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大丈夫だと君が言うから − 旧・小説投稿所A

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大丈夫だと君が言うから

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テレビに写る顔立ちの整った俳優。
爽やかな汗を流しながら、懸命に演技を続けるスポーツ選手。

彼らの顔はたまらなく充実感に満ちている。
それは思わず嫉妬してしまうほどだ。

ボクにも何か夢中になれることが欲しいと思った。
その結果がこれだ。ボクは遭難した。

帰りの電車に乗っていたとき、ふと気まぐれで道を変えた自分を呪った。
そのまま素直に家に帰っていれば、こんなことにはならなかったのに。

辺り一面高い木々で囲まれ、ここがどこなのかも分からない。
木に登ろうとしたけど、もともと運動が苦手なボクには案の定無理だった。

(まずい、早くどうにかしないと……)

いつの間にか太陽はオレンジ色に変わり、地平線に沈もうとしていた。
季節は冬。
今でもずいぶん寒いというのに、日の光がなくなれば想像できないような寒さが襲ってくるだろう。

焦りと不安が一度に押し寄せてくる。
自然と草木をかき分ける手の早さが上がる。

ガサガサという音だけが頭の中に響いていた。

手先がかじかんでヒリヒリする。
唇もパリパリに乾燥してきた。

進めど進めど、事態は余計に悪化するばかり。
遂にはその場にへたりこんでしまった。

(このまま死ぬのかな)

心は先に凍りついていた。さっきまで焦っていた自分が馬鹿馬鹿しくなってきた。

ボクはその場に横たわる。
こんなにも深い森の中じゃ遺体ですら見つけられないかもしれないな。

そんなことを考えて、ボクは目をつぶった。













ズルズル……。

――何かを引きずる音が聞こえる。
うっすらと目を開けると綺麗な星空が眼下に広がった。

星の一つ一つがそれぞれの光を放っている。
キラキラしているそれは、本当に綺麗だ。


ズルズル……。


まただ。また何かを引きずる音が聞こえる。
そういえば、何かおかしい。
高い木々が視界の端から端へ勝手に流れていくのだ

そこでふと気づいた。
ボクの腕が何かの間に挟まっていることに。

かじかんだ指先に、生暖かくて柔軟なものが触れる。
そこでボクは理解した。
先ほどから聞こえる何かを引きずる音。

その何かは、ボクだったということに。


いろいろ試してみたいと思う。
<2012/12/28 20:35 ミカ>
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