「うわあ、出てきたよ汚い汁が。なに? 男相手に興奮しちゃってんの?」
先端のくぼみを指の腹でいじりながらジョニィは笑った。 男の勃起した性器からは、手で与えられ続けた刺激による先走り液がとめどなく溢れ、自らの亀頭とジョニィの手を汚していく。 少し手を浮かすだけで先走りはドロリと尾を引き、手と性器の間に道を作る。男には意志とは無関係に先走りを吐き出すしかない。 ジョニィはその様子に嘲りを向けた。 「こうやって、大嫌いなジョッキー様に扱かれて、じゅるじゅる先走り出すのが好きなんだ?」 亀頭上部を指で挟むようにこすりあげ、もう片手で竿をしごきあげられると男はうめき、逃げようと腰を引かせた。けれど既に壁に背が当たっており、それ以上身を引くことはできない。 その引きつった表情を見てジョニィは露悪的に顔を歪める。 「弱くて卑怯で、更に童貞なんて最悪。カワイソウだから、そのうち一つでも、俺が何とかしてやるよ」 突然、同じくジョッキーである男が密室にジョニィを押し込んだのは、今からほんの数分前のことであった。 「俺は今度の試合にかけてるんだ! 今から撮られる恥ずかしい写真をばらまかれたくなかったら手を抜くことだな、ジョニィ・ジョースター」 上ずり震えた声で男は言い、ポケットからカメラを取り出した。 強く押されて転んだジョニィが面倒げに目を向ける。床に手をつき、倒れたままの姿勢になっているが、起き上がる様子はない。 「は、何ソレどーいうこと。恥ずかしい写真? が、何だって?」 「脅迫の定番だろ。俺は、今回のレースで何としてでも上位に入らないと、選手生命がヤバイんだよ。だから次のレースに出る一番ムカツク奴を、け落とすことにしたんだ」 確かに、男はどこかで見たことのある顔だった。だがどうやら大して優秀な選手ではないらしい。見るからに小者と言った風だし、ジョニィの記憶にも気のせいという程度にしか残っていない。 「で、俺が一番ムカツクヤツに選ばれましたって? それは結構だけどさあ、どんな写真撮る気だよ?」 「決まってるだろう。出回ったら、とてももう生きていけないようなやつだよ。男にぶち込まれてアンアン言ってるところを撮影してやる!」 「ふうん」 てっきり、こんなことを言えばジョニィが狼狽するだろうと考えていた男は、予想とは違う落ち着き払った様子に焦りを感じていた。 「なに。あんたは俺が、ろくに抵抗もせずあっさり突っ込まれた上、それだけでアンアン気持ちいいーとか言うと思ってんの? バカらしい」 グッと言葉に詰まる。男には状況に余裕がなかった。故に、考えつく作戦も余裕のないものになっていた。こう言えば動揺するはずだ、動揺している相手の抵抗など簡単に封じられるはずだ。その程度の、半ば衝動的な考えだ。 男が黙っているとジョニィは言葉を重ねてきた。 「図星つかれましたってかんじか。とりあえずカメラ置いたら? 震えてちゃ今にも落としちゃいそうじゃん?」 できる反論もなく、せめてもの腹いせに叫ぶ。 「うるせえな、いつもそういう実況みたいな喋り方しやがって! ムカつくんだよ!」 それだけ言い、その場にカメラを投げ捨てるとジョニィに襲いかかっていく。下位選手である彼にとってはカメラは高価なものであるのだが、この状況で素直に置けるはずがなかった。向かってくる男を見てジョニィが立ち上がる。 そう体格も変わらない二人だ。それに、余裕もなく飛びかかる男と、冷静に相手を見ているジョニィでは、ジョニィの方が有利であった。ほんの数度の組み討ちであっさり床に転がされる。 「いて……」 つぶやく男の腿あたりにジョニィが座り込み逃げられないようにする。この時点で、男は当初の目的など達成できないことを悟っていた。 「弱いのは選手としてだけじゃないんだ。情けねーな」 「く…」 馬鹿にする声にも反論はできない。ジョニィは体を動かさぬまま、視線だけを床に転がるカメラに向けた。数秒、考えるように首をひねる。 「てゆーか。仮に、俺の恥ずかしい写真が撮れたとして、ただの明らかな犯罪の写真じゃないの? そもそも、突っ込まれてる俺より、男相手に勃たせるアンタの方がよっぽど恥ずかしいよね?」 どうやら、考えながら思いつくままに話しているらしい。言っていることは全くの正論だが、諭すつもりでも、怒っているわけでもなさそうな様子だ。 「わ、分かった。その通りだよ。やめるから、どいてくれ」 方法のおかしさを指摘され、喧嘩を売って負け、更に体を押さえ込まれ。さすがに男からは、暴力をはたらく気が完全に失せていた。この後どうなるか分からない恐怖まである。この場は謝ってでも早く部屋を出たかった。 情けない男の頼みにジョニィは不機嫌そうな顔をした。突然妙な男に密室に押し込まれ妙なことを言われ、実行されそうになったのだ。更に不利になると見るや速攻で逃げの態勢に入っている。気分を害すのは当然だった。 しかし、どうしようかと逡巡してすぐ、口元を上げて男を見る。 「ぶち込まれてる恥ずかしい写真……か。そんな計画を立てるのが一体どれほどのものなのか、見てやるよ」 「な……」 ためらいもなく手がズボンの股間に伸ばされる。男は慌てて身をよじったが、上にのし掛かられていては抵抗に力が入らない。 必死な様子にニヤニヤとジョニィが笑う。悪辣な表情だった。 「俺の実況みたいな話し方がムカつくんだってね。存分に実況してやるから、せいぜいハズカシイ写真でも撮れるように頑張ったら?」 明らかな、計画を嘲る言葉。始めは男がジョニィを襲うつもりだったはずが、すっかり立場は逆転していた。 手が男のズボンに伸び、あっさりと下着ごと剥ぎ取られていく。性急なわりにズボンは引っかかることなく下ろされる。慣れた手つきだ。 男の萎えた性器が部屋の空気に晒される。 「へー? ふうん? これが、俺に突っ込もうとしたモノなんだ? 自信あるのかと思えばずいぶん粗末じゃないか」 ジョニィは今にも鼻で笑い出しそうだ。ズボンを下ろした手は、そのままためらうことなく性器へ直に伸びていく。輪を作るように握ると男が身をすくませた。 「ひい!」 何をされるか分からない。襲おうとした仕返しに、握りつぶされてしまうのではないか。余裕綽々のジョニィの姿に、男はそう思えてならなかった。だが、変に抵抗して機嫌を損ねてはどうなるか分かったものではない。これから男がどんな目に遭わされ、どれぐらいしてこの部屋を出ることができるか。その全てはジョニィに掛かっているのだ。 すくむ気配を感じても顔を上げもせず、ジョニィは今度はつまらなそうに息を吐く。 「なに考えたら、こんな情けないもので人を犯そうなんて思うんだよ」 「うっ……」 「ほら、見ろよ、お前のこれ。剥けてないんだ? それとも小さいから皮が余るの?」 容赦のない辛辣な言葉が男に向く。冷たい視線であまりに酷いことを言われ、男の心は砕けそうになった。 「お前さあ。顔はダメ、ジョッキーとしても三流、頭も悪くて、更にここはこんなんで、生きてる価値、あるの?」 言いながら性器を揉みしだいていく。こんな状況下の緩い刺激では勿論それは大きくなどならない。男は、何をされるか分からない恐怖と、心を抉る言葉にびくりと震えるばかりだ。 部屋にジョニィの声とわずかな衣擦れの音だけが響いていく。 「とりあえず、俺に変なことしようとした責任は、取ってもらうよ」 そう言うと無表情だったジョニィは、再び笑った。 おわり。 で、ここから冒頭まで時間が飛んだことになって、その後エロスに突入の予定でした。 どっかに 「何だよ。恥ずかしい姿を撮ってやるとか言ってアンタが恥ずかしい姿見せてるだけじゃん。なに男に扱かれてピー勃たせてんだよ」って台詞いれたかったな |