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神々の戯れ〜月夜兎の苦手なもの〜
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「月夜兎、月夜兎、起きて」
水神の声が月夜兎の意識を現実世界へと引き戻した。
「ハァ、ハァ……。夢だったのか」
月夜兎は飛び起きるなり深いため息を吐く。
「どうしたの?何かすごーくうなされてたけど」
「何でもない。昔の夢を見ただけだ」
何でもない、の後の言葉はとても小さな声でつぶやいたために水神は聞き取ることができなかった。
「ふーん、それならいいんだけど。それでさ、テレビのことなんだけど……」
「ああ、そのことか。夜通しで修理はしてみたが駄目だった。故障の原因は昨日の夕方にあった落雷だろうな。よりにもよってアンテナにピンポイントで落ちるとは」
月夜兎は岩山に設置してあるアンテナの無惨な姿を思い出して力なく首を横に振る。
昨日の晩、テレビが映らなくなったと水神に泣きつかれた月夜兎は夜通しで修理を行っていた。
ところがアンテナは完全に壊れてしまっていて修理は不可能だった。
馬鹿らしくなった月夜兎はその場で不貞寝し、今に至ったというわけだ。
「そっか。つまり買い替えなきゃ駄目ってことか」
「そういうこと。今日買いに行ってこいよ」
「私機械音痴だからどういうのを買えばいいのか分からないよ」
「つまり私に買ってこい、と」
月夜兎が冷ややかな目で見つめると、水神は
「お願い!今日は絶対に見たい映画があるの!」
と懇願した。
「仕方ない。確かにお前に任せたら意味の分からん物を買ってきかねないからな。じゃあ人間に化ける薬をくれ」
「恩に着るよ、月夜兎♪」
こうして月夜兎は水神のためにテレビのアンテナを買いに行く羽目となってしまった。
<2011/09/04 23:38 とんこつ>
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