笑顔を作り挨拶する横島。
一方の小竜姫は心配そうな顔をしたままだ。(『今日もお美しいですね。』はスルーされたらしい。)

「おはようございます横島さん。でもどうしたのですか? 体調でも悪いのですか?」

そう訊いてきた小竜姫に横島は、

「いえ、そんなことはありませんよ。少し考え事をしていただけです。」

そう応えた。
何とか笑顔を作って話す横島ではあるが、親しい者には無理をしているのが丸分かりである。
ここでその話をしても始まらないと考えた小竜姫は、

「そうですか…。とりあえず横島さん頭を拭いて下さい、そのままにしておくと風邪を引いてしまいますよ。」

とだけ言った。

「はい、わかりました。あっ……タオル忘れた。」

ばつが悪そうな顔で頭を掻く横島、余計に水が滴ってくる。
小竜姫はクスッと笑った後で、

「それならこれを使って下さい。」

とタオルを差し出す。

「ありがとうございます小竜姫様、ではお借りします。」

小竜姫からタオルを受け取り頭を拭き始める横島、その手がピタリと止まり鼻をヒクヒクさせる。

(あー!えー香りやー。これが小竜姫様の香りかー、もっとこの香りに包まれた『バキッ』ブハッ…」

いつの間にやら考えを口走り、繰り出された神剣の一撃で吹っ飛ぶ横島。相変わらずシリアスの続かない男である。

一方一撃を加えた小竜姫は、

(人(?)が心配をしているのに、いきなり何を口走るんですか!)

と、怒っていた。(もっとも少し顔が赤かったが)

「いてて、ひどいっスよ小竜姫さ『ギン!!』……すいませんでした。」

「まったくあなたときたら、なんでそういうことを言うのですか! 私が心配しているというのに真剣さが……………………………………………………聞いているんですか横島さん! 大体あなたは………………………………………………」

(ああっ! 何でこんなことに)
洗面所の床に正座し、長々と続く小竜姫の説教を浴びながら我が身の不幸を嘆く横島だった。


「朝からうるさいと思ったら、そんなことをしてたのかい?」

朝食を摂りながら呆れた表情で話すベスパ。

「うむ。少しは他人の迷惑になるということを考えてもらいたいものだ。」

同じく呆れた顔のワルキューレ。

「すみません、つい。」

顔を赤くし、俯きながら謝る小竜姫。

「………………」

朝食に手もつけず白くなったままの横島。

「大丈夫ですか? 横島さん。」

白いエプロンを着け、おさんどんをしながらも横島を心配するジーク。

ツンツン 「だめでちゅねこれは。」

横島を突っついても反応が無いので諦めたパピリオ。

穏やかな(?)朝食の時間が、ゆっくりと過ぎてゆくのであった。


ようやく復活した横島も含め、食後のお茶会となった。

「で、調子はどうだ横島、まだ我慢しているんだろ?」

ワルキューレが尋ねる。

「うっうん、いよいよもってやばいかも…」

苦笑いをしながら横島が応える。

「そうか。しかしただ調査結果を待つだけでは解決にはならんぞ。ルシオラの霊基構造が含まれているにせよいないにせよ溜まったものは出さねばならん。それをどうするかだ。」

ワルキューレが冷静に話す。小竜姫とベスパは『溜まった云々』のあたりで顔を赤らめていた。

「わかってはいるんだ。でもさワルキューレ、俺としてはそう簡単に割り切れないというか…」

横島が返すものの、どうも歯切れが悪い。

「まあいい。では代案を考えるしかあるまい。私は魔族だが人間界で特殊作戦を行うことも少なくない。だから人間界の情報にもかなり通じている。
それによると人間界には精子を冷凍し保存する技術が在るそうではないか。それを利用するか、又は文珠でそれに近い方法を作り出し保存するのはどうだ? そうしておいてルシオラを転生させる機会を待てばいい。」

そう提案するワルキューレに横島は立ち上がって反論する。

「何を言うんだワルキューレ! 俺は確かにルシオラには転生してもらいたい、でもそこには愛が無くてはだめなんだ!」

横島のあまりの剣幕に引く一同。

「そう愛だ。ああっ愛! ルシオラ転生の過程には、愛の名の下にめくるめく濃厚な行為を重ねに重ね『『ブァキッ!!』』ぐわー……」

小竜姫とベスパのダブルパンチを喰らい宙を舞う横島であった。

「ひっ、ひどい!」

頭から血をドクドク流しながらも非難する横島。
それに対し、

「こっ、このバカ兄貴が!! なに言ってんだよ。」(前回の『義兄さん』発言は二日と持たず、『バカ兄貴』・『ダメ兄貴』へと変わっていった。)

「それが真剣な顔で言う内容ですか! 仏罰です!!」

赤い顔をしながらも怒声を浴びせる小竜姫とベスパであった。

「まあ小竜姫もベスパも落ち着け。」

それを宥めて再び席に着かせるワルキューレ。横島の出血は既に止まっている。(お約束)

「なあ横島、子供を作る為にそういう行為があることは承知している。それはごく一部の者を除き、神族や魔族でも変わらない。」

横島の顔を見ながら、ワルキューレは話を続ける。

「またその行為がいわゆる快感を感じる行為でもあり、子供を作る為以外でも行われていることも承知している。
それでだ横島、お前がルシオラの転生をも容認してくれるような素晴らしい伴侶となる女性を見つけ、その行為を行うとしてだ、一度目で『命中』するとは限るまい? 通常ならば夫婦生活の中で繰り返し行われて得られるものだ。その場合は、言い方は悪いが『外れ』も発射することになる。
ならば現在溜まっている精液に関しては、適切な方法で処理をするのもやむを得ないのではないか?」

俯いたままワルキューレの意見を聞いていた横島は、

「そうなのかもしれないな。でもさ、『自家発電』なんかでする単なる『処理』や『排泄』と、愛する女性との行為の果ての『放出』では、たとえ『命中』しなくても俺の想いに、納得度に違いがあると思うんだ。相手もいない分際で言えるような事では無いと思うけどな。」

涙目になった顔を上げてワルキューレにそう応える。

「なあ、誰でもいいから知っている人がいたら俺に教えてくれないか。ルシオラの霊基構造は確かに俺の中に有る。じゃあさ、ルシオラの…あいつの魂は何処にあるんだろうな? 俺の中か? それとも他の場所か? 誰か…誰か教えてくれよ。
あいつを転生させたいんだ、娘でもいいから…娘でも。そして今度こそ幸せな生活を過ごさせたいんだ。うっ…うっ…うわーん、ルシオラー…………………」

話している最中にどんどん涙声になっていき、遂には蹲って泣き出す横島。

「ヨコシマー!!」

と叫びながら横島にしがみつき、一緒に泣き出すパピリオ。
ベスパの頬にも涙が伝う。
小竜姫・ワルキューレ・ジークの三人は、泣かないまでも沈痛な面持ちをしている。

結局、横島の問いに答えられる者はいなかった。


夕日をじっと見つめている三人、横島・ベスパ・パピリオである。
ベスパとパピリオは横島の両脇に寄り添い、沈みゆく夕日を眺めていた。

やがて夕日が沈むと、

「二人ともごめんな。格好悪いところを見せちまって・さ。」

そうポツリと横島が告げた。

「気にしてないし、それに格好悪くなんかなかったよ。」
「そうでちゅ」

二人が応える。

「そう・か、ありがとな二人とも。」

そう言いながら横島は二人を抱き寄せる。
二人もそれに逆らわず、ぴったりと寄り添った。

「でもさ義兄さん(おおっ、復活している)、ヒャクメの調査結果を聞いて少しは安心したかい?」

寄り添ったままベスパが問う。

「そうだなー、いやかなり安心したかな。」

横島が笑顔で応える。


そう、あの横島が号泣している時にヒャクメがやって来たのだ。

「お待たせなのねー………って、みんなどうしたの?」

怪訝な表情でヒャクメが問う。

「いや何でもない、それよりヒャクメ『お待たせ』ってことは、調査結果が出たのか?」

平静を装い、ワルキューレが尋ねる。

「そうなのねー、それで急いで報告しにきたのねー」

「そうか感謝する。ほら横島、ヒャクメが調査結果を伝えに来てくれたぞ。」

蹲って泣いている横島の脇にしゃがみ込み、ポンポンと優しく肩をたたきながらワルキューレが話しかける。

「グスッ、すまんワルキューレ、ちょっと感情が高ぶっちゃって。」

腕で目をこすりながら横島が顔を上げる。

「気にするな。それよりも結果を聞こう。」

優しい微笑みを浮かべて、ワルキューレが促す。

「そうだな、ありがとうワルキューレ。」

「だから気にするな。私たちは仲間だろう。」

言葉を交わしながら二人は立ち上がる。

「お茶が冷めてしまいましたね。煎れ直しますから少し待っていてください。」

「あっ、手伝います。」

そう言って台所に向かう小竜姫とジークの二人。
ベスパは後ろを向いて涙を拭き取っていた。


「それでヒャクメ、結果はどうだったんですか?」

皆でテーブルを囲み、お茶を一口飲んでから小竜姫が尋ねる。
口にしていた煎餅を飲み込み、ヒャクメが話し始める。

「結果から言うと、確かに横島さんの中にはルシオラさんの霊基構造が有り、それは横島さんの肉体や体液にも影響を及ぼしているのねー。もちろん影響を及ぼしている体液の中には、精液も含まれるのねー。」

「そうか。」

ポツリと横島が応える。

「でも、影響を及ぼしていると言っても横島さんの肉体や精神に悪い影響を及ぼすようなことは無いのねー。さすがルシオラさんよねー、愛する人の害にはなりたくないっていう想いなのかしらー。」

腕を組みうんうんと一人頷いているヒャクメ。

「ヒャクメ、一人で納得していないで続きを話して。」

小竜姫が促す。

「あっごめんなのねー、それで横島さんの現在最大の悩みとなっている精液の件だけど、「「「だけど!」」」、ちょちょっとそんなに焦らないで落ち着いてなのねー。「「「いいから早く!!」」」わかったのねー。
それで精液に関しては、横島さんの霊基構造、横島さんが親から授かった霊基構造、そして僅かだけどルシオラさんの霊基構造も含まれているのねー。でも、だからといって現在溜まっている精液に、ルシオラさんの霊基構造が特別多く含まれているとは考えられない。これが神界の専門家が出した結論なのねー。
これ以上は、横島さんの精液のサンプルを定期的に収集して長期に渡って分析するしかないのねー。」

「ひゃ、ヒャクメ! その定期的に収集するというのは何ですか!!」

真っ赤な顔をして小竜姫が怒鳴る。

「まあまあ落ち着いて小竜姫、相変わらずうぶなんだから。でも研究のためには必要なことなのねー。どうする横島さん? 何なら私が協力して『シャキン!』…しょ小竜姫、神剣を突きつけるのは止めてなのねー、ほんの冗談なんだから。」

ヒャクメの顔色が青くなる。

「ヒャクメ♪ 私、品のない冗談は嫌いです。今度やったら……」

「わっ分かったのねー」

横島はヒャクメから調査結果を聞き、真剣に考えていた。(そのため、『サンプル・定期的に収集・私が協力』の部分は聞いていなかった。)

突然横島がヒャクメの方を向き、

「ヒャクメ!」

「なっ、何なのねー」

驚くヒャクメ。

「訊きたいことがある。霊基構造の件は分かった、じゃああいつの、ルシオラの魂は何処にあるんだ? 教えてくれ!!」

真剣な表情のまま徐々にヒャクメに詰め寄る横島。
それに対し、狼狽えるばかりのヒャクメ。

「待って、流石に私でもルシオラさんの魂の在処までは分からないのねー。」

何とかそれだけを返す。

「そうか……。悪かったヒャクメ、そしてありがとう。」

一瞬残念そうな表情になったが、その後は笑顔をヒャクメに向ける。

「ほんの少しでもあいつとまた会って、子供として家族として幸せにしてやれる可能性が有ることが分かったんだ。今はそれで充分だよ。」


「それで義兄さんはこれからどうする気だい?」

ベスパが尋ねる。
その問いに横島はキッパリと、

「GSの仕事を続けながら、ここ(妙神山)で修行もする。大切な家族を守れるだけの力を身につける。後は………」

「後は何なんだい?」

聞こえなかった最後の部分を再び尋ねる。

「将来の嫁さんを捜す。」

一転して小さな声で応える横島。

「将来の嫁さん? まっ、まあ女好きな義兄さんのことだからねえー」

呆れるベスパ。

「女好きって、まあ否定はできないけどさ。俺を本当に好きになって、ルシオラが転生する可能性を話しても認めてくれるような、そんな優しくて暖かい女性を捜すさ……何年掛かっても。」

晴れやかな顔でそう言う横島。

「そうかい。まあ頑張りな義兄さん。」

「頑張るでしゅよ、ヨコシマ。」

励ます二人の義妹。

暖かな時が流れていた。


「あーいたいた。みなさーん、夕食の時間ですよー」

相変わらずエプロンを着けたままのジークが呼ぶ。

「おー、わかったー」

ジークにそう返事をしてから、二人の方を向き、

「行こうか二人とも。」

そう横島が声を掛ける。

「ああ、行こうか。」

「行くでちゅ。」

そう返事をして、三人は歩き出す。


「しっかし、そのヘッピリ腰は止めてくれないかい。」

呆れたようなベスパの声。

「しかたないんやー! 刺激がー! 摩擦がー!」

叫ぶ横島
三人が食堂にたどり着くまでは、まだ当分掛かりそうである。


おわり


『あとがき』
お久しぶりです、「小町の国から」です。
はたして何人の方々が覚えてくれていることでしょう?
「魂の在処は?」もこれでひとまず終了です。
4話ははっきり言って悩みました。
暗い話にならないようにギャグを入れようとしても、そのシーンがやたらチグハグになってしまうんです。
そのため、遅々として筆(?)が進まず、これほどまでに間が開いてしまいました。
もし、4話を待っていてくれた人がおられたのでしたら、本当にすみませんでした。
こんな私の作品にもレスを書いてくださる人がいて、うれしかったです。
ありがとうございました。

今度は、もっと明るく楽しい話に挑戦してみたいと思います。
それではまた次回作で! (いつになるかは分かりませんが…)


遅くなりましたが、レス返しです。


九尾さま

3話全てに感想を書いていただき、ありがとうございました。
もちろん『暴発』ネタも考えました。
ルシオラと楽しい一時(Hにあらず)を過ごす夢を見た後で目が覚め、
「あー久々にいい夢見たなー………なんじゃこりゃー!!」
みたいなやつです。
しかし、私の考える横島の心情描写と上手くマッチしてくれなかったので、見送りました。
それに横島が女性心理に鈍感なのは、SS書きのデフォということで。


武者丸さま

武者丸さまも3話全てに感想を書いていただき、ありがとうございました。
神魔族にも偏見の無い横島ですから、特にヒャクメにとっては格好のおもちゃなのかも。


かなりあさま

連続の感想ありがとうございます。
ベスパとパピリオの二人とは、やはり仲良くやってもらいたいなとの想いからこのようになっております。
あと、ヒャクメに関しては動かしやすいんですよね。
独特の口調のおかげで、会話が続いてもヒャクメの発言はすぐに分かりますから。


偽バルタンさま

偽バルタンさまも3話全てに感想を書いていただき、ありがとうございました。
作者の私がシリアスよりも、ほのぼの作品が好きなせいもありギャグに徹しきれませんでした。
やはり、ユルいでしょうか?
次は頑張ります。


△記事頭

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