『U』−誰も知らない、学校のいじめ体験

Uはあの時、 奇跡的に自分を中心にして纏まったクラスを思って、 同窓会を企画したのかもしれない。

・・・どちらにしても無茶だったな。 冷静になれば、お前などに誰も近寄らないよ。 あの日、 クラスの本当の姿を目の当たりにして、 最後の最後に 心底、傷ついたのは、

この「U」だったのだろう。

ここに中学の卒業文集がある。 Uの文章を読んでみると、

『クラスに恵まれてこの三年間、 勉強以外に悩んだ事が無ければ苦痛だったことも無い。 その代わりに心に残った事や友達関係でも、 今に至っても深い繋がりのある友達がいない。 考えてみると何故だろうと思う、あんなにも仲が良かったのに・・・』と書いてある。

Uのしてきた事を知っている俺には、 殺意さえ覚える文言があるが、 いじめの加害者など、所詮この程度のものだ。 いじめの被害者の事など、”屁とも思っていない”という事なのだろう。

ここで問題にしたいのは 結局Uは最後まで一人だったのだ。 同窓会は、この文章を書いた直後だったろうから、 もしかしたらあの時のクラスに 心の隙間を埋める「何か」を求め様としたのかもしれない。

俺は人数の全く集まらなかった、同窓会での 意外なほどのUの「落胆」を今解ったような気がする。

個人的にはUなど許せないし、どうとでも成れば良いだろうと思う。 そんなもの、Uが死のうが生きようが、どうでもいいし Uの人生は、死ぬほど酷い目にあって 自分が行った責任の、何億分の一でも取ってくれと思う。 これで面白おかしく人生を過ごしていたのなら、 復讐してやろうかと思いもするだろう。 俺はキレイ事を言いたくないし そんな事、このUのした事を前にすれば、たちまち消し飛ぶだろう。

ただ、俺は ここでUを責めるだけでは、 やはり「違う」と感じてしまうのだ。

これまで俺は親父との確執や、家庭内暴力の事を書いてきた。 そこで感じた事は、そこに向かわざるを得ない、 俺自身の「心の情動」を客観的に感じた事だった。 それを悔しい事に、このUにどうしても感じてしまうのだ。

もしも俺自身に、何の罪悪感を感じる行為もなく、 ただ、いじめられて不登校になり、ひきこもっていれば、 この場でUやY達を徹底的にこき下ろし、 何時の日にか復讐してやる事を、心の底で誓いを立て、 もしもそのチャンスにめぐり合えたのなら、 俺は躊躇う事無く、実行していた筈だ。

しかし、俺がそのどれもをしなかったのは 被害者と同時に加害者の痛さも知っているからかもしれない。 その観点から行けば 学校での教師からの締め付けは、 いじめを誘発させる起爆剤になった事は想像に堅くない。 これ程の教師達のおかしさを、教師にぶつける事が出来ず、 歪んだ心理の向かっていく先は、弱いほうへ向かっていくのは自然の道理だ。

俺がこの事を踏まえて、今出来る事は 糾弾に終始せず、実際に起きた事実を書き残し、 これまでの事を自分の中で決着を付ける事と、 当時の学校やいじめの現実を 読んでくれた人に少しでも伝えられれば、という想いだけだ。



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