「あなたが、私の橙を…許さないからね!」

と、勢いの良い声を向ける。が、向けられた当の本人は痛みと格闘をしているようなので、全く聞いていないようだった。
それでも藍先生はお怒りの様子で、体から憎しみのオーラが立ち上ってくる。そして、それとほぼ同時に、体が勢いよく膨れ上がっていく。9つの黄色い尻尾はそのままに、口が耳まで裂け、体中からは金色にも見えるフカフカな毛が、目つきも鋭くなっていき、服や帽子は無残にも破かれて裂かれ、5メートルほどの大きな九尾の狐の姿を現した。
それでやっと藍先生の存在に気付いたエルガ。何か嫌な予感が走ってくるが、気付いた時には既に遅し…。傍らでその風景を眺めているリヴェ―ヌ先生も、見ていないですよと言う態度を表すように顔を背けた。
何も出来ていない彼に素早く近づき、背後に回る。そして、

…ハグッ…

大きく開いた口でエルガの頭に齧り(かぶり)付いた。もちろんそれにも反応がやや遅れ、必死に出してもらおうと体をバタバタと動かしてみる。が、全く意味を成していなかった。藍先生(狐)は物凄い速さでエルガを咥えこみ、呑み込んでいく。そして、完全に呑み込んでしまった。
呑み込まれたエルガの分だけお腹が膨れるのを見るや、器用にも片方の前足でその膨らみをポンポンと叩いて見せた。
一方胃の中では、既に胃壁の攻撃に追われているエルガの姿があった。胃の中はリヴェーヌ先生の時よりも狭く、胃の粘液に曝され(さらされ)ながら揉み下されて行っていた。胃液が出てこないのは、消化する気がないのか、はたまたこのまま胃壁で攻めていくためだろうか、そこら辺りは分からなかった。
激しく体を翻弄される中、また徐々に疲労感に襲われ、目の前が真っ暗になった…。

※   ※   ※

…そして今日と言う一日も終わり、フラフラと帰宅をした。
あの後、授業が授業全てが終わるまで藍先生のお腹の中に監禁されていて、放課後には無事に出してもらえた。彼の入っているアメフト部には、「体調が悪いから休む…」と連絡を入れて、覚束ない(おぼつかない)足取りで帰ったのだ。
もうこれ以上立ってはいられない。彼は自宅の自分の部屋へと戻ると、そのまま敷きっぱなしの布団にダイビング。そのまま死んだように寝てしまった。

…これ以上は起こさないようにしましょう…。

 

 6 / 7 / あとがき

 

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