ある日ある海の何処かにある小島で、
静かに眠っていた大きなポケモン……ルギアの目がゆっくりと開いていく。

「ん……ぅぅん……。 むぅ……ここは?」

まだ意識がハッキリとしていないのか?
先ほどまで見ていた夢の中の自分と一瞬、混同してルギアは周囲を見渡してしまった。
その内……次第に頭がハッキリとしてきたのか、
今いる場所がルギア自身が近頃……寝床としている小島だと気が付いた。

「そうか……あれは夢だったか……」

ルギアは少し夢の中の自分を思い返す。
今でこそ、こうして木の実などたくさん食べて、お腹を満たしているのだが……

昔は……いや今でも偶には、ああやって……
そこまで考えて、ルギアは思い直したように頭を振った。

どちらも……本当の自分の姿の一つ。
どちらの姿でいたいかは、また別の問題なのだが、
夢の中の自分のような感情が……

ルギア自身……
心の中に眠っていることは、事実なのだと分かっていた。

「ううん……ルギア様……むにゃ……」
「ん? ブイゼル……今日も来ていたのか。」

唐突に聞こえてきた声につられて、
ルギアは、聞こえてきた方を見ると……自分の首元で丸くなり眠っていて、
少し自分に寄り添うようにしているポケモンを見つけた。、
そのポケモンは、オレンジ色の毛並みを持っていて、
首周りに浮き袋を持っているイタチのようなポケモン……ブイゼルだった。

寝言でポツリとルギアの名前を呟いたブイゼルに、
優し笑みを浮かべながら……
ゆっくりと目を細めて、ルギアは頭をブイゼルの側へと近づける。

「寝言だったみたいだな……まだよく寝ているようだ。」

最近では、ルギアの憩いの場、
……寝床としているこの小島に、ブイゼルはよく訪れていた。

「ブイゼル……何故お前は、そんなに私を信じていられるのだ……
 あの時、お前を食べてしまった私を……」

そこでルギアは急に口を開き、舌を出すと……
舌の先を使い、一度……優しくブイゼルの背中をペロリと嘗めた。

「あ……ん……ルギア様……むにゃ、むにゃ……」

ルギアの舌に嘗められた感触で、
無意識のうちに少し身震いするブイゼルだったが……

思ったよりも鈍感なのか?
ルギアの側だと言うことで、安心しきっているのか?
その両方なのかは、分からないが……今もぐっすりと眠りこけていた。

その様子を見ていたルギアは口の中に舌を戻して、

「あの時と変わらず……美味しい味をしているなブイゼル。
 ……分かっているのか? 私がその気になれば、いつでもお前を……」

今度はブイゼルの真上から、ルギアが口を広げて迫り、
覆い被さったところで制止した。

……あと少し、ルギアが口を閉じたなら、
小さな体のブイゼルは、その口の中に全て咥え込まれてしまうだろう。
しばらく、ルギアは無言でそのままでいたが、
おもむろにスーッと頭を引くと……ブイゼルを口の檻からから解放した。

「あの姿の私を知っていて、それでもブイゼル……
 お前は私と一緒にいてくれる。」

自分の二つの姿を両方知っていて、それでも信じてくれる……
一緒にいてくれる者がいるのが、ルギアには心地よく感じていた。

そして、小さく誰にも聞こえない……
ルギア自身にも聞こえないほどの声で小さく、

『感謝する。』

そう、ルギアの自身の心を込めて呟き。
再び丸くなるルギア……

今度はブイゼルの体に顔を寄せて一緒に眠りについたのだった。


この2匹がこの先……どう一緒に生きていくのか……
そして、どんな出来事が待ちかまえているのかは分からない。

でも、この2匹はずっと一緒にいる事を止めないだろう。


The End


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