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Re: 無題. ( No.4 ) |
- 日時: 2010/09/18 16:21
- 名前: ROM-Liza
- 2
無数の生物が生を営むこの世界を“現実世界”と呼ぶとするならば、もう一つの世界が存在することをご存じだろうか。
反転世界――それは、現実世界と背中合わせにぴたりと貼り付いていて、更に現実世界と相似した異様な世界である。
長い間、二つの世界は決して交わり合うことはなかった。二つの世界を往き来しようと言うのは、水面や鏡に映る光景の中に入り込もうとするようなものだ。
その反転世界に、ギラティナは生まれた。
生まれた時から、彼は一人だった。反転世界中を廻っても、彼以外に生きている者はいない。 それにはこの世界の役割が大きく関係していた。
いわゆる現実世界は、内外から様々な影響を受けている。それが時として、現実世界が存在するための時空間に支障を来すこともある。 それを修正・調整し、現実世界を維持するために存在するのが、反転世界なのである。
その為反転世界には、現実世界に悪影響を与えるものばかりが送り込まれ、現実世界の代わりに余りに多くの災厄を負ってきた。 その影響からか、元は現実世界の双子であった反転世界は、奇妙な変化を遂げていった。
本来は根である部分にまで枝が生え、上下対称になって浮かぶ巨木。あちこち窪みだらけの山々。辺り一帯を障気が漂い、生物の棲めないような場所もある。
そして、汚染され、退廃していくこの反転世界を管理するためだけに、ギラティナは生まれたのだ。
現実世界からは反転世界の様子を見ることは出来ないが、その逆はできた。ギラティナにはその能力があった。 見たいと思えば、目の前に長方形の大画面が現れ、現実世界を何処でも見ることができる。反転世界の管理者という立場上、必要とされたからだ。
しかし、二つの世界を往き来することは許されなかった。所詮は現実世界が存在する為のごみ溜めでしかない ――そのような世界と現実世界を繋ぐ必要はないし、汚染物質やエネルギーが逆流してきたら大変なことになる。 というのが、彼を創り出した神々の思し召しであった。
ギラティナも、始めのうちは与えられた役割をそつなくこなしていた。 そもそも彼に感情というものは存在していなかった。しかし、長いこと画面の向こうの“現実世界”を眺め続けていた所為で、彼にある変化が起きた。 いつしか現実世界に憧れを抱くようになっていたのである。
向こうに行く手段はないという事実が、尚更彼の気持ちを高揚させた。 無口無表情で毎日の作業を続ける彼だったが、胸の中には憧れともどかしさではち切れそうな思いを常に抱えていた。 現実世界のことを考えない時は無かった。
そんなある日のことだった。彼は不思議なものを見つけた。空中に、葉っぱのような形をした裂け目ができていたのだ。 中には暗色の混ざり合った、気色の悪い渦が見える。裂け目の後ろに回ってみると、そこには何もない。
暫くあちこち観察していたギラティナだったが、好奇心から翼の先端を裂け目へ伸ばしてみる。
ずぷり
翼から伝わってきたのは、水でもなく泥でもなく、それらよりも重たい感触だった。奇妙な感覚に、ギラティナは震え上がった。 しかし、翼に何も変化はない。害は無いのかもしれない。
余計に興味が掻き立てられた彼は、もう片方の翼も使って、裂け目を広げようと試みた。 スッといとも簡単に裂け目は広がり、とうとう彼が中に入れるくらいになった。
頭を中に入れてみる。次に首、胸、胴、そして尻尾の先まですっかり入ってしまった。
中は変わった場所だった。ドロドロの液体中を漂ってるような感じがするが、別に息苦しくはない。
外からでは分からなかったが、この空間は、筒の内部のように遥か先へと伸びていた。
――この先に、何があるのだろう。
ぽつりと芽を出した冒険心が、彼を前へと進ませた。進んでも進んでも変わり映えのない景色だが、飽きることなくぐんぐんと進んでいく。 初めて自分の身に起きた変化に、夢中になっていた。
そして、とうとう出口を見つけた。入り口と同じような裂け目から、白い光が差し込んでいる。
ギラティナは何の躊躇いもなく裂け目に手をかけ、思い切り広げた。明暗の急な変化で、一瞬視界が真っ白になる。
漸く目が慣れると、そこには花が咲いていた。地面に敷き詰められたように咲くその花は、天を仰ぐようにして、大きな桃色の花びらを存分に開いていた。そよ風で仄かに香っている。
見慣れない光景に思わず身を乗り出したギラティナは、裂け目から落ちた。下は湖の浅瀬だった。 プルプルと震えて水気を払うと、彼は陸に上がった。
改めて周りの景色を眺める。一面の花畑。広く澄み渡った青空。遠くの山だって、ちゃんと木で覆われていて、窪みなんて一つもない。 自分のやって来た世界とはまるで違っていた。
――あぁ、そうか。
ギラティナは気付いた。
ここは現実世界、自分が今まで護ってきた世界なのだ。
それを裏付けるかのように、頭上高くを鳥ポケモンが群をなして飛んでいる。反転世界のビジョンで見たことのある姿だった。
どうして二つの世界が繋がってしまったのかは分からない。分からなくても良かった。
長い間ずっと憧れていた世界に、今自分は居るのだ。興奮の方がよっぽど強かった。
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