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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A

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狼と狐のち日常
− 『ガレイドに……でも鏡世、地味に寒いしなぁ……』 −
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「ガレイド〜、いないよね〜」
「いるぞ。相変わらず酷いぞ」
「なんだ、幻聴か」
「いる! お前の視界に入っているだろう!」

そりゃ、そうでしょ。
入ってなきゃまず声、かけないし。
こんな冗談、流せば良いのに
毎回しっかり返してくるからからかっちゃう。

「今日さ……ガレイドと一緒に寝てもいいかな?」
「……どうした? 薮から棒に……」

僕は簡単に先程の言葉の理由を説明した。
相槌は打ってくれるものの、特に同情とかしてくれない。
ただ、話を聞いてくれるだけ。

「別に構わないが……食うぞ?」
「ダメ〜、普通に寝たい」
「なら、鏡世には入れんぞ? いいのか?」
「……じゃあ、次回のご飯無し♪」

’んなっ……’と何とも間抜けな声を漏らし
数秒、ガレイドは固まった。
ソルに言ったら一瞬で肉塊だろうが
ガレイドには効果覿面だ。
次には口をパクパクさせ、僕に効果がありそうな
言葉を探しているようだった。

「くぅ……分かった」
「やりっ♪」

ガレイドが悔しそうに肩を落とし、前脚を僕に差し出す。
前にも言ったようだが、鏡世に行く為には
ガレイドのような鏡世の住人に触れている必要がある。
触れる事で次元が同次元になり、侵入する事が出来る。
僕はその前脚に優しく触れ、窓ガラスの中に消えていくガレイドを追う。
無論、触った前脚に触れたままで。

「うわぁ……」

窓ガラスに波紋が広がり、物質に当たるような感覚は一切なく
液体に触れるような感覚もない。
無感覚のまま、鏡世に入った。
ひんやりとした空気に、生気の感じられない無機質な雰囲気。
好き好んで入るような空間ではない。
入った理由は……ガレイドと触れ合うため。
菫や椛とばかり触れ合ってばかりでガレイドが放ったらかしに
なるのは可哀想なので。

「お前を喰えないのなら暇だぞ? ここには何もないからな」
「ガレイド……何時もここにいて、寂しくない?」
「寂しくな……」
「本当は?」
「…………寂しいさ。好きでこんな所にいる訳じゃないからな」

即答は本音と表裏一体。
本心を隠す為に余計な詮索を避けようとする。
少し口調を強めて、再度問えばほら、本心。
ガレイドは素直だな。
その横顔を見れば十分。寂寥ばっか。

「いつからここの住人に?」
「知らないな。物心つけば」
「そっか……」

膝を抱えた両腕に顎をつけ、長い息を吐いた。
それはそうか……
余計な事聞いてしまったな。

「これを見てくれるか?」

ガレイドが突然、僕を仰向けに押し倒し、跨がった。
跨がったとは言え、体は密着していない。
半透明な体を通じて、普段は見えない隠れた背骨が見える。
そして、薄い膜のような球体に
そこから頭部に向かって伸びる空洞……
人間の体で言う、胃袋と食道だろう。

「見えるか? 見えんだろう……あるべきものがな」

言われてはっ、とした。
ガレイドも鏡世の住人とは言え、姿は生物の狼。
生物には必ず無ければならないものがある。

「心臓が……ない……」

生物を成り立たせる命の脈動を奏でる心臓が
ガレイドの体の中には見当たらなかった。

「滑稽だろう? 私は死なないのだ。死ぬ事も許されずに生物を貪り喰うしか出来ないのだ」

寂しい……か。
心臓が無い=寿命が無い。
鏡世で出会う生物は獲物。
知人にさえなれない、捕食者と被食者の関係。
仮に知人が出来ても、死ぬのはそっちが先。
生涯孤独の身。

「ううん。いいじゃん! 何でも出来るじゃんか! いいな〜!」
「い、良い?」
「そうだよ! したい事一杯出来るじゃん」

またもや、呆気にとられるガレイド。
一拍置いた後、ガレイドの表情は見違えた。
寂寥さえも吹っ切れた表情。

「そんな風に考えた事無かったな」
「頭悪いね♪」
「ハッ……そうかも知れない」

食い付いてこなかったのは少し残念な気がしたが
悩みが少しでも軽くなったのならそこは見逃そう。
今は凄く、生き生きしている。

「そういえば、一緒に寝るんだったな」

ガレイドの体が下がり、ようやく体が密着する。
心臓の無い鏡世の住人の体は
死人の様に冷たいのではなく
人間の様にしっかりとした温もりを放ち
心地よさも持ち合わせていた。

「あ、温かいんだ……」
「私とて生きているからな」
「これなら、眠れるよ♪」
「ふふ、それは良かった」

完全に体毛に埋まり、頭には枕代わりに両前脚が潜り込む。
ふさふさの毛は地味に心地よく
さりげなく眠気を誘ってくる。

「間抜けな表情をしているな♪」
「う、五月蝿いなぁ////」

何とか反論するものの、眠気は最高潮。
何かを言っているようだが、聴き取れない。
……意識を手放してしまっていたー



「お前といると飽きないな……ふふっ」




<2012/03/25 21:33 セイル>消しゴム
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