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草の根かきわけて
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− とある決意 −
腹減ったなあ。あれからもう4日、俺はずっと何も食べていない。
せっかく生き残ったのにこのまま死んじまうのか? いいや、もう半分以上死んだようなものか。結局、解決策は何一つなかった。ヒントすら得る事ができなかった。もう、元には戻れねえんだ。
俺の目の前には自分の鋭い爪、その手前には肉球、尻尾は長くて場所を取る。この恨めしい姿に俺自身がなっちまった。そしてこれからも。
もう、諦めちまおうか。どうせあの時に落していた命だ。今更生きていく理由もねえし、いっそこのまま・・・・・
俺は、静かに目を瞑った。
どこからか、良い香りがしやがる。本能が呼びさまされる。神様は、まだ俺を見捨ててはいなかったのか? 俺はうっすらと目を開けた。
「やっぱりね」
ぼやけた視線の先に、あいつがいた。今、憎くて憎くて仕方がないあいつが。
「どういう事情かは知らないけど、ずいぶんと甘やかされてきたみたいね」
「一体、何の用だ?」
体に力が入らない。俺は横になったまま答えた。
「ただでさえ仲間が最近減ってるからね。あまり群れじゃない奴に絡むのは好きじゃないんだけど、同族のよしみよ。それ、あげる」
ほんのりと鉄のにおいがする。俺は何も考えずにそれを口に入れた。後から考えれば、どうしてそれが食べ物だと分かったかは不思議だ。それでも、体が、本能が、それを求めていた。
うめえ。今までに喰ってきた何よりもうめえよ。食事をできる事、改めてそのありがたみを感じさせられた。
少しして俺が落ち付いた頃あいを見計らって、そいつは俺に声をかけてきた。
「単刀直入に聞くわ。あんた、狩りができないんでしょう?」
当たり前だ。俺は黙って頷く。
「一体今までどうやって生きてきたのよ?」
俺は答えに窮してしまった。例え今助かったとしても、お先は真っ暗だ。鹿の心が宿ったオオカミに、生きていく術はねえ。
「今回は助けたけど、私はあなたのおもりだなんて嫌よ」
さらに畳みかけられる。
「いいわ。簡単な狩りのやりかただけ教えてあげる。あんたにも、立派な牙と爪があるんでしょ? どんなに馬鹿でも、鼠や小鳥くらいは捕まえられるでしょ? それでダメだったならもう知らないし、私達の邪魔になるから、勝手に死んじゃってよ」
ううっ、キツイ事いいやがるな。だけど
いいや、やっぱり無理だ。生きていくには仕方ねえってのは分かる。この体になった時点でそれは決まっていた、俺が死ぬか、俺じゃない誰かが死ぬか。そのどちらかを選ぶしかない。そんな重い判断、俺にはできねえ。普通のオオカミは平気なのか?
ん? 待てよ、さっき俺が食べたのって。
考えないでおこう。いや、絶対に考えないぞ!
「無言の了解ね」
その声で、俺は我に返った。
「へ?」
「それじゃあ、はじめましょうか」
一体どうしてそんなに乗り気なんだ。
「いや、まだ俺何も言ってない」
「元々選択岐なんてないでしょ」
話に押されたせいなのか、俺にも黒い感情が湧き上がる。今の俺はオオカミ、過去がどうであろうとそれは変わらない。それなら、と。
いや、それはダメだ。自制心が再び顔を出す。それもさっきのでは満たしきれなかった空腹にかき消されようとしていた。立場は完全に変わった。このまま俺は捕食者になってしまうのだろうか?
それでも
俺は、死にたくない
そうさ、どうせさっきの・・・恐らくあれだろうな。それを食べた時点で、穢れちま
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