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【保】神々の戯れ
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「おい、大怪獣」
体を再構築した月夜兎が水神の尻尾をおもいっきり踏みつけた。
「ん?ああ、もう復活したんだ。早いねぇ〜」
水神はのほほんとした口調で答える。
「早いねぇ〜、じゃないよ。だいたいな、今日はそもそも遊びに来たんじゃない」
「えっ、違うの?」
ポカーンとした表情を浮かべる水神。
「今日はお前に雨を降らせてほしいって言いに来たの」
月夜兎はようやく今日来た理由を説明することが出来た。
「雨?降ってないの?」
水神は巨体を四つんばいの状態から起こし、二本足でピンと立って辺りを見回す。
「うわっ!川とか池とか全部干上がってる。なんで眠ってるときに限って旱魃(かんばつ)が起きるんだよ……」
「まあそういうことだ。とにかく雨を降らせてくれるか?」
「いいよ。ちょっと上に行ってくる」
水神は翼を広げ、空へと飛び立った。
……凄まじい風を巻き起こし、月夜兎を吹き飛ばして。
「ったく、自分の巨体のことを考えたことあるのかアイツは?」
月夜兎は思わず愚痴をこぼす。
しかしなんだかんだ言って水神の力は凄いもので、数分もしないうちに真っ黒な雲が空を覆い始めた。
「村に帰って報告するかな」
月夜兎は村へ戻ることにした。
村へ帰ってくる頃にはもう雨がザーザー降っていた。
それにも関わらず村人たちが外にいるのを見た月夜兎は驚いた。
「月夜兎様が帰ってこられたぞー!」
誰かが叫んだ。
するとあの時の男たちが月夜兎のところへやってきて、その場に土下座した。
「ちょ、ちょっと――」
「月夜兎様、よくぞご無事で……」
「はい?」
「実は心配になって村の者に月夜兎様のあとを追わせたのですが、月夜兎様が巨大な竜に食べられたと……」
どうやら月夜兎と水神の一部始終を見てしまっていたらしい。
「ああ、そうなんですか。それは心配をかけてしまいましたね。でもご安心ください。あれは言わばお遊びみたいなものなんですよ」
「そんな馬鹿な!あれが遊びだなんて」
確かに人間から見れば『遊び』には到底見えない。
「まあ人間の皆さんからすると信じられないでしょうが、ホントにあれは悪ふざけの範疇なんですよ。『神々の戯れ』程度に思ってください」
月夜兎の説明に、村人たちは信じられないという顔をする。
「では失礼しますね。来年のお供え物、楽しみにしてますよ」
月夜兎は手を振りながら村人たちに背を向けた。
「さてと、帰って久々に寝る――」
「月夜兎ー、こんな感じでいいのー?て言うか力使ったらお腹減ったからもう一度食べていいー?」
慌てて上空を見ると、水神が月夜兎に目がけてグングンと降下してきていた。
「ふざけんな!1日に二度も食われてたまるかー!」
月夜兎は文字通り脱兎の如く逃げ始めた。
「あっ、待てってば!」
水神は月夜兎を捕まえるために地面スレスレまで高度を落とす。
どうやら神々の戯れはまだまだ終わりそうにないようだ。
お し ま い
<2011/12/05 22:46 とんこつ>
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