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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A

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狼と狐のち日常

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ざぁぁぁぁ……
バケツをひっくり返したような酷い雨が外で降りしきっている。
瞬く間に庭は池の様に水が張られ、今日はもう外に出る事はできないだろう。

「狭いのぅ」

「それには同感じゃ」

「狭ぇぞ、東雲」

……そのせいでそう広くない(一人暮らしでは相当に広い)リビングに全員が集合する羽目に。
フラウと共に、雨に濡れた獣達の毛並みを拭いて廻る。
やんわりと濡れた菫の体のには体毛が貼り付き、いつもよりスレンダーだ。
ただ、それを当の本人にいってしまうと、どうなるのかは容易に予想がつく。
それに……なんだか前と比べて体が細くなった気がする……

「菫……大丈夫?」

「うむ? 大丈夫じゃ、これしきでは風邪も引かぬ」

「あ、そうじゃなくて……菫、痩せたなぁって思って」

’そうかえ?’と意外そうに首を背面に廻し、自らの体を見渡す。
何度も怪訝そうに首を傾げ、’気のせいじゃろ’と結論づけた。
まぁ、本人が大丈夫そうなら問題は無いかな。

「儂は大体で良いぞ。五月蝿い奴らも待っておる様じゃし」

その巨躯に染み付いた雨粒を拭き取るのは一体でもかなりの重労働だ。
それを見据えた菫は気遣ってくれて、そう優しく言の葉を紡いだ。
粗方拭き終わり、’ごめんね’と一言伝えると
待ち兼ねる椛の下へと向かう。

「さぁ、儂の体を拭けっ!」

「あ〜、はいはい。分かってます」

菫とは違い椛はお嬢様気分で、権力乱用。
’従え’感、剥き出しでありのままの感情で言葉を吐いてくる。
小さな溜息を零しながら、僕は椛の体を拭き始める。

「もし、拭き残しがあればその時は……儂のメシ、いや……夜ー」

「それはダメだから!」

勢いそのままに椛の胸を叩く。
’うぼぁ’と奇妙な声と共に、言葉の妨害に成功した。

「取り敢えず、黙ってて。そうじゃないと、フラウにやらせるからね?」

「……ぬぅ」

この生活で、正直な所僕の権力が通じるのはフラウ、砂羽、菫ぐらいだろう。
しかし、フラウの権力は何故かあのソルにまで通じる。
強引に獣達の横暴を封じるにはフラウの名を出せば、万事解決。
ようやく大人しくなった強欲狐の体を拭いてやる。
菫と比べて椛は幾分か肥えたような気がする。
それは、僕を貪る様に食い物にしているからだろうな。
僕からどれだけ養分を奪っているのだろうか。
まぁ、椛もちゃんとした♀だ。
体型には気にしているだろう。
’太った’なんて言えば、それこそ完全に椛の糧になってしまうので
それだけは勘弁しておいてあげよう。

「ほら、終わったよ」

「……チッ。綺麗に拭きおったな」

「椛の胃袋には飽きたからね」

何て言ってみる。
椛はそれに虚を突かれたようで、目を丸くした後

「主はまだ儂の胃袋の真骨頂を知らぬからな」

と、返された。
……気になったの秘密にしておこう。

  * * *

夜空は雨を吐き出す重い雲に覆われたまま。
翌日の午後まで晴れることは無いそうだ。
夕食も終え、そろそろ入浴の時間が迫ってきている。
風呂場に行くのは庭を突っ切るのが一番手っ取り早いが
今日は雨なので、屋根の下を通らざるを得ない。
問題は時間帯……
生憎の雨だからこそ、全員が入浴を望んでいる。
できればあまり被りたくはないのだが……


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the Choices 6

 ・一番風呂だ!
  >> 40

 ・今はちょっとまずいかな……?
   >> 41

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<2012/04/25 22:12 セイル>消しゴム
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