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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
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− UTOPIA −
「あっ……」
荒波のような勢いで部屋を飛び出した途端、ロンギヌスは
「しまった」と思った。あろうことか全く同じタイミング
で、ここの仲居であるミロカロスが部屋に入って来ようと
していたのだ。ロンギヌスは即座にそれを認識したものの、
慣性の法則には抗える筈もない。必然的に2人は正面から
ぶつかり合う。
「ひっ……きゃああッ!!!」
「んんッ!!! んぅぅぅぶぶぶぶ……!!」
蛇としての本能が働いたためか、ミロカロスは一瞬で彼に
巻き付いて自由を奪った。いくら雌とはいえ、大蛇が目標
を締め上げる力は相当なものだ。その証拠にロンギヌスの
腰は恐ろしい域にまで捻られ、顔と背中が同じ方向を向い
ている。そこから響いてくるゴキッという関節の悲鳴に、
カイオーガはあちゃーっ、と目を覆った。
「ハァッ……ハァ……これで二度目だ……」
ロンギヌスの心臓がプラスの意味で高鳴るのには訳があっ
た。何しろミロカロスは今、彼をもてなしの相手ではなく、
自分に襲い掛かってきた暴漢として締め上げている。だか
らこそ味わえる彼女の本気の拘束……これはロンギヌスの
マゾヒズムを絶妙にくすぐった。
「あ……あ、あんさんだったんどすか。すんまへん……
今離しますさかい……」
「い、いや……出来ればこのままの方が……」
「は、はい?」
「……と、というより、もっと強く締めてください……」
何も恥じることは無い。ここはそういう性癖を持った者が
集う宿なのだから。
……と、ロンギヌスは己の羞恥心を揉み消した。それと同時
に、自分にはダークライを軽蔑する資格が無いことを悟る。
「……ふふっ。まあ、それがお望みとあらば」
むぎゅ……ぎゅっ……ぐむぅ……♪
「あっ……あッ……!!」
そういった彼の思惑を理解したのか、ミロカロスの口調は
突然艶っぽいものへと様変わりした。その滲み出るような
情愛と優しさは、瞬く間にロンギヌスの頭の中をピンク色
に染めた。まだ未経験だが、ロンギヌスは男性がプロポー
ズをOKしてもらった瞬間はきっとこういった感覚なのだろ
う、と不毛な妄想に浸った。
しかしミロカロスが次の行動を取ってからというもの、そ
んな妄想に体力を費やす余裕は無くなった。彼女はまず彼
に口を開けるよう指示し、やがてそこに自分の蛇体が押し
当たるような形で再び締めつけた。
「『呼吸』できるのがどれだけ幸福なことか……ふふ、ち
ょっと教えてあげますさかい、我慢してください」
聞き慣れないが独特の美しさを持ったイントネーションだ。
そんな方言で弄られてみたいという欲求が芽吹いたのも束
の間、あっという間にロンギヌスはミロカロスのむっちり
とした肌に埋もれた。
また、締め付けられる直前に垣間見た彼女の和やかな笑顔
に、ロンギヌスは心まで虜にされる気がした。いや、出逢
った時からそうなのかもしれない。
ギュゥ……グギュゥゥゥゥ!!
「ぉごおごおごごごごぉぉぉぉぉ!!!」
『呼吸』のありがたさを、ロンギヌスは開始から数秒で思
い知る羽目になった。なぜなら顔の縦幅ほどもある太く滑
らかな胴体が、鼻口を覆うようにしてどっぷりと密着して
いるからだ。のしかかっている、という表現でも悪くない。
どれだけ酸素を求めても、入ってくるのは顔面に張りつく
彼女の肌から漂う、若いスズランのような芳香だけだった。
「……大丈夫……顎をへし折ったりするような真似はしな
い主義どす。まあ、あんさんが本当の獲物なら話は別どすが」
「(もしそうなら、今頃は全身ベッキベキだ
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