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表裏一体 影の深淵 − 旧・小説投稿所A

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表裏一体 影の深淵

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誰も知らない遠い、遠い、世界。
山奥にだたひっそりと存在する村。
そんな小さな村で起きた話・・


 * * *

人口は約五十人ほどの小さな村。
辺りは山岳地帯で殆ど人の訪れはない。
しかし、この村には神獣がいるという。
狼に蝙蝠の翼。九つの尻尾を持つ。
膨大な妖力、魔力、通力を持ち、その気になれば叶えられない事は無いという。
山を削り作られた巨大な洞穴にその神獣は在していた。
「し、神獣さま・・・」
「・・何のようだ・・?」
その洞穴に一人の人影。
神獣は覚醒し、躯を起こす。
「お、お願いが・・」
「・・その仔の病か・・?」
宝玉の如き紅い狼眼が人間の抱えていた子供を見据え、言葉を吐き出した。
顔は深紅で呼吸は浅く、早い。さらには歯を鳴らし激しく震えている。
かなりの重体・・一刻を争うところだろう。
ここら辺に見られる病には類を見ない。
・・これは病なのだろうか・・
「お、お父・・さっ・・・」
「神獣さまっ!」
神獣は溜息混じりの重い息を漏らし、子供の額に前脚を添え・・・・
「・・酷いな・・これは病なのか?」
「はい・・私どもでは・・」
「打つ手なし・・それで我を頼った。と言う訳か。」
「・・申し訳ありません・・」
「良かったな・・我がいて。な。」
神獣は皮肉にそう言った。
ここの村人は神獣を良く思っていなかった。
特に捧げ物をしているわけでもなく、神獣の力を信仰しているわけでもなかった。
本当に打つ手が無くなった時のみ神獣の力を求めた。
・・悪い言い方をすればー道具ーのように使っていた。
「滑稽だな。我はお前らに恩を感じたことはない。我はお前らに恩を与えているというのに恩を返す事なく我に縋る。どうやらお前らにー恥ーと言う言葉はないのだな。」
眉間に皺を寄せ、声を荒げ毒づいた。
「っあ・・う・・ぅ・・」
「まぁいい・・今回も面倒は看てやろう・・だが、いつまでも我の忍耐があると思うな。」
「は、はひぃ・・す、すみませんっ・・」
双眸の紅玉が人間を激しく睨みつける。
神獣の前脚が突如輝き、その光が消えると共に子供の容体は回復、安らかな寝息を立てて眠っている。


<2011/05/13 23:16 セイル>消しゴム
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