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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜 − 旧・小説投稿所A

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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
− 水難の相 −
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潜った直後は、水の冷たさと鼓膜が押し込まれるような感覚が重なった。
ひとまず鼻を摘み、顔中に限界まで力を込めて耳抜きをする。
そうすることで始めて、まともに海中の光景を目にすることが出来た。

「……うわぁ…」

声は泡になって消えると分かっていても、無意識に感嘆の声を上げてしまうほどの絶景だった。
海の宝石ことサンゴ礁の上を、色鮮やかな魚類ポケモンたちが縦横無尽に走っている。

そんな海の住人の中でひときわ目立っているのが、やはり王の風格を漂わせたカイオーガだった。
海に入るとそうなるのか、全身に張り巡らされた幾何学模様がお赤く光っている。
そんな彼の背中を追おうと悪戦苦闘しているダークライを見ると、ロンギヌスは思わず泡を吹きだした。


「あんさん、良かったらうちと行動しません? 案内しますさかいなぁ」

水中だというのに直接、脳に語り掛けてくるかのような声の響きだった。
ラティオスが使うようなテレパシーとも違う。人間とは別の方法で発声しているらしい。
ロンギヌスはもちろん首を縦に振り、ミロカロスの真横について泳いだ。

途中、子供じみた好奇心で、彼女のお腹の膨らんだ部分にそっと触れてみる。
ミロカロスはクスリと小さな泡を吹き、可愛げのある蛇舌を口から覗かせた。
その仕草に自然に笑みがこぼれてしまった刹那、ロンギヌスは自分が紛れもない"男"であることを再確認した。

7メートルほど潜ったところで、ふと何かがロンギヌスの目に止まった。
海藻や水苔の生い茂った中で、それは明らかに人工的な匂いを発していた。
すっかり海の生物のマンションと化した……海中の遺跡だった。


「……500年ほど前に沈んだ、と言われとります。何度か人間の調査団の方も来られましてなぁ……」

感想を述べられる状況下ではなかったが、ロンギヌスは二度頷いて遺跡の壁面に触れた。見かけよりもずっとザラついている。
そのわずか下に、長方形の入り口らしき穴があった。
ロンギヌスはお世辞にも手話とは言えないコンタクトを送り、中を探索してもいいのかどうか尋ねた。


「……オーナーは危険や言うて、普段は入っちゃいかんことになっとるどす」

ロンギヌスは残念そうに首を下に向けた。
しかしミロカロスは冒険心に燃える少年のような笑顔を浮かべ、続けた。

「でも今はオーナーも出張中ですさかい……それに、うちも謎めいた場所、昔からえらい好きなんどす」

「(え、じゃあ……!!)」

「ふふ……行きまひょか」

彼女の自在に動く髪と喜びのハイタッチを交わし、ロンギヌスは水を蹴って遺跡の入り口をくぐり抜けた。
当然だが内部も海水で満たされていたため、あまり別世界に突入した、という感覚は得られなかった。
その代わり、入って間もなく錆びついた古代の銀貨を手に入れる。良い記念ができた。
ダイビングスーツの小さなポケットにそれを押し込み、ロンギヌスはさらに奥へと進んだ。


しばらく泳ぐと、T字路に出た。
巨大迷宮の始まりを期待したロンギヌスだったが、残念なことに、T字路はどちらの道を取ってもすぐに行き止まりの構造だった。
つまり、本当にTの形になっていると言える。どうやらこの遺跡自体、それほど巨大なものでもないらしい。


「どうしましょ……出ますか?」

「(いや……一応、お宝があるかもしれない)」

既に4枚も拾い集めた古代のコインをミロカロスに見せ、ロンギヌスは意思を伝えた。
彼女はコクンと頷き、だめ押し覚悟の宝探しに参加する。
ロンギヌスがT字路の右を取ったのを見て、彼女は左の道に進んだ。
お互いに、ひとつでも多くのお宝を見つけようと目を凝らす。
このときはまだ、異常が起こっていることに二人は気付いていなかった。





「あ、あんさんありましたよ、最後の金貨!」

それをはしゃぎ気味にそれを拾い上げ、彼女は振り返る。
錆びのないキラキラとした金貨を、血眼でお宝を探すロンギヌスに見せようとした。



「……ぇ…?」


ーーー既にロンギヌスの姿はなかった。
いや、消えていた、という表現の方が正しいかもしれない。
ミロカロスが彼から目を離した、そのたった十数秒の間に。

ミロカロスは限界に近い大声でロンギヌスの名を呼んだが、返事はおろか木霊すら返ってこない。
また、ロンギヌスが宝を探しに行ったT字の右側の通路にも、彼の気配はない。
ただ壁や床を覆うようにして、大量の苔が密生しているだけだった。
ミロカロスが向かった左通路と見比べてみても、単に生えている水苔の量が違うだけだ。

ミロカロスは本格的な心配を胸に寄せ、全速力で泳いできた通路を戻った。
ロンギヌスが既に来た道を帰っているなら、100%追いつくようなスピードにも関わらず、一向に彼の気配はない。

結局、彼がいないまま、ミロカロスは遺跡の出入り口に到達してしまった。
彼女はもう一度探しに入ろうとしたが、最後のT字路以外に分かれ道などなかったのだから、もうこの中にいる確率は低い。
ロンギヌスが既にこの遺跡を後にした、あるいは船舶に戻っている可能性を信じ、ミロカロスは舟番のギラティナの元へと急いだ。




<2012/03/19 23:58 ロンギヌス>消しゴム
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