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ボスの器 − 旧・小説投稿所A
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ボスの器
− 僕の仲間 −
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 僕は泣いていました。

 岩場の影の暗い場所で、一匹寂しく。

 ところが、そんな僕によって来る者がいたのです。



 「やあ」



 低い声はどこか重みを含んでいて、聞くだけで安心感が心に生まれます。

 「リーダー・・・」

 そう、この方こそが僕達の群れの正真正銘の長なのです。僕はリーダーと呼んでいます。

 「とうとう、こうなったか」

 「も、申し訳ございません!」

 僕は自分が情けないです。いつもリーダーにはなぐさめてもらってばかりで、自分で何とかしようと思って・・・それなのに・・・それなのに・・・・・・

 僕はまた小さく嗚咽を漏らします。

 「気にするな。悔しい、そう思えているうちに吐き出せるほうが健全さ」

 優しさを与えられると、なおさら感情が湧き上がってきてしまいます。僕はとめどなく流れ出てくる涙を止める事はできませんでした。

 そんな僕の背中を、リーダーは尻尾で優しく撫でてくれます。

 「辛いよな。悲しいよな。大丈夫だ、私だけはいつまでも味方さ」

 リーダーの体温に触れるごとに、僕の凍った心が溶けていくようでした。





 「落ち着いたか?」

 「はい・・・・・」

 僕が泣きやんだ頃には、すっかり夜も更けていました。

 「気に病む事はないさ。お前はまだ若いんだから。たまには精一杯甘えるといい」

 温かくなった僕の心は、リーダーのおかげ。僕もいつかはこんなオオカミになりたい、そんな憧れの思いを抱いたのはこの頃からでした。





 僕にはオオカミとして圧倒的に不利な条件があります。それはこの小さな体です。小周りは効くのですがどれだけ力を入れても圧力が足りなく、歩幅が小さい分見た目ほど速くは走れません。

 同じく脚の遅さが悩みのルンバ君と一緒に、今日も特訓です。

 彼は僕の気持ちを汲んでくれているのか、あまり僕を名前で呼ぶことはありません。彼のそのような性格こそが、僕と気が合った所以かも知れません。



 「ちくしょーまた負けたー」

 「最後で気を抜くからですよ。ルンバ君はいつも詰めが甘いですからね」

 青年グループでいつも一番遅いのはルンバ君、そして二番目に遅いのが僕です。この順位は、変わりそうで変わりません。

 「俺は筋肉が重いからあまり速く走れねぇんだよ」

 またいつもの言い訳が始まりました。確かにルンバ君は力は誰よりも強いです。だからこそ、素早さを身につければとても優秀なオオカミになれると思うのですが・・・・・彼自身はあまり興味がないようです。

 「速くないって事は脚の筋肉が足りないんですよ」

 「うっ・・・痛いとこつくなよ」

 力の無い僕はなおさら努力しなければ!

 「さあ、もう一回あの丘を登りましょう!」

 「か、勘弁してくれよ〜」

 嫌がるルンバ君を説得して、僕達は一緒に縄張りの中で一番高い丘に登り始めました。





 「ふぃ〜やっと着いたぜ」

 「さすがに疲れましたね。そろそろお昼にしましょう」

 ここに登ってくる途中に少しだけ狩りをしてきました。といっても、疲れていたので大した獲物は取れませんでしたが。

 草の蔓に巻いてここまで持ってきました。

 「いただきます」

 キイキイと鳴く声が気になりますが、僕は嬉々として鼠をほうばります。この間のように抵抗されると困るので、あっという間に真っ二つにして飲み込んでしまいました。

 そんな僕の横で、ルンバ君はなぜか浮かない表情をしていました。

 「どうしたのです? 鼠は好きではないのですか?」

 不思議に思い尋ねても、ルンバ君は答えてくれません。じっと餌を見つめているだけです。よく見ると、鼠と見つめ合っている事に気がつきました。情でも移ったのでしょうか?

 「ルンバ君!」

 今度は少し大きい声で呼ぶと、そのまま鼠をぱくっと飲み込んで応えてくれました。

 「ん? どうした?」

 なんとも間抜けた口調でした。僕は途端に一瞬でも彼を心配した自分が馬鹿馬鹿しくなります。

 「それはこちらの台詞ですよ。急に黙りこくったりするから、どうしたのかと思ったじゃないですか」

 「いや、オオカミってこうでなきゃ生きていけねぇのかなって思ってな」

 一体ルンバ君は何を言っているのでしょうか?

 「どういう意味です」

 「ああ、こっちの話だ。気にすんなよ」

 上手くはぐらかされてしまった気がしますが、あまり深入りするのも失礼というものですね。今は気にしないでおきましょう。



 この時、彼を問いたださなかった事を後々に後悔する事になるのですが、それはまた別のお話です。



 「さてと、食べ終わったらここから一気に駆け下りますよ」

 「ええ!? もう帰るのか?」

 ルンバ君は不満そうですが、僕は意に介しません。

 「当然です。まだまだ鍛える時間はありますからね」

 「ひえええええ」

 こうしてまた僕達は走り始めました。





 あの頃、毎日はとても充実していました。何度も苦しみましたがその度に励まされ、また新しい日を迎える事ができたのです。

 こうして僕達は少しずつ強くなっていきました。

 そんな日々に転機が訪れたのは、次の春の事です。





<2013/03/28 19:35 ぶちマーブル模様>消しゴム
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