Re: 吹雪の島 ( No.2 ) |
- 日時: 2009/12/21 01:49
- 名前: ジイア
- 雪の降り積もる寒い冬の朝・・・・・・朝日がとある町の姿を照らしている
生命を育む太陽の光が、空から大地へと降り注ぐ粉雪に反射して輝くその光景は、なんとも美しいものだ
この町は古くからある有名な町で中央には大きな広場がありその北と南には商店街が広がっている そこでは食料や道具はもちろん、日用品やポケモンの爪や牙・・・はたまた祭りの露店のような食事をする所など・・・・・・たくさんの店がある大きな商店街である
そして商店街の真ん中にある広場は買い物を終えたポケモンや旅の途中で休んでいくポケモンなど様々なポケモンが集まる憩いの場として有名だ
そんな広場から西に歩いていくと大きな建物がある
そこはギルドという場所で、そこでは未開の地の捜索、探し物 悪い事をしているポケモン おたずねものの御用など様々な依頼が集まり その依頼をこなし困っているポケモン達を助けるポケモン達のグループ「探検隊」の拠点の場である
これはその探検隊の物語
広場から離れた所 正確に言えば南側の商店街をそれなりに進んだところにある曲がり角を左にしばらく進んだ所に家があった
他にも家はたくさんあるのだが、塗装されたばかりの壁や外の雪景色を映し出すぴかぴかの窓は それがまだ建てられたばかりの家ということを物語っている
そんな家の二階の部屋の窓には一匹のポケモンがすやすやと眠っているのが見える
その部屋には机とイス そしてポケモンの寝ているベッド そのベッドの横には小さな本棚がありいくつかの本が綺麗に並べられていた
一人の部屋としては少しばかり広いこの部屋に静かな時間が流れていた
かちゃ・・・・・・・・・キィ・・・
ふと扉の開く音が部屋の中に響く そしてのし・・・のし・・・・・・という足音と一緒に聞こえてくる木の床が軋む音・・・
またあるポケモンが部屋に入ってきて寝ているポケモンに「ぉーい・・・」と声をかける
「・・・・・・」
しかし暖かいベッドで深々と眠っているポケモンにはその声は届かず、反応と言ってもただ寝返りをうって仰向けになるだけだった
「おきなよー・・・」
そんなポケモンに少し呆れたようにもう一匹が長い首をズイと伸ばして大きな声で話しかける
「ぅ・・・ん・・・・・?」
寝ていたポケモンに意識が徐々に戻り目をゆっくりと開ける
誰かが顔をのぞき込んでいる
しかしまるでピントのあっていない写真のようにぼんやりとしかその輪郭が見えず言葉がでない
するとその「誰か」が前足を伸ばして彼の体をゆさゆさと揺すりながら
「もう・・・寝ぼけないで起きなってば!」
少し声を荒げて喋りかけてきた。耳に入ってくる少し可愛らしい声に彼は聞き覚えがあった 安堵したように
「ん・・・あぁ、おはよぅ・・・」
起き上がって眠い目をこすりながら答える起こされたポケモン・・・しかしまだ眠いのだろう ベッドから体を起こすまではよかったが、立ち上がる元気もないようでベッドの横に目を瞑ったまま腰掛け「はぁ〜あ・・・」とため息をもらす
そんな様子を見てもう一匹のポケモンは・・・
「っ・・・!だからさっさと起きなって・・・・・・ば!」
首を軽く左に振り回すとその勢いで頭についた葉っぱのようなものでぴしゃりと寝ぼけたポケモンの顔をはたいた
「!?」
声をあげるほどではなかった しかしびっくりしたように目を開けると、声の主が珍しい物でも見るように驚いた顔のポケモンを見つめている
大きく、とても綺麗で純粋な目、大地を踏みしめる4本の足、そして頭の大きな葉っぱが特徴的なポケモン
このポケモンの仲間であるベイリーフだ
「いきなり叩くなん・・・・・・あーはいはいそんな怖い顔しなくてもおきますよー・・・っと・・・」
そしてぶつぶつ文句を言うようにゆっくりとベッドから立ち上がったポケモン・・・頭には赤い扇のような飾り 白くてとても鋭い爪 そして窓から入ってくる日光によって鈍く輝く黒っぽい体毛・・・
かぎつめポケモンのマニューラである
「ごめん・・・ひとつ聞いていいかな・・・・・・?」
ベイリーフがきょとんとした顔で真面目・・・というよりは真剣そうな顔をしたマニューラを見つめる
普段はマニューラの方が早起きで自分が起こされる方が多いから寝坊助の自分に起こされて気分悪くするのも無理無いか・・・としんみりした気持ちになってしまうベイリーフ がマニューラの次の言葉に安心したようにベイリーフも言った
「・・・あと五分ぐらい寝て良い?」
「なにバカなこと言ってんのさ・・・まったく・・・・・・ふふ・・・♪」
「はははは・・・・・・もう大丈夫だよ さぁて!今日も頑張ろうね ベイリーフ」
「うん♪じゃあ朝御飯食べてギルドに行こう〜!」
仲のよい二匹の楽しそうな声が部屋に響き ベイリーフは元気に部屋を飛び出してドタドタと下に降りていった
ベイリーフが下へ行き一人自分の部屋に残されたマニューラはベッドのすぐ横にある窓から外の景色を眺めた
「ふぁ〜ぁ・・・・・・・・・ぅ・・・?」
雲一つない澄んだ青空 その下では子供のポケモン達がキャッキャと嬉しそうに広場の方へ向かうのが見える そして子供にゆっくりとついて行く大人のポケモンの夫婦・・・・・・素晴らしいまでに幸せそうな家族だった
黙ってその光景を見ていたマニューラだったが ふと 「うらやましいよ・・・」 と呟く その目には少しだけ涙がたまっているように見えた
「もうすぐクリスマスだなぁ・・・・・」
腕で目を拭うとマニューラもゆっくりと下に降りていった
たっ・・・たっ・・・た・・・
マニューラはゆっくりと階段を下り、朝日が照らすリビングにたどり着いた
キッチンの方ではオーブントースターからパンの焼ける香ばしい匂いがマニューラを歓迎するかのように立ちこめている
「気持ちのいい朝だな〜」 独り言のように呟いてから伸びをしてキッチンに入るマニューラ そこには既にベイリーフがいて食器棚の上に前足をかけてオーブントースターをじっとのぞいている
パンの焼き加減を見ているのだろう 短い尻尾を上下に振って焼ける様子を楽しそうに見ている
マニューラは古びたガスコンロの前まで歩いて行き火をいれた
青い炎が燃えている上には大きな鍋がありその中には野菜とソーセージの入ったスープがあった
−5分後−
「んじゃ いただきま〜す」 「いただきまぁす」
二匹はリビングで元気にご飯を食べ始める
テーブルの上の皿とマグカップにはにはさっきのスープとベーコンとチーズの乗ったパンがあった
ズズ・・・・・
「うーん 一日置いたのはまたソーセージの油が染み出してて旨いね〜・・・ぁー なんかこう・・・濃厚ってゆーかぁ♪」
ベイリーフがマグカップの中に頭をつっこんで言う
「あ〜ホント?・・・・・・また機会があったら作るよ・・・・・・」
「うん♪そういえばさぁもうすぐクリスマスだね」
「だねぇ・・・明後日かぁ・・・・・・」
「ねぇ クリスマスでも仕事あんのかな?」 ふとベイリーフが聞く 仕事とは探検隊の依頼のことだ
「そりゃあるでしょ クリスマスで町が賑わってる中に紛れてなんかやらかす奴はいると思うよ?」
「そっか〜・・・ゆっくり出来ないのかな・・・・・・クリスマスぐらい」 パンをくわえて浮かない顔をするベイリーフ
「仕方ないでしょ 職業上・・・」 呆れたように言ったマニューラだったが正直マニューラ自身も今年のクリスマスは久々にゆっくり過ごしたかった
-去年や一昨年は探検隊になるためにずっと勉強や修行・・・・・・で、3年ぐらい前・・・は・・・・・・・・・えっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・-
ふとマニューラの頭の中でとある記憶がよみがえる
それは自分がまだ幼い時の事
その時もクリスマスの前だったような気がする
「この野郎!」
「・・ひぐっ・・・・・・ぅ・・・!」
ある家ですすり泣きながら時々苦しむような声が聞こえる そしてそれに向かって罵声を浴びせながら蹴りつけているポケモン
大人のマニューラだ これはマニューラの父親である
そして小さい体を縮こまらせて大人に背を向け必死に耐えているのはまだ進化する前のマニューラであった
マニューラ いやニューラにはたくさんのアザがあり 体のあちこちが腫れ上がっている
詳細は不明だが何故かニューラは父親によく殴られていたらしい
頭の中で思い返すほど アルバムでも見ているように記憶が溢れ出してくる
毎日毎日痛む体 自分はこんな地獄のような事から早く逃げ出したかったんだ
お母さんは優しくしてくれたけどあいつに脅されて何も言えないし・・・
アザの事とか聞かれたら「転んだ」なーんて言ってごまかすしかなかったな・・・
結局家を出ていくまではあの女も何も知らずにぬけぬけと暮らしてたんだ・・・・・・ 独りで考えているだけで憤りにも近い気持ちがこみ上げてきた
でももう大丈夫・・・・・・そう・・・3年前のクリスマスぐらいに家を出たんだっけ こっそり金をくすねて・・・町の雰囲気に紛れてとにかく遠くに・・・
今じゃ笑い事だね・・・・・・
はぁ・・・・・・いったいどうしてんだか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「おーい・・・」
ベイリーフの声にマニューラはハッと我に返った
「へ?どうしたの?」 とぼけたように聞くマニューラ
「いきなり黙り込むもんだから・・・そっちこそどうしたのさ?」
「なんでもないよ」
「ふ〜ん なら良いんだけど・・・♪」 意地悪そうな笑みでマニューラを見つめるベイリーフ
見つめられたマニューラは少し焦ったように 「だから何でもないってば!!」 と怒鳴り散らす
「はいはい分かったからさぁ さっさとご飯食べちゃいなよぉ♪」 ベイリーフはこれまでの事をあっさり流してしまいにっこりとマニューラに笑いかける
「・・・・・!」(腹立つなぁ・・・・・)
完全に言い負かされてしまったマニューラは赤面しながら少し冷めたスープを飲んだのだった・・・・・・・・・
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