とても天気のいいある日…… 大きな森の中に走っている大きな湖に続く道を 楽しそうに歩いている影があった。 歩くたびに大きく見えてくる湖をまぶしそうな目をして見つめている。 懐かしさのあまり思わず、影の持ち主が口を開いた。 「久しぶりに来てみたけど……」 とても綺麗な声で言葉を紡ぐ……シャワーズだ。 森を抜けて湖が一望に出来るようになると…… シャワーズは懐かしそうに目を細めてながら改めて、 以前に訪れたままの姿を保っている湖を眺める。 「この湖は相変わらず綺麗なまま…… 」 湖の端まで来るとシャワーズは綺麗な水に口を付けて飲んでみた。 ほどよい冷たさの水がシャワーズの喉を潤していく。 それに……この湖の水はとても美味しくて…… 何度飲んでも飽きることのない楽しみをシャワーズに与えてくれた。 「ふふ、美味しい水♪」 シャワーズは少し頬を赤く染めて、とても嬉しそうに微笑んだ。 ……シャワーズは気づいていなかった。 湖の水面下……シャワーズの数倍はある大きな影がゆっくりと浮上してきていた。 バッシャァアアア!!! 「キャウゥ!!!」 水を飲んでいたシャワーズの目の前で、 大きな水柱が立ち起こりシャワーズを飲み込んだ。 可愛い声を上げてシャワーズが後ろに倒れ込む。 「ケホッ!ケホッ! もー……いったい何なの!?」 むせながら全身から水を滴らせて、シャワーズは一人で文句を言う。 そのシャワーズに…… 「おや、お久しぶりですね、シャワーズさん。」 「あっ! カイリューさんこんにちは。 んもぅ……ひどいですよ! いきなり水を浴びせるなんて!」 「すみません……。誰かと思ったので……その大丈夫ですか?」 ペコペコとシャワーズに頭を下げるカイリュー。 このカイリューは、ある物を守るために守り神としてこの湖に住み着いていた。 と言っても、普段のカイリューは湖を泳いだりしてのんびりと過ごしている。 シャワーズとは、そんなある日の内の一日に出会った大事な友人だった。 「あの〜シャワーズさん?」 「……あはは、意地悪してごめんなさい、カイリューさん。……ふ……ふふふ。」 「しゃ、シャワーズさん、ひどいですよ。 ……ははは!」 ペロッ!と小さく舌を出して謝るシャワーズに 不意をつかれたのか情けない顔をするカイリュー…… その内……2匹ともなんかお互いが可笑しくて、プッと吹きだして笑い始めた。 「ははは! シャワーズさん。 今日はどういったご用件でこちらへ?」 「ふふふ、遊びに来ただけですよ♪」 「遊びに、そうですか。シャワーズさんって本当にこの湖が好きなんですね」 本当に楽しそうに話し合うシャワーズとカイリューでした。 2匹がしばらく話し込んでいると…… キュルルル! 小さくてかわいらしい音がシャワーズのお腹の中から聞こえてきた。 ボッと顔を真っ赤に染めてうつむいてしまうシャワーズ。 カイリューは照れているシャワーズに優しく…… 「シャワーズさん……お腹空いているのですか?」 「……はい、少し……です。」 本当に恥ずかしそうにしているシャワーズを笑うわけでもなく…… 暖かな自然の笑み……カイリューはそれを浮かべている。 おもむろにカイリューが翼を動かすとその巨体が軽く浮き上がった。 「私は今から木の実を取ってくるので、 シャワーズさんは、そこら辺で寛いでいてください。」 「あっ! ……カイリューさん。」 シャワーズは、今にも飛んでいってしまいそうだったカイリューを呼び止めると…… 「……ありがとうございます。」 「いえ、……楽しみにしてくださいね。美味しいのたくさん取ってきますから」 「あ、はーぃ♪」 笑顔でそう言った後、カイリューは森へと木の実を取りに飛びたっていく。 その後ろ姿をシャワーズは前足を振って見送った。 カイリューが見えなくなると…… シャワーズはなんだかつまらなさそうにその場に寝ころんだ。 「ふぅ、行っちゃった……退屈だな〜」 ポカポカと暖かい日差しが眠気の誘い、負けそうになる…… 尻尾をフリフリ動かしつつ……ジーと湖の水面の動きを見つめるシャワーズ。 「綺麗ね……ちょっとお散歩でもしてみようかしら……」 暇をもてあましていたシャワーズは、気晴らしもかねて、 テクテクと湖の畔を歩き出す……と少し離れたところでキラキラと光る物が見えた。 「……あら? あそこで光るものが……」 まるで、その光に誘われるかのようにシャワーズはフラフラと歩いていく…… 湖にかかっている橋を渡り、湖の中心の小島へ…… そこには、湖の外からでは見えないように細工されていて、 こぢんまりとした祭壇がたてられていた。 「この祭壇……不思議な感じがする…… あっ! 綺麗な宝石だぁ!」 その祭壇の台座に無造作に置かれている宝石があった。 何故、湖の外にいたはずのシャワーズは、この宝石を見ることが出来たのだろうか…… 宝石はシャワーズを誘うように怪しく輝く…… 少し惚けたような表情をしているシャワーズは、台座に書かれている文字に目を走らせる。 「台座に描いてある文字……ぅーん……よく読めないわ……」 かすれていたり、剥離していたり……まともに文字を読むことが出来なかった。 台座に書かれている文字が気にかかるもシャワーズは読むのを諦めた。 「これについて、あとでカイリューさんに聞いてみようかしら……」 それから、シャワーズはキョロキョロと周りを見渡して 誰もいないことを確認すると……興味本位で宝石に手を伸ばしていく。 その頃……カイリューは森の中で木の実を探していた。 「これくらい木の実があればシャワーズさん。きっと喜んでくれるだろうな〜」 両手に抱えるたくさんの木の実を見てカイリューは、 喜びながらシャワーズが美味しそうに木の実を食べているのを想像する。 それだけで、彼はとても幸せそうだった。 「さて、シャワーズさん、暇そうに待ってるだろうから急いで帰らないと!」 翼を広げて一気に空に舞い上がる。 たまに風で抱えている木の実がポロポロ落ちたり、 落ちそうになったりしているが、カイリューは出来るだけ慎重に…… そして、出来るだけ急いで空を飛んでいく。 おかげで、直ぐに湖の上空までたどり着いた。 「よし、湖に着いた……あれ? シャワーズさんどこに行ったんだろ?」 十数分前にいたはずのシャワーズが、いなくなっているのに気が付いたカイリュー。 空を飛んだまま、湖をキョロキョロと見渡してシャワーズを探すが見つからない…… ふと……カイリューは胸騒ぎがした。 「シャワーズさん……もしかして封印の祭壇へ……?」 あの場所は不思議とその存在が気づかれにくい結界みたいな物が張られていて、 普通はまず気づくはずがない場所だった…… だけど、カイリューはどうしても気にかかり小島に向かった。 「さてと....ッッ!!あれは!!」 そして、カイリューが小島に着いたまさにその時…… シャワーズの手が宝石に触れる瞬間だった。 「きれい……」 「シャワーズさん!! それに触ってはだめた!!」 シャワーズの手がゆっくりと宝石に向かって伸びていく…… 空中からそれを見たカイリューは反射的に大きな声で叫ぶ! そのカイリューの大声でシャワーズが 『ぇ?』と振り向く……その瞬間にサッと手が宝石に触れてしまった。 ピシッ! バシャァァァッ!! 突然、石にひびが入り、中から黒い煙が吹き出してくる。 「ひゃっ…何……?」 「間に合わなかったか!!くそぉ!!」 その煙は近くでうろたえるシャワーズを包み込み始める 。 カイリューはシャワーズを助けるために、一瞬の迷いもなく覚悟を決めて急降下をかけた。 黒い煙がシャワーズの全身を包み込もうとした瞬間…… 「だめだ!!シャワーズさん逃げてください!!」 ドガァッ! 全力で体当たりをしてシャワーズを遠くに突き飛ばす。 その衝撃に『きゃあああぁぁっ!』と悲鳴を上げながら黒い煙の中から飛び出し もんどり打って地面に激突してドサァァァァッ!土煙が上がる。 そして、入れ替わるように黒い煙はシャワーズではなくカイリューを包み込み始めた。 「いたた…… か、カイリューさんっ……!?」 「ぐう゛ぅ…は、はや、く逃げ…るん…だ…」 傷の痛みに耐えながらシャワーズは起きあがってカイリューを見て……悲鳴を上げた! 黒い煙が徐々にその巨体を覆っていくにつれて……カイリューの意識が薄れていく。 うつろい始めたその目でシャワーズを見つけると、手を伸ばし…… 消え入りそうな声で……逃げろとうながした。 ……そこで、カイリューの意識は途絶えて、 地面に倒れ込み、黒い煙は完全にその巨体を包み込んでしまった。 それを……目の前で倒れていくカイリューをシャワーズは、 よく分からないとばかりに惚けた目で見ていた。 倒れ、黒煙に取り込まれたカイリューに一歩、一歩…… ゆっくりと近づいていき……シャワーズの止まっていた時間が動き出した。 「ぇ……いやっ 大丈夫ですかっ!?」 カイリューを助けようとシャワーズが駆け寄ろうとするが…… キィイイイン! カイリューの周囲に何か壁があるかのように鋭い衝撃音と共にシャワーズは跳ね飛ばされた。 「痛っ、あうっ!!! ……何これ?」 シャワーズが見えない壁に手こずっている内に、カイリューが黒い煙に包まれた後、 煙は湖の上にまでその体積を増やしていき、綺麗だった湖がどんどんと紫色に変色していく。 「ぇ…湖が…何…? ど、どういうこと……カイリューさんっ!!?」 しばらくすると黒い煙がカイリューに吸い込まれるように薄れていく。 いや、皮膚に自分の意志を持って入り込むように消えていく。 それをシャワーズは、何も出来ずに見ていることしかできなかった。 「……か、カイリュー……さん……?」 カイリューの名前を呼ぶシャワーズの心の中…… 不安? 動揺? 困惑? 様々な感情がわき上がる。 その間にも容赦なく時間は過ぎていく…… 包み込んでいた黒い煙が全て、 カイリューの体の中に入り込むと倒れているカイリューの姿がでてきた。 「カイリューさんっ! 大丈夫ですかっ!?」 再びカイリューの姿を見たシャワーズは心配いそうな叫びをあげる。 何も応答がない、返事が返ってこない…… その様子にシャワーズの感情は高まり、目の瞳孔が小さくなっていく。 次の瞬間、冷静さを失なったかのようにシャワーズは、 バリアの事も忘れて倒れているカイリューの元へ駆け寄ろうとした。 「ぅっ……何!?」 数歩、倒れているカイリューに駆け寄った瞬間にシャワーズは、 妙な感覚にとらわれてスピードを落とす。 近寄れば、近寄るほど増していく…… チりチりとした何か嫌な気配を肌が感じて、シャワーズの本能が止まれと命じていた。 一瞬の躊躇の後、立ち止まり足下に小さな土煙がざざっと舞い上がる。 その少し後……不意にカイリューが無言で立ち上がった。 「フフフフフフッ…………」 目をつむったまま小さな声笑い始め、ゆっくりと体の色が黒く変色していく。 それだけではない、体の大きさが明らかに大きくなっていった。 カイリューの変化に戸惑うシャワーズ…… 「ぇ……ど、どうしちゃったのですか……?カイリューさん……?」 カイリューを心配する心が、近づくなという本能を上まり…… 一歩、一歩とゆっくりとだが近寄っていく。 「 やっと…やっと長い眠りから開放された!!」 「何を……何を言っているの……?」 掠れるような声で話しかけるシャワーズ。 カイリューはそれに気づかず黙殺して…… 「ふははははは!!あのカイリュー自ら取り付かれるとはな、いい気味だ。」 「ぇ……ぇ……?」 狂ったように高笑いをしながら、カイリューは自分の体をバシバシと叩く。 それでも、わき上がる喜びが収まらないのか、笑いを堪えるようにお腹を抱える。 まるで……いや、明らかに別人と化したカイリューに、 シャワーズは恐れをなして震えだした。 「どうしたのよ……カイリューさん。 いったいどうしたって言うの……これじゃ、まるで別人じゃない…… お願い! 正気に戻ってカイリューさん!」 悲痛な叫び声を上げるシャワーズだが、その声は届かない、届いていない。 その存在すら気づかずにカイリューはグルッと周囲を見渡して、 「しかし、外の世界にでたのは何年ぶりだ。 この体で、久しぶり大暴れさせてもらおうではないか。」 「暴れ……? ダメよっ!」 あまりにも物騒なことを宣うカイリューを止めようと シャワーズは叫ぶが、やはりその言葉はカイリューには届かない。 「この忌々しい世界を破壊してやろうではなか!!」 禍々しい顔をしてそう宣言したカイリューだったが…… グウゥ…… デップリしたお腹から小さく腹が鳴る音が響くと カイリューは舌打ちをして、忌々しそうにお腹を見ながら呟く。 「しかし、出たばかりでこう空腹だと何もできんな……。」 (もしかしたらこの木の実食べれば…) 「あの……カイリューさん、 これ……」 ちょっと前にシャワーズはカイリューに 自分はこの木の実が大好きだと聞いたことがあった。 もしかしたら、この実を食べさせたら正気に戻るかも…… そう考えて木の実を咥えると急いでカイリューへ歩み寄る……が、 「ぉ!足元に結構木の実があるじゃね〜か。 っふん、こいつもたまには気がきくじゃね〜か。 」 シャワーズが木の実を渡すまでもなく、 足下に大量にばらまかれていた木の実を次々と食べ始めた。 「ぁ……それはっ……」 それを呆然と見つめるシャワーズ…… 咥えていた木の実がポロリと足下に転がる。 その間にも…… ばぐばぐもぐごむもぐ……と木の実をかみ砕く音を立てながらものすごい勢いで、 カイリュー自身がシャワーズのために持ってきた木の実を貪り食っていく。 盛大に食べかすをこぼし、ものの数分で……全部の木の実をたいらげた。 「ふぅ……ちっ!! こんな量じゃあ俺様の腹は満足しないぜ。 くそっ他に食いもんはねぇのか?!」 空腹で苛立っているのか、キョロキョロあたりを見回しつつ、 ところどころに生えている木をへし折りながら、橋を渡り小島を出て行くカイリュー。 その後をシャワーズも追っていく。 湖の畔に出てもあるのは木の実を付けない木々ばかりで、 カイリューが求めている食いでのある食べ物は何処にもなかった。 「ちっ!!森ばっかりじゃねぇ〜か。 こっちは腹が減ってんのによ!!くそっ!!」 八つ当たりとばかりに尻尾をブンッ!と一閃…… 尻尾が命中した木々はへし折れるのではなく、刃物で切られたかのように 数本まとめてズレ落ちた。 そんなカイリューの暴走ぶりを止めることが出来ず…… その直ぐそばでもどかしそうな表情をしているシャワーズがいた。 「カイリュー……さん……? どう…しちゃったの……? 「……ん? 今、声がしたような…」 初めてシャワーズの声に気が付いたカイリュー。 しかし、まだ何処にいるのか分からなかった。 ずっと上の方をキョロキョロと探しているカイリューに 向かってシャワーズはもう一度、話しかけた 「……あの……」 「まただ..。どこだ!?どこにいる!!」 直ぐ足下で話しかけているシャワーズに、まだ気が付かない。 それは……今のカイリューにとってシャワーズは、 普段の意識の隅にすら置いておく必要せいのない存在だという証拠だった。 つまり……カイリューはあれだけ仲の良かったシャワーズのことを…… 完全に忘れ去っていた。 感覚的にそれが分かってしまったシャワーズ…… その目が少し潤み始めていた。 「カイリューさん……なんで気づいてくれないのよ?」 その声は悲しみに震えていていた。 いったいどうしたらいいのか……そればかりを考えていたら いつの間にか、カイリューの足下に顔をすり寄せていた。 私に気づいて、思い出してと言わんばかりに…… そして、その思いが一つだけかなう。 「ん?なんだ?」 自分の足下がなにやら、くすぐったく感じたカイリューは、 スーと視線を動かして足下を見下ろすと…… そこには、一匹のシャワーズが自分のことを教えるかのように 身をすり寄せていた。 「ぉ!これこれは、うまそうなシャワーズじゃね〜か!! 肌も綺麗でつやつやしているシャワーズは、 カイリューにとって、久々に見るごちそうに思えた。 「自分から近寄って教えてくれるとはありがたいね〜」 見ているだけでも口の中が唾液で一杯になっていくカイリュー。 はやる気持ちそのままに、ガシッ!!とシャワーズを鷲掴みにして持ち上げる。 「きゃあああああっ!! 痛い! 放してカイリューさん!」 いきなり首筋を乱暴に鷲づかみされて、痛みと驚きにシャワーズは悲鳴をあげた。 カイリューは餌が何か騒いでいるなと取り合わず、 ゆっくりとシャワーズの全身を舐めるように見ていき……ジュルリと唾液をこぼした。 「ぷにぷにしててうまそうだな〜。じゃ早速、いただくか。」 ああぁあぁぁ〜と唾液が滴りおちる大きな口を開くと、 腕を動かしシャワーズを口へと運んでいく。 「い、いやっ やめてっ!!」 『食べられる!』 そう思った瞬間にシャワーズは、口から青白く光る光線を吐き出した。 違わずカイリューに命中してダメージを与えるが…… 「ぐわぁは〜!!くっそ!! よくもやりやがったな!!」 シャワーズの冷凍ビームが命中し、 凍てつく冷気に闇カイリューに鋭い痛みが襲いかかる。 それに頭がカッとなり怒りにまかせて、思いっきりシャワーズを地面に叩きつけた。 ドシャッ!! 「ぎゃあっ!! けほっけほっ…… 」 鈍い音共に地面に叩きつけられたシャワーズは、 衝撃と痛みでまともに呼吸ができず噎せ返り……そこへ、 「ふん! 思い知りやがれ!!」 怒り狂うカイリューの太い足がシャワーズに踏み下ろされた。 ズシィィィンッ! 「きゃぁあぁぁあああっ!!」 手加減なしの一撃に胴体の真ん中当たりを押しつぶされ、シャワーズは悲鳴をあげた。 「まだまだ、俺の味わった苦しみはこんなモノではないぞ!!」 足の裏で苦しんでいるシャワーズを見ても全く怒りが和らがず、 怒り心頭のカイリューはさらに足に力を込めて、 ズリッ グリュッ!と音を立てて足の裏でシャワーズの体を転がし始めた。 「きゅうっ…… ああっ!!」 ギュルッ ズリッ グリィッ! 「んぐぅっ! んーっ! んんんーーーっ!!」 (このままじゃ……私……でも、負けない! カイリューさんを正気に戻すんだから!!) 「んな!」 驚くカイリューの足下で、徐々にシャワーズが身を起こしていく。 あれだけ痛めつけた後なのにと一瞬、カイリューがひるんだその隙に! 「あああ!! 負けないんだから!!!」 「な、なにぃ!!馬鹿な!!」 あらんばかりの声をあげ、シャワーズは 力を振り絞り、カイリューの足を跳ね飛ばた。 バランスを崩し体勢を立て直そうとするカイリューの足下から 飛び跳ねるように抜け出し、勢い余って地面にぶつかりながらも 何とか逃げ出す事に成功した。 それでも、シャワーズが受けたダメージは大きかった。 「けほっ……けほっ…… うぐぅ……」 咳き込みながら痛みを堪えるシャワーズ。 それでも何とか立ち上がろうとするシャワーズを見つけると、 カイリューは忌々しげにもう一度、大きな足を大きく上げた。 「まだ動きやがるか!! もう一度、踏み潰してやる!!」 怒声をあげてシャワーズを踏みつぶそうと足を再度、踏み下ろした。 「くっ……はっ!」 痛む体で何とかその場をサッと飛び退いたシャワーズ。 ズシィィィンッ!! 一瞬、遅れてその場所にカイリューの大きな足が踏み下ろされた。 大きな足が地面にめり込み、大きな足跡をきざむ。 「ちっ!!かわしやがったか!!」 「どうして……っ!?」 あんなにいつも優しくしてくれていたカイリューが何故こんな事をするのか シャワーズには分からない。 ただ頭の中に『どうして?』という言葉ばかりが浮かぶ。 その隙をついて闇カイリューは腕を振り上げ拳に力を集中させる。 「だが!次はかわせまい!!」 「はうっ!?」 怒声で我に返って身構えたシャワーズに向かって、 カイリューが黒い光をまとった拳で殴りかかる。 シャワーズはその拳にむかってとっさにねらいを定めて…… 「はあぁ!! メガトンパンチ!!」 「水鉄砲っ!」 シャワーズの小さな口には不似合いなほど大きな水の柱をその口からバシャァッ!と吹き出す。 二つのワザがぶつかり合い相殺されると シャワーズはワザの勢いを利用して大きくカイリューとの間合いをあけていた。 カイリューは、自分の拳とシャワーズを交互に見て驚愕する。 「 何ぃっ!!俺様の技が相殺された?! 」 驚いているカイリューに向かって 懇願するかの様に再びシャワーズが問いかける。 「どうしたっていうの……?カイリューさん…… 」 「あぁん?そんなにこのカイリューのことが心配なのか?」 「この……? 貴方は一体……?」 「あぁん?俺様か?俺様はなぁこの憎たらしいカイリューに封印された悪竜の怨念さ!!」 「封印…っ?」 ニヤニヤしながら話すカイリューの……いや闇カイリューの言葉に、 シャワーズは少し前の記憶を呼び起こす。 変な石からあふれ出た真っ黒な煙からシャワーズをかばって、 カイリューが煙に取り込まれていく記憶を…… 呆然としたままシャワーズは弱々しく呟く。 「あのときカイリューさんを包んだ黒い煙の正体……が今のあなた……」 「そうさ、のりうつった黒い煙こそが俺様よ〜。 そして、現時点でこのカイリューの体は俺様の物になっわけだ」 ショック受けているシャワーズを実に楽しそうに、見物しながら闇カイリューは言い放った。 初めは『そんな』とばかりにボーと立ちつくすシャワーズ…… 次第に何かをため込むかのように唇を噛みしめたその顔が 憤りを感じたかのように赤く染まっていき……はき出す! 「……いやっ! カイリューさんから離れなさいっ!」 「はあぁ?やなこった!!俺様が封印された屈辱をこいつの体を使って思う存分晴らすのだ!! 」 シャワーズを小馬鹿にするように言い放ち、 あまりにも邪悪なことを言い放つ闇カイリュー…… その体から伝わって来る闇カイリューの力……それをひしひしと感じ取っているシャワーズ。 「ぐぅっ…… どうしよう…この闇を取り除かなければ……でも……」 (……私にできるの? カイリューさんを助けることが……) 自分に問いかけるシャワーズ。 その時、無粋にもそれを中断させる轟音が鳴り響いた。 グオォォォォォオ!!! 轟音の原因は闇カイリュウのお腹の音だった。 闇カイリューはしかめっ面をして、腹の虫が鳴り響くお腹を手で押さえる。 「しかし、開放され暴れようとしても、こうも腹が減っていては、やる気がでん!!」 「暴れられてメチャクチャにされるなら、そのまま休んでもらっていた方がマシです!」 あまりにも傲慢な事を言い放つ闇カイリューに向かって シャワーズも激情に任せて言葉を叩きつけた。 闇カイリューの額に青筋が浮かぶ。 「ナニイィ?!食い物の分際で!!冷凍ビームを俺様に当て、そんなことを言うのか!!」 「く……食い物……ですって!? 恥を知りなさいっ!!」 ズバァッ! 怒りが頂点に達したシャワーズは再び冷凍ビーム放った。 ねらい違わず闇カイリューに命中する。 「ぐはあぁ!!くっ!もう許さん!!お前を意地でも食ってやる!!」 「……っ!?」 血走ったカイリューの目を見てシャワーズは身構えるも その怒りの形相に体が動かせない、言葉が出てこない。 その間にも闇カイリューが口に光をため始め…… 「食らえ!!破壊光線!!」 「ぅっ、太いっ!」 闇のカイリューの口から、かなりの大きさの光線がシャワーズに向かって飛んでくる。 ズギャァァァッ! 「きゃあぁぁああああっ!」 何とか直撃は免れるが、爆風で吹っ飛で行くシャワーズ。 ドサァァァァァッ……と地面を削りながら停止する。 かすめて光線が命中した地面には大穴があいていて、もうもうと煙を噴き上げていた。 「ちっ!外したか。」 「っ……たた…… 」 倒れて満足に動くこともできずに呻いているシャワーズを横目に 闇カイリューは舌打ちをした。 そして、ゆっくりと自分の体を見つめて…… 「こいつの体を完全にのっとるのにも時間がかかるな。」 「やめ…て…、カイリューさん…を…返し…て…っ!」 「ふんっ!当ってもないのにもうそんなにぼろぼろなっちまって。 これ以上やると食い物が傷むな。 ボロボロになってもヨロヨロと立ち上がろうとするシャワーズを見て、 もう、うんざりだと言わんばかりに鼻で息をして見下す闇カイリュー。 「ぅっ……(バタッ) はぁ……はぁ……」 力尽きたかのように再び地面に倒れ伏すシャワーズ。 伏せた体勢で苦しがりながらも目だけはしっかりと闇カイリューに向けている。 「軽く次でトドメにするか〜。すうぅ....龍の息吹!!」 ゴォォォォッッ!! 「っ!? シャバァァァッ!! 「ぅきゃああぁあぁあっ!!」 龍の息吹をその身に受けたシャワーズの体は…… ピスピスと音をあげて煙が立ち上げて、ピクピクと痙攣を起こしていた。 龍のもの凄い吐息により、マヒしてしまったのだ。 「っふ。俺様の恐ろしさがよ〜くわかったか? シャワーーズさん……よ!!」 「ぅ……うぅ……っ」 まさに悪魔の……いや、邪竜の笑みを浮かべて、 倒れ伏し呻くことしかできないシャワーズを見て満足そうに悦に浸る闇カイリュー…… 「さてと。」 ズシン、ズシンと足音を立てて闇カイリュウがシャワーズに近づく。 そして、目の前まで来ると…… 今にも唾液が溢れてきそうな口をジュルリと舌なめずりをして 「いただくとするか!」 無造作にシャワーズに手を伸ばす……その時! 「やめてっ!!」 シャワーズは最後の力を振り絞り、闇カイリューが伸ばした手に冷凍ビームを放った! 残りの全エネルギーを注ぎ込んだその一撃は、一瞬にして闇カイリューの手を肩口まで 氷付けにしてしまった。 「ぐわあぁ!!くっ....!!て..手が!!くそっくそっ小ざかしいまねを!!」 かなりのダメージを受けた闇カイリューは、氷付いた腕を押さえて数歩後ずさった。 そのまま湖に向かい凍った手を黒い水に入れる。 「お願い……っ 目を…はぁ…さまして……っ!」 そんなシャワーズの声を黙殺して、闇カイリューはひたすら怒りを感じていた。 (くそっあんなにぼろぼろなのになぜあんな強力な攻撃を…っん?待てよ……) 「お前もしつけぇ〜ん……ぐはああぁ!!」 一瞬ニヤリと笑みを浮かべた瞬間、悲鳴を上げて闇カイリューが突然倒れてしまった。 その声に驚いたシャワーズは思わず闇カイリューの方を向く。 途端に体中を走る痛みに声にならない悲鳴を上げながらもヨロヨロと立ち上がった。 「……! カイリューさん……っ! 「シャワーズさん....痛いよシャワーズさん....」 「目が……冷めたの……? カイリューさん……」 「ぼ、僕はいったい....なにを.... 」 突然、昔のカイリューにもどったかのように穏やかな目をしてシャワーズを呼ぶカイリュー…… その体は黒いまま……でも、その様子にシャワーズは目にうっすらと涙を浮かべて よたよたとカイリューのそばに歩いていく。 「あなたは……ぃえ、何もしていないです……! よかった……」 今までのことを言いかけ、止めたシャワーズ。 さっきまで闇カイリューと戦い傷つけあったことが心を苛ませる。 今のシャワーズにできるのは、倒れたカイリューに顔をこすりつけ…… 「ごめんなさい……ごめんなさい……」 できるのは、謝ることだけたった。 身をすり寄せるシャワーズにカイリューは身を起してゆっくりと手を伸ばし、 優しくその体をなでて……そして…… 「ごめんなさい?誤るなら.....俺の胃袋におさまってからにしな!!」 闇カイリュー本性を現しシャワーズの尻尾をガシッ!とつかみ起き上がる。 『きゃぁあああっ!!』と叫ぶシャワーズごと軽々腕を振り上げ…… 「面倒かけさせやがってよ!!」 ドカッ!! シャワーズを地面に叩きつけその上にズシィィィンッ!!とのしかかる。 「うぎゃぁぁぁああああっ!!」 耳をつんざく悲鳴を上げるシャワーズ。 次第にその悲鳴も小さくなり『ぁぁぅ……ぅぁああっ……』と呻き声しか聞こえなくなった。 体もバラバラに骨が砕けたかのように激痛で、ピクリとも動けなくなってしまった。 「やっとおとなしくなったぜ。しかし、食うにもまた冷凍ビームを打たれたら面倒だな。」 瀕死のシャワーズを見て、疲れたようにため息をつくカイリュー。 思案げに周りを見渡すと木の実が目に入った。 「おっ!」 木の実を見た瞬間に闇カイリューは名案をひらめいた。 食べ残した木の実を拾い上げ。 足下で呻いているシャワーズの口と木の実の大きさを見比べ…… 「大きさもちょうど良いな。また打たれないようこいつを口の中につめておくか」 「はわっ……!」 拾い上げた木の実をドスゥッ!とシャワーズの口に押し込む・ 生々しい音と共に木の実を押し込まれ口から小さな飛沫が飛び散った。 「むぐっ むぐぅぅぅっ!!」 「これでよし。さて……」 足を上げシャワーズを解放すると、 再度シャワーズを尻尾を掴み持ち上げ口元へと持ってくる。 「んうぅっ……! ぅう……」 言葉にならない悲鳴を上げるシャワーズ。 その目から苦しいのとだまされた事で悔しくて涙を流している。 闇カイリューはなめるようにその体を見つめていると…… ずっと昔に別のシャワーズを食べたときのことを思い出した。 再び唾液が溢れそうな口をジュルリと舌なめずりする。 「久しぶりのシャワーズだな。昔のあのシャワーズはうまかったな〜」 「うんうっ……!」 「こいつもやっぱりうまいのか?」 カブッ!ジュルルゥゥ... 「うぅぅんんんんっ!!」 ジタバタと暴れるシャワーズにかまわず頭から食らいつき、かるく啜る。 闇カイリューの口の中、シャワーズは少しでも抵抗しようと暴れるがその努力もむなしく…… ジュル!! ジュルル!!と啜られ徐々に体を口の中へ引きずり込まれていった…… シャワーズの体半分ほどを口の中に収めた闇カイリューは、 まずはじっくりといった感じでその味を確かめようと舌を動かした。 「ん〜...まずまずだな。」 ベチャッ……ヌチャァ…… 「ひゃぁあっ……うっぷ……」 闇カイリューの口の中……唾液が糸を引き、 シャワーズは嘗め回されるその度に小さな生々しい悲鳴が上がり、 唾液が絡みついて身の自由を奪っていく。 懐かしい味を楽しむかのように闇カイリューはその行為を長々と行う…… シャリ... 嘗め回している途中に弾みで軽く噛んでしまった。 その時、何かが砕ける音がして…… シャワーズの口につめこまれていた木の実が砕けたのだ。 木の実の甘い味がシャワーズの口と闇カイリューの口の中に広がる。 「ん?少し甘くなったか?」 ギュウゥ!! シャワーズを舌で上顎の肉壁に押し付ける。 ネチャァァッ!と不気味な音を立て強い力で押しつけられると シャワーズの肺から空気が抜け出て 『きゅぅぅぅぅっ……! 』とか細い声が闇カイリューの口から…… その中のシャワーズが漏らした声が聞こえてくる。 (こ、こんなカイリューさんを助けられないままで…… 食べられてしまうの……!? くるし……ぃ……) 「それにしても懐かしい味だ....」 ジュルルルウゥウゥゥ 「ぅっ うぇっ…… ごぷっ……」 よほどシャワーズの味が美味しいのか、唾液の量が大量増えてきた。 何度も何度もベシャリ……ベシャリと…… シャワーズは唾液のプールに顔をつっこみ、溺れそうになる。 綺麗だったシャワーズの体は完全に唾液まみれでベトベトになってしまった。 ボタボタ…… 一向に唾液の増量は止まることを知らず……闇カイリュウの口から、 はみ出しているシャワーズの尻尾を伝って溢れた唾液が大量にしたたり落ちだした。 「おっと俺様としたことがよだれが....」 ジュルルゥ... シャワーズの尻尾をどけて、ジュルウッ!と よだれを啜ると口の中がよだれでいっぱいになる。 いきなり大量の唾液……シャワーズはしばらくの間、完全に唾液の中に沈んでしまった。 「うううぅっ……ごぼっ……」 何とか解放されると口まで入ってきた闇カイリュウの唾液をはき出し一息つく。 さらに不幸なことは……唾液が次第に臭気を発し始めていたのだった。 「くさ……ぃ」 さらにシャワーズに不幸が続く。 闇カイリューが再度シャワーズを軽く噛み始めたのだ。 「ングッ..ング..」 クチャッ……ヌチャッ! 「あぁっ……きゃうっ!」 何度も何度も闇カイリューの牙が、 シャワーズの体をこれ以上傷つけないよう…… 味を落とさないように微妙な力加減で押しつぶす。 シャワーズの悲鳴が口の中で響き続け、 再びあふれ出す唾液が、したたり落ちて闇カイリューの尻尾を唾液まみれにする。 闇カイリュウはそれに気がつくと…… 「ん?おっと俺様の尻尾がよだれまみれで台無しじゃねぇ〜か」 ジュルゥウゥ..... 自分の唾液まみれの尻尾を口にくわえると……音を立てて啜りだした。 ここにシャワーズの不幸があった…… 闇カイリューの唾液がシャワーズの体をベトベトにしていて、 その唾液が体の滑りを良くしていたせいで…… チュルッ! 「ひぅっ!」 シャワーズの恐怖混じりの悲痛な悲鳴と共に、 尻尾は一瞬にしてカイリューの口へと啜られて消えていった。 「やっぱりシャワーズはうまいな。ッング..ッムグ...ングッ...」 期待通りのシャワーズの味に満足している闇カイリューは再度シャワーズを噛む。 クチャッ ヌチャッ 「ううっ…… あうぅっ!!」 ネチャッ ピチャッ 「きゅぅっ…… いやぁぁっ!!」 何度も繰り返される、闇カイリュウの歯と舌の愛撫に シャワーズは傷つき、体力が奪われ…… 最後にこれまでシャワーズを支えていた要の精神力さえ奪われようとしていた。 (もう……体中がべたべた……もう……ダメ……) ムチュッ クチュッ 「きゅぅ……っ!」 そんなシャワーズの様子を知ってか知らぬか……首をかしげ…… 「なんか噛むたびに声が聞こえるが気のせいか?」 グニュ...ムギュ... 最後の仕上げとばかりに闇カイリューは少し強めに噛み始める グニャァッ ムギュゥッ 「いやっ……あぁっ!」 ついに最後の精神力も尽き果てたシャワーズは抵抗も止め、 闇カイリューに嘗め回されるまま……噛まれるままにその身をゆだねてしまった。 そして、十分にシャワーズを弄んだ闇カイリューは最後の仕上げに入ることにした。 「まぁ気のせいか。そろそろ終わりにするか。」 「きゅうっ……」 グッタリとしているシャワーズの重さを舌で感じつつ…… ふと気まぐれに闇カイリューに面白い事を思いついた。 再びあの笑みが浮かぶ…… 「そういえば.お前が俺様を解放してくれたんだったよな。」 「う……ぐ……」 (体中がベトベト……、もう力が入らない) 「お礼といっちゃ〜なんだが噛み殺すのだけは勘弁してやる。」 「カイリュー……さん…… 」 予想外の闇カイリューの言葉にシャワーズは、 もしかしたら助けてくれるのかも淡い期待を胸にカイリューの名を呼んだ。 そして、そのことを即座に後悔することになった。 「痛みはない。しかし!! 俺様の胃袋にはちゃんと入ってもらうからな〜」 シャワーズの乗っていた舌が滑り台のように持ち上がる。 その奥には……シャワーズにとって地獄の入り口……喉の奥が見えていた。 「ぅ……っ きゃあっ……! いやっ やめてっ……!」 恐怖に負けて闇カイリューの口の中で暴れ叫ぶシャワーズ…… しかし、逃げだそうと、踏ん張ろうとするたびにズルズルと舌の滑り台を滑り落ちていく。 そして、最後の時が…… ズルッ! んっゴッグリ!! 「いや゛ぁぁぁああああっ!!」 ついに闇カイリューは喉に落ちたシャワーズを…… 慈悲もなく情け容赦なく大きな音を立てて、悲鳴ごと飲み下したのだった。 「ふぅ.....まだ食いたりねぇな〜他の食い物でも探すか」 その間にも、ググッと闇カイリューの喉を膨らませシャワーズが…… ズブズブと食道に締め付けられながらも胃袋に送られて行く。 「あう…ぐっぷ……」 凄い力で食道に押さえつけられているシャワーズは身動きすることも出来ない。 ……そして、 グリュリュ! ズリュ! シャワーズはついに闇カイリューの胃袋の中へ送り込まれてしまった。 「どうだい、シャワーズさんよ。俺様の腹の中は。」 闇カイリューは自分の腹を見ながら、 その中に……胃袋の中にいるシャワーズに向かって問いかける。 すでに胃袋に落ち込んでしまったシャワーズは、その中でその声を聞いていた 「 ぅぐ……呑まれて……しまった……の…… 」 悲壮にゆがんだ顔でシャワーズは聞いていた…… グゴッ……グニュッ……と胃の中で肉壁がこすれる音を ヌチャリッ……ベチャリッ……と肉壁と自分がふれあう音を ネトォッ……と粘液の音を…… そんな生々しい音の溢れる場所にシャワーズは送り込まれてしまったのだ。 さらに唾液をしのぐすさまじい臭気がシャワーズを襲う。 「ううう゛……っ なんて…臭いなの……っ けほっ」 「ほらほら、このカイリューさんが持ってきた木の実があるだろ?! ありがたくもらっておきな〜フハハハハ!」 調子に乗る闇カイリュウはお腹を叩き胃袋をゆらす。 激しい衝撃がシャワーズを上下左右に弾き飛ばす。 その度にベチャァッ ビチャァッ!と胃壁へ叩きつけられ 胃壁がシャワーズの体を包むように大きくゆがむ。 「きゃうっ ……うわぁっ! ……げほっ…… 体もベトベト……もう…ダメね、私……」 諦め果て、胃壁に顔をうなだれるシャワーズ。 柔らかくほのかに暖かい胃壁が、シャワーズの体を布団や枕の様に支えている。 その感触に……言葉にできない感覚が、 シャワーズの意識を遠くへ運んでいこうとする。 もうほとんど何も考えられなくなったシャワーズの目に木の実が映る。 ほんの少しだけ…… カイリューとの思い出の木の実を見てシャワーズの目に光が戻った。 「ぁ……これ…先ほどの木の実……」 シャワーズはその木の実を拾いジッと眺める。 そのころ闇カイリューは何の刺激も感じなくなった胃袋につまらなそうに嘆息する。 「もう反応がねぇ。っふ…まぁいい。さて次の食い物でも探しに行くか…ふんっ!!」 闇カイリューが翼を広げ飛び立つ、 同時に胃が収縮しシャワーズを締め付け始めた。 グギュウウウウッ!! グチャァッ ネチャァ 「ぃゃぁぁあああああああっ!!!」 木の実の思い出のおかげで正気を取り戻した…… シャワーズだったが事態が好転したわけではなかった。 正気を取り戻した今では、 この不気味な胃の中はシャワーズを締め付け不快な感覚を与え続ける…… シャワーズはそれから逃れようと再び胃の中で暴れ出した。 「んっ?……おっ! まだ生きてやがったか。 俺様の胃の中で気持ちよく暴れてやがる……クククッ! よくよく楽しませてくれるぜ、この食べ物はよ!!」 闇カイリューは空を飛びながらポコポコと動くお腹を楽しそうに眺め 新しい獲物を探し求め空を飛んで行くのだった カイリューを豹変させて黒い煙……シャワーズがこれを払うことが出来るのだろうか? 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