Re: ポケモン蛇物2 ( No.1 ) |
- 日時: 2009/08/17 01:57
- 名前: ふぃふぃ
- それは野生のポケモンにしては美しすぎた。
まるで一流のトレーナーに育てられたかのうような… 大きく。強く。タフで。賢く…全てにおいて完璧だった。
なぜ、こんなヤツがエイチ湖に。 キッサキシティへ向かう途中。珍しいポケモンが居るかどうかと思い立ち、このエイチ湖へ寄り道したのが間違いだった。 確かに珍しいポケモンは居た。 今、自分のこの眼の前に…優雅に、そしてしなやかな体で他の者を見下して。 自信に溢れたその姿を晒すのはミロカロスだった。
勿論、自分はそのミロカロスをゲットするべく、こうして対峙していた訳だが。 手持ちの道具はほぼ全て底をつき。。 ポケモン達も…大半が既にアイツの腹の中。。。
自分はトレーナーとして判断を見誤った。 それはあまりに開きすぎた戦力差であった故に。 だが、それを悟った時には既に遅かった。 仲間を見殺しにできるものだろうか。
全滅か。 自分達と他が助かるために逃げるべきだったのか。
敵は狡猾で…ずる賢く。 ゲットする…などという考えをしていたのがそもそもの間違いだった。
* * *
まず最初に間違いだと分かったのは何時だったか… 自分はまずそいつを弱らせる為にブラッキーを当てる事にした。
止めをささない程度に『かみつき』を命令。 相手はひるみ…2度、3度と続けるうちに相手は弱っていくようなそぶりを見せる。
そして頃合いを見計らい、続けてサンダースを出そうと試みた。 ブラッキーは手元に戻り、サンダースが場に現れる。 だが、何かが妙だった。 何もする訳では無く、ただ攻撃を受け続けるだけ。
確かに傷も…ダメージも見受けられた。 だが…しかし、ミロカロスのその様子はどこか、今にして思えば演技のような。
しかし自分はミロカロスをゲットするという事に捉われ、そういう類の思考はこの時点では無かったのだろう。 自分は続けてサンダースに続けて『でんじは』を命令する。
ミロカロスを麻痺させ。続けて、『でんこうせっか』を命令。 徐々に、相手の体力を奪い。 頃合いを見計らい。自分はミロカロスを捕まえる為、とっておきのゴージャスボールを投げつけようと試みた。
だが―――
ほんの数秒だった。 目を離したのはバックからそのボールを取り出す為の…それだけの時間。
サンダースが居なかった。 一瞬見失い…その姿を見つけるまでに時間はそうかからなかった。
ただ一撃。尻尾で叩き伏せられたのだろう。 ぴくりとも動かないサンダースのその姿がミロカロスの下敷きとなっていた。
ミロカロスはニヤリと…笑ったような気がした。
―――リーフィア!『くさむすび』
なぜ自分はこの時。 ミロカロスを倒す為にこの技を選んだのか。 この時はまだ捕まえる為に戦っていた筈だった。 思えば…もう既に。心のどこかでコイツは危険だと感じていたのかもしれない。
結果でいえば。 全くダメージがなかったのだろう。
相性でいえばこうかはばつぐんの筈だった。 リーフィアの『くさむすび』をものともせずに、ミロカロスが繰り出したのは『ふぶき』…だった。 いや、『こごえるかぜ』だったのかもしれない。
どちらにしろ、その一撃でリーフィアは倒れた。
自分は意地になった。 たかが野生のポケモンに。なぜ負けなければならないのか。 自分は今の今まで負けを知らないトレーナーだった所為もあるのだろう。 最早、後には引けなくなっていた。
そして、自分が続けて繰り出したのはシャワーズ。
命令する技は、『めざめるパワー』
シャワーズのめざめるパワーはでんきタイプ。 威力もそこそこで。シャワーズと同じ水タイプ相手には持ち前のとくせい。ちょすいと合わせて負け知らず。
これで勝つる! そう思ったのも束の間。
相手のミロカロスも同じだった。 同じタイプの…でんきタイプの威力を持つ『めざめるパワー』を相手も使ってきたのだ。
互いにぶつかり合うわざとわざ。。 同じ水タイプが放つでんきタイプの技と技。
勝負にもならなかった。 一方的に攻撃を受け。 一方的に技を潰され。 そしてシャワーズもミロカロスの前に倒れた。
茫然と立ち尽くす自分の前で、ついにミロカロスはその本性を現し始めた。 倒したシャワーズの前に立つと…おもむろに舐めまわし始めたのだ。 体を転がし、舐めて、頭を加え、すでに倒れているサンダースの上へ重ねる。
ふと、手持ちのモンスターボールが動く。 ポンと音をたて、現れたのはブースター。
命令すら受けていないままに。 ミロカロスへと向かい『すてみタックル』を放つ。
…止める事は出来なかった。 シャワーズがあんな目に合されているのを前にしてブースターに、お前には無理だ…なんて自分には言えなかった。 あわよくば、そのままミロカロスに致命的な一撃を与えてくれればと祈ったが…
結果は悲惨なものだった。 現われて1秒とも立たずに『ハイドロポンプ』の前にその姿を晒し… 地面に小規模なクレーターを穿ち、その中心にはブースターが倒れている。 息はあるものの。あの状態では自力で動くこともかなうまい。
もはや手持ちは、戦闘メンバーとしては心もとないイーブイだけ。 そもそもここへ来た目的の一つとして、イーブイをグレイシアに進化させる為にやってきたのもあるが… 今となってはもうどうにもならない事だった。
そして足元にはイーブイ。 もはや打つ手も無くなり、ただ立ち尽くすだけとなってしまった。
何を命令すれば良いか。 どうすれば良いのか。
そう考えていた時間はあまりに長かった。 ついにミロカロスのお食事タイムが目の前で始まったのだから…
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.2 ) |
- 日時: 2009/08/17 01:59
- 名前: ふぃふぃ
- 始めに食べられたのはシャワーズだった。
意識の無いシャワーズを頭から加えこみ。 口の端から舌を覗かせ…一気に体の半分を体のナカへ押し込んだ。 まるで、今の今までどうしようもなく空腹で。スグにでも何かを腹の中に収めたい。 そう感じさせるような勢いでシャワーズの体はあっという間に尻尾の先も見えなくなってしまった。
ずるり……するり………
喉が膨らみ。シャワーズの体が滑り落ちていく。 首を上げればどんどんシャワーズの体があるのだろう膨らみが下へ下へ…下ってゆく。 自分は何が起こっているのかも分からずそれを見て…見惚れていた。
獲物を頂いた満足感からか、ねっとりとした長い舌を満足そうに口の端から覗かせて。 続けて目をつけられたのはサンダースだった。
まずは一舐めに…。自らの尻尾の上に獲物の体を乗せて。 撫でまわすような舌使いでサンダースの体毛を濡らしていく。
そして首根っこを咥え… 顎の部分から腹を器用に尻尾にその胴体で押えながらあます所無く舐めまわしていく…
やがて舐める事に満足がいくと尻尾を咥え…下半身から…ずるりと引き込んだ。 サンダースはミロカロスの体内へと呑まれていく。
その途中―――
サンダースは目を覚ます…。 自分がどんな目にあっているか。 理解していなかったのだろう。ただ、訳もわからずに暴れていた。 だがその行動も虚しくどんどん、ミロカロスの体内へとずぷり…ずぷりとめり込んでゆく。
瞬間、自分はサンダースへこう命令することを閃いた。 『ほうでん』だ! ……と。
しかし。 まるで効いちゃいなかった。
体内からのほうでんを受けながらも、ミロカロスは呑み込む動作をやめなかった。 それどころか舌でたしなめるかのように、サンダースをおとなしくさせてしまう… サンダースの体はもう見えない。
シャワーズと同じく、サンダースもミロカロスの体の中を下っていく。 終点はどの辺りなのだろうか。 どんどん下ってゆき…地面に隣接した辺りでその膨らみは停止する。
だが…まだ食べたりないようだ。 目に入るものを手当たりしだい、その口に放りこむかのように… 続けてブースターに目をつけた。 体中の毛がふっくらとしていて何かとボリュームのありそうなその体を。 ミロカロスは頭から一気に咥えこむ。 そのまま尻尾とその長い胴体でブースターを抑え込むと口の中で、舐めまわしているのだろう。
くちゅり…くちゅりと。 舌と唾液とブースターが擦れ合う音が響く。 長い時間をかけ、余程においしいのか。 唾液がブースターの体を伝り…滴り落ちていく。
自らの唾液でその体を濡らしながら存分に楽しんだトコロで、そろそろ呑み込む準備が整ったようだ。 ブースターの自重を利用して喉の奥へ押し込もうとその首を上げ始め…
いよいよ呑み込む……… そう思った…その時だった。
黒い影がミロカロスの頭部を一撃する―――
ブラッキーだった。 目の前の光景と、次々と倒されるポケモン達の影に隠れて忘れ去ってしまっていたブラッキー。 予想外の出来事に、判断が遅れるが続けて命令しようと…
だが。
それも無意味な行動になるだろうという事を、すぐに思い知らされた。 ブラッキーの『ふいうち』は、ミロカロスにダメージを与える事は出来なかった。 それを何の障害ともせずにブースターを呑み込む動作をやめないミロカロス。
もはや、ブラッキーではミロカロスを止めることは出来ないだろう。 ブラッキーもそのミロカロスを見上げたままブースターが呑まれる様を見続けていた。
そしてブースターがミロカロスの喉を。 ミロカロスの体のナカを下っていくその時。
ブラッキーはミロカロスを抱いていた。 2本足で立ち。前足でミロカロスに触れて。 ブースターが堕ちていくその様子を肌で感じ取っていた。
続けてミロカロスはリーフィアを引き寄せる。 そしてブラッキーに重ねて…寝転がした。
されるがままに地面へ転がされる2匹。
続けてミロカロスの口の先から滴る唾液が2匹を襲う…。 ブラッキーは抵抗もできずにリーフィアを抱きよせるようにミロカロスを見ていた。
大口を開けたミロカロスが足元から2匹を咥えこむ。 1匹の時と比べ、非常にゆっくりと…。
ずるり…ずる………ずる。 くちゅり…ぴちゃ……ずるずる。
自分は興奮していた。 自分が育てたポケモン達がたった一匹の。 野生であろう…ポケモンに呑まれていく様を見て。
止める事もせずに。 ただただ…じっと見ていた。
ブラッキーとリーフィアは…互いを守り合うかのように。 抱きしめ合っていた。 さして仲が良いでもなかった2匹だが。 これから食べられる…そんな現実を前にして抱き合っていた。
ズル…ズルリ……
やがて2匹は口の中におさまるが。それ以上の進行はゆるやかだった。 ひとおもいに。一気に呑み込まず…まるで楽しむかのように2匹の顔を舌で撫でまわす。 長かった。とても長い時間それを見ていたような気がした。
そして…
いつの間にか…イーブイが消えていたが、そんな事はもうどうでも良かった。 目の前のこの光景がどうしようもなく。自分の心を打っていたからである。
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.3 ) |
- 日時: 2009/08/17 02:00
- 名前: ふぃふぃ
- イーブイは逃げていた。
目の前の光景がどうしようもなく恐ろしく。 走っていた。
主人を見捨てて逃げた訳でもない。 ただ、今の自分がどうしようもなく非力で。 主人を守れないから。今は逃げていた。
イーブイは知っていた。 シャワーズに進化する為には水の石。 ブースターやサンダースに進化するのにも相応の石が必要である事。 リーフィアへの進化も特殊な地形と何かが必要だった事。 そしてグレイシアへの進化も。リーフィアと同じく。この近くにそういう類の場所があるという事を。
イーブイは見つけていた。 どこか、小さな小屋の近く。 主人が休憩の為にと寄ったあの家。
自分を進化させる為に、その場所を探していた主人だが。 疲れのためか、まずは街を目指そうという事になったがイーブイもまだ進化は後回しでよいと考えていた。
だが今は進化が必要だ。 アレに立ち向かうにはもっと力が必要だ。
こうしてイーブイはたどり着く。 進化の出来ると思われる岩のあるところへ。
だが…もっと何かが必要だった。 ここで進化するには何かもうひと押しが必要だった。
その為にイーブイは奴等を連れてきたのだ。
森の暗闇の中から赤い目が光る。 ひとつではない。 ふたつ。みっつ。。それいじょうはたくさん。
イーブイは考えるのをやめた。 こんな場所でやられるようなら…アレには敵わない。
…暗闇の中から飛び出して来たのはニューラ。 群れで獲物を襲う氷タイプの狩人達。後にはもう退けなかった。
* * *
敵う筈もない。 1対1ならまだしも相手は5匹だったのだから。 2度3度と繰り返し、奴等の爪を受けてボクの体からは血が滴り落ちて足元の雪がほんのり赤く染まっている。
敵う筈がなかった。 こんなとき…姉さんが居てくれたら。こんな奴等…
敵う筈が…… いや。そんな考えでいては進化は出来ない。 覚悟を決めなくてはいけない。 ここでそんな甘えた考えをしていては奴等の餌になるだけだ。
流石に一匹ぐらいは。この手で倒したい。 もしかすると、それをきっかけに相手は逃げてくれるかもしれない。 ボクはこういう時の為に、ブースターから、ブラッキーから使えそうな自分が使えそうな技を教えてもらっているんだ。
例えばこの…『すてみタックル』
敵は油断していた。 血に塗れたボクの渾身の力を込めた『すてみタックル』が相手のリーダー格であろうマニューラに命中する。
凄まじい反動がボクを襲う。悲鳴もあげられない。 骨が砕けそうなダメージが返ってくるがその一撃を受けたマニューラはもっと酷いダメージを受けている筈だ。
なんとか立ち上がり…残りの相手がどこにいるか調べる。
丁度よく…ドシャ―――っと音がした。
音がした方向を良く見ればマニューラと他4匹のニューラが集まっていた。 あのドシャっという雪が落ちたような音はマニューラがようやく、宙から落下した音だったのだろう。
もはやマニューラは動かない。ボクも…もうこれ以上は動けない。 文字通りに最後の力の一撃だった。
だが、相手はまだ4匹だ。 もう…相手が向かってくるようなら勝ち目はない。 もっとも、今のマニューラがまだ動けるようならもう…
これ以上はもう―――
……… ……………… ………………………
だが、何時までたっても相手は襲ってこない。 それどころか。ニューラ達は威嚇したままボクとの距離を保っていた。 なぜだろう。もうボクはこんなにも。。。
(おめでとう)
―――声が響いた。
(グレイシアになれたのね)
―――頭の中に直接。
(早くそいつ等をやってしまいまさい?)
―――姉さん?
(今のアナタなら出来るわよ。。。多分―――)
―――そう…見てるんなら。
「助けてくれたっていいじゃないか!!!」
ボクの怒りの叫び声と共にはなたれたのは『ふぶき』だった。 距離をとり、様子を伺っていたニューラ達は吹き飛ばされ、マニューラもいつの間にか消えていた。 ボクは、グレイシアへと進化していたのだった。
「姉さん……」 そしてボクは姉さんと呼んでいる…頭の中に直接話しかけてきていたその声の持ち主は確かに姉さんだった。
「良くできました。」 まるで突然そこに現れたかのように、ボクの正面から何事もなかったかのように話かけてくるポケモン。 ボクの姉さんであり、同じイーブイの進化形であるエーフィ。 今回の旅で寒いのは嫌だ、という理由で待っている筈だったが。 どういう理由でか、今ボクの目の前にその姉さんが居る。
「それじゃあ、早速だけどワタシと一緒に帰りましょう。」 そして現われて早々、一緒に帰ろうとボクにそう言った。 しかし、ボクがこうして進化をした理由はご主人様を守るため。
「姉さん、知っているの?ボクは…」 「知っているわよ。だけどもう手遅れ。アナタはワタシと一緒に帰るのよ。」
「なんで?まさか…、もう食べられちゃった…の?」 「いいえ、まだ生きてはいるわ。みんな…ね。」
「だったら助けにいかないと!」 「そういう意味で手遅れなんじゃないの。アナタは行ってはいけない。」
「見捨てろっていうの?ボクは…行くよ!」 「アナタが行ったところで、何が出来るっていうの?頭を冷やし…」
「頭は冷えてるよ。氷タイプだしね。姉さんこそ…みんな居なくなってもいいの?」 「分かっているわ。でも、アナタまで居なくなったらワタシ…どうすればいいの?」
「そんなの、姉さんも来ればいい事だろう?ボクはもうみんなの所へ行くからね。」 「待ちなさい! 分かっているの? アナタが行ったところで!」
……………… ………………
「あーあ…、行っちゃった。」 エーフィはその場に取り残された。 悔しそうに尻尾で周りの雪を乱暴に払いのけ…
「時間稼ぎ、できなかったなぁ…ついにあの子も氷タイプ…かぁ」 2度、3度…雪を払う。 体についた雪を二股に分かれた尻尾でたたき落とし…
「まぁ…別にいいか、あの子はあの子で結構可愛いものよね。」 音もなく…『みらいよち』が発動していた。 グレイシアの居たその場所の雪が全て消し飛んでいたが。 あと数秒、グレイシアがその場を動くのが遅ければ、その技の威力はグレイシアが受けていたのだろう。
「何しているのかしらねワタシは…こんな事していてもしょうがないのに。」 途中、エーフィは体についた雪が気になるのか立ち止まっては振り払う。
「ああぁアァーもう…これだから雪は嫌いなのよ!」 そう叫ぶとエーフィはもう、立ち止まる事もせずに、グレイシアの後を追っていった。
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.4 ) |
- 日時: 2009/08/17 02:01
- 名前: ふぃふぃ
- いつくしみポケモンと言われるミロカロス。
高さが約6.2m。重さが約162.0kg そう…このポケモン図鑑には書かれていた。
しかし、今この目の前に居るミロカロスは大きかった。 6.2メートルだとかよりも、はるかに大きい。その倍はありそうだった。 最も、正確に測った訳でもないが、とにかく目の前の存在は図鑑の情報よりも大きいのは確かだ。
その体を維持する為にどのぐらいのモノを食べるのだろう。 既に、シャワーズ…サンダース…ブースター。 そしてブラッキーとリーフィアが、そのミロカロスに呑み込まれ、今やその腹の中に納められている。
もはや自分は、そのミロカロスの虜となっていた。 目の前で、自分のポケモン達が呑みこまれていく。 その度に妖艶な笑みを浮かべ…自分を誘うような視線がどうしようもなくそれが頭に残る。
(アナタもどう?)(ワタシと一つになれるのよ…) (うれしいでしょう?)(此方にいらっしゃい…) (たっぷりと可愛がった後…)(やさしく呑み込んであげる)
逃げる事も考えずに、自分はミロカロスの元へと歩み寄っていた。 このまま、自分の事も呑み込んで…そのままポケモン達と一緒になりミロカロスのナカで溶けていく。 そんな最後もいいかもしれない。
顔を一嘗め。 ミロカロスの長い舌が自分の顔に絡みつく。 唾液に塗れたその舌が、自分の顔を濡らしていく。
自らを誇示し、圧倒的な力の差を見せながらも… 獲物を恐怖だけで制圧しながら食べたりはしない。
なだめるように、舌で体中を嘗めまわし。 まるで相手の考えている事が分かるかのように、抵抗しようとした部分をその長い胴体で押さえつけられる。 捕食の対象となる獲物は…やがて体力を奪われ、その舌使いによる快楽に身を任せる事になる。
自分のように…。既に、呑み込まれてお腹のナカで眠っているポケモン達のように。 意識のないままに呑まれたポケモン達もいるだろうが… 意識があろうが無かろうが結果は同じだっただろう。
美しい笑みに…物欲しげに見据えてくる視線。 吸い込まれそうな程に奇麗な瞳とその美しい姿に惹かれ、近寄ったら最後。 長く大きい体に巻き寄せられ、その巧みな舌使いにより瞬く間に捕食の虜となってしまう。
無意識に、自分はミロカロスの頭を引き寄せて撫でていた。 ミロカロスもそれを受け入れるかのようにおとなしくなっていた。
* * *
―――その様子をグレイシアは眺めていた
(ご主人…様?) それはグレイシアから見れば、奇妙な光景だった。
傍からみれば、じゃれあっているようにも見えた。 ミロカロスの長い胴体に腰をかけ、まるで自分の可愛いポケモンを相手にするかのようにその頭を撫でている。
唖然とグレイシアはその様子を、ただその場に座り込み、伺っている。 暫く座り込んでいると、いつの間にかグレイシアの傍にエーフィも座っていた。
「驚いた。こんな事になっているとはね。」 「…姉さん?」
エーフィとグレイシア。 2匹がその様子を眺めていると、2匹のご主人は思いがけない行動へ出た。
ミロカロスを寝転がすと、あろうことかその口の中に腕を突っ込んだのだ。 そのまま、頭からミロカロスのナカへと呑み込まれていく。
「ご主人…!?」 その状況を前にして、グレイシアは飛び出していきそうになった…が。
「姉さん…?離して!?」 「いいえ、アナタが行っても邪魔になるだけ。」 尻尾をエーフィに押さえつけられ、グレイシアは動けなかった。
「なんで!行かないと、ご主人が!」 「………少し、黙りなさいよ、今…いいトコロ…なんだから。」
(え………?)
―――『サイコキネシス』
「―――ねえ…さん?」 エスパータイプである、エーフィの『サイコキネシス』がグレイシアの動きを封じた。 その様子は何時もの姉さんの様子とは、どこかがおかしかった。
笑みを浮かべていた。 まるで…あのミロカロスのような。妖艶な笑みを浮かべて主人を見ていた。
(まさか…姉さん?) 声も出せず、グレイシアは訴える術は一つもなかった。 暴れようともするが、エーフィの『サイコキネシス』の威力は強く、抜け出すことは敵わない。
ふと、エーフィの視線はグレイシアへと移る。 何かを思い立ったかのように、グレイシアへと顔を寄せ、首筋を舐めはじめた。 続けて、グレイシアを仰向けにと転がし、体中を舐めはじめ… 毛づくろいをするような感覚で、体中を余すところなく舐め回しながら、そのままグレイシアの上へとのしかかる。
(あぁぁ…なんで……こんなコトを………) エーフィはグレイシアに馬乗りになりながら、ミロカロスを。主人を見ていた。 世界がぐるりと反転した状態で、グレイシアも同じくその状況を見ている。
「早く…早くしないと……あぁ………」 (姉さん……くるし…い。。。) グレイシアを下敷きにしながら、エーフィは激しく体をゆすっていた。 主人を飲み込む、ミロカロスのその様子を見据えながら。
「ブラッキー…! マスターが向かったわ!」 (う……あぁ………姉さん…意外と重い!……これじゃ…ボク………!) 体中を舐めまわされたグレイシアの上で、エーフィは何か、声を洩らしながら動いていた。 妙に興奮しながら、ブラッキーと時折口に出しながら…
「あぁぁ……意外と………いいわ!ブラッキー、大丈夫?」 (さっきから…ブラッキーって。。ボクはグレイシアで、姉さんは上で……) 「そう…そうよ! いい感じよ! もっと力を入れて…! 押しのけて!」 (姉さん…何を言っているんだろう…。また…シンクロしてる……?) グレイシアを強く、力強く抱きしめながら、エーフィは叫ぶ。 見れば…もはや、主人の姿はなく…完全にミロカロスのナカへと消えていた。
「いいわ…あとは……出て…外へ……引き抜くの………早く……早く!」 (そう、そうだ…早く、早くしないと!)
―――ごろん。
「姉さん…?」 グレイシアの体が動いた。 その上に乗っていたエーフィの体は力無く、転げ落ちる。 拘束していた『サイコキネシス』の力も既に解けていた。
「そうだ、ご主人様!」 グレイシアは何の策もなくただ、主人の元へと走っていく。 ミロカロスの傍へ。主人を呑み込んだミロカロスの元へ。
「ご主人様を…出せぇー!!」 そう叫びながらグレイシアは『すてみタックル』を繰り出した。 しかし、手応えは殆どなかった。 覚悟していた反動も全くと言っていいほどになかった。
しかし、そんな考えなしの一撃が功を奏したのか。 ご主人様の足であろう部分が口の端からはみ出してくる。
そう、ならばもう一度! と、考えたその時だった。 ミロカロスは口を開き、目の前にその頭を差し出してきたのだ。 一体何なのか、グレイシアの事も食べようとしているのかと思ったのがそうでもないようだった。
ふと、グレイシアの頭に、エーフィの言葉が浮かぶ。 (引き抜くの………早く……早く!)
(引き抜くの?これを?) 思い立ったら、それ以外の選択肢は無いように感じた。 もう、やるしかないと。グレイシアはなるべく牙を立てないようにと、足を咥え力を込めて引っ張り始めた。
ミロカロスも元より吐き出すつもり、だったのだろうか。 思ったよりもあっさり、その体は引き抜かれていく。 やがて、主人の体の大半が見えてきた頃、その腕の中には何かが抱えられていた。 それはブラッキーだったが、他のポケモン達は居なかった。
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.5 ) |
- 日時: 2009/08/17 02:03
- 名前: ふぃふぃ
- あれから主人は、ゴージャスボールをミロカロスに使い。
そのままミロカロスはおとなしく、そのボールの中に納まった。 無事だったのはブラッキーとエーフィ。そしてグレイシアとなったボクの3匹。
ブースター。シャワーズ。サンダース…そしてリーフィアはもう戻ってこない。 みんな、ミロカロスに食べられたまま…もう戻ってはこなかった。
ボクは分かっているんだ。 食べられたら、お腹の中で、溶けて。死んじゃうんだって事を。 だからもうミロカロスのお腹のナカには誰も居ないんだ。 みんなが食べられた時のあのお腹の膨らみも、今はもう無くなっている。 エーフィもブラッキーも、なんであんなにも…平然としていられるのか分からない。
ブラッキーが助かったのもご主人が体を張ってミロカロスのナカから引き抜きだしたおかげだったし。 エーフィだって、ブラッキーの事が好きだって事ぐらいボクは分かっている。 あのまま他のみんなと同じく消化されて死んじゃったりなんてしたら哀しんでいたはずだ。 もしかするとご主人も、ミロカロスの体のナカから出られなくなっていたかもしれない。
だけど、こうして一月が経ち。もはや、ミロカロスはボク達と一緒に旅をする仲間だった。 ボク一人だけが文句を言える立場ではないにしろ、他のみんなを食べてしまったミロカロスと一緒に… みんなして楽しげに肩を並べて居られるのが…ボクには分からないんだ。
エーフィは、姉さんはこう言っていた。 ワタシも食べられたかったなぁ。 ブラッキーも気持ち良さそうだったし。 でもそのまんま消化されて死んじゃうのも嫌だし。 どうしようもなく、人生に疲れて、死にたくなった時にでも頼もうかしら。
ブラッキーも、また食べられたいとか。 あんなめにあったのに、また同じようなめにあいたいらしい。 ブースターもシャワーズも、サンダースにリーフィアも戻ってこなかったというのに。 だけど、一番ミロカロスと仲が良さそうなのはブラッキーだった。 暇さえあれば、あのミロカロスと一緒になって昼寝をしていて。 体中ぬるぬるになって帰ってくるんだから大変だ。
そしてブラッキーもエーフィもこう言っていた。 もし自分達が旅の途中に死んじゃうような目にあっても。 ミロカロスが食べてくれるなら。自分達はそれもいいなとか。 ボクには全然わからなかった。そういう事を考えたことが無いから。
マスターもミロカロスと二人っきりでどこかに出かけてしまう事も多くて。 2度と戻ってこないんじゃないかと心配になる。 恋人同志のように、イチャイチャと毎日を過ごし。腹を膨らませたミロカロスが帰ってくるから何をしているのか想像に難くない。 ブラッキーもエーフィも、ミロカロスの事を気に入っているらしく。 ボクだけが、のけものにされているような感じで寂しくなってくる。 そう…ボクだけだった。 あのミロカロスがどうしようもなく怖くて、みんなの輪に入っていけないんだ。
もう駄目だ。こんな事では、自分の居場所がなくなってしまう。 勇気を出して、こう言うべきなんだろうか。
ミロカロスさんに、ボクも食べてください………と。 でも、そのまま消化されるのは嫌だし。 吐き出して貰えるように頼めるかな、ちゃんと生きて出られればいいな。 どうなるんだろうな…ボク。
やっぱり姉さんに相談するのが…そうだね。 まずはそうするのが………
そうしてボクは考えを終わらせたところで。 ふと辺りが暗くなっている事に気づいた。
あれ、夜には早いような。
―――ぴちゃり
それはボクの頭の上に降ってきた。 雨にしてはやけにねっとりと。それはまるで…
「ミロカロス……さん?」 ボクは恐る恐る頭上を見上げた。
「話はエーフィから聞かせてもらったわ!」 「ちょっと…ま―――」 あまりに突然の出来事にボクは何もできなかった。 一方的に舐めまわせて、お尻の方から咥えこまれ。 ただただボクは…姉さん…助けてー……と頭の中で叫んでいた。
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.6 ) |
- 日時: 2009/08/17 02:13
- 名前: ふぃふぃ
- ひとまず、これにて終わりです。
本当はイーブイをミロカロスに差し出すつもりが。 勝手に逃げ回って勝手に進化して…話が伸びに伸びたのは内緒な話。
前回のお話にコメントくださった方も有難うございました。 個別に返すのもめんど…グフ。 なんと返していいものやらなもので、この場を借りて。ちゃんと読ませて頂いております。ありがとうございましたデス。 また機会があれば何か考えつくかもしれませんでゲス。 寝る前のテンションなのでどこか壊れてますがお気になさらず。 それではこの辺で失礼ー
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.7 ) |
- 日時: 2009/08/17 18:20
- 名前: 名無しのゴンベエ
- あなたが神か。
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.8 ) |
- 日時: 2009/08/18 09:01
- 名前: ハダー
- これは鬼畜というか愛情イジメなんじゃないw
トレーナーたちはなんというドM。 あといっつも「ゲットする」を「ゲップする」と見ちまうオレサマって・・・w 最後まで楽しく読ませていただきました。
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.9 ) |
- 日時: 2009/08/18 21:23
- 名前: ケイル
- おお〜 まさか普通に仲間になっちゃうとはなぁ
主人公のパーティが静かに侵食されていくようで、ちょっと怖かったですw ミロカロスならではと言った感じですね。 前半の、ブイズを次々と喰い散らしていく様子も、いかにも強者といった感じで素敵でしたっ
>地面に小規模なクレーターを穿ち、その中心にはブースターが倒れている。 これはwww
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.10 ) |
- 日時: 2009/08/19 01:05
- 名前: ふぃふぃ
- >ごんべ
そうです紙です、薄っぺらいんです。
>ハダーさん そうです、愛情たっぷりに可愛がってました。 なんたっていつくしみポケモンですかr 自分がドMなんでトレーナー達もドMになっちゃいました。
>ケイルさん 本当はミロカロスから見た視点で描く場面も作ろうかと思ったんですが、うまく混ぜられなかったんデ。 はじめに流れ構築してた筈が全部イーブイの所為でその辺からオカシク。無理やり進めてしまった感ガ。 なんで最後で苛めてやりましタ。
あと、ブースターは切り札だった筈なんですけどね(´ω`)
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.11 ) |
- 日時: 2009/08/26 08:56
- 名前: 夜月 陽
- とても面白く、スラスラ読める素晴らしい作品でした^^
しかし、エーフィちゃんのキャラと言いますか立ち位置というのが把握しずらかったのですが・・・
読解能力がない僕が悪いのですがね・・・わがままで申し訳ありませんが、説明していただけませんか・・・?
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.12 ) |
- 日時: 2009/08/26 12:42
- 名前: 吉祥 <sho.horn@hotmail.co.jp>
- このトレーナーのポケモンは何としあわせだったことか(笑)
ポケモンはちんぷんかんぷんなんですが、なんとかついていけましたw
その後、このトレーナーたちはどうなるのだろう…?ww
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.13 ) |
- 日時: 2009/08/30 12:06
- 名前: ふぃふぃ
- >吉祥さん
幸せだったんでしょうねー。うらやましいd ポケモン楽しいですよ。かわいいですよ。
とある筋の情報によると、このミロカロスには前にもトレーナーが居たらしいですが、何故かエイチ湖でそのミロカロスだけが残されていたらしいです。 この後のミロカロスを捕まえたトレーナー達はどうなるんでしょうねぇ。
>夜月 陽さん いえいえー、遅くなりましたー。 勢いで付けた面も多くて語れなかった部分も多かったんで。分かりづらかったですかね。 若干裏話交えてエーフィのキャラはこんな感じ。 多少間空けマス。
エーフィはポケモン6匹まで連れてけないので。 寒いのが嫌。雪が嫌い等。イーブイのグレイシアへの進化に悩んでいたような。という理由でエーフィはお留守番。
しかしエスパータイプでシンクロ持ちのエーフィ。 何かを感じて主人達の後を追ってきて…イーブイ、グレイシアと鉢合わせ。
イーブイがおそわれているトコロで、相手がマニューラ達。 タイプ相性的に不利すぎるのでエーフィは影から応援してただけ。 進化したイーブイを見てのエーフィの内心は…正直フクザツな物。
その後2匹揃ってミロカロスとマスターのじゃれあいタイムをご閲覧。 一方ミロカロスのお腹の中でブラッキーが一匹外にいるエーフィの存在に気づく。とくせいがシンクロ同士、エーフィとブラッキーの性格が混じりあってグレイシア巻き添え。 エーフィも唾液でぬるぬるしたかったんです。
ついでにミロカロスは食べ過ぎて、ブラッキーが若干毒性があって不味かったのでマスターに引き抜きだして貰ったんだとさ。
一応これの続き作成中な予感。 続いてるのでこの続きに張り出す感でいいのかな。 そのうち暇が出来たら思い出して書き始めるカモ。
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.14 ) |
- 日時: 2009/08/30 23:53
- 名前: 名無しのゴンベエ
- >>一応これの続き作成中な予感。
やばいやばいこれは期待せざるを得ない。 マジ頑張ってくだせえ!! 俺もテカテカしながら待ってる!
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.15 ) |
- 日時: 2009/08/31 08:02
- 名前: 夜月 陽
- >ふぃふぃさん
ご説明ありがとうございました^^
もう一回読んだら更に深く、濃厚な味わいになりましたw
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.16 ) |
- 日時: 2009/09/06 00:26
- 名前: ふぃふぃ
- * * *
ボクは…生きていた。 確かに、ブラッキーの言うとおり、また…食べられてみたい。 そんな風に言わせられるのも納得してしまうほどに。居心地が良かった。
ここはミロカロスさんの体の中。 ボクを今包み込むこの場所は弾力があり、触り心地も良く。 粘液で満ちている胃袋であろう…その中で、ボクの体はどこかおかしくなっていく。 今までに味わった事がない感覚。それはもう病み付きになってしまいそうなぐらいに気持ちが良く…ボクを虜にした。 だけど…ボクは理解していた。一度中に入ったら、もう自分の力では出ることはできない。 その中に入った者はもう二度と出てくる事は叶わない。 呑み込んだものが自ら吐き出そうとしない限りは出られない…
ミロカロスさんはボクの事が好きだから。食べてみたいだとか… だけど…こうして食べられる前のボクは泣いて懇願した。 飲み込まれる前にはとにかく叫んで助けを呼んだ。 だが、それは逆にミロカロスさんにとってボクを食べることへの欲をかきたてる訴えにしかとられなかった… ボクが好きなんていう言葉の意味は…食べ物としてという意味だったのだろうか。 それとも…これがミロカロスさんにとっての愛情表現なのか。
そしてボクはこうして食べられた。 今ではもうお腹の中でボクの心情は落ち着いてるけれど。 少し前までのボクは呑み込まれたというショックの後で放心状態となっていた。
冷静になって思い返せば、ミロカロスさん確かこんな事を言っていたような気がする。 今からワタシはお昼寝とするけれど、アナタが外へ出たいと思うなら… ワタシに分かるように動いてみるなり、暴れるなりしてごらんなさい。 ちゃんと出してあげるから。…と。
なんだ、ちゃんと出して貰えるような事を言っているじゃないか。 なら…もう少しぐらい、この中でゆっくり楽しんでいるのも良いかも… 気持ち良くて、このままお昼寝したいぐらい……そう…お昼寝なんて?
はは…あははは。。。
お腹一杯に何か食べ物を食べて。 気持ち良くお昼寝をして… 起きてみるとお腹が空いて食べ物をご主人貰いにいくことなんて、そんなのがボクの日課だったっけ…。 昼寝をする…なんて言っていたミロカロスさんだったけれど。
ミロカロスさんからしてみれば… ボクが食べ物で、お腹のナカはボクが一匹。 ボク一匹で満腹なんだろうか…。 いや、どちらにしろ今ボクがいるこの中で長く居続けたらいずれは、消化されてしまうんだろう。
ボクまで昼寝なんてするのはもってのほかで。 もしミロカロスさんが昼寝を始めて目を覚ますまでにボクが無事に…なんて保障はどこにもない。 このままだと胃袋の中がそのうち胃液で満たされて、ボクはそのまま成す術も無く、もみくちゃに消化されてしまう…
そんなのは嫌だった。 なんとかして外へ出たいという意思をミロカロスさんに伝えなくてはいけない。
(動いてみるなり、暴れるなり…してごらんなさい?)
もし、その言葉通りにボクを吐き出してくれる意思があるのなら。 ボクが…何かしらミロカロスさんのお腹の中で行動を起こせば良いんだ。 このまま気持ちよさに負けて…眠ってしまえばもう出られない。 気力を振り絞って何か行動を起こさなければならない…。 何か…今のボクにできることと言えば。とりあえずは動く事。
だけど平衡感覚なんてものも、今のボクは忘れていた。 どっちが下でどっちが上かなんてのも分らない。
確か足の方から呑み込まれたのだから…と考えるものの感覚が掴めずに思うように動けない。 無理やりにでも動かそうとすると、体自体が移動してしまい、どうにもならないように思えた。 しかしそんな行動を続けているうちに徐々にだが…なんとか慣れてくる。 ようやく、感覚が掴めてきたトコロで、ボクはようやく立ち上がろうと試みた。
胃袋の中を力いっぱい押し広げてもボクがもう一匹入るか入らないかの大きさにしか広がらない… 今ボクを圧迫するこの壁はとても重く、今のボクの力ではこれが限界。 あの時はボクと同じぐらいの大きさの仲間達を5匹もその腹の体内に納めていたというのに… その時に見たミロカロスのお腹の膨らみは確かにボクが入って跳ねまわれそうなぐらいにとても大きかったのに…
だけど、動けない…なんて事はない。 ミロカロスさんのお腹の中は…ボク以外は奇麗さっぱり何も無く、冗談でいってしまえば貸し切り状態。 多少圧迫されるものの、ある程度は自由に動ける空間だった。 壁を押し広げ、立ち上がってみようと試みたり、ボクはなんとなく楽しみ始めていた。
なんだ、その気になれば出られそうじゃないかとも思い始めていたけれど。 ボクのそんな考えはすぐに甘いものだと思い知らされる。
確かにある程度は動くことができた。 しかし、少しでも力を緩めれば逆に押し返され。 這ってでも前に進もうとすれば逆に後ろへ押し戻される。 つい…力を込めて爪を立ててしまっても傷一つ付かず…引っ掛かりもしない肉の壁。 自力ではもうどうにもならないんだな。 このままミロカロスさんがボクを吐き出す気にならなければボクはこのまま…
いや…諦めるのはまだ早い。 …ボクだってこおりタイプのポケモンなんだ。 なにか今の状態でも使えるようなわざは何かあっただろうか…
ふぶき…れいとうビーム? とにかくなんでも良いから技を使おうと試みるものの、手も足も思うように動かせず。 口も使えなければ、思うように体も動かせない今の状態では、やっぱり…まともなわざを繰り出すのは無理だった。 今のボクが使えるようなわざといったら…
『くすぐる』…程度なもの。
効果はあるのだろうか。 こんな粘液塗れの体の中で、くすぐったトコロで……… だがやらないよりはマシだろう。
ボクは…とにかく『くすぐる』 肉壁をとにかく前足で『くすぐる』 PPが尽きるまでとにかく『くすぐる』
もう…どのぐらい続けたのだろうか。 そんなボクの行動を感じたかのように…ついにミロカロスさんが動き出した。
昼寝から覚めた? もとから起きてた? ボクに気づいてくれた?
どちらにしろ、ボクは外へ出られる! なんて甘い期待を持ってしまった。
―――ぐちゅり
何が起こったか分からなかった。 ねっとりとした液体がボクに覆いかぶさってくる。
―――ずるり…ズルリ……ずるずるズル
ボクの体が落ちていく。 咄嗟に足を広げ…どうにか進行を食い止めようともしたが。 粘液まみれのボクの体は、何も抵抗できずに落ちていく。 奥へ奥へ。とにかく長い時間落ちていった…そんな気がした。 そう…ボクが胃袋の中だと勘違いしていた場所は、ミロカロスさんの長い体のまだその途中だったんだ。
そうこう考えているうちに、ボクの体はどんどん滑り落ちていく。 外へ出ようとしている…なんて思えなかった。 とにかく暗くて、どんどん奥へ奥へと運ばれていくような感覚が続き。
今度こそ、本当にミロカロスさんの胃袋の中なのだろう。 今までとは違う感覚が…肌で感じ取れた。 これからボクはどうなるのか。 まるで死を宣告されたかのような…もはや出る事は叶わないのだろうか。 あのまま、お尻の穴から生還だなんて考えてしまったけれど…このままでは別の意味で外へ出されそう…
今まで感じ取れなかった匂い。それは今まで嗅いだ事もなく…とても不快に感じてしまう匂いだった。 そして肌で感じ取れる胃液の不快な感触。 せなかがピリピリと痛みだす。これが本当の胃液なんだろう。
胃袋の中に収められたものは、暫くの間その中で蓄えられて… そのうち消化活動というものが始まり、胃液と…このボクを圧迫する胃壁の動きによってドロドロに溶かしつくして栄養にしてしまう。 だけどその消化活動が始まるのは…まだのようだった。 胃袋の中は特に激しい動きは見せていない。だがそれも何時まで続くのか。
…分からない。暗い…見えない。 痛いのか、気持ち良いのか。 ボクはもう死んでしまうんだろうか。 このままミロカロスさんのお腹のナカで溶かされてしまうのか。
嫌だ――― そんなのは嫌だ―――
出して…! ミロカロスさん! ボクを早くここから出して!!!
………ボクは叫んだ。 この叫びがミロカロスさんに聞こえたかどうかはわからない。 気づいてもらえたのか、それともボクはミロカロスさんにとって単なる食べ物だからこんな願いも通じないのだろうか。
ボクの体がおかしい… 先ほどの叫びから急に体の自由が効かなくなってしまった。 息が出来ない。 …思えばここは体の中。胃袋の中。 食べ物を消化する為だけの空間でどれだけの空気があるというのだろう。 意図して取り込みでもしない限りはそんなもの…
呼吸が出来ない。酸素が足りない… 肺に入り込む空気はほのかに酸っぱい感じがする… このまま体の中からも溶かされていきそうな感覚まで覚えて。
無くなっていく感覚と、薄れゆく意識の中… 声が聞こえたような気がした。
だけどそれが誰の声なのか。 そもそも声だったのか。 ボクはもう声を出せない。
ボクはまだ…生きて―――
ミロカロスさん―――
出してくだ…―――
たすけて…―――
姉さん……――
ボク……――
………― ……
…
* * *
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.17 ) |
- 日時: 2009/09/06 00:31
- 名前: ふぃふぃ
一旦出来上がった所まで投稿。 これ以上はまた長くなりそうなので出来上がった所まで。
嫌がる子を無理やりって良いもんですよね。 この後グレイシアがどうなるかはミロカロスやエーフィの気分次第とでも。 無計画って先がどうなるか自分でも分らないから困りもんですヾ( ・ω・)ノ
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.18 ) |
- 日時: 2009/09/07 20:30
- 名前: 名無しのゴンベエ
- 完成を楽しみにしています!w
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.19 ) |
- 日時: 2009/09/08 21:06
- 名前: ケイル
- 体内っていうと、安らぎ空間なのか殺人空間なのかっていうのがあると思いますが
その両方の性質がうまく描かれてますねっ 不安と快楽の両方と戦う主人公の感情が、すごく的確というか 素直な気持ちで読むことができましたw
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Re: ポケモン蛇物2 ( No.20 ) |
- 日時: 2010/04/11 11:24
- 名前: 蒼空
- 今頃気づいたのですが、続きがあったのですね♪
これからも頑張ってくださいw
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