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炎の中の氷 − 旧・小説投稿所A

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炎の中の氷
− 初めて来た街 −
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 太陽がジリジリと大地を焦がす、真夏の昼下がりの草原に、二匹の小さな生き物が歩いていた

 その者の名は、片方は『ヨーギラス』。もう片方を『ゾロア』といった

 額に汗を浮かべながら、二匹は今日の寝床になる宿のある街に向かってヨタヨタと歩いていた

「ヨーギラス……まだ見えないの? その街っていうのは」
 『いい加減にしてくれよ』とでもいわんばかりのゾロアの口調は、さらにヨーギラスを追い詰める

「たしか、もう少しのはずなんだけど……おかしいなぁ」
 小さく折りたたんだ地図を握り締めながらヨーギラスは答えて、『はぁ……』とため息をついた

「もう水筒に入れておいた水も尽きたし、食料も乾パン一欠片しかないからな!」

「分かってる! 分かってるよ……」

 ジメジメと蒸し暑い気温は二匹の体力と気力を削り、機嫌さえも悪くしてしまう

「でもさ、ゾロアって他のポケモンに化けれるはずでしょ? だったら暑さに強い種族に化ければいいんじゃないの?」

「ばか。俺が化けれるのは触れた事のあるポケモンだけだ! 今までそんなやつ、会ったことあるか?」

「……ないね」

 ははは、と苦笑いしながらヨーギラスは答える

 故郷を離れて二ヶ月、まだまだ旅に慣れていないせいか効率よく街から街へ移動することが出来ない二匹にとって誰かと知り合い、親しくなるのには今の二匹には時間がなさ過ぎるといっても過言ではない

 現に、二匹が離れた故郷の友人以外に親しくなった人物は一人としていない――知り合いになった者はいるのだが――

「もう少し、ゾロアが親しみやすい性格だったらな……」

「な、何だよそれ! それじゃあ俺が嫌味のある奴みたいじゃないか!」

「……実際そうなんじゃない?」

「くっ……」

 ゾロアはあまり言い返せなかった

 そう、ヨーギラスのいう通り、実際の所せっかく仲良くなりかけた人物が、ゾロアのいたずらで去っていったという事は何度かあった

 本人は気づいていないかもしれないが、ゾロアのいたずらは少々、度が過ぎている

「俺が悪いんじゃなくて、相手が気にし過ぎなだけなんだ!」
 声は頑張って張り上げても、顔には暑さのせいではない別の汗がダラダラと流れていた

「はいはい、もう分かったからあの街ではいたずらをしないでくれよ?」

 ゾロアの言ったことをするりと流し、ヨーギラスは前方を指差しながら言った

 その指の先には、立派な街の入り口に巨大なレンガ製の門が二匹を見下ろすように、建っていた



 街は大勢のポケモンで賑わっており、路上には露店が出回っていた

「大きな街だね……なんて街なの?」

 ゾロアがその街の活気におもわずため息をしながらヨーギラスに聞く

「この街は『ヒウンシティ』。まぁそうだね、こんなに大きな街はあんまり来たことがないからね」

「そうだよ。こんな大きな街に俺らが泊まれるような宿があるの?」

 少し焦った口調でゾロアがヨーギラスをジッと見つめる

「大丈夫、泊まれそうな宿はしっかり調べてあるから」

 使い込まれ、ボロボロになった地図を片手にヨーギラスは言った
 辺りは暗くなり始め、街の街灯が目立つようになってきていた。宿も調べてあるといっても、予約が出来るような手段が彼らにはなかったし、なにしろいつこの街に着けるかも曖昧だったのだ。いずれにしても早いとこ宿に行かなくては行けないことは事実だった

「……ここまで来て、野宿は嫌だからな」
 ゾロアにそう言われても、ヨーギラスはなにも言えなかった
 ヨーギラスはぎゅっと持っていた地図をさらに強く、握り締めたのだった



「着いた、ここだよ」

 二匹の目の前にあるのは、木造二階建ての古びた宿だった

「……だ、大丈夫か? ここ……」

 確かに見る限りでは、ところどころクモの巣がはっているし、この辺りは街の中でも特に不気味な暗がりを見せている

「まぁ、確かにボロボロな感じだけど、一泊ぐらいなら我慢できるでしょ?」

「あ……あぁ、そうだな」

 ここで否定的な発言をしたら、本当に今夜は野宿になるかもしれない。そう感じてゾロアは仕方なく同意した

「じゃあ、チェックインしようか」

 ヨーギラスはそそくさと宿の中に入っていった。その後をゾロアは“ハァ……”とため息をつきながら追ったのだった



 宿の中は思ったよりも普通で、受付から出てきた女将さんも特別変わったような感じではなかった

 二匹は部屋に入ってすぐに安堵のため息を吐き出したのだった
「たまにはお前の言っていることを信じてもいいのかもしれないな」

 ゾロアがニヤニヤしながらヨーギラスに話しかける

「まぁ……今回は俺でも何も言えないからな。本当によかった、普通の宿で……」

「なんだ、やっぱりあまり考えていなかったんだな」

「フフッ、何とでも言え」

 “クククッ”と笑いながらヨーギラスは答えた――その時、“グルルル……”とだらカのお腹がなる音が聞こえた

「……腹減ったな。何か食べに行くか?」

「同感だ。確かこの辺りに酒場があったはずだからそこで軽く何か食べよう」

「……本当だな? 店があるっていうのは」

 ヨーギラスの目をじっと見ながら、ゾロアは聞いた
「正直、自信ない……」

 おもわず吹き出してしまったゾロアであった



<2011/09/19 19:33 キラ>消しゴム
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