捕食学校 第1話 新学期・入学編
 
 
 

 
「春眠不覚暁」と言う言葉があるように、朝から眠気を誘うような日光がさんさんと地面を照らしている中、少しばかり騒がしい雰囲気に包まれた大きな建物に向かって、元気いっぱいに歩いていく人間の少女が見えた。
年は16・7歳くらいだろうか、若々しくも凛とした顔つきに、黒色のワンピースのような服に身を包み水色の鞄を肩にかけている。腰には赤と白で彩られた小さな球が幾つか提げられていた。

「さて、今日から学校だ…頑張ろう!」

元気な、そしてどこか嬉しそうであり、周りに呼びかけるような声で言いつつ、いそいそと大きな建物へと入って行った。
そう、先ほど彼女が向かっていた建物とは、「学校」と呼ばれる物で、今日から新学期と言う事だった。
 
校舎は、どこの学校にも見受けられる様な作りで、大きく分けて2つの棟が大きな渡り廊下で繋がれていて、外には広々としたグラウンドが、少し離れた場所には遠くから通えない人達の為の学寮が見えた。
…だが、一般のそれらとは半端なく大きさが違っていた…。皆さんが通っている学校の校舎より数倍も大きいのだ。特に、片方の棟は数十倍ほども大きいのであった。一般の人が見たら、まず怪しんでしまうだろう…。
 
さて、先ほどの少女がもう片方の小さい方の棟へ入り、上の階にある自分の教室である場所へと向かっていく。中は思ったより騒がしくなかったが、下の階からは声を交わしている様子が伺えた。
…ガラガラ…
自分の教室の前まで到着し、そっとドアを開けて中へ入っていく。まだ誰も来ていなかったようで、シンとした空気が漂っていた。

「…ちょっと早く来すぎちゃたかな…?」

そんなことを呟きながら、窓際の席に鞄を置きその席に腰を下ろし、窓から外の眺めを見た。少女が言うとおり、授業が始まるまではかなりの時間があった。
それから数分後、彼女しかいなかった教室の静寂を、ドアを開ける音が引き裂いた。
…ガラガラガラ…
その音に気が付き、ドアの方を向いた。
入って来たのは蒼の毛並みに黒縁の眼鏡をかけた狼の顔立ちに、人間に近い胴体をもった獣人と呼ばれる人であった。この学校には人間以外にも多くの種族の人が通い詰めているが、この狼獣人は普通と言うよりは少しズレていた。背後には死人の霊魂を連れていて、それをそっと触っているのだから…。
そんな狼獣人を見つつ、先に入っていた少女が明るめに声を掛ける。

「おはよう、クルツさん!」
「あ、アイゼンさん…おはようございます」

アイゼンと呼ばれた少女の声に視線を向け、クルツと呼ばれた狼獣人は微笑みつつ返し、クルツはアイゼンの隣の席に鞄を降ろして席に着いた。恐らく2人は同級生なのだろう。
「アイゼンさんは今日も早いですね。今年も皆勤賞狙うんですか?」

「いえ、たまたま早く起きちゃったので、そのまま来ちゃいました」
そんなどこにでもあるような呑気な会話をしつつまた数分を過ごしていた。…が…。

…ベンベン…

窓際の方から窓だ叩かれる鈍い音がした。それに気づいたクルツは視線をそっと窓に向けて、一瞬固まった。それに釣られるようにアイゼンも振り向いて、唖然とした表情になった。
窓には、どこかの民族衣装を思わせるような服を纏い、整っていないボサボさの髪を小さな髪留めで留めていた。新緑の艶やかな鱗をもち、蜥蜴(トカゲ)を連想させるような顔をもった人がいた。竜人、と言った方が分かりやすいだろう。
その竜人は透き通った透明な窓をカラカラと開けて、2人のいる教室へと入って行った。

「おはよう!2人とも!」何も無かったように元気に声を掛ける。
「ディオンさん…そろそろ玄関から入るようにしましょうよ…」と、半分呆れたようにクルツが口にした。アイゼンは、彼の隣でディオンと呼ばれる竜人を見て苦笑いに似た顔を見せていた。

それから数秒も経たないうちにドアが勢いよく開き、大勢の人達が教室に入っていくのが見られた。
クルツと同じような、白い毛並みを持った獣人…マスコットのような小さな体で、フサフサナ体毛を持った竜…牧師か聖剣士か、そんな中途半端な服装に、一般女性が見たら誰でも付いて行きそうな顔立ちの人間…など、多くの人が見受けられた。
皆それぞれ顔を合わせる度に、「お久しぶり」だの「元気してたか?」など、在り来たりな言葉を交わしていた。
このクラスの生徒たちだろう。個性のある人達ばかりで、一般の学校にはない、面白く楽しそうな空気が充満し始めた。

 

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