授業後の五分休憩を挟み、二時間目の授業が始まる。
えっと…確か国語だったかな。と思いつつノートだけは出しておく。
新学期早々で授業は去年とは変わり、まだ時間割を覚えていないのだろうか。他のクラスメイトも掲示板に掲載されている時間割を見ている者もいた。

ガラガラガラ…

「うぃ〜す…」

ガクッ…と、某エンターテイメント舞台劇のように倒れてしまいそうなやる気のない声が、扉の音と共に響く。
その声の持ち主…獣のような毛並みを持ち、頭には狐のような大きな耳をダラリと垂らしていた。獣のような青い毛並みはあっても、その容姿からは竜のような、はたまた人間のような姿も浮かび上がってくる。
言葉にしたら言いにくいだろうが、ここは「獣竜人」と解釈をしておこう。
その姿が教室に入ってくると同時に、席から離れていた生徒は一斉に自分の席へ着いた。

「あ〜、国語担当のフォールだ。まぁ去年と一緒だけどね…まぁ宜しく」

滅茶苦茶やる気のない先生である。一体どうしたらそんな脱力感が出てくるんだ?と思わせる位であった。そんな先生も早速授業を始めようと準備にかかる。が…

「あ…プリントが―――」

またかよ…もう職員室まで行くの勘弁ですぜ…以外としんどいし…。
心の底から参ったように肩をガクッと落としたエルガ。だが…。

「あ、あったあった。ラッキー」

その台詞が彼を支えた。そしてフォール先生の志向も少しではあるが、上へと押し上げた。
それから改めて授業が始まる。国語の授業は大概が文章の朗読と解読で終わる。指名されなかった間合い、大抵何もしなくてもいいので非常に楽である。

「じゃぁ今日から教科書五十六ページの『蜘蛛の糸』やるぞー。と言う事で早速だが…おい、エルガ」

…また俺ですかい…

「あぁ。んじゃぁ、最初から読んでくれ」

今日はやけに目立っているような気がしなくもない。と言うより、彼はまだ教科書すら開いていないのだから、急に指名されたので焦る。やっと指定されたページを開く頃には、既に2・3分も掛ってしまった。
そして立ち上がり、少々焦った表情で皆に聞こえる声で読み始める。

「えっと……『蜘蛛の糸』…芥○龍○すk―――」
「あ!」

タイトルと作者名を言い終わった時に、ちょうどフォール先生が廊下の方を向いて大きな声を上げた。その視線の先には、先ほど授業を受けたクラウン先生が通り掛っていた。

「ちょっと待っててね!」

そう告げると、先ほどのエルガに負けないような速さでクラウン先生のところまで行った。それから、フォール先生が一方的に話しかけているようであった。
相変わらずだな…と言う表情で顔を見合わせるクラスメイト。教科書を持ったままその場に立ちつくすエルガ。もうこの学校は何でもありだった。先ほどにも言ったように、この学校では常識に囚われてはいけません。
数分後、フォール先生が戻ってきた。その顔は何故か泣いていた。

「…うぅ…クラウン先生に授業頼もうかと思ってたら、一時間目にやったし、自分でやりなさいって…」

ダメだこの先生、やる気ない…。
結局、この授業は先生のやる気の問題となり、教科書の文章を丸ごと朗読するだけで終わってしまった。
…なんだか、こちらもやる気が無くなってくるような気がした。

 

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