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夢の探訪《1》 ( No.1 )
日時: 2011/11/11 19:47
名前: ラギア  <ragia-bloodwing.666.darkdragon@ezweb.ne.jp>

『夢の探訪』 ラギア作


―また何時もと同じ日が始まった―

何時もと変わらない風景、目新しい物はそこにはない。

唯一違うと言ったら、テレビに映る画面だろうか、この画面に映る映像だけは毎日違う、この《違い》はあなたの退屈な日々を緩和させる物にもなっていた。

もちろん、楽しい番組がやっていたり、逆に、つまらない番組の場合もある、だが、あなたはテレビを毎日見る…ある種の儀礼的な物かも知れない。

だがしかし、あなたのテレビに対する意識はなかなかそう長くは続かない。
人間は身体を動かさないと《飽き》が生じるのだ。

―少しは外でも出歩くか―

あなたはふと、そう思う、何もする事は無いが、何もせずゴロゴロとしているよりかは幾分良かった。

テレビを消せば辺りを一瞬の静寂が包み込む、ふと覚える寂しさ。

時刻はAM8:12、思えば起きてからまだ1時間も経っていない、そう言えば今日は日曜日だっけ、何時もと同じように起きてしまっていた。

支度は整えた、とは言っても、外出着に着替えただけだが。

まだ少しだけ眠いが、朝の日差しを浴びればすぐに目が覚めるだろう、玄関へと歩を進めながらあなたはそう思った。


ガチャッ…

戸が開けられる、薄暗い玄関に鋭い白銀色の線が地面を駆け抜けて、分散し、明るく玄関を照らし出す。

あなたが一歩外へと出ると、涼やかな風が身体を取り巻き、強い日差しは明るく地上を照らしている。
蒼い空が見ていて楽しい、流れる雲は時間をあなたの脳裏に取り戻させるが、それよりも見ている事に夢中になってしまう。

―とりあえず歩かなくては―

しばらく夢中になっていたが、あなたの脳裏にそんな考えが過ぎる、すっかり醒めた身体は身軽で軽快にその足を進めた。

何時も通る道、そこまで広くは無いが、狭い訳でも無い、面白い物も無いが、つまらない物も無い、だらだらと歩くには丁度良い所だ。

あなたはぶらぶらだらだらと歩き続ける、何ら目的が有るわけでも無い、頭の中はどうせ捕食の事で目一杯だ、目的を持つ理由も無い。

あなたは曲がり門に差し掛かった、何時もと同じようにその曲がり門を曲がっ…




キィィーー!!

目の前に迫るトラック、何て事だ、注意をしていなかった、ちょっと車道に飛び出してしまっていたのがいけなかった。

ダン!!

一瞬にして消える世界、意識が崩れ落ちる中、最後に感じたのは地面に後頭部が叩き付けられる感覚、痛みは無い、ただ、衝撃、確実な死、それだけがあなたを襲う。









…ッ…ーッ!!…プー!!

耳に飛び込む音、クラクション?

『何こんな所で寝っ転がってんだ!!』

あなたは目を覚ます、視界に入ったのはさっきのトラック、ぶつからなかったのか。
とりあえずあなたは起き上がり…特に痛みがどこにも無い事を確認してからトラックの運転手に頭を下げる。

運転手は怒ってもいたが、心配もしてくれていたようだ、どの位倒れていたのかは分からないが…いや、腕時計が有る。

AM8:12、あれ、この腕時計もとうとう壊れたのか、秒針は動いているがどうなのだろうか。

しばらく待つとAM8:13になった、そろそろこの腕時計も寿命だな。

―ちょっと疲れた、一旦家に帰って飯でも食べるか―

今来た道を引き返し、家を目指して足を進める、それにしてもトラックの運転手には悪い事をした、まさかあんな所で倒れるとは…

太陽が地上をキラキラと照らしていて、まるで宝石を散りばめたかのような輝きがあなたの目に入る。
アスファルトの地面だが、太陽の光によって…

フッ…

…何だ?
一瞬だけ、ほんの一瞬だが、周囲が暗くなった。

すぐに明るくなってまたアスファルトの地面は美しい光を発し始める、あなたは突然の事に困惑し、しばらくの間はその場に立ちすくんでいた…


《次のチャプターへ…>>2