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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
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− 魅力の仲居さん −
「結局どこの旅館にしたの?」
「え? ああ……マスターがどうしても行きたいところがあるって言うから、全部任せちゃった。
皆で行けるなら僕はどこでもいいしね♪」
宿泊チケットが郵送されてきた二日後。
旅館を目指して走る貸し切りバスの中は、強引に詰め込まれた押し入れのように窮屈だった。
ロンギヌスやラティオス、そして縮小化能力のあるレムリアやカイオーガは良い。
しかしそれが出来ないギラティナとバビロンが、許容量の2/3を占拠している。
一応、座席のない宴会用のバスなのだが、身を捩るような狭さに変わりはなかった。
「お、おいラティオス…もうちょっと奥行ってくれよ」
「無茶言わないでください。長い旅路なんですから、バビロンさん起こしたら何かと面倒じゃないですか」
まだ夕陽が見える時間帯だというのに、バビロンは最後尾のスペースで寝息を立てていた。
バス内の心地の良い振動が、どうやら彼の睡眠欲を掻き立ててしまったらしい。
「それにしても安宿から高級ホテルまでとは……随分変わったシステムなのだな」
ギラティナがチケットの裏面の事項を眺めて呟いた。ロンギヌスがどのランクの旅館やホテルを選んだのかは不明だが、この万能チケット、買えば相当の額になるはずだ。
「……あ、あれ…マスター、何だか臭くないですか?」
「仕方ないだろ。おやつに焼き芋4個食べたんだから」
「「「わぁぁぁぁぁっ!!!」」」
乗り心地が最悪のバスに揺られること2時間。一行はようやく海岸近くの停留所に降り立った。
そこから繁華街の方へ向かうのかと思いきや、なんとロンギヌスの選んだ旅館は海岸沿いに建っているらしい。
「膿だぁぁぁぁぁッ!!!!」
「あ、兄さん漢字間違えてますよ」
「……それでも膿なんだぁぁぁ!!!」
「……いいんですか? 故郷をそんな風に言って」
「ハハッ…パパに怒られちゃうね♪」
和気あいあいと戯れるカイオーガ達を横目に、ロンギヌスははるか遠くの地平線を眺めた。
この町を訪れたことはあるものの、旅行中だったシロナさんに偶然出会った事ぐらいしか思い出がないのだ。
「何を黄昏てるのマスター。置いていくわよ?」
「えっ!!? あ、はいはい」
ロンギヌスは慌ててレムリアの背を追った。
海の家の横をしばらく歩き続けると、旅館らしき和風の建物が見えてきた。
それも、近くで見上げるとかなりデカい。今にも口髭を生やした富豪のお爺さんが出てきそうだ。
さらに驚くべきことに、入り口の前には遊園地を連想させる巨大なゲートが設置されていた。
どう考えても、古めかしい木造の建物には似つかわしくない。
だがそれ以上に、彼らの目を引き付けるものがあった。
玄関口の上に堂々と設けられている、ピンクのデフォルメ文字で書かれた看板だ。
『VORE HOTEL』
「あーっ、ボク嫌な予感がする〜っ♪」
「私もだ」
「旅行先までマスターの趣味に付き合わされるとは…心外です…」
「な……何だよ。いいじゃねーか別にっ!」
サイトや雑誌を巡れば、もっと高級感の漂うホテルが見つかっただろう。
しかしロンギヌスはあえてそれを蹴り、前から風の噂に聞いていたこの旅館に目を付けたのだ。
理由は……言うまでもない。彼の凄まじいまでの「被食欲」がそうさせたのだ。
駆け足でゲートに向かうロンギヌスの背中を見つめ、レムリアは呆れにもにた溜め息をついた。
だが同時に笑みも浮かべる。ここまで単純でロンギヌスらしい理由だと、かえって清々しい気分になった。
彼女が遠い目をしている
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