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守る物 − 旧・小説投稿所A

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守る物

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「体内に封印だと…。まさか、お前、俺を…」
「言わなくても分かってるんだろ?…ふふ。じゃあ、いただきます。」

守り神は普通の神とは異なり、とある器官が存在している。それは、敵を永遠に自分に閉じ込めておく器官。

「…と、まずお前の体を小さくしなきゃな。」

ウルはそう言うとゆっくりとリンドに手をかざし、手を握り始めた。
すると、みるみるうちにリンドが小さくなっていき、40cmくらいにまで縮んでしまった。
「あんまり時間はかけたくないんだ。じゃあね。」
「な…!おい待て…」

僕はリンドを一口でくわえこむと、すぐに呑み下した。

「…まずっ。大人の雄竜は喰うべきじゃないな…」
ため息をゆっくりとついた。

「これで、全部終わったのかしら?」
ティアは目の前で夫が喰われる様を見ても全く動揺していないようだ。

「いや、まだだ。」
「…今度は私が封印される番かしら。」

少し引きつったような、けれど覚悟を決めているようなそんな曖昧な表情をしながら言った。

「違うよ。お前にひとつお願いがある。」
「な…何よ。」
「責任を取れとかライムを絶対喰うなとか僕から取った魔力を返せとかそんなことを言うつもりはない。…これから、あいつらのこと守ってあげてくれないか?」
「……え?それってどういう…」

話を遮るようにウルはこう切り出した。
「アルトの蘇生魔法を開始する。」
「ウル!蘇生ってあなた…!禁忌の魔法じゃない!」
「…そうだよ。小さな命を弄ぶとされるこの魔法は最大の禁忌。…僕の体は耐えきれないかもしれない。」
「……なら、私がやる!あの子逹にはあなたが必要なのよ!?」
「…例え僕の魔力をちょっと貰ったとはいえお前の魔力じゃ無理だよ。…それに、お前なら僕の代わりにきっとなれる。だって、危険を省みずライムを守ってくれたじゃないか。」
「…でも!」

出てきそうな言葉を必死に押し込め、力強くこう言った。
「分かったわ。あの子達のことは任せて頂戴。」
「……ふっ。よ……か…っ…た。」

バタッ…

ウルは安堵した表情を浮かべると、地面に倒れこみ、そして…目を閉じた。
その傍らにはすやすやと眠っているアルトの姿があった。



* * * * *

ウル様がいなくなって早十年。あの時子供だった僕もすっかり大きくなりました。
あの日、ティアさんに事情を聞いたときは本当に悲しかった。
 
ティアさんはあれからあまり姿を見せない。ただ、毎月気づくと食料や薬草が置いてある。…涎まみれだけどね。
正直、僕はティアさんが苦手だ。会うたびに散々舐められたり、最悪の時は呑み込まれたりするから。一回ティアさんが胃に僕がいるのを忘れて消化し始めたこともある。あの時最後まで気付かなかったらと思うとぞっとする。

…一方、アルトはティアさんに会うと嬉しそうな顔をする。ガールズトークでもしているのだろうか。

「ライムー!」

アルトが駆け寄ってきた。
ここだけの話、アルトを見ると一瞬美味しそう…と思ってしまう。狼の本能なのか、いつまで理性を保てるか少し不安である。

「で、どうしたの?アルト?」
「あのさ、十年も経ったことだし。あの場所に行ってみない?」

あの場所、つまりウル様が死んだ場所のことだ。これまではウル様のことを思い出してしまいそうで敬遠していたが、もう十年も経つのだ。

「…行ってみようか。」

* * * *
「「やっと、着いた…。」」

二人同時に同じ言葉を漏らした。

「あら?あなた達もいるなんて。」

後ろから驚いた調子の声がした。体と心に刻まれた天敵の声。悪寒がはしった。

「…あ、は。ティ…ティアさん…。お久しぶりですね…。」
「ふふ♪声が震えてるわよ。ライム君もすっかり大きくなっちゃって♪青年期は脂がのってて食べ応えがあるのよね♪」
「ほらほら。ティアさん、そういうのは後にして、ウル様のお墓に行きましょ。」
「…そうね、アルトちゃん。」

そうして、ウル様のお墓へと向かうとそこには、白い花が咲いていた。

「わ〜、きれい!」
「ほんとうね♪」
「僕、この花知ってる!確か、カランコエだよ。花言葉は…」



〜あなたを守る〜



{いつでも、見守っているからね…}


ウル様の声が聞こえた気がした。



〜完〜



守る物完結です!
ご愛読ありがとうございました!
<2012/12/02 11:39 ピヨ助>
消しゴム
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