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出会ったもの
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「おやおや、こんな所に小さなお客さんが…」
少女の目の前に現れたのは一匹の大蛇。
その躯は漆黒の鱗に覆われており、内側は黒に近い紫色。
更にシルクハットと蝶ネクタイを身に付けているという普通の蛇とは明らかに違う雰囲気を放っている。
そんな彼が彼女に話し掛けた。
毒々しい外見とは裏腹に、喋り方は何処か品がある。
「迷子ですかな?」
黒の中で光る二つの黄色。
柔和に細められたそれは、彼の怪しい雰囲気を更に濃くした。
初対面であり、その存在に圧倒された少女は何も言えずにコクリと頷くだけ。
「怖がる必要はありませんよ?
私(わたくし)はセルパンと申します
この森に長く住む者でして…助けが必要とならば、手を貸しますよ?
実際手なんてありませんがね、ハハ…」
尻尾で器用に帽子をとり、頭を下げる。
そして彼なりのジョークも混ぜた自己紹介をした。
彼の小さな笑いに少女も苦笑したが、それのお陰で緊張が少し和らぐ。
一瞬間があった次の瞬間に少女は、その小さく緩んだ口から道案内してくださいと頼みの言葉を発する。
「では案内しましょう」
頼みを聞き入れたセルパンは、長い体を動かし前に進み始めた。
少女は重い酒瓶が入った袋を抱えながら、はぐれない様に彼の後をついて行った…
「もう少しですよ」
森の中を進み始めて、結構な時間が経った。
普通ならもうとっくに目的に着いてるはずだった。
だが、彼等はまだ森の中を歩いている。
それも仕方ない。
少女はまだ幼い故に歩く速さが遅く、体力も少ない。
セルパンも彼女に合わせていた為にこんな時間になってしまったのだ。
…と少女は思い込んでいた。
沈む夕陽が木々の隙間から彼等を淡い橙色に染める。
「ちょっと待って…」
振り返れば少女は疲れたようで立ち止まっていた。
すぐ隣には酒瓶が入った袋が置かれている。
重い酒瓶のせいで少ない体力は更に削られ、今の状態となってしまったわけだ。
荒めの呼吸を零しながら、彼女は疑問に思った事を口にした。
「本当にこの道であってるの…?」
少女が疑うのも無理もなかった。
今彼等は森の奥にいるらしい。
近道と言えば納得できそうだが、それはいくら少女の歩く速さが遅くても時間がかかりすぎている。
道も無い草と木々だけが生い茂った場所を歩き続け、疲弊が溜まり我慢もし難くなってきたようだ。
そんな彼女にセルパンは目を閉じ、こう言った。
「お嬢さん、もう日が暮れて夜になります」
前を向いていた体が少女の方へと向く。
太陽をバックにしたせいで、少女から見れば黒い塊にしか見えなくなっている。
そのせいで表情は全く伺えない。
夜になってしまえば、魔物が出て来て少女を食べてしまう。
そんな事でも言うのではないかと彼女は予想した。
「この時間と言えば夕食…生き物が何かを食す時間です
この意味が分かりますかな?」
一瞬の間があり、セルパンが再び口を開く。
彼の口から放たれた言葉は少女の予想とは違い、上手く伝わらなかった。
それが小首を傾げるという仕草に表れる。
そんな彼女にセルパンはゆっくり近づき、顔を見つめた。
彼の黄色の瞳が妖しく光っている。
「…っ!?」
気がつけば、少女の逃げ道を阻むように彼の胴体が彼女の周りを囲んでいた。
顔は彼女に近づけられ、チロチロと何度も舌を覗かせる。
何処と無く感じる嫌な予感。
本能が危険だと彼女に告げる。
しかし、逃げようという意思に至った時には既に手遅れだった。
少女の体は巨大なとぐろの中にあったのだ。
何かの間違いだと少女は彼
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