俺の下半身を包んでいた舌の枷……というには柔らかく、
まるで空気を半分入れたエアマットを何重にも巻きつけたような感触のそれは、
それでも確実に俺の自由を奪っていたが、
ねちょり、ねちょりという音を立てながら
徐々にそのとぐろを解いていくのが分かった。

舌が離れて行く時にすら、粘膜や唾液との摩擦で
俺の身体はビクビクと跳ね上がる。
そうして、そのまま舌が本来ある場所に戻っていくが早いか、
俺の股間をべっとりとしたものが包み込むのを感じた。

「……〜!!」

トドメのようなその感触に声にならない嬌声をあげてしまう。
竜という生き物ははこうやって獲物の心を捕らえ、食ってしまうのだろう。
俺は肩で息をしながら、竜の巨大な舌の中央で舌を抱えるような格好。
そのまま舌の先が足の間を押すように、徐々に俺をその体内へと案内する。

ぬめぬめ、今までのいつよりも強烈に舌の表面が皮膚を刺激する。

べっとり、今までのいつよりも強い力で舌を押し付けられている。

ネバネバ、今までのいつよりもたっぷりの唾液が身体にまとわりついている。

俺は熱い竜の息に包まれたまま、
これからひとつになっていくその感覚に安心感すら覚え、完全に身を任せる。
身体は自重で舌にめり込み、ながく、ゆっくりと舐められているかのようで、
それは時の流れを忘れてしまうほど、恍惚とした時間だった。

やがて舌が上に持ち上がる感覚が伝わってくる。
身体は背中側以外が全て舌にめり込んで、息も出来ない。
全身を包む、熱い竜の体温。

舌が膨らんで圧迫されたと思うと、全身が粘膜にまとわりつかれているのに気付く。
既に俺を包んでいた舌はなく、代わりにあるのはどこまでも柔らかい、ねばついた粘膜。
身体にぴったりと密着する喉の肉は、ぬめぬめと蠢き、さらに俺の全身を愛撫する。
ここまで快楽を与えられ続けた身体は痺れ、ほとんど動けない。

竜の食道は爬虫類のそれのように、獲物の大きさに合わせてよく伸展する。
獲物を飲み込んだ竜の喉が膨らみ、段々と下がっていくのを、俺はよく目撃した。
その膨らみの中身が自分になってしまうなんて、その時は想像もしていなかった。
とはいっても、これだけ巨大な竜であれば、喉はほとんど膨らんでもいないだろうが。

そんなことを考えているうちに、やがて粘膜が広がっていたことに気付く。
とはいえ、人一人ようやく身動きが取れるぐらいの狭い空間。
暗闇の中、竜の体内の熱気と粘液に包まれる。

ここが、胃袋……
ぐちょり、ぐちょぐちょ。絶え間なく聞こえてくる粘ついた音。
粘膜がゆるくしぼんだ風船のように縮んでいるためか、
身体がほとんど埋まってしまうほどに柔らかな感触。
息苦しさはほとんどなかったが、竜の体内の匂いがすさまじく濃い。

身体中をねっとりした粘膜が包んでいて、竜の鼓動が直接伝わってくる。
呼吸をするように蠢く胃壁が、張り付ついては離れ、張り付いては離れ。
俺の五感全てが、巨竜のものになる。

「わたしのお腹の中、気持ちいいでしょう……?」

すべてを征服されてしまった俺は、返す言葉も無かった。
ふと、そばに俺以外のものがあるのを見つけた。
粘液の塊に見えたそれは、手にとって見ると、
ぬるぬるねばねばと指に絡みついた。

布……?多分、先に呑まれた女戦士の衣服の一部。
繊維がほぐされ、ぼろぼろの端切れになってしまっているそれは、
手で触るだけで容易に崩れる。

下腹部が熱くなり、濃い唾液が口の中に溢れてくるのを感じる。
自分の末路をまざまざと見せるそれを見てなお、
俺の心は食されてしまうことへの劣情に溢れていた。

 

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