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【保】神々の戯れ〜神罰〜 − 旧・小説投稿所A

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【保】神々の戯れ〜神罰〜

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密猟者の命懸けの絶叫は、水神はもちろんのこと月夜兎にも聞こえた。
そろそろ頃合いだな。
そう思った月夜兎は、ピョンと元気よく立ち上がった。

「水神、呪いが解けたみたいだ!」

そう力強く宣言した。

「ホント!?良かった、本当に良かった。早く中にいる人間を吐き出してやらないと」

嬉し涙を流しながら四つんばいになり、密猟者のことを丁寧に吐き出した。

「その人間は私が送っていく。悪いが体を洗ってやってくれないか?」

「分かったよ」

月夜兎の申し出に、水神は素直に応じる。
さっきと同様に地下水を吹き出させ、密猟者の体を洗い流してやった。

「これで問題ないだろう。お前はここで待ってろ。私は今からこの人間を送るから」

月夜兎は密猟者を立たせ、支えるようにしながら山道を目指して歩き始めた。
しばらく歩いて水神の姿も見えなくなった頃、月夜兎が口を開いた。

「密猟者さんよ。神に逆らったらどうなるか分かったな?今日のは言わば神罰だよ」

「分かってます。もう二度と、こんなことしません。お許しください」

精根尽き果てた密猟者はただひたすら許しを請う。
それを聞き届けた月夜兎は、山道の方向を教えて二度とここに来ないことを約束させてから別れた。

「ふう、やっぱり水神の方が効果抜群だね。私ではあそこまで精神的に追い詰めることは出来ないからな。白々しい芝居を打った甲斐があったってもんだ」

月夜兎は陽気に笑いながら歩いていたが、何かとぶつかってしまった。

「痛ッ!木にぶつかっち……」

そう言い掛けて、月夜兎は絶句した。
目の前にあるのは茶色い木ではなく、青い何か。
この青色、どこかでみたことある。
月夜兎はおそるおそる見上げた。
そこには満月ではなく、水神の瞳がギラギラと輝いていた。


「しっかりと聞いたぞ。あれは全部演技だったんだ。本当に心から心配して、自分の信念をねじ曲げる覚悟をして、涙まで流したのに!」

最初は冷静な口調だったのだが、怒りが押さえ切れなくなったのか最後は大声になっていた。

「えっ、いや、それはその……。これは罠だ!私を陥れるためのあの人間の罠だ!」

「ふーん、言い訳するんだ。もし素直に謝ってくれたら許そうと思ってたのになぁ」

「待て、話を聞いてくれ。だって考えてみろ。あの人間は毛皮狙いで神である私を撃ったんだぞ!仮に私が痛め付けてやったとしてもだ、肉体的ダメージは与えられても、精神的なダメージは私のこの外見では与えられない。それでは私の気が済まん。肉体的にも精神的にもダメージを与えるには、やっぱり水神の方がよかったんだ。だいたいもし私が『懲らしめてやってくれ』と水神に頼んだとしても、優しいお前のことだから威嚇ぐらいしかせずに逃がしただろ?だから芝居を打ったんだ」

月夜兎は必死で自分のことを弁護する。

「言い訳ばっかり並べるね。もう許さないから」

「はっ?あっ、本当にすまなかったと――」

「だから遅すぎたと言っているんだ!謝罪がさ!」

水神が珍しく怒鳴り散らした。
普段優しい奴が怒るとメチャクチャ怖く感じる現象が発動し、月夜兎はギュッと縮み上がる。

「龍族と竜族からするとね、裏切りというのは逆鱗に触れるのに等しい行為なんだぞ」

水神は月夜兎のことを乱暴に鷲掴みにする。

「しっかりと罰は受けてもらうからね」

そう言って水神は飛び立った。



<2011/12/05 23:00 とんこつ>消しゴム
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