この騒ぎのピーク時に、
竹内の授業中、人差し指と親指の間に輪ゴムを張り、
その間にノートの切れ端を小さく折り畳んで飛ばす、という遊びが流行り、
授業が行われている筈の教室内を、
紙の弾が引っ切り無しに飛び交うという状況になった事がある。
その間、竹内は一人黒板に向かい、 誰も聞いていない授業を淡々と進めている。 竹内がチョークを持ちながら、黙々と黒板に文字を書いていくのだが、 それを嘲笑うかのように、後ろから生徒によって放たれる紙の弾が、 次々と音をたてて黒板に当たり、跳ね返る。 その行為は何時しか、 竹内の後頭部に当たったら「当たり」というルールまで出来あがっていた。 見れば竹内の後頭部の髪に、紙の弾が数発めり込んでいる。
俺も”あの時”の復讐を込めて、数発飛ばした。 その内の一発が竹内の髪の間にめり込む。
・・・俺は憎んだよ。 あの時、助けもしなかった、この教師をね。