Re: 吹雪の島 ( No.21 ) |
- 日時: 2011/03/27 18:41
- 名前: ジイア
- 最初からそこにいたのが解っていたかのようにマニューラは後ろを振り向いた
最初から自分がベイリーフのことを気にかけていればこんな事にはならなかった、となんだか矛盾しているようだったがベイリーフをやったのはこいつだし・・・・・・何より自分がベイリーフにした事への悔しさをぶつける相手がほしかった
憎い、このラプラスが憎い・・・八つ裂きにしてやりたいくらいだった
2775円 握る拳に力を込めてマニューラはラプラスに向かって走り出した
ラプラスが口元に冷気のようなものを溜めたのをマニューラは見逃さなかった
「・・・!」
それが発射されると同時にマニューラは左に飛び込むように跳んだ 後ろの方にに光と冷気を感じながら直ぐに立ち上がりラプラスに目掛けて走り出す が、交わしたはずの青い光線が途切れることなくこちらに近付いてきているのに目がついた
ラプラスは「れいとうビーム」を放ったまま顔をマニューラに向けてゆっくり動かし、逃げる黒猫を捕らえんとしていた
だがマニューラはそのままラプラスに一直線に走りつづける 僅かにマニューラの速さよりビームが近づいてくる早さの方が早く段々と距離が縮んでいく 最初に襲ってきたのと同じ強い冷気がチリチリと肌を焦がすような感覚に顔をゆがめながらもマニューラは走る足を決して緩めようとはしない
青白い光線がマニューラに触れそうになったその瞬間 マニューラは体を反らすように回転させながらラプラスに向かって跳んだ ビームの周りをクルリと回るように交わすとすぐ近くに驚いた様子のラプラスの顔が迫る
次の瞬間 雪原に鮮血が飛び散った マニューラは回転した勢いで爪を思いっきり繰り出しラプラスの首から腹にかけて強引に引き裂く 生暖かい血液が地面の雪を溶かし、床にこぼした絵の具のように滲む
すぐにマニューラは後退し距離を遠ざけ相手の様子を確認する
ラプラスは目を瞑ったまま痛みとショックで動けない様子だった
今だ・・・とマニューラが目を瞑って右手の拳を握り集中し始める
するとマニューラの右の拳が白く輝き始め周囲に光を放つ
マニューラの誤算はこの時にラプラスから目を離していたことだった
そして暫くするとその輝きが光を大きく放ちマニューラの右拳を包み込む
そして再び走り出すマニューラ
手負いしたラプラスから2m程度離れたところで走り幅跳びの要領で跳んだ そして拳を後ろに構え前に繰り出す
「ハッ!」
しかしマニューラは見逃さなかった・・・・・・きあいパンチを放つその一瞬ラプラスがにぃっと笑ったのを・・・ 次の瞬間マニューラの拳は宙を切りその勢いのまま広がる空間に投げ出される
そして次に目にした光景はまだ凍り付いていない冬の湖だった そして振り向くとすれ違い際にそれへとマニューラを押し出した青い鰭・・・
うそ――
ザブン・・・
・・・・・・!
海に沈んだ瞬間にマニューラの体は縮み上がりそうになった 急速な体温変化に体が付いていけず、もがけばもがくほど息も苦しくなり痙攣したように体のあちこちがビクついて思うように動かす事が出来ない
-ダメだ・・・!落ち着け・・・落ち着け!-
心で強くそう思いながらも体は思うように動かず、暗い水中へあっと言う間に沈んでいく 呼吸を落ち着けマニューラは冷静に上の明るみに向けて泳ごうとした しかしどうしたのか体に力が入らず手足が言うことを聞かない
-どうしたんだ・・・・・・力がでない・・・-
その時上の方からざぶ・・・・・・と低い水音がした
「がぼ・・・・・・・・・?・・・」
口の端から小さな空気の泡を吐き出し 淡く開いた瞳でその影を朧気に見つめる マニューラが気付いた瞬間にその影はマニューラに向かって伸び、数秒後には鈍い音を水中で響かせる
「・・・・・・!」
まるで宇宙空間の様にスローモーションにマニューラが吹き飛ばされる 息も出来ないこの状況で巨大なラプラスの強力な体当たりを受けて体の酸素がさらに奪われ、同時に最初のような腹がえぐれたような鈍い痛みを覚えマニューラを更に苦しめる 水の抵抗で吹き飛んだ勢いが緩み始め、ようやくマニューラが落ち着いた時ラプラスはマニューラの正面に回り込み次の攻撃を仕掛けた
ラプラスは口元にオレンジ色をした波動をため込み直にマニューラに向けてそれを放つ
爆発したように水しぶきが上がると同時にマニューラが湖から飛び出してきた 「ぅあ! はぁ・・・はぁ・・・・・・ぅう・・・!」
「はかいこうせん」をまともに受けたマニューラは地面に転がりうつ伏せに倒れ込む ようやく呼吸はできるようになったが冷水で濡れた体に冬の風が直に直撃しひどい寒気が襲ってくる
「くぅ・・・寒い・・・・・・」
すぐにラプラスも地上に這い出てきた その胸には最初にマニューラが繰り出した攻撃の跡がうっすらと残っている それは「じこさいせい」という技のおかげだった マニューラが「きあいパンチ」を放つ準備をしていた時から発動していたのだろう
傷を負った振りをしたのはマニューラに単純な攻撃を誘うための物だったのだ
ラプラスは地上の上でマニューラにヒタヒタと近寄りその足をくわえた そしてそのままマニューラの体ごと易々と持ち上げる
マニューラは体にふんわりと浮かぶような感覚を覚えた 足をくわえられた事には冷水で冷え切って感覚のない足のせいで気づいていない
「・・・? ぐぁ!・・・」
痛みがおそった瞬間に寒気も吹き飛んだ
「・・・!・・・・・・っ!・・・・・・」 雪越しに張っている硬い氷にマニューラがぶつかる度に雪煙がまう
ラプラスは何度もマニューラの足をくわえたまま固い地面に叩きつけていた
運悪く頭でも打ってしまったら元も子もない 出来るだけ腕で頭や体をかばうように覆いながら叩かれるような痛みに必死で耐える
何回か地面にたたきつけられた後ラプラスはくわえていたマニューラを口から離した
「う・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・・・・・・・?!っぁぁぁぁあああ・・・・・・!」
氷の上に仰向けになったマニューラにラプラスがのしかかる
「ぅ・・・・・・へぁ゙ぁ・・・ぅ゙・・・・・・ぁ゙・・・」
既にボロボロになった体が更に悲鳴をあげ耐えがたい痛みがマニューラを襲う 足はあらぬ方向にねじ曲げられたまま押しつぶされ体もぎしぎしと軋むような痛みに襲われる
しばらくしてようやくラプラスはそっとその体をマニューラから退いた
「げほっ・・・!」
ぐったりと仰向けに寝転んでしばらくすると気を失ってしまいそうな程の強烈な吐き気とめまいに襲われる そのまま気を失ってしまいそうになるのを耐えながらマニューラは目を食いしばる
しばらくするとまるで頭痛にでも襲われたように外の明るさが鬱陶しく感じ始め、気持ちの悪いその感覚を遮ろうと腕で顔を覆って外の眩しさから逃れようとする
不意に、塗れた暖かいものがかぶさりマニューラをべろんとこすりあげた
「な・・・・・・?」
鬱陶しそうに目を開くマニューラ その顔は透明な液体に濡れていた
見るとラプラスが口を開いていてその中で長い舌が収まっていた そしてラプラスは口をもにもにと動かしている 味見のつもりなのだろう
味を確認するようにラプラスは長い舌をマニューラに何度も這わせ始めた
マニューラは舌で擦りあげられる度に感じるその暖かい感触に自分でも考えると気味が悪い程の安心感を覚えていた それは恐怖も入り交じった物であった
何回か舐め上げられた後 ラプラスはマニューラの足をくわえた
「はぅ!・・・いやだぁ!」
マニューラにはその行為の意味を直ぐに読み取った
しかし体は痛みで自由に動かずかえってラプラスがくわえ込むのを助けてしまっていた 既にラプラスはマニューラの腰までくわえんとしていた
「やめて・・・・・・」
ホフク前進するように這いずるマニューラ しかし遂には口ごと持ち上げられ触れていた雪の感触もなくなる その地面と離れる瞬間にマニューラの恐怖は極致に達した
「やだぁ!」
あぐっ・・・と口をくわえ込みマニューラを口内へと収めていくラプラス
「あぁ・・・あぁ・・・!」
足で口内を蹴る しかし柔らかい舌に衝撃を受け止められるだけだ
鋭い鉤爪を振るう しかし力なく降られたその腕は空を切るばかりだ
時間が経ちマニューラは既にラプラスの口内に閉じ込められてしまった
マニューラが口内に収まるとラプラスは待っていたかのように舌をうねらせた
飢えたように止めどなくあふれる唾液の海に何度も溺れそうになるが 暖かいそれが冷え切っていた体を包み込む
さらっとした水っぽい唾液が体毛に染み込んでいきマニューラを汚すがラプラスはそうしてにじみ出たマニューラの味を唾液と一緒に喉に流し込むと満足そうにくぅーん・・・と鳴いた
そしてゴクリと丸呑みにした
柔らかい内壁に包まれマニューラが胃袋へと運ばれていく
寒さに凍えていたマニューラにとって胃袋はとても暖かかった
が、鼻を突く何か酸っぱい様な臭いからここに居座り続けたらどうなるかは大体予想がついた
しかし体が動かない 腕は体をかばった時に酷く痛めてしまったし、脚が痛みで動かないのはのし掛かられた時にあらぬ方向に捻ってしまったからだ
今は寝返りでもするように体をもぞもぞと上体を動かすのが精一杯だった
気付くと体は黄色い粘液に浸かっていた
不思議と痛みはなかった 気絶してしまいそうな程のめまいも、異常な吐き気もいつの間にか退いていた
しかし体・・・・・・体毛の生え際がビリビリと痺れるような感覚に体の自由は奪われていた が、その感覚―――体が麻酔にでもかかったような感触はとても心地よく、動けない事に苛立ちを覚えることはなくマニューラは満足げにうつらうつらとしてしまう
何もない真っ暗な空間はマニューラを阻害するものも何もない いけない・・・と思いつつも眠気は体に容赦なく降り懸かってくる
ーごめんねベイリーフ・・・ベイリーフまで巻き込んじゃって・・・自分が早くベイリーフの事を気遣っていればこんな事には・・・でも自分だって頑張って戦ったんだよ?信じてよベイリーフ・・・・・・ー
マニューラの意識はそこで途絶えた
ラプラスは久しぶりの食事に満足していた これで一週間は持つだろう おまけにもう一匹食事が出来た しばらくは食事の心配がいらない
広がる雪原にベイリーフの遺体だけが転がっていた
終盤短くなってしまいましたが取り敢えず完結しました 初の小説書きだったので文章力のなさや読みがいもなかったかもしれません・・・ だからこそ読者のみなさまの意見がとても参考になります 最後のお願いになるか分かりませんがこの小説を見た方は是非感想をいただきたいです
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