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ぼくのなつやすみ − 旧・小説投稿所A
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ぼくのなつやすみ
− 本当のWANTED −
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署長室へと伸びている廊下を、一心不乱に突っ走るレムリアとゼクロム。
そんな彼らの目の前に、脇道から飛び出してくる人物がいた。


「止まれ!! 我が命に代えてもここは通さな…」

「どけ」


冷たい言葉で最後の敵を威嚇し、床の上に組み伏せるバビロン。
雄々しい肉体が、抵抗しようとする男の動きを固める。そして男
のアゴを無理やりこじ開け、なんと自前で改造したての手榴弾を
押し込んだ。


「フガ…あがががッ…!!!」

「おっと喋らない方がいい….これ、純正品の五倍の威力があるんでね…」

「ちょ…ちょっとバビロン!?」

「こいつは私が始末する…お前は行け!」


バビロンは男に爆弾を咥えさせたまま、使命感に満ちた顔でレム
リアを怒鳴りつける。それをしかと受け止めた彼女は、スピード
を緩めることなく署長室へ走っていった。



「フフ、貴様いい度胸だなァ….命を粗末にするとは」

「(ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ…!!!)」










=================



「お邪魔しますッ!!!!!!」

「ぎゃあああああああ!!」


ドアノブなど気にも留めず、レムリアは扉にタックルをかまし
て侵入する。突如現れたドラゴンに唖然としたまま、署長は
大慌てでトランシーバーで仲間を呼ぼうとした。


「あら、挨拶ぐらいさせてくれても良いんじゃない?」


レムリアは残酷にも、棚の上にあったトロフィーを投げつけた。


ヒュッ…ゴォンッ!!!!!

「あぎやぅぶべぁぉぁああッ!!!」


人間のものとは思えない悲鳴を上げた後、署長は頭を押さえて
カーペットをのたうち回った。どうやらトロフィーのトンがっ
た部分が、頭天を直撃したらしい。


「アッ….ご、ごめんなさい、やり過ぎちゃった…」


あっけなく陥落した署長を見据えて、レムリアは口を押さえて謝った。
しかし頭から血を流しながらも、署長はふらふらっと立ち上がる。


「き、貴様は確か….ポケモンリーグの…」

「ええそうよ。ここに来た理由、言わなくても理解できるわよね?」

「いや全く」

「(ガクッ….)解除よ解除! マスターとカイオーガとバビロンに
ふざけた懸賞金掛けたの、あなたでしょう!?」



珍しく声を荒げながら、壁にじりじりと詰め寄っていくレムリア。だが
自分との距離が縮まるにつれ、署長の顔が赤くなっていくのに彼女は気
ついた。


「な…何よ、その顔…」

「いや何でもない!! 本当、何でもないんだ! 頼む信じてくれ!」

「………ハイ?」


どう見ても言葉が支離滅裂だ。レムリアが困り顔で見下ろすと、彼は
しゃがみ込んで顔を隠す。この後どうすればいいか悩む彼女の視線が、
ふと馬鹿でかい本棚へと向いた。


「あ…や、やめろ見るなっ…!!」

「え…どういう、こと…?」


ズラリと整頓されている彼の蔵書。だがその背表紙には、必ずと言っ
ていいほど「ムゲン竜」の文字が刻まれていた。本棚全体を見回すと、
実に1/3以上がムゲン竜に関連した本だ。


「あなた….ムゲン竜に興味でもあるの?」

「興味というか…そ、その….いや、何というか…」


ムゲン竜というのは、彼女….つまりレムリアの種族だ。
普通、世界に十匹も存在しない種属について、ここまで熱心に
調べようとするだろうか? 専門家なのか、あるいは….……





「ち、違うとは思うけれど….まさか…私なの?」

「………(コクン」




仲間にムチャクチャな罪状を付けてまで、署長が欲しかったもの…
..それは心惹かれたムゲン竜。


「でも懸賞金は…どうして私に掛けなかったの?」

「あ、貴方なら仲間を見捨てないと思った….一緒に、ここに乗り
込んでくると思った…」


全ての戦闘は、署長の描いたシナリオだった。
仲間想いなレムリアなら、彼らと一緒にここへ来る…
そして運が良ければ、他の仲間は拘束、彼女だけをここに連れ
てくる….つもりだった。


しかし次の瞬間、レムリアが今しがた通ってきた廊下から、雄叫びを
上げながら走ってくる団体がいた。


ーーーうぉぉぉぉぉ…!!!

「マ、マスター!?」

「ま、まさか…財竜を倒したのか!?」


ロンギヌス達が飛びこんできた。
途中で合流したのか、バビロンもいる。



「お前か全ての元凶は…!!」

「マスタぁ〜…ボクにヤらせてよ♪」

「まともな署長に改造してやる…命の保証は無しだが」

「地獄と天国….どちらへのキップをご所望で?」


まさに戦闘準備完了といったところだ。バビロンは拳をパキパキ
と鳴らし、カイオーガは長い舌で自分の額をレロリと舐めていた。
ロンギヌスがGOサインを出せば、丸腰の署長を消すのに五秒も
要らないだろう。



「……!!」
「レ、レムリアさん…?」
「おい、どういうつもりだ…」


レムリアが両腕を左右に広げて、仲間の前に立ちはだかったのだ。
まるでガクガクと震える署長を….野獣から護るように。



「マスター…お願い、殺さないで。仕返ししたい気持ちは分かる
けど….今のあなた達ならきっとこの人を殺してしまう。それだ
けは….や、止めてほしいの」

「……レムリア……何かあったのか?」

「それは聞かないで…」


唇をキュッと結び、ロンギヌスの眼を見て話す。
彼女の背後では、
署長が怯えながらその言葉に驚愕していた。レムリアの身を呈しての
懇願を無視するほど、ロンギヌスは鬼畜になれなかった。



「お、俺はいいけど….その…こいつらが…」


苦笑いをこぼすロンギヌスの後ろでは、怒り心頭のバビロン、カイ
オーガ、ラティオス、ギラティナが。誰一人として、署長を無罪
放免させる気はないらしい。



「あ、そうだ…..」


いい考えでも浮かんだのか、ロンギヌスはメモリケースをガチャ
ガチャとまさぐる。そして一分程度探した結果、目立たない灰色
のメモリを抜き取った。


「ようするにお前ら….何か復讐しないと気が済まないんだろ?」

「うん」
「そういう事だ」
「右に同じです」
「私もだ」

「じゃあこれでいい….レムリアの願いどおり、殺すなよ!?」


キチッ…『ROTATION(回転)!!』




<2011/09/11 21:13 ロンギヌス>消しゴム
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