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忌々しき存在
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竜は目線を外したままずっと何か考えている…
不思議なことに殺気や悪意が全くと言っていいほど感じられない…
また取って食う…ということでもないらしい
しかし本当に何故助けたのだろうか…
見れば…体に刻み込まれた筈の傷一つ無く、濡れた感触もない。
確かに俺は…喰われた…
この目の前の竜に捕まえられ…弄ばれて…溶かされて…死んだ…?
頭を抱えて記憶を辿っていると
ぐねっと首を曲げて竜が鋭い目線を自分へと投げ掛けてきた。
俺を無表情で見下しながら首元にその硝子のように透き通った爪先を突きつけてきた。
「ひいっ・・・!」
「動くと死ぬぞ」
さぁーっと表情が引いていき顔が青ざめる。
ぞわぞわっ…と背中の毛が逆立つ。
少しでも動いたら本当に喉元に突き刺さってしまいそうだ。
一瞬ニヤッと竜に恍惚の表情が浮かんだかのように見えた。
やはり逃してくれるつもりは毛頭無いらしい。
どちらにしろ生きては帰れそうにもない…
喜んだ方がいいのか…悲しんだ方がいいのか…分からない。
「やめて」とか「助けて」とか命乞いする気力もない。
もうやっと終わると待っていた安心感が断ち切られ、再びこの地に戻されたのだ。もはや抵抗心なんてひとっ欠片も残っちゃいない。青ざめた顔に暗くどんよりと疲労感が滲みでる
何をしたって無駄…っていう絶望感だけが影に濃く映る
くくっとまた上から聞き覚えのある笑い声が聞こえる。
「安心せい、取り敢えず服を破るぞ」
「ぇ…え!?」
安心しろという命令の次に的外れなことを言ってきた服を破る…脱がす!?
何を言ってるんだこの竜は!?
ビリビリビリッ
有無も言わさぬとばかりに痛々しい爪先が降り下ろされ、服にすっと切れ目が入る
「ち、ちょっと待っ」
「くく…安心せいと言ったろう」
数秒もせず無惨に服を引き裂かれ間髪入れず竜の手から解放され、地面の上にへたり込んでしまう。
…竜は何を笑っているのか遣る瀬無い悔しさと共に途方もない虚しさが心を深く傷つけ、その傷を身に染みる空気の冷たさが更に深く抉る。
竜の腕が上げられる。
ばっと首を上にあげ覚悟する。今度こそ終わりだっ…その爪が降り下ろされ………なかった。
その爪先を器用に使いぺらっと鱗上の皮のようなものをめくっていた。
「な…何をする気だ…!?」
好奇心寄りの不安も含めつい興味本位で尋ねてしまう。
「じきに分かる」
と、だけ言ってその'何か'を体に押し付けてきた。
抵抗したら爪が当たりそうで惨めさを一心に受けビクビクしながら、されるがままにそのペラペラしたものをググッと指の腹で押さえられる。
すると…色が薄くなって皮膚の色に馴染んでいき…すうっと消えた。
何とも…ない。意識も大した違和感は感じられない
。一体何をされたのか…?
「さて、我の唾液を飲め」
唾液…!?
ますます相手の意図が掴めない。
服まで脱がせてどれだけ惨めな思いをしろというのか…。
「何をする気…?」
もやもやとした何が待っているかも分からない未知の不安に声をがわなわな震わせながら再びそう訊いた。
「飲めば分かる。」
答えは帰ってこず、はっきりと示さないままただ頷くだけで、ヒント一つですら教えてはくれない。
途端、竜がぐばあっっと大きな音を立てて巨口を開いた。
舌が頭の上に垂れてぴちゃっと髪の上に涎が掛かると反射的にはっと上を向いてしまいべしゃっ!とバケツ一杯分の水を浴びせられるようにトロリとした涎の塊を顔面に受け止めてしまった。
うっ……?!じわりと口に混じる不快感にそれを取り払おうと両手で
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