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【保】ハロウィン小説 お菓子をくれないと○○するよ! − 旧・小説投稿所A

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【保】ハロウィン小説 お菓子をくれないと○○するよ!

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……とある広場にて……


「こんばんは! トリックオアトリート!」
「こんばんは♪ はい、お菓子ですよ♪」

ハロウィン特有の台詞に私はニッコリと笑うと、
この日のために用意した拳大の小袋に入ったクッキーの詰め合わせを
とても元気のいい返事をする子の手の平においてあげる。

「ふぁ〜♪ 美味しそう……お姉さんありがとう!」

手に乗せられたクッキーの小袋に嬉しそうに笑うと
私に一礼をして、今度は別の誰かにお菓子を貰うために何処かへ駆けだしていった。

その元気な後ろ姿を見送り……
私は、ちょっとため息をついた。

「ふぅ……中々好調ね。
 昨夜、一杯作ったかいがあったわ。」

実際かなり好調で、さっきの子で10人目だったんだけど……
今……ちょっとさえない気分なんだよね。

理由は私のそばに今まで配ってきた小袋とは別に用意してある……
それぞれ6種類の色の違う大きめの袋。
中に入っているクッキーのサイズもかなり大きめで、
この袋を渡したい人たちが、今回のハロウィンパーティーにまだ来てなかった。

「はぁ……このまま、渡せないのかなぁ……」
「……どうしました? ……あまり元気がないようですが?」
「あっ! スイクンさん♪」

とても聞き覚えのある声に顔を上げると私の目の前に、
いつの間にかスイクンさんがいて、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

いきなり元気になった私にスイクンさんは、
何も言わずちょっと不思議そうに頭を傾げたけど……
その理由については最後まで何も聞こうとはしなかった。

「……その様子だと大丈夫そうですね。なら……こんばんは、アイゼンさん。」
「あうぅ……心配させてすみません。
 こんばんはスイクンさん……その姿は……ドラキュラの仮装ですか?」

丁寧に頭を下げて挨拶をするスイクンさんに慌てて私もお礼を言いながら頭を下げた。
その後、改めてスイクンさんを見ると、
ハロウィンにつきものの仮装にドラキュラを選んだみたい。
それらしいマント姿と風体に仮装している。

「……似合いませんか?」

あんまりジッと見つめすぎたのか?
スイクンさんはちょっと心配そうに自分の姿を見渡しながら聞いてきた。

「いえいえ、すっごく似合ってますよ♪」
「……そうですか……それは良かった。」

それに私が笑顔で答えると
スイクンさんが嬉しそうに薄く微笑んでくれた。

「……それでは折角なので……トリックオアトリート。」
「はい♪ スイクンさん、このお菓子を受け取ってください♪」

すこし恥ずかしそうなトリックオアトリートだったけど……
そんなところがスイクンさんらしいなと、
私は笑ってしまいながら水色のお菓子入りの袋をスイクンさんに差し出した。

「ちなみに中身はちょっと大きめなクッキーですよ♪」
「……そうなのですか。 
 とても美味しそうな匂いがしますよ。」

差し出されたクッキーの袋の匂いを少しかいだ後、
スイクンさんはそっと袋の入り口を咥えると、この時のために用意したのか?
胴体に身につけている大きめなカバン状の入れ物にクッキー袋を入れた。

「ふふ……昨日、遅くまでかかって一生懸命作ったんですよ♪」
「……そうだったのですか。……後で美味しく頂かせて貰います。」

良かった……まだ、食べて貰っていないけど、
どうやらスイクンさんは私のクッキーを気に入ってくれたみたい。
でも、美味しそうって言ってくれて嬉しかったな〜

「アイゼンさん……嬉しそうですね。」

どうやら、それが顔に思いっきりでていた見たい……
スイクンさんの微笑みが明らかに笑い顔になって私を面白そうに見つめている。

「あっ……うぅ……顔に出てました?」
「ええ……かなりにやけてましたよ。」

私が情けない声を出しながら聞くと、
笑いながらスイクンさんが正直に頷いた。
今……少し頬が赤くなったような気もするけど、
にやけた顔を見られたのはしょうがないよね……もう開き直ろう!

「スイクンさんにお菓子を美味しそうって、
 言って貰って本当に嬉しかったんですよ♪」
「フフ……それでは、他の方々に挨拶してきたいですし、私はいきますね。」
「あっ……すみません長々と引き留めて……」

最初と同じように丁寧にお辞儀をするスイクンさんに、
また、慌ててお辞儀をする私……
なんか今日はあまり調子が出ないな〜もっと気を引き締めないと!

「いえ……楽しかったですよ。 さようならアイゼンさん。」
「はい♪ スイクンさん、さようなら♪」

私と別れの挨拶をして、立ち去ろうと身を翻そうとしたスイクンさんの動きが
途中で何故かとまり、再び私に近づいてくる。

「アイゼンさん……このハロウィンが終わったら、
 いつか、約束どおり食べさせて貰いますよ……」
「えっ♪ 本当ですか、いつでもお待ちしてまっヒャッ♪」

余りにも嬉しいスイクンさんの申し出に、
ちょっと浮かれていた隙をつかれて顔をいきなり舐められてしまった。
思わず、我ながら嬉しそうな悲鳴をあげ、
頬に手を当てている私を見てスイクンさんがまた笑いながら此方を見ている。

「フフ……それでは、今度こそ……さようなら。」

立ち去っていくスイクンさんを暫く呆然としながら見つめていく。
ようやく正気に戻った時にはすでに、スイクンさんの姿は見あたらなかった。

「ふふふ……これ、予約かな?」

最後に、挨拶出来なかったのは残念だけど、
クッキーは渡せたし、予約も貰って私は満足だった。

さて、この調子で他の5人にも会えると良いなぁ……

「おっ! アイゼンさん久しぶりですね〜」
「ふふふ……アイゼン。 貴方も来てたんだ。」

私の願いが届いたのか?
さっそく、その内の2人が私の目の前に姿を現したのだった。

一人はいつもと違い、真っ黒なローブを身に纏い、杖を持った魔法使いに変装したリヴェーヌ。
もう一人は、漆黒の肌にさらに漆黒のローブを身に纏い……
大きな大鎌と不気味な仮面を顔に付けている……
死神に変装したヘルカイトという名のリヴェーヌの夫の竜さんだった。

「あっ ヘルカイトさん♪ ……とリヴェーヌ……
 こ、こんばんは、いつものように仲が良いですね。」

最初にヘルカイトさんに丁寧にお辞儀をすると……
次ぎに朝のことが理由でリヴェーヌにだけジト目で見つめてやり、
それから自分でも分かるぐらい引きつった笑みで頭を下げた。

「あっ こんばんは♪ アイゼンさんリヴェーヌさんと何か会ったのかな?」
「ふふふ……ヘルカイトさん……気にしないでください。 
 ……いつものことですから。」

ええ…いつもの事よ!
ふふ……この場は抑えるけど後で覚えてなさいよリヴェーヌ……
ものすごい目で睨んでいるんだけど……
リヴェーヌはスーッと目をそらし、私の視線を軽く受け流してしまう。

「ああ……リヴェーヌさん。
 また、アイゼンさん食べたのね♪」

その間、仲間はずれにされていたヘルカイトさんは、
私達のやり取りですぐに検討が付いたみたいね……
さすがはリヴェーヌの夫だな。

私が変なことで感心しているの視線の端で、
大鎌を担ぎ直したりしながら面白そうに私達を交互に見ていた。

「ふふふ……それより、ここに貴方がいると言うことは……
 トリックオアトリート♪ ふふ……勿論あるんでしょう。」
「あっ! それなら俺もトリックオアトリート♪」

あ……あんた達…結構いい根性しているわね……
でも、この二人のためにお菓子を用意していたのは本当だけど、
なんか本当に悔しいような気がする!

「まったく……調子が良いんだから……」

そんなに嬉しそうにされると、こっちも何故か嬉しくなって来ちゃって……
やっぱり私もげんきんだな……

色々と釈然としない事もなかったけど。
子供みたいに嬉しそうに私に差し出された二つの大きな手の平を見ていたら、
なんか……1人で怒っているのがばかばかしくなっちゃった。

とそんなことを思いながら、
いそいそと二人の肌に合わせた黒と青色の袋を取り出し……
二人の差し出した嬉しそうな手の平の上に乗せてあげた。

「はい、ヘルカイトさんはこれですよ♪
 ……それとリヴェーヌはこっちね。」

それぞれ袋を受け取った二人は、私の想像通り真逆の反応をしてくれた。

「おっ♪ 美味しそうな匂いだな。
 お菓子ありがとうねぇ、アイゼンさん♪」
「……ねぇ、アイゼン。 
 美味しそうなのはいいんだけど……私のだけ袋が小さい……」

受け取った袋を嬉しそうに見ているヘルカイトさんに対して、
ちょと小さめの袋を渡されたリヴェーヌが少し不満そうに目で私を訴えてきている。

これは私からのささやかなお返しで、
リヴェーヌ……貴方が昨日つまみ食いした分を減らしただけよ♪
朝のことがなければ許してあげるつもりだったのにね……

「リヴェーヌ……何で貴方のだけ小さいのか分からないの?」
「うっ! ……アイゼン? 本気で怒っているの?」

私が少し低くくぐもったような声で話しかけると、
明らかに狼狽えたように冷や汗を少し浮かべリヴェーヌが後ずさった。

「ふふふ……どうしたのリヴェーヌ? 
 腰が引けているみたいだけど……」
「うぅ……アイゼンが、また怖いよ……」

さらに一歩踏み出すとリヴェーヌも同じだけ後ずさりする。
ふ〜ん……どうやら負い目は少しは感じていたみたいね。
つまり、開き直って誤魔化そうとしていたわけか……

「ねぇ……リヴェーヌ。
 そう言えば、朝のことちゃんと貴方の口から謝って貰っていなかったわね。」
「そ、それは……」

さらに私の追い打ちの言葉に呻くだけで何も言えなくなり……
トンッと都合のいい大木がリヴェーヌの背に当たった。
慌てて後ろを振り向き……
そして、再び私に視線を戻したリヴェーヌの顔がさらに青くなっていく。

「さぁ、もう逃げられないわよ。
 リヴェーヌ……アレはどういう……キャッ!」

完全に沈黙したリヴェーヌにとどめとばかりに踏み込もうとした瞬間!
私の身体が後ろへとものすごい力で引っ張られてしまった。

その力に何も抵抗することが出来ず。
柔らかなモノに強引に押し付けられたかと思うと、
困惑して何も分かっていない私の視界が真っ暗な暗闇に包まれてしまう。

そして、その暗闇の中に……

「……あなたを地獄に送ってさしあげましょうか……?」

とても低い死神のような声が響いてきた。
その声に私は思わずビクッと身体を震わせ身を縮めてしまう。

「アイゼンさん……すみませんねぇ……さっきのは冗談にしても……
 リヴェーヌさんを虐めるのはそこまでにしてくれません?」
「あぅっ……へ、ヘルカイトさん……」

その声で何が私の身に起こったのか検討が付いた。
私は、ヘルカイトさんが着ている黒いローブの中へと引きずり込まれ、
彼に抱きかかえられてしまったみたい……
状況は分かったけど、このままだと私……どうなるんだろう?

不安に駆られる私をよそに楽しそうな2人の声がローブの中まで届いてくる。

「ふふふ……ヘルカイトさん、ありがとう。」
「いえいえ♪ リヴェーヌさんを守るのも俺の役目だからな♪
 で……アイゼンさんをどうしようか?」
「ふふふ……今度は私が……」
「ちょっ!……何を勝手に話してっ……うわぁっ!」

勝手にドンドンと進んでいく二人の会話を聞きながら、
ローブの中でジタバタと無駄に暴れていると、
今度はリヴェーヌらしき手が私を抱え込みローブの外へと引っ張り出されてしまった。

ローブの外で私の目に飛び込んできたのは、
いつもの調子に戻り、いつもより不気味に微笑むリヴェーヌの顔……

うぅ……立場を逆転されてしまった。
リヴェーヌ、貴方のその微笑みも同じように怖いよ……

今度は私がリヴェーヌの両手の中で怯えながら……

「うぅ……リヴェーヌ……何をするつもりなのよ?」

締め付けられる苦しさに弱々しく呻くように話しかけ、
抜け出そうとジタバタともがいていると……

私を見つめているリヴェーヌがニンマリと怪しい笑みを浮かべた。

「フフ……アイゼン。
 貴方なら……こっちの地獄の方がいいんじゃない?」

そう話しかけてきた後……
リヴェーヌが私の目の前でゆっくりと口を大きく開き迫ってくる。

段々とその大きな口が近づいてくるにつれて、
夜の暗闇の中でもリヴェーヌの口の中がハッキリと私の目に見えてきた。

月光に照らされ鈍く光る唾液に濡れた牙が……
その奥に、私を味わおうと大量の唾液をかき混ぜ蠢いている舌が……
一番奥に開いている地獄への門が目に映り……

「い、いや……止めて! ちょっとリヴェーヌ、止めなさい!」

それらから逃げるように私は悲鳴をあげながら、
リヴェーヌの両手に手をかけ押し広げようと渾身の力を振り絞った!

「くぅっ! やっぱり私の力じゃダメ!
 このままじゃ、また朝のように食べられて……」

しかし、リヴェーヌの両手はビクともせず……
私の心にはショックで焦りで、諦めが少しずつ混じり始めていた。

その後も抵抗は続けて、
最後まで頑張ったけど……どうやら無駄だった見たい。
リヴェーヌの口がもう私の目の前まで……

「ふふふ……お菓子はちゃんと貰ったから……
 アイゼンへのイタズラは、これだけで終わりにしてあげるわ……♪」

私の目の前で今にも食らいつきそうに怪しかったリヴェーヌの顔が突然崩れ、
優しく微笑みながら、私をそっと地面に下ろしてくれた。

「えっ? ええ……? 何がどう……?」

余りにも突然の事で、わけが分からずジッとリヴェーヌを見つめていて……
からかわれていたと突然理解し……

「こ、このっ! リ、リヴェーヌ!!」

カッ!と怒りが心の底からわき出してきた!
そのままの勢いで怒鳴りつけようとしたら……

「ふふふ……今のアイゼンなら怒っていても可愛いのよね……」

平然と微笑んだままリヴェーヌが呟くと……
いきなり私の頬を舌を押し付けるようにペロリと舐めてきた。

「ひゃうっ! あっ……あぅっ! 痛ったぁ〜」

舐められた瞬間に背筋にゾクゾクとした感覚が走り、
思わずのけぞって、その場に思いっきり尻餅をついてしまった。

「……うぅ……勢いをそがれた……」
「ふふふ……アイゼン……大丈夫かしら……?」

地面に打ち付け衝撃で痛そうに身動ぎしている私を、
リヴェーヌは助けようともせずに微笑みながら見つめている。

どうも手玉に取られているようでとても悔しい!
だけど……
どうして、リヴェーヌの舌ってあんなに気持ちよいのだろう?
いつもアレで身体から力がぬけちゃうんだよねぇ……

「アイゼンさん、さっきのは痛そうだったが……大丈夫か?」

そう言って、手を差し出してくれたのはヘルカイトさんだった。
今まで静観していたみたいだけど……
痛そうにしている私を見てさすがに心配してくれたみたい。

「あっ……ヘルカイトさん。
 大丈夫ですよ、心配してくれてありがとうございます。」

差し出してくれた手を取り、何とかその場に立ち上がることが出来た。
油断するともう一度、尻餅付きそうだけど……

「そうか……なら、俺からもからかったお詫びに……」

そんな私にヘルカイトさんがニンマリ笑ったかと思うと、
今度はリヴェーヌに舐められた逆の方の頬をペロリと舐めてきたのだった。

「キャァッ! ……うぅ……ヘルカイトさんまで……」

再び悲鳴をあげながら力の抜けたせいで尻餅をつく私……
ヘルカイトさんもこれを狙っていたのねっ!

自分を笑いながら見下ろす竜達を交互に見渡し……
湧き上がってきた怒りを含めた抗議の視線で2人を睨んでやった。

この二人にそんなモノ聞かないのは百も承知だけど……


その予想どおり平然としている2人はお互いに軽く頷くと、
私に向かって大きな頭を近づけてきて……

「ふふふ……それじゃ、私達はそろそろ行くわね。
 ……アイゼン……朝はご免なさい……これがお詫びね……♪」
「リヴェーヌさんがするなら俺からもしないと……
 アイゼンさんお菓子ありがとな♪」

二人は私にそう呟き……
そのまま、さらに私に顔を近づけ……

「えっ? 二人とも何をする……あっ」

その言葉に戸惑っていた私の両頬に優しくkisをしてくれた。
思わず、私が頬に感じる暖かな感触に頬を染めてしまったのは……
うぅ……不意打ちだったし……しょうがないよね?

そんな感じで私が惚けていると、
二人は再び笑いながら何処かへと行ってしまった。

恐らく……
今の私みたいに他の人たちも色々と弄って遊ぶつもりだ。
多分……いや、絶対に……

心の中で、あの二人に関わる人たちに幸を願った後……
私はまだ少し痛む身体を何とか動かし、
付いた汚れを払いながらゆっくりと立ち上がった。

「ふぅ……と、とりあえず、これで半分ね……
 このペースなら今日中に全部渡せそうかな……?」

手持ちに残ったクッキーの袋は後三つ……
白色の袋と緑色の袋。
そして、白と青の2色の混じった袋だった。

「向こうから来てくれると嬉しいんだけど……
 此方から探した方が早いかも……」

3つの袋を見つめながら少し悩み、
何となく顔を上げてみると目の前を見覚えのある大きな竜さんが通り過ぎようとしていた。

「えっ? あの竜さんって……」

思わず目を丸くした私に向こうも気が付いたのか?
目の前で立ち止まり、私に向かって笑顔で話しかけてきた。

「ん? アイゼンさん見〜つけた♪ こんばんはです♪」
「えっ……セイリュウさん。」

いきなり4人目の待ち人が現れ、
思わずセイリュウさんの名前を呟き挨拶を忘れてしまった。
そして、さらに……

「セ、セイリュウさん待って……
 あっ……アイゼンさんこんばんは♪」

セイリュウさんのやって来た方向から、
5人目の待ち人が、少し息を切らしながら駆け寄ってきて、
私に気が付くとセイリュウさんと同じように笑いながら挨拶をしてくれたのだった。

「うわぁ……ホントに来たわね……あっ
 サトゥーさん、セイリュウさんこんばんは♪」

いきなり現れた2人に思わず挨拶を忘れるところだった。
慌てて2人にしっかりと頭を下げて挨拶をすると、
私は改めて2人の変装した姿をまじまじと見つめた……

一人は真っ白な鱗をしている白い竜で……
頭に沢山のおもちゃのヘビが付いているカツラか何かをかぶり、
多分……メデューサに変装しているセイリュウさん。

白い鱗に映える深紅の目に合わさって本物らしく見えてしまい……
私……思わず後ずさっちゃった。

そして、もう一人……
セイリュウさんの後を追いかけて此方に駆け寄ってきたのは……
サトゥーさんと言う名前の緑の鱗を持つ竜さんだった。

でも……サトゥーさん、包帯で身体をグルグル巻きにしていて、
固定されていない包帯の端が、ヒラヒラと宙を泳いでいるのを見ていたら……

「サトゥーさんの仮装ってミイラ男ですか?」
「うん♪ そうだよ。
 セイリュウさんの医院で、何に仮装しようかと相談したら、
 どうせいっぱいあるんだからってセイリュウさんにグルグル巻きにされたんだ♪」

少し頬を赤らめて嬉しそうに自分を見るサトゥーさんに、
セイリュウさんが気が付くとニッコリと微笑んで見返したんだ。

「サトゥーさんをグルグル巻きにするの結構楽しかったよ♪」

その微笑みにサトゥーさんがさらに頬を赤くすると
ずっと尻尾がフラフラと落ち着きがないのがちょっと可笑しくて……
だから私は、二人に気づかれないようにこっそりと小さく笑っていた。

この二人もリヴェーヌとヘルカイトさんに負けず劣らず仲が良いんだよね。

「ん〜……サトゥーさんとセイリュウさんも中がいいですね♪」

自分の思ったことを素直に口に出し二人を祝福……は言い過ぎかな?
とりかく、仲を褒めてあげるとセイリュウさんが嬉しそうにこっちを向いた。

「えへへ♪ アイゼンさんありがとう。
 それじゃ、さっそくトリックオアトリート♪」
「う〜ん……それじゃ、僕も……トリックオアトリート!」

セイリュウさんは無邪気にすーっと手を差し出し、
サトゥーさんはちょっと遠慮気味にセイリュウさんのすぐ横に手を並べたのだった。

私は自分の目の前に並んだ大きな手を笑いながら見つめ。

「はい♪ サトゥーさん。セイリュウさん。
 この袋が、私の手作りクッキーです♪」

この人達にとってはそれほど大きくないけど、
一生懸命に作ったクッキーの入った袋を……
緑はサトゥーさんに、白はセイリュウさんの手の平に置いていく。

「ん〜♪ いい匂い……これ美味しそうだよ♪」
「ありがとうアイゼンさん。 後でクッキー食べさせて貰うよ♪」

二人はそれぞれ手の平に置かれたお菓子の袋を、
嬉しそうに見つめてくれて……私……結構嬉しいな♪

「ふふふ……そう言って貰えると作ったかいがあります♪」

と、機嫌良く私が二人を見上げていると……

「でもね……アイゼンさんと一緒にクッキーを食べるともっと美味しそう……♪」
「え”っ? ちょ、ちょっと……セイリュウさん?」

やたらとギラギラと危ない目線を私に送り出したセイリュウさんに、
思わず呻き……その視線でその場に釘付けにされてしまったんだ……
うぅ……セイリュウさんのこの目……
リヴェーヌが私を狙って襲おうと思っている目と同じ……

「い、イヤ……セイリュウさん……今日は食べるの止めて……」

逃げようとしても、動いた瞬間に襲われそうで動けず、
ゆっくりと顔を近づけてくるセイリュウさんに小さく拒否の声を出すことしか出来ない。

「にゃふっ♪ ……なんか、今のアイゼンさんとても美味しそうだね……」

目の前で、セイリュウさんの口が開き……
中から唾液をポタポタと滴らせ、太く長い舌が私を捕らえようと伸びてきて……

「確かにアイゼンさんは美味しくて僕も食べて……いやいや、違うぞ僕!
 セ、セイリュウさん……止めてっていっているから、今日は止めてあげた方が……」
「えっ? う〜ん……サトゥーさんがそう言うのなら……♪」

私に触れる寸前で舌が止まり、セイリュウさんの口の中へと帰って行った。
はぅ〜……心臓がバクバクしてる。
さすがに興奮しすぎて、今は何も喋れないや……

(……サトゥーさん、助けてくれてありがとう。)

取り合えず最初の言葉は聞かなかったことにして、
サトゥーさんに目を合わせ心の中でお礼を言いながら頭を下げる。
それで私の状態をさっしてくれたのかサトゥーさんはニッコリと笑って頷いてくれた。

そうしている内にセイリュウさんは屈んでいた身体を起こすと……
深紅の目を何かを期待するかのようにキラキラさせてサトゥーさんに近づいていった。

そして……私の目の前でセイリュウさんはサトゥーさんに抱きつく。

「えへへ……なら今日はサトゥーさんを……呑んでいい?♪」
「えっ♪ あ、貴方がそう願うのなら……僕は喜んで!」

セイリュウさんのお願いに、
サトゥーさんはとても嬉しそうに大きな声で答えた。

「ありがとう。それじゃ、アイゼンさん……私達はもういくね♪
 じゃ……行こうかサトゥーさん♪」
「は、はい! あっ……アイゼンさん今日はありがとうございました♪」

そう言って、二人は私の前から消えていった。
この後、二人のすることを覗いてみたい気もするけど……
今日は私も止めてあげよっと♪


それからも、暫く心臓のドキドキが止まらなくて……
元に戻ったときには、もう結構な時間になっていた。

「ふぅ……もう大丈夫みたい……
 なんか、今日は朝から刺激的な体験が多いような……」

さすがに身体が疲れたような感じになってきたけど……
ハロウィンの最後まで頑張らないとね♪

残されたクッキーの袋はあと一つ。
当日にちゃんとあの人に渡せるかな〜?

……ちょっと不安。
そんな感じに疲れの混じったため息をついて、
もしかしたら、あの人もいきなり現れないかなと空を見上げると……

「おや? アイゼンさんこんばんは〜♪」
「ひゃっ! ル、ルギアさん!」

いきなり後ろから声をかけられビックリして飛び上がってしまった。
あぅ……ちょっと情けない……

「うはぁっ♪ 凄く飛びましたねアイゼンさん♪
 すみません、驚かせてしまいました♪」
「うぅ……ルギアさん酷いですよ……あ”っ!?」

振り向くとそこには私の予想どおりルギアさんがたって……
思わず変な声ををあげてしまった。

ルギアさん、ものすごくおっきなカボチャを被っていて、
お、思わずルギアさんより、そのカボチャにあっけにとられてちゃったよ……。

「うぅ……一度に2回も脅かすなんて……」
「あぅ〜♪ すみませんでした〜♪」

で、でも……これで6人目の待ち人が向こうから来てくれたんだから、
ルギアさんと私の幸運に感謝しないとね♪

何とか呼吸を落ち着かせ……
いつの間にかカボチャを脱いで、頭を下げたままのルギアさんを改めて見つめた。

いつも明るく話しかけてくるルギアさん。
でも、微妙に変化するその声質で本当に謝っているのが分かるんだよね。
ちょっと虐めすぎたかしら……

「ふふふ……こんばんはルギアさん。 
 大丈夫ですよ。 ちょっと……ドキドキしましたけど……♪」
「あれれ♪ 大丈夫ですか〜♪」

ルギアさんの手のような大きな翼が、
私の身体を包み込みむと、そっと抱き上げたのだった。
この翼って……とても暖かいんだよね。

「ルギアさん……暖かいです……」
「ふふふ……そうですか〜♪」

私の言葉にルギアさんの顔がさらに笑顔になって、
大きくて柔らかなお腹に私を押し付け優しく抱いてくれたんだ。
そのまま抱かれていると……
お腹が私の身体を包むように沈めてきて、とっても気持ちいい。

このお腹……温かいのは勿論、
それに加えて柔らかくて……このまま眠っちゃいそう♪

「はぅ〜ルギアさん〜 このままだと寝ちゃいそうです〜」
「あっ♪ すぐ下ろしますね♪」

ちょっと名残惜しかったけど、
お腹から解放され……そっと地面に下ろされた。

「ルギアさん。 ちょっと待っててください♪」

私はルギアさんに笑いかけた後……
さっそく例の2色の色が混じったお菓子の袋を取り出しルギアさんに向けて掲げて……

「ふふふ……ルギアさん♪ 
 今日はあの日ですよ、例の言葉を言ってください♪」

と今度は私から催促してみちゃった♪

ルギアさんは私と手に持っている、お菓子の袋を見つめて、
とっても嬉しそうにニッコリしてくれた。

「うはっ♪ 良いんですか?
 なら、遠慮なく、トリックオアトリート♪」
「はい、ルギアさん。 私の手作りのお菓子ですよ♪」

自分の手の平では……
はみ出すぐらいの袋を差し出とルギアさんは器用に翼で袋をつかみ取った。

袋に詰めたときは結構大きいなと思ったけど……
やっぱりルギアさんと比べるとあまり食いでがなさそう。
もっと大きな袋にすれば良かったな〜

この経験を次ぎに生かそうと私が色々と反省していると、
ルギアさんが目の前でお菓子の袋を開け……

「それではさっそく頂かせて貰います♪」

一気に袋を逆さまにして、
中身を全部口の中へと入れてしまった。
私がさすがだな……とあっけにとられている内に、
ボリボリとクッキーをかみ砕く音がルギアさんの口から響いている。

「ルギアさん……お味はどうですか?」
「ちょっと待ってください……」

すぐに食べて貰うのは初めてだから少し心配で、
伺うようにルギアさんに聞いてみたんだけど、さすがにまだ早かったか♪
モグモグとしっかり私のクッキーを味わってくれている。

その後、すぐにルギアさんの喉がゴクリと音を鳴らした。

「ふぅ〜ご馳走様です♪ とっても美味しかったですよ〜♪
「ふふふ……ルギアさんにそう言って貰えると嬉しいな〜♪」

本当に美味しそうにお腹を撫でるルギアさん。
口周りに少しだけクッキーの屑が付いているのがまた可愛いんだよね♪
ふふふ……私が取ってみようかしら?

「ルギアさん〜口周りにクッキーの屑が付いてますよ〜
 取ってあげますから、頭下げてくれませんか♪?」

そんなことを内心企むとルギアさんに手招きをしてみる。

「あぅ♪ 付いてましたか〜♪
 自分で舐め取った方が早いんですけど、折角ですのでお願いしますね♪」

私の手招きにルギアさんは少し恥ずかしそうの頬を赤くして、
大きな頭をにゅ〜っと側に下げてくれた。

「ふふふ……本当に大きな口ですね♪」
「良く言われます♪ あうぅ〜気持ちいい〜♪」

さっそく何処からかタオルを取り出して、
フキフキと丁寧にルギアさんの口元を拭っていく。
本当に大きな口だけど、大人しくしてくれている御陰で結構簡単に吹き終わった。

「ふぅ♪ これで良し……終わりましたよ。」
「ありがとうございます♪」
「いえいえ、どういたしまして、
 いつもルギアさんにはお世話になっていますからこれぐらいさせてください♪」
「うはっ♪ そうですか、ありがとうございます♪」

すっかり綺麗になった口を撫でていると、
お礼の変わりなのかルギアさんがすり寄ってきて、ちょっとくすぐったい♪

それに……♪

「ふふふ……なんかこのままルギアさんに食べられちゃいそう♪」
「うぅ〜 実はアイゼンさんを食べたいです♪」

ルギアさんがそう言うと、いきなり舌で舐めてきた。

「きゃっ♪ んもぉ〜……せっかちですねルギアさん♪」
「ふふふ……あぅ♪ 今日はもう帰る時間です♪」

あっ!
……そう言えばもう結構な時間だったんだよね……
うぅ、とっても残念。
折角、用が全部片づいたから食べられても良かったのに……

「それじゃ、しょうがないですね……
 ルギアさん、さようなら♪」
「はい♪ アイゼンさんはまた今度食べさせて貰います♪
 では、そろそろ行きますね♪」

お互いに挨拶するとルギアさんはその場で翼を羽ばたかせ空に飛び上がっていった。
その時、かなり強い風が巻き起こったけど、
私は此方に笑いかけながら飛んでいくルギアさんを最後まで見送った。

でも……ルギアさん……カボチャのかぶり物忘れて飛んで行っちゃった♪



その後……
たった一人、夜の広場に残された私は……

「ふぅ……お菓子もみんなに配り終わったし。
 広場のみんなも、もう帰っちゃったみたい……」

特にすることもないんだよね。
家に帰っても多分リヴェーヌはまだ帰ってないだろうし……

「……私……これからどうしようかな?」

なんかとても寂しかった。
さっきまで、凄いお祭り騒ぎだったからかな?

……調子が落ちちゃった。
うぅ……やっぱりもう帰ろうっと……

持ってきた時より遙かに軽い荷物を纏め、
自分達の家へ帰ろうときびすを返した……その時!
私がまったく予想もしていなかった人から声をかけられた。

「ふふふ……アイゼンさん。 こんばんはです。」
「えっ!? F…さん?
 Fさんが、こんな時間に出歩くなんて……珍しいですね。」

とても静かで、落ち着いた口調で私の目の前に現れたのは、
最近、良く会っているフライゴンのFさんだった。
でも、この人はあまり夜遅くまで出歩くことが殆どないので驚きだ……

「どうしたんですか、アイゼンさん……?
 さっき、とても寂しそうだったから……何か会ったんですか?」
「あっ……ええとですね……
 することがなくなって一人で暇で、少し寂しいかな〜って♪」

心配そうに声をかけてくれるFさんに私は、なるべく元気よく振る舞おうとしたけど、
さすがにあれだけ調子が落ちてたから空元気なんだよね……

「う〜ん……何か私に出来ることは……
 そうですね……と、トリックオアトリート…って言っても良いですかね?」
「ふぇっ? あははっ♪ Fさんの顔真っ赤ですよ♪」

ホント、こういう時のFさんってとっても可愛い♪
今のも……とっても恥ずかしそうにしてて……

ふふふ……笑ったら元気が出来たみたい。
ありがとう……Fさん。

でも、ごめん。 
Fさんが来るとは思ってなかったから……

「すみません……お菓子。
 Fさんが来る前にみんなに配ってしまって……」
「いえ、謝らなくても良いんですよ。
 でも、決まり文句を言った手前……イタズラをしないといけませんね。」

ジッと私を見つめているFさん。
いや……少し笑っているみたい、冗談で言っているみたいね♪
でも、本当にどうしようかな?
Fさん、私のことあんなに心配してくれていたわけだし……

「そうですね……Fさんにお菓子渡せなかったから、
 なんでも良いですから、私にイタズラしてください♪」
「ええっ? 本当にイタズラするのですか……?」

私の提案にFさんは目を丸くしちゃって、
ふふふ……とっても驚いたみたい。
それもそうか、普段……あんまりそう言うことするの見たこと無いしね。

でも、だからかな?
Fさんがどんなイタズラをするのか興味があるわね♪

「そうですよ♪ 私に何かしてくれるんでしょう?」
「うぅ……やぶ蛇になりました。
 ちょ、ちょっと待っていてください、今考えますから……」

Fさんの弱点を突きすぎたかな?
考え込んじゃった……本当に真面目な人……
だから、こうしてちょと弄りたくなる人なんだよねFさんて♪

と、そんな事を考えていたらFさんの考えが決まったみたい。
ポンと手を叩いてこっちに向かってくる……って!? 


ガシッ!


近寄ってくるFさんを興味津々で見ていたら、
いきなり両肩をガッシリとつかまれ、身動きがとれなくなってしまった。
私は、思わずFさんを見上げると、
いつものように優しく微笑んでいるFさんの笑顔がそこにはあって……

「えっ? あぅ……Fさん?
 ど、どんなイタズラを思いついたんですか?」

Fさんを見ていると何故か、冷や汗が浮かぶのを感じた。

いつもは、安心できる笑顔なんだけど、
今のFさんはいつもとなんか雰囲気が違う気が……

「フフ……アイゼンさんそれじゃ…
 イタズラということで……貴方を食べさせて貰いますね♪」
「なっ! ちょっとFさん!」

思わぬ展開にさっきのFさんと同じように目を丸くして驚いてしまった。
その間にもFさんの顔が私に近づいてくる。

「ふふふ……どうしました?
 何をしてもいいと言ったのはアイゼンさんですよ?」
「キャッ! え、Fさん離してっ!」

身体を捻り、肩を掴んでいるFさんの手から逃げようとしても、
まったく逃げることが出来ない……
それでも、逃げようと必死に暴れる私のすぐ目の前まで、
Fさんの口が開いて迫ってきていて……

もうすぐ、この中に入るのかと思うと……
なんか食べて欲しくて心臓がドキドキするのはどうしてだろう♪

「安心してください……ちゃんとハロウィンが終わったら出しますので、
 でも……それまでは、しっかりとイタズラさせて貰います♪」
「うぅ……こうなったら……
 Fさん、私をじっくり味わってください♪」

完全に腹を括った私の言葉にFさんは無言で頷いた。

もぅ、どうして私はこう……
誰かに食べられるのが好きなのかしら?

「フフ…行きますよ……」


……ペロリッ


自分の性癖に少し悩んだりしている内に、
Fさんの口から舌がゆっくりと出てきて私の頬を舐めてきた。

「うふっ……んんぅ……♪」

頬に軽く触れて這っていった舌のくすぐったさに加え、
気持ちいい快感を覚え自然と私の口から声が漏れていく。
勿論それだけでは終わらず……


……ペロッ……ピチャッ


柔らかな舌が私の顔中を余すことなく這い回っていく。
その感覚に身体の力が抜けていき……
Fさんに倒れるようにもたれ掛かると、
肩を抱いていた手が私の腰回りや背中に移り優しく私を抱きかかえてくれた。

その後も、されるがままになめ回され……
Fさんの唾液が大量に身体の方にも伝わり滴り落ち、
何度も襲いかかる快感に喘ぎ悶えて、興奮で私の息が荒くなってきた。

今にも、このまま倒れちゃいそうだけど……
ここからが本番なんだよね。

「んふっ……あぁん……Fさん。
 そろそろ、中に……お願いします♪」
「はい……力を抜いていてくださいね……」

私の催促にFさんはすぐに応えてくれた。
口がさらに大きく開いていき私の顔を徐々に覆っていく。

「ふふふ……もうすぐFさんの口が私を……♪」

口に覆われていく感触に私は身を任せ……その時を待った。
そして……


んっ……カプッ


ジュルジュルとFさんの生暖かい口内の肉壁に包まれ、少しの息苦しさを感じた後……
Fさんが口を閉じたのか、牙が甘く私の首筋に触れてくる。
その感覚にビクッと力が入りそうになるけど……
それを堪えてFさんの言うとおり、ゆっくりと身体から力を抜いていった。

「ふふふ……ハグッ ……ムグッ」
「んあっ……Fさぁん……」

何度も繰り返されるFさんの絶妙な甘噛みに痛くすぐったく体中を刺激され、
体中を走り抜ける快感にいつの間にFさんの名前を呼んでいた……

「……? フフ……アム…ハクッハクッ……」

その声にFさんの動きが少し止まったけど……
すぐに再開して私が中に入っていくにつれて次第に足が浮き上がり、
頭が……私が……口内の肉壁を押し広げながら中へ中へと滑っていくのを感じる。

「あぁつ……暖かぁい……あぁん……」

暖かいFさんの口の中で激しい興奮に襲われ……
もう何をされても快感に感じてしまい、
Fさんの中に私の喘ぐ声が響いてやたらと大きく自分に跳ね返ってくる。

「……ハムッ んっ……
 ふふふ……気持ちよさそうな声……ゴクッ…ングッ」
「んっ!? あぁぁぁぁぁ……」

直にFさんの吐息を顔に浴びながら、
まるで焦点の合わない目で口の奥のアノ入り口が……
私を呑み込もうとゆっくりと広がっていくのが不思議とハッキリと見えた。

そこで私は目を閉じ、舌の口の動きに完全に身を任せる。

次の瞬間、小気味の良い音が私の耳に届いたかと思うと、
私の身体が一気に引きずり込まれ、腰回りまでFさんの口に覆われてしまった。
窮屈な圧迫感の中……私は食道の大きく押し広げさらに奥へと滑り落ちていく。

「はぁんっ んくっ ……ああ…あぁあああっ!」

私を奥へと運ぼうとする食道の動きに全身を激しく揉みほぐされ、
もうFさんの声すら聞こえてこない……
聞こえるのは自分が大きく喘ぐ声と……ジュルッ…ズリュッと自分が滑り落ちる音だけ。

遠くなる意識の中……
最後にゴクリという音が私の元に届き。
ついに足先までFさんに包まれたことを感じ取った後……

その十数秒後に、
私はFさんに完全に呑み込まれてしまっていた。



<2011/06/08 20:49 F>消しゴム
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