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輝いたその先にあるもの
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朝方、まだ日も上っていないこの時間帯に、バクフーンはランプの明かりを頼りにメモを書いていた。
宛先は彼の視界の向こう側にいる、小さいときからずっといる親友にである。
「イーブイ……」
不意にその親友の名を口にする。お前に会ったのが、ついこの間のように感じられた。
あの時、お前に会えたのは単なる偶然だったのだろうか。少なくとも、俺にはそう思えない。会うべきして出会った、そう感じられる。
「むにゃ、バクフーン……」
可愛らしい寝言に、思わず笑みがこぼれる。と同時に、これから自分がする事がどれだけイーブイを苦しめるのかを感じて、バクフーン自身も胸が苦しくなった。
しかしこれはもう決めたこと。今更この計画を白紙に戻すことなんてできない。
「ごめん、イーブイ」
あらかた書き終え、バクフーンはゆっくりと立ち上がる。暗い趣きとは裏腹に、親友は変わらずぐっすりと眠っていた。
もしかしたら、これが最後の日になるかもしれない。溢れだす感情を押さえつけて、彼は用意しておいた荷物を手に取る。
消えかけていた暖炉の火を直して、バクフーンは一人寂しい外の世界へと足を踏み出した。一度たりとも振り返らずに。
「バンギラス!」
あまりの大声に、彼はびくりと反応し、そのままごろりと地面に落ちた。
「痛っ……。んだよイーブイ、せっかく気持ちよく寝てたのに」
寝起きでむくんだままの顔をイーブイに向けながら、バンギラスは頭を掻いた。
「バクフーン知らない? 朝起きたらこんなものが……」
「あー? なんだこれ、メモ?」
差し出された紙切れを手に取り、目を擦って見慣れたムカつく文字を見る。
――イーブイ、しばらくは戻れないかもしれないから、家のこと色々頼む。ごめんな。
ここまでは至って普通の書き置きだ。ムカつくのはこの先。
――P.S.バンギラスはしっかりイーブイの面倒を見ること。間違っても食べないように。
「……だーっ! ムカつく! 何だこの追伸!」
あまりの腹立ちに、バンギラスは勢いよくメモを引き裂いて風に流した。その様子は野獣そのものだったが、イーブイにとっては見慣れていた。
「知らない?」
「知るねぇよ、あんなやつ!」
フンッと鼻をならしてそっぽを向く。まったく子供なのか獣なのかよく分からない。
「何か言ったか?」
ぎろりと鋭い眼光をイーブイに向けて、これまた鋭い口調で言った。
「ううん、何でもない」
「たくっ、あの野郎、帰ってきたら半殺しに……ん?」
何かをひらめいたかのように、バンギラスは目を見開いた。
「ど、どうしたの? バンギラ――」
最後まで言わせずに、バンギラスはイーブイをそのゴツい腕でがっしりと掴んだ。
「あいつ、バカだよなぁ。わざわざオレに教えるなんてよ」
「え、ちょっ……」
「今ならどんだけお前をいたぶってもうるさく言われないしな」
その顔は、初めて会った時の顔とまったく同じだった。あの、獲物を捕まえたときの野獣の顔だ。
「ままま、まってバンギラス! まだ心の準備が」
「んなもん知るか、腹いせにお前で遊んでやる」
そのままイーブイは、なされるがままにバンギラスに持ち上げられ、べろんと一舐めされた。一瞬で彼の顔は唾液にまみれる。その量は、顔だけでは足りず、ボタボタと地面に滴るほど。
「んぶっ! バン……ギラス」
「相変わらずの味してやがるな、イーブイ」
ずるりと舌舐めずりをしてにやけるバンギラス。久しぶりの吟味に、喜びを隠せないようだった。
「さーて、まだまだ続くぜー?」
「あわわっ――あぶっ!」
幾
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