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SPEC−甲〜召の回− − 旧・小説投稿所A

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SPEC−甲〜召の回−

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その頃、瀬文は警察病院にいた。病室には植物状態の志村が横たわっており、妹の美鈴(みれい)が、兄のベットにもたれかかって眠っていた。

「・・・・・・」

そっと近づくと、突然、警告音が鳴り始めた。まるで瀬文が来るのを待っていたかのように。

「志村!」
思わず叫ぶと、美鈴がパッと目を覚ました。

「どうしたの。お兄ちゃん」
声をかけると同時に、すぐそばに立っている瀬文に気付いた。

「瀬文さん...」

バタバタと足音がして、医者の海野亮太(うんの りょうた)が
「どうしました」
と飛び込んできた。瀬文より一つ年下のドクターである。
海野はベットに駆け寄り、志村の状態を調べながら、険しい声で
「瀬文君、出てってくれないか」
と言った。

「・・・・・・」

「不整脈を起こしている。志村さんは、君を怖がってるのかもしれない」

「意識があるんですか」

「植物状態の患者だって何かを感じるんだよ」

「失礼しました。美鈴ちゃん、これ。少ないけど」
瀬文は金の入った封筒を差し出した。

「お金なんていりません。それより、自分の罪を認めてください」

瀬文は黙って部屋の隅に封筒を置き、一礼して出て行った。
廊下を歩いていると、背中に何かがぶつかって落ちた。瀬文がが持ってきた見舞いの封筒だ。振り返ると、急いできたらしい美鈴がいた。
「卑怯者。全部兄のせいにして」
ぐっと瀬文をにらみつけ、くるっと背中を向けて去っていく。

が、何を言われようと、真実は一つしかない。――――――
確かにあの時志村は瀬文の前に立ち瀬文に向かって撃った。だが、倒れたのは志村だった。――――――
瀬文は黙って足元の封筒を拾いあげた。


<2012/04/23 17:59 mt>消しゴム
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