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【保】研究の章 -命の代価-
01
サリゼイア研究所 山岳支部 実地検測員 ーリュートー 及び ーフォルアー 研究報告
研究対象名
ードラゴンー
【リュート、そろそろ見えてくる筈だから警戒して進んでね。】
肩に付いている無線機から声がする。 どうやら女性の声らしい。
『あぁ、了解した。』
かなりの荷物を担ぎながら、山道を登っている男性らしき人間。
そう返事をしながら辺りを警戒して、何かを探しているようだった。
『・・・っ!』
そして、少し開けた場所に出ようとした瞬間に突然身を隠して物陰からそっと様子を窺う。
左右に生えた一対の翼、太陽の光に煌めく全身を覆う鱗。
顔は聡明としていて、じっと遠くを見ている。
そして長い尻尾。 10mはあるだろうと思われる巨体。
『此方リュート。 対象(ターゲット)を視認した。』
物陰に隠れながら、無線に向かって小声で語りかける。
【やっぱり、ドラゴンが居るのは本当だったのね・・・。 リュート、夜になるまで待って、寝静まった時を狙いましょう。】
『分かった。 さっき見つけた小さな洞窟の中で準備を整えて、夜まで待機する。』
そう言って、来た道を少し戻った場所にある洞窟にテントを設置、機材を準備し始める。
【必要最低限の物はこっちから指示するから、それ以外のモノは余り携帯しないようにしてね。】
無線機からは女性がテキパキと必要最低限のモノを言って、それに従うように服のポケットに小さな音声映像記録・及び送信用の装置、懐中電灯。
『っ・・・ふう。』
無線機からは的確なアドバイスが聞こえてくる。
【準備が終わったら、夜になるまで体力を温存しておいて。・・・この報告で、私達は本部勤務が可能になる・・・頑張ってね。】
『あぁ。 俺達の未来の為の第一歩を、失敗するわけにはいかないからな。』
そんな会話をして、そのまま眠りにつく。
そして夜になる。 今日は新月と言う事もあって、月光で照らされる事は無いと思いながらも、先程ドラゴンを見た場所まで移動する。
『フォルア、ドラゴンはもう寝静まっている・・・これから接近を開始、記録も随時送信する。』
【了解。・・・リュート、油断しちゃ駄目よ・・・。】
『分かった。 通信は切るぞ。』
通信を切断し、足音をたてないようにドラゴンに接近していく。
完全に寝静まっているのか、呼吸をする度に身体が小さく動いている。
『後、数mか・・・』
ゆっくり接近しながら、その身体の側面に回り込む。
ドラゴンは起きている時、基本的に二足歩行で寝るときは獣のように身体を倒して丸まりながら寝ると言う情報は世界各地で発表されているが、
今回、この2人が挑むのは
ドラゴンの生態、そして観察結果を報告すること。
実際に寝ている姿を観察しているのは世界でも希少な観察結果である。
ドラゴンの眠っている姿を観察し、接近して映像と音声を記録、発表をするのが本部勤務の条件として2人に提示されたのである。
『鱗はかなりの硬度を・・・翼は、折りたためるのか。』
そう呟きながら、顔の真っ正面まで移動する。
牙が口の中に所狭しと並び、その巨大な口からは突風のような寝息が出ている。
『興味深いが・・・ まあこれぐらいあれば、十分だろう。』
数十分に及んだ観察結果を送信し終わり、ドラゴンから少し離れた場所でしゃがみ、無線機に手を伸ばす。
『観察を終わった。これから研究所にもど・・・』
ひゅんっ! シュルゥッ!!
『!? グァァァァッ!!』
【リュート!?】
−オロカモノメ、キヅイテイナイトデモオモッタカ
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