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竜の恋路を邪魔する者は喰われてしまえ − 旧・小説投稿所A

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竜の恋路を邪魔する者は喰われてしまえ

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「……さてと、覚悟は出来ておろうな?」

オーロラたちを見送ったセピアはくるりと振り向いてアッシュのことを見下ろした。
その瞳には冷たい怒りしか宿っていなかった。

「その台詞そっくりそのまま返してやる」

だがアッシュも負けじと睨み返す。
お互いの視線がバチバチと見えない火花を散らした。
アッシュは壁に立てかけてあった大剣を手に取る。

「ほう、竜(ひと)の妻を寝取ろうとした挙句に私に刃を向けるのか。いい度胸をしてるな。少しは手加減をしてやろうかと思っていたが、その気も失せた。全力で潰してやるから覚悟しておけ」

セピアは最後通告をアッシュに叩きつけた。

「それで結構。化け物に慈悲なんかかけられたくない」

アッシュは吐き捨てるように言う。
そう、目の前にいるのは化け物だ。
それなのに、それなのに!
顔には出していなかったが、アッシュの心の中は悔しさで満ち溢れていた。
アッシュという男は今まで挫折というものを経験したことが無かった。
それは女性経験でも同じで、アッシュが口説けば女たちはイチコロであった。
そんなアッシュが生まれて初めての一目惚れをした。
オーロラのことである。
アッシュはなんとしてもオーロラを自分の女にしたかった。
そしてそれは簡単なことだと確信していた。
ところが、だ。
彼女は自分ではなく、目の前にいる化け物のほうを選んだ。
有り得ない、何故だ!
アッシュは生まれて初めての屈辱を感じていた。
そしてその元凶を目の前にいるこの黒竜に見出していた。
逆恨みであることは薄々は理解していたが、やり場の無い憤りが理性を上回った。

「でりゃあぁぁああ!!」

アッシュは地面を蹴り、セピアに斬りかかった。
否、大剣を叩き付けたと言った方が適切か。
セピアは咄嗟に左腕でガードする。
堅牢な鱗で覆われているにもかかわらず、セピアの左腕は血で滲んでいた。
カルメディが去り際に『コイツは凄腕のハンターだから気を付けろ』と言っていたことを思い出す。
確かにそのようだ、とセピアは体勢を立て直した。
そして左腕の血を舐めあげ、耳をつんざくような咆哮をあげた。


<2011/09/10 11:27 とんこつ>消しゴム
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