スサノオが起こした疾風が、直斗の制服の上着を跳ね上げた。
 吹きすさぶ風に目を細め、しかし瞑ることはせずに、つかの間露わになった制服の腰から尻、脚へと至るラインを目に焼き付ける。
 引き締まっているというよりは、一部を除き全体的に肉の薄い…まさに少年のような体つき。しかし僅かにくびれた腰や丸みを帯びた曲線を描く尻から、隠しきれない「女性」が滲み出ている。
 うむ……良い。相変わらず何もかも自分好みだ。
 内心で陽介を称え、彼のペルソナに疾風強化をWで残した自分の判断も間違っていなかったことを確信する。

 ……そんなことを考えていたからだろうか。
 暴風の余波に耐えきれず、飛ばされてきた直斗に気づかなかった。

 ドサッという衝撃で我にかえる。
 先ず黄泉比良坂の霧にけぶる空が見え、次に自分にのし掛かる形で倒れる直斗を感じる。

 そして、一瞬で全神経が右手に集中した。

 今自分は横に倒れ、胸元には直斗の頭がある。無意識でも腕の中の存在を守ろうとする意志はあったのか、体全体で直斗を包むような体勢だ。左手はその背に軽く添えられている。
 ――余った右手は絶妙なバランスで直斗の胸にあった。

 柔らかい。第一印象はそれである。
 分厚い制服越しにでもハッキリと感じ取れる、広げた掌にすっぽりと収まるこの心地よさは言霊使いの伝達力でもうまく言葉に出来ない。
 勿論、直斗の胸に触れるのはこれが初めてという訳ではない。こちとら勇気は豪傑だ、そこらの口ばかり達者な失恋男や図体ばかりデカいニワトリ頭と一緒にしてもらっては困る。
 しかし……
 承諾済みで触らせていただくおっぱいと事故で触っちゃうおっぱいは別腹ー!
 ではなかろうか。
 布越しの感触もまた…これはこれで趣があって良いものだ。
 と、ここまでの思考で約2秒。

「あ……あの…すいません、でしたっ」

 気付けば熟れた顔をした直斗が申し訳なさそうに立ち上がろうとするところだった。
 名残惜しさを感じつつ身を離すと、照れがあるのかすぐに直斗は仲間たちの方へ行ってしまう。
 どうやら先程の一撃で敵は一掃出来たようで、あたりには元の静けさが戻っていた。
 ふと右手を見る。つい今し方まで直斗の胸に触れていた掌だ。

 まだ余韻がある……! この感触を忘れないでおこう……。

「わるいわるい、ちっとかっ飛ばし過ぎたわ。 ……つか右手どうかしたのか? なんかガン見してっけど」

 常日頃から沈着冷静扱いされる己の鉄面皮は、こういう時にありがたい。
 気遣う陽介に対しなんでもないと応えて、落とした武器はあえて左手で拾い上げた。
 陽介は若干首をかしげつつ、

「そか? 怪我してねーならいいんだけど。……じゃ、行こうぜ」

 うん、と頷き、先を行く仲間たちの背中を追いながら密かに思う。

 この右手はしばらく洗わないでおこう。

  _  ∩
( ゜∀゜)彡 おっぱい!
 ⊂彡

お粗末





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