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【保】冬の摂理_POKExPOKE − 旧・小説投稿所A

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【保】冬の摂理_POKExPOKE

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真っ白の景色から一転、薄暗やみの洞窟内に目が慣れず重力に整った速度でしたたかに墜落。
いだだっ!考え無しに飛んでしまい、着地も上手く出来ず足を痛めてしまった。
えーん、もう少し慎重に行動するんだった……。

数秒経つとぼんやりだか徐々に視界が晴れてくる。
よかったー、すぐそこにきのみがあったよ!ほっと一息、痛みをこらえて弱々しくきのみに近づく。

こつん。と、まだ目が慣れていないため目前に出現した突起物に頭をぶつける。
なんぞ、これ?と目を注ぐと、それが動いた。

……?……。……………………!!

ビリ!と尻尾から耳先にかけて緊張感が走る。そして暗やみに慣れた目で見据えた。
自身の三倍ほどあるんじゃないかという体躯に生える猛々しい牙ふたつが真横に伸びている。
灰色に緑がかった甲殻を持つ爬虫類じみたポケモンが、真っ赤な瞳で私を捉えていた。

私は白い息を吐いて見つめることしか出来なかった。
あいつは事態に気付くと、によによと不気味な笑みを浮かべ、すかさず舌舐めずり。
ああこんな事になるなら最初から食料蓄えとけば……という考えももはや後の祭り。

じりじりと距離を詰めてくる。それと同じ速度で私は体を引く。
この足で逃げることは不可能だろう。飛んで逃げるにも上手く飛べるかどうか……。
頭をフル回転させ作戦を練っている間に、壁に背を付ける状況になってしまった。
しかし顔には勝算ありの色。

私の体はとても小さく華奢だけど必殺技がある!
これで幾度も危険を乗り越えた。よくわからないけど、インドぞうでも動けなくなるくらい強力みたい。
機を狙って相手が飛びかかってくるのと同時、私の頬にある電気袋からババリッと弾ける音がした。

頬から全身に伝わる渾身の電撃を放射状に放つ際、光にやられないよう閉じていた目を開けちらと見る。
くすぶっていた煙が晴れ……。



うそ……、効いてない……。
気付くと私は体を鷲掴まれ、岩壁に押さえつけられていた。
まだ若さが残るが年月を経て形成されたドラゴン族の甲殻には電撃が通じなかった。
生々しく背筋が震えるような熱い息が掛かる。
私の切り札をぶつけても全く効かない事に驚き沈黙する。先ほどまでは余裕だった表情も青ざめ、絶望の色に変わっていく。
なんで……?
どうして……?
頭がぐらぐらする……。
心臓が締め付けられる……。
……。
は、と頭部に嫌な何かを感じ現実に引き戻される。

肉厚な舌で顔を舐められた。更に臭いの強烈な唾液をゆっくりと、私の体毛に馴染ませようと塗りたくってくる。
じゅるじゅる、びしゃ……
丸呑みにするつもりか、それとも私を味わってるのか行為が長く続く。
どろりと垂れ下がった唾液は尻尾の先まで伝わり、足元に小さな濁った水たまりを作った。

虚ろになりゆく視界のかたわらに、小さなだるまさんが現れた。
だるまさんはこちらに気付くと、慌ててそばに落ちていたきのみを持って視界から姿を消した。
私はそれを横目で見ていることしかできなかった……。

助けなんてそう都合良く来るはずがない。野生なんてそんなものだ。
自然の摂理に敵うわけもなく、弱者は強者に捕食される。ただそれだけのこと。
それだけのことなのに……、心の奥では今でも諦めきれない生存本能なる気持ちが絶えず残る。

あいつが大口を開けた。私くらいの獲物なら一呑みにするのは容易いことであろう。
ぽた、ぽた。
獲物を前に過剰に分泌される唾液をだらしなく垂らしながら覆いかかる。

だめ……、食われる!
ぴり!
肩口から痛みを感じ、反射的に電撃を繰り出すも消耗しきった電気が効くはずもなく、赤くどろりとした口腔内を映し出すだけだった。
久々の食事か、と味覚を感じた顎や舌が活発に蠢き奥へ奥へ……、私を引きずり込んでいく。
困憊しきった私の体はその揺動がひどく心地よく感じた。
情けない……。私はほっぺからか弱い光を出すことしかできず、動きに身を投じた。
ごぷっ、じゅりりっ……。
舌に撫でられにゅるりと下る。
ぐぐぐ……、ごくり。

あいつが上を向くとゆっくりと落ち込み、行きつく所にたどり着いた。
身の圧迫から多少なりとも解放されたそこはとても熱く、とろけてしまいそうだった。
どくん……、どくん……、と一定の拍の数で刻まれる揺れに、一緒になって私も揺れる。

酸素が薄い……。意識がおぼろげになる。

なんだか眠くなってきた……。



おやすみなさい。



_____________________________おしまい_________




<2011/12/09 22:33 ぷ>消しゴム
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