Re: 嫌いなモノ ( No.1 ) |
- 日時: 2010/04/11 04:26
- 名前: NEO
- 少女は裕福な家庭で育った。
生まれた時から何一つ不自由無く、欲しい物は全て買ってもらえる、いわゆる"お嬢様"だった。 そんな少女には苦手な物が一つ…
「もういや!どうして私の嫌いな牛乳を食事に出すのよ」
少し口に含んで見るもすぐにコップをテーブルに戻す少女。 少女は牛乳が嫌いだったのだ。
「あら、ママはあなたのことを考えて出しているのよ。牛乳を飲まないと背が大きくならないでしょう」 「ふんだ、背なんて大きくならなくてもいいもん!」
そう言うと少女は拗ねたまま自分の部屋へと戻ってしまう。 少女の悩みは同い年の女の子よりも身長が低いことだったのだ。
───────────────────────
その夜私は不思議な感覚に目が覚めた。 暗い。 いくら夜とはいえ暗すぎる、何も見えない。 そして身体中の感覚が無くなり、まるで宙を浮いているかのようだった。 今夜は確かに自分の部屋のベットで眠っていた筈なのに…
「背が伸びなくてもいいのか?背が低くてもいいのか?」 「だ、誰っ!」
何処からとも無く声が聞こえる。 慌てて感覚の無いまま視線を巡らせるも、無論何も見えなかった。
「背が小さくてもいい…牛乳が嫌い…ならばお前には牛乳の素になってもらおう…」 「さっきから何を言って…」
すると突然目の前が一瞬眩い光に包まれそれが消えると、身体の感覚や視界が戻ってくる。
「あれ、ここは…」
いつの間にか朝になっていたのか、周囲は明るかった。 しかし私がいるのは部屋のベットの上ではない。 少しチクチクする様な感覚、見ると藁か干草のようなものの上に横たわっていた。 そして同時に感じる違和感。何かがおかしい。 干草というのは一本一本がここまで大きかっただろうか。 長さは私の身長よりも長く、茎の太さも腕ぐらいはある。 普段よく見ているわけではないが明らかに大きすぎる。 そしてここは一体何処なんだろう。変なにおいもするし…
ぬっ… 「へっ」
その答えは光を遮るように現れた影の主によって明らかになった。 私の頭上に突然現れたもの、それはまるで怪獣のように巨大な牛の顔だった。 頭だけで5m以上はありそうなほど巨大な牛の顔が、私の視界を一杯にするように頭上から見下ろしていた。
「きゃあぁぁーーー」
次々に起こる不思議な事態に私の頭はパニック状態で、ただ突然現れた巨獣に悲鳴を上げることしかできなかった。
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Re: 嫌いなモノ ( No.2 ) |
- 日時: 2010/04/11 09:24
- 名前: 名無しのゴンベエ
- どこかで見たことあるようなネタですが、個人的に好きです。
続き希望です。
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Re: 嫌いなモノ ( No.3 ) |
- 日時: 2010/04/11 11:43
- 名前: ケイル
- お〜、うちでは珍しい草食動物系のネタですな
「牛乳の素になってもらう」っていうのは、なんかいい言い回しですねw
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Re: 嫌いなモノ ( No.4 ) |
- 日時: 2010/04/12 17:44
- 名前: NEO
- 同時にあの謎の声が思い起こされる。
『背が小さくてもいいのか』
あの言葉の意味…それは今の自分の状況が示している。 身体を小さく縮められた。 巨大な牛の顔、不自然なサイズの干草、それらが大きいのではなく私が小さくなったんだ。 だけど一体どうして…そんな事を考える余裕すら私には残されていなかった。
ねちょ…
粘着質な音と共に何かがすぐ傍に垂れ落ちてきた。 半透明で少し泡立った粘つく液体…牛の唾液だ。 牛は私を見ながら口元から唾液の糸を垂らしている。 脳裏にもう一つの言葉がよぎる。
『牛乳の素になってもらおう』
牛乳の素になる…それはつまり牛の栄養になることを意味する。 なんて事だろう、この牛は私を食べようとしている。 このままじゃタメだ、早くここから逃げないと! しかし腰が抜けてしまっているのか一向に身体に力が入らない。
ぶもぉぉ 「ひぃぃっ」
そうこうしていると牛が小さく一鳴きし、私に顔を近づけてくる。 視界を覆いつくす巨大な牛の口元。 もう私から見て数mも離れていない位置まで迫っていた。 生暖かく湿り気のある牛の息が吐きかけられる。 くさい。 思わず声を上げ手で鼻を覆った。 今まで嗅いだ事の無いような生々しい家畜の吐息。 恵まれた家庭で日々優雅な生活を送る私にとって、それは生理的に耐え難いものだった。
しかしただの餌である私に牛が気を使う筈など無い。
ぐぱぁっ……にゅるん……
その巨大な口が僅かに開いたかと思うと、気色の悪いピンク色の肉の塊が滑り出してきた。 牛の舌だ。 草食動物特有の肉厚の舌が、唾液に塗れた表面をテカラせながらにゅるにゅると私に向かって伸びてくる。 それにしてもなんて長い舌なんだろう。 2〜3mもありそうなそれは私との距離をあっと言う間に詰める。
べちょ…べろり 「うぷっ」
逃げる暇も無かった。 巨大な舌が私の身体を覆うと一気に舐め上げられた。 ザラザラした舌の表面と、ネトネトとした粘着質の唾液の感触が私を包み込む。 その唾液の量と粘り気にパジャマ姿の私はすっかりベトベトだ。
べろり…べちょ…べろべろ…
休む暇も無く牛は続けざまに何度も何度も私を舐めまわす。 押し付けるような舌の力強い舐めまわしに、私は抵抗する事もできずただもがき苦しむことしかできない。 ヤスリのような舌の表面も唾液にコーティングされ、さほど痛くも無い。 ネトネトした唾液と押し付けられる舌肉の生臭さが、吐きそうなほど気持ち悪かった。
これが普段食べている牛タンなのか。 そう考えるとこんな気色悪いものは、二度と食べたいと思わない。 もっとも今は私がその牛タンに食べられようとしているのだが…
どれだけ長い間そうして舐められ続けただろう。 いや、本当はものの数秒だったのかもしれない。 兎も角牛がようやく舐めるのを辞めた頃には、私の身体は頭からつま先までべっとりと牛の唾液に塗れ、空気に触れると一層酷い臭いを放っていた。
「げほっ!げほっ!…うぇっぷ……にげ…ないと…」
何故牛は舐めるのを辞めたのか。 そもそも私を舐めたのは味見の為か、それとも餌かどうか判断する為なのか。 いずれにしてもチャンスは今しか無い、私は牛に背を向け這い蹲るようによろよろとその場から離れようとする。 しかし粘着質の牛の唾液はまるでトリモチのように絡みつき、思うように身体が動かない。
ぐわあぁああ…
と、逃げようとする私の背後から生暖かい空気と共に何かが開くような音がする。 見ちゃダメ。 本能が振り向く事を静止する。 しかし私は嫌な予感のする方に恐る恐る顔を振り向けた。
「い、いやああぁぁぁーーー!!」
大きく開かれた牛の口。 決して綺麗だと呼べない薄汚れたピンク色の口内。 トゲのような襞が覆う頬の内側。 まるで洗濯板のような上顎の肉壁。 臼のような奥歯は上下に綺麗に生え揃っているが、前歯は下顎にしか生えていない。初めて知った。 もしかしたらただのアクビだったのかもしれないが、今の私の恐怖心を煽るには十分の光景だった。
「あぁぁ!!…いやぁだぁ!!…」
無我夢中に身体をバタつかせ逃げようとする。 もう冷静な判断などできる状況ではなかった。
にゅるん……ぐぃっ 「!!」
突然柔らかな熱いものが身体に巻きついたかと思うと、力強く引っ張られる。 気付けば舌が身体にぐるぐると巻き付き、まさにその巨口へ運ぼうとしていた。 幾らもがいて抜け出そうとも、筋肉の塊のそれに非力な私が敵う筈も無い。 あっと言う間に私の身体は、牛の口内へと引きずり込まれてしまった。
ばくんっ
私を納めた牛の口が閉じられる。 光が遮断された筈なのに何故か口の中の様子はハッキリと見ることができた。
「いやぁああああ!!くさぁぁあーーいい!!だしてぇええーー!!」
とても不潔な場所だった。 牛の口の中はネットリした唾液で溢れかえり、動けばネチャネチャと糸を引いて身体に絡みつく。 口内に充満する空気が蒸し暑く息苦しい。 酸素を求めて呼吸すれば、新鮮な臭い牛の息がたっぷりと肺の中を埋め尽くしていく。 唾液が絡み合う音と、荒い牛の呼吸音だけが音の全てを支配していた。 私の悲痛な叫びが口内に虚しく反響する。
口内から逃れようと必死に暴れてみるも、柔らかな舌は動きを吸収し、嘲笑うかのように私を舐めまわす。 まるで飴玉にでもなったかのようだ。 いずれあの臼のような歯にすり潰され、身体を砕かれてしまうのだろうか。 それだけは嫌だ! 私は必死に抵抗を続けた。
しかしその心配は予想外の方向へと持っていかれる。
ずりゅ…ずりゅ…
身体が喉の方へ運ばれている。 なんて事だろう、このまま丸呑みにするつもりだ。 牛の口の中にいる今ですら耐え難いのに、生きたまま牛の体内へ運ばれるなど考えたくも無い。
「いやぁああああ!!食べられるぅぅ!!助けてえぇぇーー!!」
幾ら泣き喚いて暴れても牛の嚥下力に逆らう事などできる筈も無かった。 唾液に塗れた私の身体は牛の舌の上を滑らかに滑り落ちていく。 舌の表面に立てた爪は虚しくズルズルと掻くだけに終わった、
ごくり…
大きな嚥下音を立てた牛は、満足そうに大量の唾液と共に私を一飲みにしてしまった。
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Re: 嫌いなモノ ( No.5 ) |
- 日時: 2010/04/12 18:08
- 名前: NEO
- なんとか続き書いてみました。
投稿してから気付きましたが、途中一回区切った方がよかったですね。長すぎました。
>>名無しさん ありがとうございます。 続き書いてみましたがいかがでしょうか?
>>ケイルさん 初めまして。 草食動物ネタということでサイト的に大丈夫かと不安でしたが大丈夫でしょうか? 「牛乳の素に〜」は咄嗟の思いつきでしたが気に入っていただけたようで幸いですw
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Re: 嫌いなモノ ( No.6 ) |
- 日時: 2010/04/12 19:38
- 名前: ヒス
- 是非この続きを!!
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Re: 嫌いなモノ ( No.7 ) |
- 日時: 2010/04/12 22:27
- 名前: 竹や
- 被食者が女の子なのは大好きなので
たまらんですw
しかも食べられたくないと抵抗してるのがまたツボですなw
出来ればこの続きをお願いしますm(__)m
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Re: 嫌いなモノ ( No.8 ) |
- 日時: 2010/04/13 01:20
- 名前: 名無しのゴンベエ
- 素晴らしく濃い捕食描写に惚れました…
胃袋という名の続編に期待してます!
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Re: 嫌いなモノ ( No.9 ) |
- 日時: 2010/04/13 21:55
- 名前: ケイル
- おお、これはすごい
草食動物という点でも今までなかったタイプですが、 知能を持たない相手に迫られるっていうパターンもけっこう少ないので その辺恐怖感がリアルに伝わってきました。 そして牛タンは、やっぱすごいですよねw 実写系は興味薄めな私ですが、牛タンの卑猥さは反則w
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Re: 嫌いなモノ ( No.10 ) |
- 日時: 2010/04/18 17:21
- 名前: 名無しのゴンベエ
- うひょー、牛のvoreだ(゚∀゚)
牛馬による捕食はめちゃくちゃ大好物なんですが、これまた描写もイイ。
呑まれた後の方も楽しみにしてますww
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Re: 嫌いなモノ ( No.11 ) |
- 日時: 2010/04/19 06:28
- 名前: NEO
- 狭い肉の間を挟みこまれながら運ばれて行く。
私を挟む硬い筋肉の壁はベットリと粘液に塗れ、まるで掴み所が無い。 しかも共に飲み込まれた大量の唾液が潤滑油のように、私と食道壁との摩擦を滑らかにしていた。
「…うぁぁ……くぅぅっ………」
息苦しい。暑い。 顔にも粘液がベットリと張り付き、呻き声を上げる事すら難しい。 地に足の着いていない不思議な感覚の中、蠕動する肉の感触が確かに下へと送り込まれている事を示している。
口から飲み込まれて食道へ。 その先に待つものを私は受け入れたくなかった。
…ごぷっ
急に肉による身体の締め付けが強まる。 全身を押し潰されてしまうような圧迫感。 しかし間も無く急激な浮遊感に見舞われる。
…べちゅ…どぷっ…
やがて私の身体を何かが包み込んだ。 酷い感触だ。 生暖かくドロドロしていて息ができない。 目も開けられず自分がどんな状態にあるのかも分からない中、手足を動かし必死に周囲の状況を探る。
先程までの様な肉の圧迫は無く、代わりに何かの液体の中に居るようだった。 手足の自由が利くと分かれば次に私がすべき行動は一つしかない。 呼吸を確保する為、私は手足を掻きドロドロの液体の水面を目指した。
…だぷっ…
重い音と共に水面へ浮上する。 顔面にベットリと付着した液体を手で拭い取り、酸素を求め鼻と口で思いっきり空気を吸い込んだ。
「すぅ……っ!!!ぶほっ!!ぐべぇっ!!げぇほっ!!!うげええぇぇぇーー!!」
が、すぐに思いっきり咳き込んだ。 呼吸どころの話では無かった。
「うげぇっ!!!くさぁっ!!くさあぁぁぁいいいーーー!!」
臭い。 息苦しさに朦朧としていた意識が吹き飛ぶほど刺激的な臭さ。 口の中の臭いなどとはまるで比べものにならない程強烈な悪臭が、その空間全てを支配していた。 それもその筈だ。 何とか見開いた目が私の置かれた状況を映し出し、その全てを明らかにする。
「…あ……ああぁ……」
全てが肉に覆われた空間。 びっしりと細かい柔毛の襞に覆われた天井や壁。 茶色と黄土色の混ざったような気色悪いドロドロの液体が溜まった地面。 見るからに不潔で気持ち悪い光景と充満する臭気。 肌に纏わりつくような高い湿度の暑苦しい空気。
間違いない…ここは牛の胃袋の中なんだ。 脈打ち緩やかに蠕動する天井や壁がそれを証明する。 私が浸かっている液体には細かく千切られた干草が大量に浮かんでいる。 この液体は牛の胃液や唾液など様々な体液が混ざり合った物なんだろう。 液体は時折ゴボゴボと音を立てて泡立ち、所々で湯気が上がっている。 消化物が発酵しているのだろう。 胃袋全体に充満する悪臭の素は間違いなくこの発酵ガスだ。 噂で聞いたことがあるけど、これが地球温暖化を促進している牛のゲップらしい。 まさか私がそれを身を持って体験する事になるとは思わなかった。
「…わたし……食べられちゃったんだ……」
どうしようもない絶望感に包まれる。 止めどなく涙が溢れ、頬を伝い粘液の海へ消えていく。 すすり泣く私を嘲笑うように蠕動する胃袋。 粘液が絡み合う音とくぐもった牛の心臓鼓動が、耳障りな程胃の中に響き渡る。
「…ぐす…ぐす……ひっく……でも…まだ…」
諦める訳にはいかない。 このままじっとしていたら、消化されて牛の栄養になってしまう。 こんな所で死ぬなんて絶対に嫌だ! 私は涙を拭うと粘液を掻き分けて胃の中を歩き出した。
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Re: 嫌いなモノ ( No.12 ) |
- 日時: 2010/04/19 06:52
- 名前: NEO
- 続編書いてみました。
更新ペース遅くなると思いますが生暖かく見守って頂けると助かります。
>>ヒスさん、竹やさん、名無しさん ご感想ありがとうございます。 続きを期待していただけた事が、私としても執筆欲を掻き立てる原動力となりました。 女の子が食べられちゃうのは私も大好きです。 非力な女の子が抵抗虚しく…ってのがいいですよね。
>>ケイルさん いいですよね牛タンw 現実世界の肉食動物の舌は実際それほど凄いのがいないのに、草食動物の舌には凄いの沢山いますからね。 特に牛の舌は長さといい、見た目や質感といい、肉厚具合といい、唾液の粘りといい、何で巨大な肉食動物じゃなかったのかと言いたいぐらい完璧です。 あとSS保管していただきありがとうございました。
>>名無しさん 牛の捕食大好きですw あの大きく膨らんだお腹と消化器官の特殊な構造がたまらないです。
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Re: 嫌いなモノ ( No.13 ) |
- 日時: 2010/04/19 22:04
- 名前: 名無しのゴンベエ
- ここまで細かく描かれた胃袋内部は殆ど見かけないので、フェチとしては大変萌えさせていただきました…ww
言葉回しの一つ一つが好みです。少女と牛の圧倒的体格差も(・∀・)イイ!
これからどういう展開になるのか、牛の体内の構造も相俟って楽しみにしてます!
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Re: 嫌いなモノ ( No.14 ) |
- 日時: 2010/04/21 19:45
- 名前: ケイル
- おお、体内編入りましたね
描写が細かくて、息苦しさがリアルに伝わってきますw 果たして主人公はどうなってしまうのか気になりますw
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Re: 嫌いなモノ ( No.15 ) |
- 日時: 2010/05/29 19:45
- 名前: 名無しのゴンベエ
- 続きが気になりますねー^^
ゆっくりでいいので続きお願いします^^
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Re: 嫌いなモノ ( No.16 ) |
- 日時: 2010/06/06 12:39
- 名前: NEO
- ねちょ…じゅぶっ……ぐにゅり…
就寝時の姿のままの私は最悪な事に裸足だった。 歩みを進める度に足の裏にぬめる肉の感触が伝わる。 柔らかな肉壁は私の体重を受け止めて沈み込み、あっと言う間に踝までが肉に埋もれてしまう。 びっしりと生えた柔毛は指の間にまで入り込み、舐め回すようにモゾモゾと蠢く。
「いやぁ…気持ち悪い…」
まるで胃壁の柔毛一つ一つが生きた蟲のようで、あまりの気持ち悪さに全身鳥肌が立った。 その感触から逃れようと足を移動させても、素足に絡み付いた粘液がべっとりと糸を引き、新たな胃壁が優しく包み込む。 その繰り返し。 この牛の胃袋の中にまともな地面など存在する筈も無かった。
ぐにゅ…ぎちゅり…
粘液の海はドロドロと粘つき波立ち、じっとしていようとも大量の干草が身体に絡みつく。 原型を留めているものならまだしも、粘液の底に沈殿しているものは分解が進んでおり、まるでヘドロのようだ。 ただでさえ歩きにくい胃袋の中、障害物のように行く手を塞ぐ胃内容物を掻き分けて進むのは重労働だった。 全くこれだけの餌を胃に納めても私を食べようとするなんて、なんて食い意地の張った牛なんだろう。
「少しは…んくっ…食べる量……減らしなさいよ……うぷっ…」
思わず愚痴も零れる。 しかし私の思いとは裏腹に、さっきから餌の量は増える一方で、粘液の水位も心なしか上がりつつある。 新たに飲み込まれた干草が、大量の唾液と共に胃に溜まってきているからだろう。 このまま胃袋が満杯になるまで食べ続けられれば、胃内容物に押し潰されかねない。 それとも胃袋の活動が今以上に活発になり、消化されてしまうのか。 どちらにせよ私にはのんびりしている時間など無い。
「うげぇ…くっさぁ……ねちょねちょ……んぇっ…」
粘液を吸った餌の固まりの中を掻き分けて進む度、とんでもない臭さと粘つきが全身を包み込む。 自慢のさらさらの髪も、お気に入りのパジャマも、 ねとねとの液体をじっとりと吸って重くなり、酷い悪臭を放っているのが自分でも分かる。 いつも清潔で芳しい香りに包まれた恵まれた人生を送ってきた私にとって、生きる為とは言え自分自身が汚されていくことが堪らなく嫌だった。 帰ったらすぐにシャワーを浴びたい。 今一番の願いはそんな些細な事だった。
唯一の手がかりである新たな餌が流れてくる方向。 流れに逆らい粘液塗れになりながらも、一途の望みに懸け進んでいく私。 やがて周囲の胃壁が狭まり、天井も少し低くなった感じがする。 掻き分ける干草の固まりからは草の香りがほのかに感じられ、最近飲み込まれたばかりの目新しいもののようにも思える。 きっと胃袋の入口が近いに違いない。 脱出への兆しが見え始め高鳴る鼓動を抑えつつも、私は近くの胃壁に手を掛けながら不安定な足元をゆっくりと踏みしめて先を目指した。
…ごうぅん
ふと、胃壁に当てた掌ごしに振動のような物を感じる。
…ごうんっ……ぐにゅん… 「えっ…な、何っ?…」
手だけではなく、今度は足の裏からも確かに感じた。 柔毛が盛んに蠢きだし素足をくすぐる。 嫌な予感がする。 額から蒸し暑さからとは違った嫌な汗が噴き出し、背中を冷たい汗が伝った。
…ごぶぅっ!!ごうぅぅん!!ぐにょ、ぐちゅり!!… 「えっ、ちょ…」
突然激しい揺れが襲い掛かる。 天井も壁も地面も胃袋全体がぐにゃぐにゃと激しく揺れ動き、粘液と胃内容物が高波のように押し寄せる。 当然私は立っている事などできる筈も無く、肉壁と粘液の上に無様に転び、ただ揺れに翻弄されるしかなかった。
「いやぁぁぁーー!!うぶぅ!!……ごぷっ!」
折角辿り着いた場所から無惨にも押し流され、奥へ奥へと運ばれて行く。 ぬめる身体は胃壁を滑らかに滑り、咄嗟に壁にしがみ付こうとした手もぬるりと空を切る。 押し寄せる胃内容物と粘液の波にあっと言う間に飲み込まれ、餌の固まりに巻き込まれながら何処へ行くとも分からない場所へ流されていった。
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Re: 嫌いなモノ ( No.17 ) |
- 日時: 2010/06/06 16:59
- 名前: NEO
- 気が付くと揺れは収まり、私は餌の固まりに埋もれていた。
臭い。ねとねと。息ができない。 腕を動かし餌を掻き分け、何とか身体を抜け出させる。
「…うぅ……えっ!な、何よこれ…」
身体に張り付いた餌を払い除け、視線を上げた私の目に飛び込んできたのは全く見慣れない光景だった。 状況や五感に伝わる不快感からして、同じくここが牛の体内であることには間違いない。 しかし明らかに異なるのがさっきまで見慣れた胃壁と今居る場所の壁の造り。 肉襞が網目のように張り巡らされ、まるで蜂の巣のように区切られた肉壁に覆われている。 はっきり言ってさっきまでの胃壁より気色悪くグロテスクだ。 内容物が未だ原型を留めている様子から察して、きっとここはまだ牛の胃袋の一部なんだろう。 依然として危機的状況であることに変わりは無いようだった。
…ごぷっ…ぐちゅ… 「…どうしよう…何処に行けば…」
どうやってここまで運ばれたのか分からない。 それはつまり元に戻る手がかりを一切失ってしまったという事。 幸い第一胃に比べれば蠕動は穏やかで、行動するには比較的楽そうだった。 しかし第一胃よりも遥かに狭く天井も低い。 手がかり無しに闇雲に動き回れば、自分から奥へ進んでしまうとも限らない。 まさに八方塞な状況だ。
「もういやぁぁああ!!このっ!!私を吐き出しなさいよ!!」
どうしようもなく私は近くの胃壁を殴り、蹴り始めた。 もちろんこんな事をしても無駄なのは分かっている。 それでも自分の意思とは関係なくこんな状況に追いやられた事への怒りが、ここに来て溢れ出した。
「なんで私が!あんたみたいな家畜に!!食べられなきゃいけないのよ!!」 …ぐにゅん、ぐにゅん…
「こんな臭くて汚い所もう耐えられない!!ここから出たら私があんたを食べてやるんだから!!」 …にちゅ…ぐちゅ…ぐちゅ…
非力な私のパンチやキックはグロテスクな胃壁に受け止められ、ただ粘液を飛び散らせるだけ。 殴り、蹴る度に手足には粘液がべっとりと絡み付き一層重くなる。 この抵抗が何の意味を持つのか分からないが、私はただ力の続く限り胃壁を刺激し続けた。
「はぁっ…はぁっ…はぁ…」
数分と持たなかった。 もともと酸素の少ない胃の中で激しい運動をすること自体、自分の首を絞めることに繋がる。
……ごうぅぅん…ぐぉぉおおん… 「はぁ…まさか…!?」
再び巻き起こる揺れ。 今度は地面から突き上げるような激しい縦揺れだった。 もはや体力の尽きた身体でこの揺れに抗う事など不可能だ。
…ぐにゅん…ごぐぅぅぅん!!ぐごごぉぉぉおーー!!ぐちゅん!!… 「!!」
声を上げる暇も無い。 なす術も無く私はもみくちゃにされながら、胃内容物と共に運ばれて行く。 酸素を求め開いた口には容赦なく半消化の餌や粘液が流れ込み、胃壁に揉まれながら私は意識を失った。
───────────────────────
温かい。 柔らかい。 まどろみの中感じたのは心地良い温もり。 ずっとこのまま…目覚めたくない。 でも…目覚めはいつものように訪れる。 それも唐突に。
…どさっ
酷く身体が重い。 痛い。 苦い。 酸っぱい。
「…げほっ!えほっ!ごほっ!うぇぇええ!!…」
意識が戻ると同時に喉に詰まった異物を吐き出す。 とても嫌な風味が舌と鼻孔に残った。
「…えほっ、ここは…」
何処だろう。 地面はざらざらして柔らかい。 周りにはいつもどおり半消化の餌の固まり。 そして薄汚れた奥歯の列。 ……歯!?
「もしかして…ここ…口の中!?」
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Re: 嫌いなモノ ( No.18 ) |
- 日時: 2010/06/06 17:16
- 名前: NEO
- お久しぶりです。
今回は一気に2本分書き上げてみました。 続きを待っていただいた方、遅くなってしまい申し訳ありませんです。
>>No.13さん 胃の中の描写は特に気を使っているところなので、ご満足頂きありがたい限りです。 牛の体内構造は特殊なので可能性を広げやすいですね。 圧倒的体格差ってのも重要視しているポイントなので、存分に楽しんでいただければと思います。
>>ケイルさん 体内ってのは外から見えない部分なので、上手く想像して書くのが大変です。 主人公の運命はちょっと意外な方向へ持っていこうと考えているので、もうしばしお待ちいただければと思います。 気まぐれなもので、時間が掛かるかもしれませんがw
>>No.15さん お気遣いありがとうございます。 おかげさまでまだ待っていてくださる方が居ると分かり、今回の更新の原動力となりました。 今後もゆったり更新になると思いますが、今回の更新分を楽しんでいただければ幸いです。
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Re: 嫌いなモノ ( No.19 ) |
- 日時: 2010/06/06 23:05
- 名前: ケイル
- 牛の胃が複数あるのは知ってましたが、なるほど形もハッキリと違うわけですね
これがハチノスってやつのかーとか、変な話ですが知的好奇心が刺激されて面白かったですw そして第一胃袋には、けっこう大きめの柔毛がある、と…! なんだか牛が非常にエロイ生物に見えてきましたw そして、反芻も来ましたねっ 一度胃に収めた相手を再び口内で弄ぶ…! 本格的にエロ生物だこれw
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Re: 嫌いなモノ ( No.20 ) |
- 日時: 2010/10/31 17:22
- 名前: m.t 空想
- もっと見たいー
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Re: 嫌いなモノ ( No.21 ) |
- 日時: 2010/11/01 16:55
- 名前: sou850
- 続きを!!
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Re: 嫌いなモノ ( No.22 ) |
- 日時: 2011/05/14 17:59
- 名前: ぬうて
- つづきー
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日本最高級激安高品質スーパーコピーN級品 ( No.23 ) |
- 日時: 2019/05/16 22:18
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オメガ デビル コーアクシャル ダイヤ ( No.24 ) |
- 日時: 2024/02/29 11:19
- 名前: オメガ デビル コーアクシャル ダイヤ <uhlqljjy@live.jp>
- シャネルのショルダーバックを購入したのですが、商品自体の状態が良くとても満足しました。梱包もプチプチのクッションがぐるぐると厳重に巻かれていて、お店が商品を大切に扱っているのが良く伝わりました。商品と同封されていたお手紙とお店のチラシは、またお世話になるかもとバックと一緒にとってあります。また良い商品があったらぜひ購入したいです♪
★シャネル シャネル★マトラッセ★ダブルチェーンショルダーバッグ★ラムスキン★ブラック×ゴールド金具★斜め掛け可能★ Nランクということだったので傷が沢山ついていたら・・と思っていたのですが、来た商品は写真どおり傷が少なく大満足です!!また機会があったらこのお店で購入したいです。
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