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晩餐 − 旧・小説投稿所A

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晩餐

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{…バ…バンギラス……!}

人間なんて一呑みに出来そうな口、鋭い爪、そしてバンギラスの眼は僕を睨み付けていた。

「ぼ…僕をどうする気ですか!?こんなところに連れて来て…」

「ア?おまえをどうする気かって?…それはな…」


……グウゥゥゥゥ…


その瞬間、低く唸るような音が洞窟内に鳴り響いた。
そして、僕の不安は確信に変わった。

{ぼ…僕を食べるつもりなんだ…!…にげなきゃ!}

僕は足に精一杯力を入れ、バンギラスと反対方向に走り出した。

「あ?おい!!待て!」

油断していたのか、バンギラスの反応が遅れた。チャンスだ。かけっこなら自信がある。
僕は勢いよく走り出した。


* * * *


「あぁー…。逃げられちまったよ…。……なんてな。」
「人間のガキの分際で俺から逃げられるとでも思ってんのかぁ!?」

バンギラスは不敵な笑みを浮かべながら歩き始めた。

「待ってろよ?俺のご馳走ちゃん…!」


* * * *

「ハァ…ハァ…ここまで来れば大丈夫かな…」

「何が大丈夫だって?」

僕はびっくりして後ろを振り返った。

「ハァ…ハァ…な…んで?こんなに早く追いつけるの…?」

そこには息もきらしていないバンギラスが立っていた。

「ここは俺の庭みたいなもんだ。それに…「あなをほる」も使えるしな!」

「そ…そんな…」

「…さて。動いたら腹も減ったことだし、夕飯にするか…!」

……ジュルリ…

バンギラスは僕を見ながら、舌なめずりをした。口からは大量の唾液がぽたぽたと垂れている。
もう逃げたところですぐ追いつかれる。
……だったら!
僕は思いっきりバンギラスのお腹に突進した。

{……やったか?}

しかし、バンギラスはいとも簡単に両手で僕を受け止めていた。

「自分から飛び込んで来てくれるとはな!そんなに早く喰われたいか?」

「ち…違う!!はなせ!」

「離す訳ねぇだろ。美味そうなガキが目の前にいるのに。」

そう言うとバンギラスは僕の服を爪で引き裂いた。

「服があるとよく味わえねぇからなぁ!じゃあ味見するかぁ!」

ベロン…ジュルル…
僕は至るところを舐められた。体中唾液まみれだ。ところどころ糸を引いている。

「…うめぇ。やっぱ獲物は人間のガキに限るな!」
「さぁ…そろそろ食っちまうか!」

僕は両手で持ち上げられた。抵抗をしたものの、バンギラスには全くきかない。

……グパァァ…

バンギラスが大きく口を開けた。息で僕の髪が揺れる。その息のなんともいえない獣臭に僕は鼻を覆った。

「助けてよ!食べないで…」

僕は必死にうったえかけた。

「あ?命乞いか?ふ…無理なこった。俺は腹がへってんだよ。」

バンギラスは僕をくわえた。上半身はもう口の中だ。むしむししていて、血生臭い。このバンギラスが多くの獲物を食べてきた証拠だ。
バンギラスは執拗に僕を舐め回す。
「ウメェ…」
バンギラスは僕をくわえ直した。僕は口の中に完全に収まった。
「やだ!死にたくない!ここから出して!」

バンギラスはもう言葉を聞き入れない。

「そろそろ呑むぜ?美味かったぜ。じゃあな」

バンギラスは上を向き、僕を呑みこむ体制になった。
僕は必死に舌をつかもうとしたが唾液で滑り、掴めない。

……いやだ…いやだ…

そんな願いとは反対に僕はどんどん奥に入っていく。
…そして、

「いただきます」

      ゴクンッ

燕下の音が鳴り響き、僕は暗い暗い地獄への道を下っていった。

* * *

ゴクンッ!

バンギラスはその喉越しに浸っていた。
少年のささやかな反抗が心地よい。

「…お。やっと胃に落ちたようだな。ふ…あがけあがけ。どうせ、俺の栄養になるんだからな。」

そう言ってバンギラスは眠りについた。
あの少年はいずれバンギラスの
一部になるのだろう。

洞窟の中は獲物のくぐもった声だけが響いているのでした。



















<2012/09/16 15:41 ピヨ助>消しゴム
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