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パーティーの前日、高い天井の広々としたフロアを、キャリーバックを引きずりながらウロチョロしている怪しい女がいた。

「ここがパーティー会場か......」
当麻だ。会場入り口付近では、瀬文が脇智宏【旧投稿所参考】と警備の打ち合わせをしていた。

「廊下は外から丸見えです。狙撃されたらひとたまりもない」
五木谷【旧投稿所参考】は派手好きらしく、パーティー会場は最近出来たばかりのホテルである

「近くのビルには全て警備を入れてあります。アメリカの民間軍事会社なので心配ないかと」
脇が説明しているところへ、女性係員がやってきた。

「脇先生、ごぶさたしています」

脇は振り返ると
「金子さん。お元気にされていますか」

「おかげさまで。これパーティーの見取り図ですけど、どなたに渡せば」

「僕が預かります。ありがとうございます」

女性係員は脇に会釈をして去っていった。

「こちらが見取り図です。それでこちらが、明日の招待客のリストです。予定では１１１名」

「失礼ですが、この中に五木谷代議士に恨みを抱いてるような人物は？」
コピー用紙に目を通しながら瀬文が尋ねた。

「まさか。いや、ある意味出る杭は打たれますから、その辺は...」
脇が考えていると

「ちなみに冷泉さんの予言では、毒殺される、とのことです」

「毒殺？」

「凄いヒントですよね。タダで聞いちゃいました。ククク......」

「となると、飲み物と食べ物に、入念なチェックが必要ですね」

「はい。担当のシェフは...」

「長年ホテルのシェフをしている人なので心配ありません。ただ、もし万が一、に備えて、毒物混入を検知できるような対策は何かありますか？」

「ガスクロマトグラフィーという分析装置があります。係長に手配してもらいます」
当麻がキビキビ答える。

「お願いします」

黙って二人の会話をきいていた瀬文が、急に口を挟んだ。
「当麻。インチキな予言に惑わされるな。毒殺という言葉に振り回されると、警備の本質を失うぞ」

「というと？」

「俺が犯人だったら、常に警備の逆を突く。それがテロの常道です」

「なるほど」
と当麻。

そのとき、脇の携帯が鳴り始める。
「ちょっとすいません」
脇は部屋の隅で五木谷と話していた。
そして五木谷は番組のスタイリストを愚痴って電話を切った。
いつものことである。
脇は携帯をしまい、戻ってきた。

「五木谷さん、何やってんすか」

「今日は番組に出る日なんです」

「ふーん。会社の社長とタレント業と政治家って、いっぺんにできちゃうほど甘いもんなんですね」

「政治家は注目を集めないと発言しても無視されますからね。五木谷先生は、睡眠を削って努力されています」

「脇さんも、いずれは代議士って事ですか。さっきの方も先生っておっしゃってましたけど、ぶっちゃけまんざらでもないでしょう」

「いやいや。人前で間違えられると困りますね。秘書はあくまで裏方なので」

そろそろ日が暮れる。瀬文は、見ていた資料を閉じた。
「お忙しいところお手間とらせました。行くぞ」
脇に会釈し、当麻をつれて会場を出た。

刑務所内...
「また一つ炎が消えましたっと」
不気味な声が聞こえていた...

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