「うう、だ、誰もいないよね……?」

不気味な静けさに包まれた夜の森の中、
一匹のポケモン……ゼニガメがしきりに周囲を気にしながら歩いていた。
何故ならこの森は夜になると、不思議な事が起こると有名だったからである。

ゼニガメも出来ることならこの森に入りたくはなかったのだが、
今回はどうしようもない理由があった。

理由自体はたわいもない友達との約束で……
学校に綺麗な花壇を作ろうとあちこちから、生徒みんなで花を集めることになったのだが、
其処でこのゼニガメは見栄をはり、この森にしか生えない花を持ってくると皆の前で約束してしまったのである。

「こんな事なら、あんな約束するんじゃなかった……」

肩を落とし、明らかに恐怖に引きつった表情を浮かべていた。
こうなったのも自業自得なのだが、此処で引き返すには彼のプライドは高かった。

何とか此処まで来たんだと、意地で森の奥へと足を進め……

「よお おチビちゃん。 
 そんなに急いで何処に行こうってんだ?」
「ウギャアァァッ!!」

突然呼びかけられた声に、凄まじいゼニガメの悲鳴が森に木霊した。

慌てて振り返り周囲を見渡すが、真っ暗な森ではよく見えない。
だが、この場にゼニガメ以外にも確かに誰かがいた。

「だ、誰だ、出てこい!?」

ゼニガメもそれを感じとっており、ガタガタ震える足を手で押さえ込みながら、
相手を牽制するように声を張り上げる。

そして、その声に答えるように闇の中に二つの赤い瞳が浮かんだ。

「グヘヘヘ……中々良い声してるじゃないか」

虚勢を張るゼニガメをあざ笑い、その姿を闇の中から顕わにする。
その姿をみとめたゼニガメの口から恐怖の声が漏れた。

「ゲ……ゲンガー……」
「よう、言われたとおり姿を見せたぜ、これからどうするつもりだ?」

大きく裂けた口をニヤリと歪ませ、ゲンガーはゼニガメを見下ろす。

「な、何もしないよ! お前に構っている暇はないんだ!」

対するゼニガメは必死に声を張り上げる……のだが、
無意識だろうか足は一歩後ずさり、額にはタップリと冷や汗を浮かべていた。

明らかに自分に怯えているゼニガメの様子に、ゲンガーの口が一際大きく歪む。

「つれないな〜 ここまで来たんだ俺様と遊んでいけよ」
「だ、誰がお前なんか……あぐっ!」

反射的に声を張り上げたゼニガメの顔に、ゲンガーの大きく肉厚な舌が襲いかかる。
ベチャリと顔に張り付いた舌の感触にゼニガメが思わず呻いた。

「う…ぁ…やめ……あぅ……」
「グヘヘ 中々良い味してるなおチビちゃん」

舐める度にあがる弱々しい悲鳴を聞きながら、
ゲンガーは気分良く生々しい音を立てて、ゼニガメをなめ回していく。


ペロリ……ピチャ……ペチャペチャ……


「あぁぅ……いやっ……もう止めて……」

ゼニガメも必死に抵抗しているのだが、
押し付けられる自分の身の丈より、大きな舌に良いように弄ばれてしまう。
逃げようと後ろに身を引けば、
ゲンガーは一歩前に歩いて押しつぶすように舌を押し付ける。
身体を捩れば、舌が身体に巻き付き前を向かされてしまう。

すでにゼニガメの身体はゲンガーの唾液が余すとこなく絡みつき、
粘液質なそれが身体を伝い滴り落ちて、ゼニガメを中心に水たまりを作っている。

もはや、ゼニガメはゲンガーの良いオモチャであった。
其処へ新たな来訪者が姿を現す。

「おっ! ゲンガーなんか楽しそうなことやってるな〜」
「んぅ? おお、アーボか」

かけられた声にゲンガーがようやく舌をゼニガメから離した。

「あくぅ……」

力無くその場に座り込むゼニガメ。
早くこの場から逃げないといけない……そう思うのだが、
身体から伸びるゲンガーの粘液質の唾液が糸を引き、満足に身体も動かせない。

「で? 今回は誰を虐めてるんだ?」
「ああ 今さっき小生意気そうなガキを見つけたもんだから、つい遊んじまったぜ」

ニヤニヤと笑みを浮かべ答えるゲンガーの視線がゼニガメに戻る。
つられてアーボの目もゼニガメに移り……

「うぐ……」

四つの目で見つめられゼニガメが怯む。
その姿は、イジメッ子の二人には、いかにも虐めてくださいと言わんばかりの姿だった。

ゲンガーとアーボの口元が怪しく歪む。

「なぁ、アーボ……お前腹減ってないか?」
「ん? ああ……そう言えばお腹が減ったような気がしてきたな〜」
「ヒグッ……あっ…ああ」

余りにも態とらしい二人の会話を聞き、ゼニガメの表情が引きつる。

「ああっ……いやぁぁぁ!!!」

もう、約束もプライドも関係なかった。
逃げろ、この場から速く逃げろと本能が訴えかけ、ゼニガメは逃げ出す。

……逃げだそうとした。

「あっ……あれ?」

走り出した足がピクリとも動かなくなり、
戸惑うようにゼニガメは自分の両足を見つめる。

「無理だぜ、俺からは逃げられね〜よ」
「おお〜 ゲンガーのそれ久々に見るな〜」
「ひ、ひぃっ! く、来るな!」

後ろを振り返り、ゆっくりと近づいてくる二人を見つめ、
ゼニガメは叫びながら必死に足に力を入れるが……動かない。

焦りがさらなる焦りをうみ……ついにゼニガメは気が付くことがなかった。
自分を見つめるゲンガーの目……真っ赤に光る目から発せられる力、
『黒い眼差し』が自分を縛っているのだと。

追いつく二人、まずはゲンガーがゼニガメを背後から抱き上げた。
途端にゼニガメの身体に自由が戻る。

「うわぁぁ!! は、放せ〜!!」
「グヘヘ、何だ、まだ生きが良いじゃないか」
「……涎が零れて止まらねぇ、本当に美味しそうな奴だな」

腕の中で必死に藻掻き逃げ出そうとするゼニガメを押さえつけるゲンガー。
その二人の前で、アーボが涎を零しながら大きく口を開いていく。

「うわぁ……あ……いや……」

いつの間にかゼニガメの目には涙が浮かび、掠れる視界の中……
何故か、アーボの口の中が鮮明に見えていた。

真っ赤な肉の穴……真っ白な牙が止め処なく溢れる唾液で鈍く光り、
長く伸びてきた先の割れた舌が、ゼニガメの甲羅を舐める。
そのまま、舌は顔に絡みつき……肉の壁にゼニガメの顔は包まれた。

「ングッ!!」
「おうっと……思ったより力があるな……アーボ早く喰っちまえ」
「ムグムグ……そう…急かすなよ……」

口の中でも必死に抵抗するゼニガメに苦戦しつつも、
アーボは何度も顎を動かし、全身をゆっくりと引きずり込んでいく。
みるみる間にアーボの喉が大きく膨らみ、形の変わっていく胴体を見ていて、
ゲンガーが思わず声を漏らした。。

「しかし、いつ見てもすげぇ〜な、お前の身体は」
「ング……お、おい、あんまり触るなよ……ンッ……ゴクリ!」

アーボの喉が一際大きく蠢き、ついにゼニガメを呑み込んでしまった。

「……グエップ! ふぅ……すげぇ美味しかった」
「グヘヘ、そりゃ良かったな」

笑う二人の視線の先では、アーボの膨れあがったお腹が蠢いていた。
中では必死にゼニガメが抵抗しているのだろう。
だが、そんな抵抗が気持ちいいのか、アーボが悶えるように身をくねらせている。

「おおぅ……ホント生きの良い奴だな、胃の中で踊ってるぜ」
「ゲヘヘ、まぁ、その生きの良さの御陰で中々楽しませて貰ったな」

そして、二人は目を合わせると、同時に声高らかに笑ったのであった。
笑い声は広い森の中に木霊し響き渡る。


そして、アーボの胃の中へも……


(……僕……このまま、此奴に消化されちゃうのかな?)

妙に冷めた思考でゼニガメはそう思っていた。
柔らかな胃壁に全身を包み込まれ……
否応がなしに此処が胃の中だと感じてしまうせいなのかも知れない。

それに意外にもゼニガメは、この胃の中が気持ちいいと感じていた。
いや、最初はパニックを起こすほど不快感で、大暴れしたのだが……
胃の中は暖かく、その暖かさが罠であった。

ゆっくりとゼニガメの思考力と体力、気力を削いでいく。
襲いかかる強い眠気。

残された理性が寝るなと警告するのだが、ゼニガメの目は今にも閉じられそうに震えている。

「うぅ……眠い……」

小さく呟いた声は、ゴボゴボと胃の中を満たしている体液を泡立たさせる。
水ポケモンである彼はこの状態でも、まだ息が出来たが……

「ひっ……ゴボッ! ゲホッ……グフッ!」

大きく開いた口の中に、アーボの体液が流れ込みゼニガメは激しく咳き込んだ。
ヌルヌルとした体液が口中に充満し、一気に眠気が吹き飛ぶ。
胸の内から込み上げる不快感に、身を屈め苦しそうに身を捩る。

その動きにあわせ周囲の胃壁は形を変え伸びていく。

胃壁を激しく刺激するゼニガメの動きは、
勿論アーボに伝わり、身悶えするほどの快感を与えることになっていた。

「おおっ まだ、暴れるか」
「クフフ……アーボ、そろそろ出してやれよ。
 これだけ遊べれば十分だろ?」
「おぅ? ゲンガーやっぱりそのつもりだったのか?」
「当たり前だ。 俺が好きなのはイタズラだからな」

ニヒルな笑みを浮かべながらゲンガーが口元で指を立てる。
それなりに付き合いの長い相手の反応に、アーボもニッと笑みを浮かべると、
長い身体を波打たせ、ゆっくりとゼニガメを吐き戻し始めた。

お腹の膨らみが呑み込んだときの逆回しのように、アーボの口へと上っていく。

「ぐぐっ……これ、ちょっとしんどいんだよ……グバァ!!」

少々苦労しながらも、アーボは地面に向けて大きく口を開き、
中から滑らすようにゼニガメを吐き戻した。

「あぐっ!」

頭から地面にぶつかるゼニガメ。
同時に一緒に吐き出されたアーボの体液が、周囲にぶちまけられ水たまりを作っていた。

「グヘヘ、じゃあな。 遊んでやるから、その内また来いよ」
「絶対だぞ? お前スッゴク美味しかったから、もう一度食べさせてくれよ?」
「くぅっ……だ、誰が!」

残された力でゼニガメは叫び後ろを振り向くと……
其処にはゲンガー達の姿は影も形もなかった。

「……あれ?」

気が付くと、あれだけ唾液や体液で濡れていた身体も乾いている。
まるであの二人に出会う前のような姿で。

「何か……化かされたような?」

立ち上がろうとすると、あれだけ疲れていたのが嘘のように体が動いた。
これでは本当に化かされているのと変わらない。

「うぅ……もう……帰る!」

思わずゼニガメは涙を零し、この森を後にした。
結局、花を見つけることも出来ず、散々な目に遭った彼は……
二度とこの森に近づくことは無かったという。



彼は知らない……彼がゲンガーに出会った場所から直ぐの所に、
綺麗に咲き乱れた花々が生えていたことに……

もしかしたらだが……あのゲンガー達は、
花たちが自分の身を守ろうとして、作り出した幻覚だったのかも知れない。

森の奥に咲いている綺麗な小さな花たちは、今日も風に揺れていた。


The end

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