ソッドは、村からある程度はなれた雑木林で夜を明かした。

・・・よし!行こう! ぼくのことを
もっとよくわかってもらうんだ!
そう決意すると、ぼくは林から飛び立った。



「こんにちは!!」
ぼくはそうさけびながら、堂々と村の前に降り立った。
すると、また昨日と同じように かねがならされた。

カーンカーンカーン!!!
「ドラゴンがきたぞ!! みんな、かかれ!!!」
「うおおおおおおおっっっっ!!!!!」
体格のいい連中が、ソッドの周りを武器を持って取り囲む。

(だいじょうぶ、おちついて・・・おちついて・・・)
ぼくは・・・ソッドっていいます。 みなさんと
ともだちになりたくて、ここにきました。
どうか・・・よろし・・・

「かかれ〜〜〜〜!!!!」
ズシャッ!!ズバァッ!!!
連中は 各々の武器を力いっぱいに振り下ろし、ソッドに襲い掛かる。
「ガギャアアァァアァァァ!!!(ぎゃあ!イタイッ!!)」
ソッドは巨大な咆哮をあげる。当然ソッドのいうことは
人間の連中からすればただの鳴き声にしか聞こえていない。

「ギュアァァアァァ・・・!(や、やめて!どうして!?なに!?)」
「いいぞ効いてる!! 畳み掛けろ!!」
ザシュッ!!!グサァッ!!!
連中はソッドの体のあちこちに乗りあがり、武器を振るう。
だがドラゴンのソッドには、人間の武器などかすりキズ程度にしかならない。
「ガアアアァァ!!ゴアアァ!(やめて!!!イタイ!!!)」
ソッドは必死に叫ぶも、それは彼らにはただの咆哮にしか聞こえていない。

そのとき、一瞬なにか変な空気がそこに生まれた。
ソッドは一瞬冷静さを失って、そのあと訳が分からなくなって・・・
「グ・・・ガアアアァァァ!!!!!(ヤメロォォォ!!!!)」

ガシィッ!!!ガブウッ!!!
・・・・ゴクン!!!!
「ぐわ!? ギャアアァァァァ!!!!!!!」

・・・気がついたら、体にまとわりついた戦士を一人引き剥がし、飲み込んでいた。
「あ・・ああ、ウ、ウワアアァァ!!!!!」
戦士のひとりが、仲間が目の前でドラゴンに丸呑みにされたのを見て
恐怖のあまり大声をあげた。
「ビク!! ガギャアアァァ!!!」
ソッドはその悲鳴になにかスイッチを押されたようになり・・・!!

ガシィ!!!バクン!!! ゴクン!!!
ジュルンッ、ベロッ・・・・ゴクンッ!!!
自らの存在を脅かすものへの対抗心・・・なのか、なんなのか・・・。
ソッドは、連中を次々と捕まえ、飲み込んでいった。

「た、たすけてくれぇぇえぇ!!! ・・・ウワアアアアァァァッッ!!!」
ブンッ!!バクンッ・・・クチクチャ・・・ゴグンッ!!!
ソッドはもう自分を抑えられなくなっていた。
恐怖でへたりこんでいた高台の弓兵までもかぶりつき、
すこし嘗め回したあと、大きな音をたて、するどく飲み下した。

「も・・・もうだめだ!み、みんな食われちまった! ヒイィィイィ!!」
「ゴガアアアァァァ!!!」 ズシン!・・・ベロン、ベロン・・・。
「い・・・いやだ、たすけてくれ・・・たのむ・・・!!」 ・・・チュルン ゴクン!!
「ヒギャアァアァァァアアアァァアッッッ!!!!!」
逃げ出そうとした斧使いも、トスンと踏みつけてうごきを封じ
巨大な舌で嘗め回し・・・絡めとり、吸い込むように飲み込み その喉を膨らませた。 

一瞬の内に、ドラゴン討伐部隊を…ソッドはたいらげてしまった。
見事に一人残らず、ソッドのお腹の中に納まってしまった。
「ガルルルル・・・ハァ・・・ハァ・・・。」
荒い息を繰り返しながら、口からペッペと武器だけを吐き出し 大きく舌なめずりした。
まだ満たされないのか、ソッドは村の中へとずかずかと入ってゆく。

「ゴワアァアァァッッッ!!!!!」 ドシン!!!ドシン!!!
「ま、ママ? なにかくるよ!?」
「フグオオオオ・・・!!グルルル・・・・!!」
「に・・・にげなさい・・・!!」
ベロッ、シャブ! ゴクリッ!!!
「キャアアアアアァァァァ!!!!!」

「あ・・・ああ・・・。ママァ〜〜〜・・アァァアアアア!!!」
ドシン!!!ヂュルン ゴクリッ!!!!

「ギャアアァァァァァァッッッッ!!!!!!」
「たすけてええ〜〜〜!!!!!」
「エエエエ〜〜〜〜〜ンンッッッッ!!!!!!!!!」

パク・・・・・・ ゴクン・・・・・・
パクッ・・・・・・ ゴクン・・・・・・
パクンッ・・・・・・ ゴックンッ・・・・・・!!!

村は、暴れまわる竜の巨大な咆哮と 地震のような足音・・・
そして 住民たちの断末魔の悲鳴で満たされていた。
ソッドは なにかにとりつかたように・・・人々の家を強襲し、老若男女問わず
次々に捕らえ、飲み込んでゆく。 逃げる者も容赦なく追跡し、捕食した。
住民たちは、村に囲まれたバリケードによって・・・かえって逃走が難しく
逆に自らの首を絞めることと なってしまっていた・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・。

どのくらいの時間がたったのだろう。村は、完全に崩壊していた。
そこに残されていたのは、巨大なドラゴンが暴れまわった足跡、
木っ端微塵に切り裂かれた ツメ跡の残った廃墟・・・。
そして、大きくお腹を膨らませた 1匹の竜だけだった。
ここの村人は一人残らず、その竜・・・ソッドに丸呑みにされてしまったのだ。

ハア・・・・・・はあ・・・・・・
さいしょっから、分かってたんだ・・・。
誰もぼくを 分かってくれないんだって・・・。

はじめっからこうすればよかったんだ。
だれもぼくのきもちを 分かってくれないなら・・・それでもいい。
そのかわり・・・。 み〜んな、のみこんじゃう。

おとこのこも おんなのこも
 いぬさんも ねこさんも
うさぎさんも きつねさんも
・・・・・も ・・・・・も
みんな、み〜んな のみこんじゃう。

のみこめば みんなとず〜っといっしょ、さみしくない。
みんなまとめて おなかの中で あいしたげるからね。
そして、ぼくがこわくないってこと
ぼくがどれだけ さみしかったか・・・おしえてあげる。
みんな ず〜っといっしょ。ぼくのおなかの中。

きょうは・・・つかれたよ。
おやすみ、ぼくのあたらしい友達・・・・・・。
そういって、ソッドは荒れ果てた村の真ん中で おおきくゲップをして
よこになった。

目からでた一筋の雫が、月明かりに照りかえった。


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