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ss
日時: 2008/10/24 22:27
名前: 名無しのゴンベエ

あまりにも人が少ないので景気づけ代わりに投入。長文かつ下手糞ですが書き手のスペックによるものなのでご容赦ください。なお後半少しグロかも。要注意。
もう少し書き手が増えてくれるとうれしいんですが、もともと特殊な性癖だしなあ……



 リオルが迷子になったのは今朝方10時ごろのことだった。ちょうど夏の盛りで、とおりの暑さを逃れて町外れの木陰の中で涼んでいると、不意に目の前をバタフリーが横切った。その白い羽を追っていくうちに、いつのまにやら森の奥深くまで入り込んだのが運の尽き、どうにかして町に戻ろう、戻ろうと森の中をさまよったが、しばらくすると、どこを向いても同じ木が同じ並びで並んでいるように見え始め、挙句の果てに同じところをぐるぐると歩き回る羽目に陥ったのである。
 なんて間抜けなんだと自分をののしりながら、リオルは小枝を踏みつけるようにして歩いたが、この森は大人の探検隊でも音を上げるほどの難所で、まだ子供のリオルに抜けろというのはどだい無理な話、歩けば歩くほど深みにはまっていく。そうこうしているうちに、日は沈む、鳥も去る、その代わりに星が出る。森は昼間よりもずっと森閑としているが、リオルはますますあせるばかりである。枝をくぐり、葉を掻き落としながら早足で歩くものの、いつまで経っても町は見えず、リオルもすっかりくたびれて、足が棒のようになり、仕方がない、いっそこのままここで寝てしまおうか、と思ったころ、梢の群れの奥が何か明るく見える。しめた、と思って駆け出し、岩にけつまずいたり茂みに足を取られたりしながら森を抜けると、急にぱっと視界が開け、リオルは目をしばたたかせた。
そこは周りを木立に囲まれた大きな湖で、家の明かりなどひとつもない。見えるのはとろとろと溶けたように水面に映りこむ月の明かりと、湖の真ん中にぽっかり浮かぶ真っ黒な小島、はるか遠くの山の影のみだった。
 流石にリオルもどっと疲れを覚え、地面にしゃがみこみ、うつろな目で湖を見た。今度こそ仕方がない、ここで寝よう。そう腹をくくると、リオルは這うように水際まで進み、泥だらけの顔を洗った。そして枕に手頃な大きさの倒れた木を見つけると、横になって目をつむる。そうやって体を休めていると、浮かんでくるのはこのまま帰れなければどうなるのか、という思いである。飢え死にの四文字が頭の隅をよぎり、こんなところで夜を明かす自分の身の上が情けなく、また恨めしく思えてきて、ずっとこらえてきた涙が目にあふれ、両手で顔を覆う。しばらく水際にリオルの嗚咽が響いたが、いつかそれも止み、泣き疲れたリオルは寝息を立て始め、辺りに聞こえるのは波音ばかりとなる。

「おい、坊主、どうした?」
 急に声をかけられ、リオルはがばと跳ね起きて辺りを見回した。森の中を透かし見ても何も見えず、岸辺にも影はない。夢ではない、夢にしてはいやにはっきりとしていた。なおもきょろきょろと声の主を探していると、こっちだ、こっちだという声が、湖の方から聞こえる。波導で気配を探ってみると、月の光に照らされた大きな頭が、リオルを見ながら波に揺れているのが分かった。浮いている頭の様子を、ぼんやり眺めているリオルを怪訝に思ったのか、それは水の上で首をかしげ、言った。
「お前、こんなところで何してんだい」
「……別に何も」
「何もってこたあないだろう。俺もここに長いこと住んでいるが、お前さんみたいなガキを見たのは今日が初めてだぜ」
「……迷子になったんだよ」
 迷子、という言葉を口にしたとたん、寝入る前のつらい考えがよみがえり、鼻の奥が痛んだ。今にも泣き出しそうなリオルの姿を見て、その頭はそりゃあ気の毒にな、と心底同情したように言った。
「坊主、お前の町はどこだい?え?……森の向こう側かい。あの森をもう一度抜けるのは子供の足には骨だぜ。」
「そんなことわかってるけど、でも抜けずにこんなところにずっといたら、それこそ飢え死にしちゃうよ」
 うわずった声でそこまで言うと、リオルは大きくしゃくりあげ、ついに嗚咽を漏らしながら泣き始める。その様子を粘っこい目で見つめながら、頭は言った。
「お前、親はいねえのかい?もしかしたら親が迎えにきてくれるかも知れねえぞ」
「親離れなんてもうとっくの昔にすましちまったよ、だから困ってるんじゃないか」
 湖の頭は、そうかい、そんなに大きい子が泣いてちゃいけねえなあ、と笑いながら、ひとつ舌なめずりをした。一方リオルのほうは、これ以上泣かないように、必死になって目と鼻をおさえているけれども、うまくいかずにしゃくりあげてばかりいる。
 少し泣き止んだころあいを見計らって、湖の頭が、だったら、うちに来いよ、と言った。それを聞いて、リオルが顔を上げた。
「もう遅いから町に連れて行く気にゃなれねえが、うちに泊めるくらいならなんてこたあねえ。今日はうちに泊まって、明日町に送り届ける。これでどうだい?どうせ腹もすいてんだろう?」
「……でも、本当にいいの?迷惑じゃないの?」
「なあに、かまやしねえよ。そんなんよりお前の泣き声を毎晩聞かされるほうがよほど迷惑だ」
 それを聞いて、リオルは恥ずかしさのあまり耳をぴったりと寝かせてうつむいた。うつむいたまま小さくありがとう、と言った。湖の頭は犬によく似たリオルの顔を機嫌よくみつめながら、じゃ、善は急げだといって、岸に上がった。
 (ルギアだったんだ)
 白い竜にも似た巨体に、長い首。どっしりとした動作一つ一つに威厳が現れているが、決して年老いてはいない。中年というには少し若いかな、とリオルがおおよそのあたりをつけたとき、ルギアがこちらに向けて尻尾を伸ばし、早く乗りな、と言った。
「もうだいぶ夜も更けた。ここらは夜冷えるんだ。早く行こうぜ」
「分かった。でも、うちってどこ?」言いながらよじ登り、首の付け根に座る。
「なに、すぐそこだ。あの島の中だよ」
 そういってルギアは翼で島を指し、じゃ、行くぜ、と言うなり、リオルの返事も待たずに水の中に飛び込んだ。振り落とされないようにリオルがあわてて首にしがみつくと、ルギアの体にはじかれた水が、雨粒のように腕に降りかかった。
 ルギアは島に向かって、飛ぶような速さで泳いでいる。空には一片の雲もなく、月と星が湖を照らし、その光をうけてしぶきがきらきらと銀色に光る。しぶきの合間合間から見える島の黒い影は、何か薄ら寒いものを感じさせたが、宿を貸してくれるというルギアにそういうのも気が差して、リオルはじっと黙って島を見つめている
 ルギアは島の入り江のような場所をめざし泳いでいるようだった。島の側面に回りこみその入り江を真正面から望む格好になると、黒々と口をあける洞窟が遠目にもはっきりと見えた。
「さあ、ここだ」
 洞窟の中にたどりつき湖から上がると、ルギアはそう言って尻尾を伸ばした。ルギアの背中から降りた後、リオルはさっそく洞窟の中を見回した。壁面のところどころに、どうやって火をつけたのか、小さなたいまつがともっており、そのおかげで奥に見える通路もだいぶ遠くまで見通せる。通路も入り口も土がむき出しのつくりだが、幅と高さはルギアが通るのに十分なほどの余裕がある。見たところ随分大きな、それこそこの小島を丸ごとくりぬいてできた洞窟のようである。少し気味が悪くも思える。
リオルの様子を見て、どうしたい、そんなに気に入ったのかい、とルギアが笑った。リオルは一瞬困ったような表情を見せたが、ひとつ頷いた。リオルのそんな思いを知ってか知らずか、ルギアは洞窟全体に響くような声で哄笑し、正直な子だ、と言い、そして、リオルを翼で招いて、洞窟の奥へと進んでいった。

 案内された部屋もやはり土壁の大きな部屋だった。ルギアは何かを食うわけでもなく、黙然とリオルを見ている。リオルは部屋の床の上にじかに大皿を置いて、盛り付けられた果物をゆっくりとかじっている、どこか落ち着かない様子で、ちらちらとルギアの顔色をうかがいながら。
決して食い物に文句があるわけではない。果物は普段から食べなれているし、床の上にじかに大皿を置くやり方も初めてではなかった。
引っかかっているのはまるで違うことだった。それはルギアの眼である。
リオルは、洞窟についてからずっと、ルギアのへばりつくような視線を感じていた。その目の中にはどこか剣呑なものがあるような気がした。ルギアにしてみればリオルは客人であり、客の動向が気になるのは当たり前だといってしまえばそれまでだったが、どうもそうではないようである。市場で魚を品定めするときの目、それによく似ているように思えるのだった。
「どうかしたのかい、あまり食が進んでねえようだが……」
リオルはあわてて首をふった。
「僕はいいんだ、もうだいぶ食べたから。それよりも、おじさんは食べないの?」
 ルギアは俺はいいよ、と言った。そしてリオルに笑いかけたが、その目を見るとやはり、リオルは首筋に悪寒をおぼえるのだった。
 リオルは食事を終え、礼を言って立ち上がった。
「もういいのかい?」
「うん」
「だったら、寝場所はあっちだ」
 そういってルギアは食事場所の向かい側の部屋を指した。やっと眠れる、と胸が温かくなるのを感じながら、リオルは部屋に向かおうとしたが、そのちっぽけな背中に、ルギアが声をかけた。
「待ちな。……お前、背中に血がついてるぜ」
「へ?」
「そら」
 そう言うと、ルギアはグーッと首をのばしてリオルの背中に顔を寄せ、背中全体を分厚い舌で逆なでになめ上げた。背中にべったりと熱い吐息が吹きつけ、その感触のあまりの気色悪さに、リオルは悲鳴をあげて飛びのいた。口元から糸をたらしたまま、ルギアが首をかしげた。
「まだ血がついてるんだが……」
「ううん、ありがとう。とりあえず疲れたから早めに寝るよ、おやすみなさい」
 早口でまくしたて、リオルは部屋から飛び出した。ねばつくルギアの唾液に身震いしながらかけていく。
その姿を、ルギアは血走った、しかしどこかうっとりとしたような目で追い続けていた。

よほど疲れていたのか、粗末なわら束の上にもかかわらずリオルはぐっすりと眠り込んでいる。壁にはぽっちりと明り取りの窓があいており、そこから流れた月の光が部屋の隅を照らしている。隙間風に窓が笛のように鳴る。リオルがピクリと耳をそよがせた。夢を見ているようである。
そのときだった。部屋の入り口から大蛇のような長い影がゆっくりと入り込んできた。ルギアの首である。寝入っているリオルを見て、ルギアはぬれた口元を大きくゆがませ、足音を立てないように用心しながら部屋の中へと踏み込んだ。
あと二、三歩というところまでルギアが進んだとき、リオルが目を覚ました。むくりと体を起こし、しばらく眠たげにあくびをしていたが、暗がりに立つルギアの姿を見て目を剥いた。寝ぼけ眼でもおおよその成り行きは把握できたのか、ルギアの横をすり抜けようと走り出す。その足をルギアの尻尾がはらい、リオルはもんどりうってひっくり返った。起き上がろうとしてリオルは土をかいたが、そのときにはルギアの足がリオルの背中をしっかりと捕えていた。
「よう、坊主!おめざめかい、気分はどうだい?」
 食事どきとはうってかわって、驚くほどの陽気さでルギアが声をかける。リオルは返事をせずに、脇腹に食い込むルギアの爪を必死に引き剥がそうとしている。もっともそれは、リオルの力でどうにかなるようなものではない。
ルギアはしばらくその様子を眺めていたが、やがてつまらなそうに目を細めて足に力をこめた。部屋にリオルの叫び声が響くが、それはすぐに切れ切れのうめき声に変わる。そして、ある程度弱ったところを見計らって、ルギアはリオルの体に尻尾を巻きつけ、自分の顔の間近まで吊り上げた。
「親に習わなかったのかい、人に尋ねられたときは丁寧に答えろって。え?せめて楽しいなりうれしいなり一言でも答えてみせろよ」
「ふざけんじゃないや、こんなんの何が楽しいもんか……」
「そうか、楽しくねえのか……、そりゃあ残念だなあ、俺は結構楽しんでるのにな」
 茶化すように笑った。それを見てリオルは歯噛みし、いったい何をするつもりだよ、とたずねた。ルギアの笑い声がさらに大きくなった。
「お前も本当に鈍い奴だねえ。この様子でやることといったら、ひとつしかねえだろ。……お前さんを食うのよ」
やっぱりか。今となってはどうしようもないけれど、そもそも声をかけてきたときからおかしかった。妙に親切すぎたんだ、と思いながら、リオルは目を瞑った。もしかしたらと思って、尻尾の縛めをとこうと体をよじるがまるでびくともせず、それはルギアを楽しませただけだった。ルギアは目を細めてじゃ、頂こうかと言い、観念してうなだれているリオルに食らいつこうとする。リオルが覚悟を決めて体をすくめた、と急にルギアは首を引っ込めて、何か思い出したかのように、その前に、とつぶやいた。
そのとたん、ぎりぎりと音がするほどに、尻尾が食い込んできた。体が火照る。骨がきしみ、息をすることもろくに出来ない。だんだんと締め付けを増してくる尻尾に、リオルは身もだえし、顔をゆがませたが、それを見てルギアの笑みはますます広がっていった。
「どうした?泣かないのかい?お前は割りと泣き虫だと思ってたんだがね」
「…………」
 あざ笑うルギアをリオルは弱弱しくにらみつけた。意地でも泣くもんか。そう心に決めて、唇をかみ締め黙っている。それでもあまりの苦しさに、知らず目の隅に涙がたまる。ルギアは哄笑し、リオルの顔を一なめして涙をぬぐいとった。唾液が、リオルの鼻面からルギアの口元まで糸を引いた。
「向こうっ気が強い奴は嫌いじゃねえ」
 そういうとルギアはふっと尻尾の力を抜いた。緊張が解けたリオルは、ぐったりとしたまま尻尾に頭をあずけ、浅い呼吸を繰り返している。目の裏がちかちかする。急に流れ出した血流のせいで、体中火がついたように痛む。声を上げようにも息が足りない。
 少しでも多く息を吸おうとぜいぜいのどをならしていると、耳の上にぽたぽたとしずくがたれてきた。べとべとしていて、暖かい。見上げると、大きく開いたルギアの口がすぐ鼻先に迫っていた。暗赤色ののどがよく見える。その奥から吹きつけてくる息の熱さと臭気におびえ、リオルは身をのけぞらしたが、尻尾にがっちりとつかまれている以上それが精一杯だった。だんだんとルギアの口がよってくる。リオルは目をつむり歯を食いしばった。不意に上半身が生ぬるい空気に包まれる。そして腿が何かとがったものにはさまれ、顔面がじっとりと湿った、熱く生臭い肉塊に覆われる。
「……うっぷ……うぁ…………」 
ぶよぶよとした舌に口と鼻が埋もれて息が出来ない。リオルは足をばたばたと動かし、手で唾液にぬれた舌を押しのけようとするが、舌先はリオルの頭をますます強く締め付け、顔を這う。なめられるその度に、舌からしみだした熱い唾液がリオルの口と鼻に入り込み、リオルは何度もむせかえる。噛み付こうにも唾液に牙が滑り、文字通り歯が立たない。肉食獣の口の臭いがする。窒息の苦しさにリオルはうなり、一層激しくあがいたが、それもほんのわずかの間だった。やがてリオルは気が遠くなって、力の抜けた足をルギアの口からぶら下げた。
 ルギアの牙に引っかかったままのびていると、いきなり体が上下に振られた。リオルの腿を捕えていた牙が外れ、ルギアの口の中がぱっと明るくなる。瞬間、リオルの目は、流れる唾液に濡れてぬめぬめと光るのどの奥、リオルを飲み込もうと開いたり閉じたりしている、赤黒い肉の壁に囲まれた穴を捉えた。リオルはぞっと総毛立つのを感じた。だがその一瞬の後、リオルはいきなりやわらかい舌の上に叩きつけられた。再び顔を上げたときには口の中はほとんど真っ暗闇になっており、獣くさい湿った臭いもずっと強くなっていた。
足先までルギアの口内に収まってしまったのか。そのことに気づいたリオルが後ろを振り向こうとした、そのときだった。舌が大きく持ち上がり、リオルを上顎との間ではさみつぶした。獣くさい臭いが一層強く鼻をつく。ルギアの体温がじかに体に伝わってくる。舌は上顎にこすりつけるようにしてリオルの全身を舐めている。
「……ん……ぐっ……」
リオルは力ずくで顔を横に向け、ざらざらした舌から逃れて深く息を吸った。むしむししてくさい空気だったけれど、ルギアの唾液を飲まされるよりはずっとましだ。ほっと一息ついたが、落ち着いていられた時間はそう長くはなかった。
だんだんと呼吸が楽になっていることを不審に思い、リオルは前を見た。胸や頭を押さえつけていた力がゆるんでいる。それにつれてだんだんと頭が下に傾いていく気がする。
(飲み込まれる!)
それに気づいたときには、もうリオルの体はずるずると前に滑り始めていた。リオルはぎょっとして舌につかまろうとしたが、唾液まみれの手で舌をつかめるはずもなく、そのままやわらかい口の中を滑り、のどの奥まで流されていく。
目の前に広がる穴を見て、リオルは息を呑んだ。牙越しの光に照らされたそれは、ルギアののどの動きに合わせて広がったりつぼんだりしており、その奥からはじとじとして生臭い、舌のにおいを何倍にもしたような熱い空気が吹きかかってくる。穴は暗く、まるで底が見えないが、それは確かにルギアの胃袋に通じているはずである。そして胃袋にいったん入ってしまえば、ルギアの体内奥深くに文字通り死ぬまで埋もれることになる。考えるだけで身の毛がよだつような話だった。
リオルは本能的な恐怖から、穴の周りの筋肉、舌の付け根をつかんで体を支えようとしたが、無駄だった。穴のふちに手を掛けたとたん、穴は大きく広がり手が外れた。リオルは前にのめり、頭のてっぺんから腰の辺りまでルギアの食道に包まれた。
熱い肉壁に邪魔されて息も出来ない。上からたれてくる唾液が鼻に詰まる。リオルは暴れようとしたが、しなやかな肉がリオルにぴったりと張り付き、そんな余裕はなかった。 
ルギアののどの動きが容赦なくリオルを押し込んでいく。いまではルギアの口の中にはリオルのひざから下しか残っていない。ルギアがひときわ大きくのどを動かす。それにあわせて、食道の筋肉は絞るようにリオルを奥へと押し込み、肉壁がさらにリオルを締め上げる。頭からつま先まで全身が食道に収まり、リオルの体はますます強く胃袋の方へと引っ張りこまれていく。最後にルギアが首を上にそらすと、薄気味悪い嚥下音が部屋に響いた。ルギアののどのふくらみは長い首を伝って降りていき、やがて腹へと達して消えた。
 
半ば気絶したまま呑み下されたリオルの体は、絡みついた唾液のせいもあってスムーズに押し流されていく。すると、リオルの頭が不意に、弾力のある、中心に筋のような穴が開いた肉塊にぶつかった。肉塊はほんの一瞬リオルの体を支えたが、すぐに小さな口を明け、肉塊の向こうへ通ずる道を作った。それはねじ込むようにして獲物を胃へ導くと、再び口を閉じて逃げ道を遮断した。
胃の中へ押し出されたリオルは、胃液に覆われた肉の上で、腹ばいになってじっとしていた。あたりは真っ暗な蒸し風呂のようで、ひどく息苦しい。気配を探ってみるとせいぜいリオル一人がやっと入るくらいの広さしかないようである。ルギアの口臭の源はどうやらここであるらしく、どちらを向いても腐肉のような臭いがして鼻が曲がりそうだ。聞こえてくる音といえばルギアの脈動と、胃液をかきまわす粘りのある音、二つだけである。
 そのうちに胃が消化活動を始める。もう指一本動かすほどの気力も残っておらず、リオルはただ胃のなすがままになっている。波打つような胃壁の蠕動が、リオルを胃の奥へと押し込み、リオルは目をつむって、ただただ早くこの苦痛が終わるよう祈る。胃壁はリオルの全身を押さえつけ、揉みしだくように蠢いているが、しばらくすると胃液がリオルの体に浸みとおり始め、肩の傷にもしみるようになる。
「……………………ッ!」
 焼き鏝をあてられたような激痛に、リオルは声にならない悲鳴をあげてもがくが、もがけばもがくほど胃はより強く消化しようとする。のりのように粘つく胃液を浴びせかけ、熱い胃壁がリオルをすりつぶそうと動く。リオルも抵抗しようとするが、胃壁に押さえつけられたうえ、胃液に絡みとられては手も足も出ない。リオルは耳の上からつま先まで全て粘液と胃壁に覆われ、酸欠で頭がぼーっとなって、やがて意識を失う。一方、ルギアの胃はひたすら本来の働きを全うしリオルを吸収しやすくしようと、形を変えつつ胃液を吐き出し続け、気絶したリオルをゆっくりとではあるが着実に溶かしていく。
 
 リオルを飲み込み、腹も落ち着いたルギアは、自分の寝室に戻りわらの上に座り込む。そうやって血の猛りをおさえていると、リオルを消化しようとする働きのせいか、腹の辺りがぽかぽかしてきて、だんだんとまぶたが重くなる。
 ルギアは腹を見てにやりと笑い、あくびとともに横になった。5分後、ルギアは腹の中でリオルを消化しながらいびきをかいていた、リオルのことなどすっかり忘れ、次の獲物を夢見ながら。
メンテ

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Re: ss ( No.1 )
日時: 2008/10/25 18:52
名前: 名無しのゴンベエ

いいもの見せてもらったよ!GJ!
メンテ
Re: No1 ( No.2 )
日時: 2008/10/29 00:38
名前: 名無しのゴンベエ

返信遅れましてすみません。そう言っていただけると励みになります。
それにしても過疎な分野です。片手で足りるほどしかサイト(日本)がないとは……
メンテ
Re: ss ( No.3 )
日時: 2008/11/13 08:41
名前: 名無しのゴンベエ

優しいフリして近づき、豹変してしまう鬼畜ルギアに萌えた。GJ!
描写がリアルでハァハァ
メンテ
Re: ss ( No.4 )
日時: 2008/11/22 15:26
名前: 名無しのゴンベエ

返信遅れて申し訳ありません。そうべた褒めされるとただただ恐縮するばかりです。
ルギアいいですよね、竜なのか海洋生物なのかよく分からんところがかなり好みです。またいつか、書けるものなら書いてみたいです。
メンテ

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