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忌々しき存在
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む?
誰かがあの広場に来たようだ。
自ら来てくれるとは…ありがたい。
餌を探しに行く手間を省けた。
そう思いながら、重い躯を持ち上げた。
「ククッ」
いつものように喉で笑うと、大きく翼を広げ、「生贄の広場」へと飛んでいく。
昔は人間の行事として、神に自分の身を捧げるというものがあり、それを生贄と言ったようだ。
そのために、「生贄の広場」で聖歌を歌ったとか、聞いたことがある…ような気がする。
しかし今では我が占領し、本当の意味での「生贄の広場」となっている。
その広場では一人の男が佇んでいた。
なんとも無防備で、そして遠くから見ているだけでも、旨そうな匂いが漂ってくる。
「おい、そこの人間」
人間が自分の影の中に入らないように、空中で音もなく留まりながらそう言った。
三方を囲まれた岩に反響した声は、どこから聞こえてくるか分からなくさせてしまうらしい。
その人間は我の居る方向とは違う方向にぱっと振り返った。
その隙をついて、我は一気に急降下して餌が振り返ろうとしたところで、手をその小さな人間の顔に押しつけた。
「むぐっ!?」
そのまま餌の体全体を掴み、軽々と上に持ち上げていく。
「Nnnnoo〜〜」
餌は無駄に足をばたばたとさせている。
無駄な足掻き…いや、足掻きにもなってないが。
手を顔の近くまで持ってくると、顔から手をどけた。
暗闇の恐怖から解放されたのも束の間、この恐ろしい赤き悪魔の顔が視界一面に広がっていることだろう。
こうすることで餌が感じる恐怖を倍増させている。我の常套手段なのだ。
案の定、餌は我の顔を見るなり怯えている様子だった。
この怯え顔は人それぞれ違うのだが、誰の怯え顔を見ても口の中に唾液が溜まってしまう。
「どうした?怯えて声も出ないか?」
これまた常套句であった。
「ぁ…ぁ…」
よくある常套句でも、時と場合によっては変に凝るより効果が上がったりするものである。
餌の絶望した表情に、思わず喉でククッと笑った。
餌を捕まえ、餌が絶望する中それを楽しみながら食らう…それがどれ程の喜びか、言葉にするのは難しい。
「では…
グアッと大きく口を開けながら言った。
そして舌をぐねぐねと動かし、ねちゃねちゃと溢れ出る唾液を絡めながら大きく音を立たせる。
その様子を餌に見せつける。さぞ怖かろう…
いつもよりも唾液が多めに出ていて、口元から少し涎が垂れている。
ククッ 味に期待できる。
いただきます」
餌を口に入れると、バクッと勢いよく口を閉じた。
その途端、口内いっぱいに人間の旨味が広がっていく。
「旨い…ジュルッ」
口から漏れ出そうになる唾液を無意識のうちにすすった。
旨味を外に出すのは勿体ない。
口の中はあっという間にヌルヌルの唾液で満たされていく。
「むぐぐ…ゴポッ…」
「おっと、溺れさせる所だった。ククッ」
いつの間にか舌の上から落ちていた餌を舌で探し、そのまま餌を舌で巻き付けて唾液の海から引き揚げた。
勿論そのまま離すという訳ではない。そのまま舌にグッと力を込める。
「…ゥグ…」
舌にボコボコと蹴られる感触があった。きっと抵抗しているつもりだろうが、我には物足りないマッサージ程度だった。
我は暫く舌を緩めたり締め付けたりしていたが、その行為が飽たので舌の拘束を解いてやった。
餌は舌の上に寝っ転がっているようだった。
そのまま軽くコロコロと、舌を傾けながら口の中で転がしてみると、舌に旨味がべっとりとまとわりついた。
ここまで味が長持ちする人間も今まで喰っ
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