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【保】いない − 旧・小説投稿所A

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【保】いない

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「なんで? なんで放っておけないの?
 ボクが弱いから? ボクが危なっかしいから?
 ボクが大事だから? ボクが世話ばっかりかけるから?
 ボクを世話する自分に陶酔したいから?
 ボクが一人じゃなんにもできないような子どもみたいだから?
 ねえ、なんで、どうしてよ。
 ダイ。ボクはダイにとって一体なんなの? なんだっていうの?
 面倒みてやんなきゃならない、妹なの?
 ちょっと手のかかる、友達なの?
 わかんない、わかんないよ、ダイ。教えて、ダイ。
 ああ、ダイ。やっぱり言わないで。
 もしもボクがダイにとって妹なんだったら、家族なんだったら、
 ボクはそれに耐えられない、絶対に耐えられない。
 ねえ、ダイ。なんでダイは気付いてくれないのさ。
 ボクのことはなんでもお見通しのくせに、
 ほんのちょっとの機微ですら気付くくせに、
 今日だってうっかり寝ちゃってたことすら知ってたくせに、
 ついてまわってるんじゃないかってほど、ボクの気まぐれな行く先々で遭遇するくせに、
 ボクが精一杯隠してた、不安でいっぱいだったことでさえ、
 こんなあっけなく見抜いちゃったくせに、
 どうしてこんな簡単なことには気付いてくれないんだよ。
 なんでボクが不安だったと思うの? 何がボクは怖かったって思うの?
 なあ、言ってみろよ。本当は知ってるんだろ? 気付いてるけど黙ってるんだろ?
 わけのわからないことに巻き込まれて、っていうのはなしだぞ?
 そんな無難な答えなんかでボクはごまかされてやらないんだから。
 いまどき鈍感なんて流行ってないよ。朴念仁なんて時代遅れだよ。
 ダイ、ねえダイ。答えはたったひとつに決まってるじゃないか。

 ボクはね、君に嫌われないか、たったそれだけが心配だったのさ!

 ああ、ダイ。こんなわけのわからないことになっちゃって、
 一番不安だったのはそれだよ。心配だったのは、たったそれだけだよ。
 ダイ、こんな触れもしない、どろどろのヘドロの身体になっちゃってね、
 ボクはダイに嫌われないか、怖くて仕方がなかったんだよ!
 避けられないか、すごく恐ろしかったんだよ!
 ダイならきっと大丈夫だって、思ってた。信じてた。
 違うね、思いたかったんだ。信じていたかったんだ。
 ダイはきっとこんなことくらいでボクを嫌ったりしない、
 むしろ、心配してくれるに違いない。それこそ、自分の妹のように!
 はたして、予想は当たったよ、ダイ。良いことも悪いことも、ぜーんぶ。
 ダイ。君はボクを嫌わなかった。避けなかった。
 あまつさえ、なりふり構わず掴みかかろうともしてくれたね。
 ……すごく、すっごく嬉しかった。やっぱり、ダイはダイだった。
 でもね、ダイ。ボクはわからないよ。どうしてダイがそんなにもボクを気にかけてくれるのか。
 誰にだってそうかもしれない。ダイは優しいから。お人好しだから。
 ボクにだけそうかもしれない。だとすれば、それはなぜ?
 ”肉親のように”ボクに善くしてくれるのはなんで?
 ダイ。もう一度聞かせて。ダイにとってボクはなんなの?
 ボクはね、ダイ。ボクは……。

 君のことが、好き、だよ。

 あは、あはは、ばかみたいだって笑うかな? でも仕方がないんだ。
 ダイ。ボクは君のことが好き。ずっとまえから好きだった。
 最初は肉親に向ける家族愛だったのかもしれない。
 でもそれはダイが払拭してくれたね。ボクのダイに対する感情は友愛へと変わった。
 そして、それはそのうちに、愛情になったんだ。
 いつだかは知らない。気が付いたらそうだった。
 気付かされたきっかけはあるけれども、その時には既に君のことが好きだったんだよ。
 世界に生きる、他者として。生物における、雄性として。
 ダイ、ボクは一人の男である君が大好きなんだよ。ずっとずっと、好きだったんだ!
 いつだってどこだって変わらない、広くて狭い世界の中の、たった一人の君が好き。
 だから、ボクは嫌だよ。ダイの妹は嫌だ! ダイの肉親は嫌だ!
 ダイ、ボクは君の家族でいたくない。ボクは君の家族になりたいんだ。
 だから、ねえ、ダイ。ボクは君にとって、どんな存在だったの?
 ねえ、ダイ。

 ダイは、ボクのこと、どう思ってるの……?

 ああ、ああああ、あはは、あは。
 ごめん、ごめんね、やっぱり嘘かもしれない。
 ボク、嘘ついてた! あはは。ごめんね。
 ずっとずっと好きだった、って言ったけど、ごめん、あれは、嘘だったんだ。
 本当はね、自分でも、よくわからなかったんだよ。
 ダイのことは好きだった。でも、それが恋愛感情なのか、よくわからなかったんだ……!
 ダイの妹でいたくないっていうのは、本当だよ。
 でも、でもね、ダイ。ボクは、ダイと対等な関係でいたかったんだよ。
 一緒にいて、適当におしゃべりしたり笑ったりあっちへ行ったりこっちへ行ったりケンカしたりして、
 どちらかが一方的にもう片方に依存したりしない、そんな、対等な関係でいたかったんだ。
 よく考えてみて。それって、別に、友達でも構わないんじゃないかい?
 ただおしゃべりしたり笑ったりあっちへ行ったりこっちへ行ったりケンカしたりするだけなら、
 別に友達でもいいんじゃないのかな?
 ボクはね、気付いちゃったんだよ、そういうことに。
 だから、自信がなかったんだ。
 ダイのことは好きだ。これは確かである。
 でも、この気持ちがはたして本当に恋愛感情であるのか。
 ただの友情なのではないだろうか。
 はたまた、ただ単にダイを、ボクを守ってくれる都合のいい存在としてみなしていて、
 その便利だと思うのを、好きだと勘違いしているだけなのか!
 ……わかんなかったんだよ。

 だけどね、ダイ。今はもう、わかってるから。
 ボクのこの気持ちは、本物だって、もうわかったんだ!
 不思議とね、ダイ。それはこの身体になってからなんだよねえ、皮肉なことにも。
 ダイに嫌われないか、不安で不安で、そうしたら、自分がダイのことを好きだって、気付いたの。
 なんだかね、このとろけた身体になったら、
 無駄なプライドとか、くだらない考えだとか、
 全部そういうものも一緒にとけていってしまったみたいなんだ。
 なんだか心が熱く湧きあがって、止まらないんだよ!
 ねえ、ダイ。辛くないかって聞いてくれたよね。
 なんだかあの答えをはぐらかしてしまったような気がしていたから、今答えるよ。
 すごく、すごく気分がいいんだ!
 今ならなんだってできる気がする。身体の底から気持ちが昇ってくる!
 自分の気持ちに素直になれる。辛くなんかないんだよ!
 ああダイ、好きだ。大好きだよ。
 この気持ちに気付けたのも、このヘドロの身体のおかげだよ。
 それにね、いいこともあったんだ。
 ダイ、こうやってね、背筋を伸ばして、前を見るの。
 そうするとさ、ほら。

 正面を向いたダイと、目が合うんだよ。
 今までずっと大きくて高く高くそびえていたダイの顔が、こんなにも近くにあるんだ!

 あは、ダイ。今までダイはずうっとボクのために見下ろしていてくれたんだもんねえ。
 ダイ、ボクはまだまだ君のことを知らないみたいだ。
 考え事をする時に少し下を見る、なんて、そんな些細なことも知らなかったんだよ。
 ねえ、ダイ。ボクはもっともっとダイのことが知りたいよ。
 ダイ。ボクのことも、もっともっと知ってほしいな。
 ダイには必要ないかもしれないけどね、もうとっくのとうに知ってるかもしれないけどね、
 それでもね、ダイ。ボクは好きな人に、ボクのことをもっともっと詳しくなってもらいたいんだよ。
 ダイ、ダイ、ダイ!
 ねえダイ、ずっと一緒にいてくれるの?
 いてくれるんだよね、そう言ってくれたもんね!
 健やかなるときも病めるときも喜びのときも悲しみのときも富めるときも貧しいときも、
 ずっとずっと、一緒にいてくれるよね!
 ダイ、好きだよ、大好きだよ、
 ボクは、





 君が、好きだああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!





 」













彼女は深く彼を抱きしめて、それから優しくキスをして。







<2011/12/16 21:55 ホシナギ>消しゴム
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