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必然な偶然 − 旧・小説投稿所A

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必然な偶然

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初めは綺麗だった、周りの物全てが綺麗に見えた。
物心がついてからは全てが興味の対象でとても心躍り、知ることがとても楽しくなり、生きる目的が出来た。
でもそれは、時が経てば経つほど苦しみを生み、虚しくなる一方だった。
一番知りたい事、自分の名前、親、それがいつまで経っても分からない。
僕は誰なのか、僕は“生まれてきてほしい”と思われて生まれてきたのか、それとも違うのか。
分からない、何も分からない、自分自身の認識すらあやふやな僕が周りの事を知って何になるんだろう。
…生きていて…何になるんだろう。


『…お腹……空いたなぁ』


そう呟いて、枯れ掛けた木に寄り掛かっていた小さな生き物は体を起こし、ゆっくりと歩きだす。
見上げても空は見えない。
それもそうだ、ここは色んな噂のある森の奥。
誰も寄りつこうとはしない暗い森の奥なのだから。


『……あ』


そんな森の中でも多少の光はある。木々の枝の隙間からこぼれてくる少ない光。
そしてそんな光は、数々の木の実を照らしていた。
この森に寄りつく者は少ない、それ故に自然は荒らされず沢山の食糧がある。


『届か…ないっ………っ』

『…ほれ』


木によじ登り枝に生っている木の実に手を伸ばしていると、誰かが木の実を取り差し出してくる。
体中を重厚な鎧で包んでいるそれはボスゴドラと言われるポケモン。


『…余計な事しないで下…さいっ』

『そないなこと言うてへんで、な?ちっとは素直になったらどうや?』


少し変わった口調のボスゴドラは木の幹にしがみ付いていた小さい生き物の首の後ろを掴み、持ち上げる。
掴まれた生き物は体をだらんと垂らしながら不機嫌そうな表情を浮かべていた。


『…放して下さい』

『どないしようかな〜?ん〜?』

『……ありがとうございました』

『最初からそう言えば良かったんよ、シオミ』


そう言われた小さな生き物、ブイゼルというポケモンはまたもやムスッとした表情を浮かべた。
ボスゴドラの手から木の実を取り、噛り付く。
体が小さいとはいえその口にはしっかりとした牙があり、やや硬い皮を持つ木の実でも簡単に砕けてしまう。
バリバリと音をたてて木の実は小さくなっていった。


『…別に…ング…頼んでませんし…ンガ…それと…ンッ…その呼び方止めて下さい』


最後の一口を呑み込んで、ブイゼルはボスゴドラを見上げた。
この“シオミ”という呼びかたはボスゴドラがつけたもので、ブイゼルの体に白色とオレンジ色と水色があるからだそうだ。
何とも安直なものである。
そもそもこのボスゴドラは数週間前に偶然この森に来て偶然ブイゼルと出会ったのだが、それからずっとブイゼルに付きまとい離れようとしない。


『ええやんか〜それぐらい。それにお前もいい加減ワイのこと名前で呼んでえぇねんで?』

『…後ろの草むらにビーダルが1匹いますよ』

『ホンマか!?』


そう言うなり後ろを振り向き草むらに手を突っ込む、するとブイゼルの言う通りビーダルというポケモンが目を回しながらボスゴドラの手に掴まれていた。
ボスゴドラはごく普通のように手を口の方へ持っていき、ビーダルを頭から齧り付く。
その瞬間目が覚めたのかビーダルは悲鳴を上げ、手足をバタつかせ始めたがもう既に体の半分が口の中に収められているため思うように動けなかった。
顔の目の前で分厚い舌が視界を塞ぎドロドロとした唾液を顔中に塗りつけられる。
次第に舌は顔だけでなく体中に唾液を塗り付け始め、その唾液が潤滑剤の役割を果たしどんどん体を口の中へ引き摺り込んでいく。


『…苦しくないんですか?』

『ふあ?…へふひほんはほほはははへんへほ?』

『あ、そうですか…』


ビーダルを咥えながらボスゴドラが首を振る。
その勢いでビーダルが口から飛び出そうになったがすかさず両手を使い押し込んだ。
もはやビーダルの体は口の脇から垂れ下がっている尻尾しか見えなくなっていた。
やがてその尻尾も吸い込まれ、口の中で唾液塗れにされていく。
しばらくしてボスゴドラが上を向くと全身唾液漬けにされたビーダルは抗う術もなく、その奥にある肉の洞窟へと導かれていった。
外見では頑丈でとても堅そうに見えるボスゴドラの喉がボコッと膨らみ、それは不自然な動きをしながらゆっくりと下っていく。
暗く、空気も薄く、周りを弾力のある肉に包まれたそこは果たしてどんな空間なのか、その動きを見ていると嫌な想像しか浮かんでこない。
そんな膨らみも少しすればお腹の膨らみへと吸収されていき、ほとんど目立たなくなってしまった。
時折コポコポと音がするのは、胃袋が来客を歓迎して胃液をふるまっている音であろう。


『……何を考えているのか…』

『ん?何や?』

『何でもありません…』


このボスゴドラは今喰らった様にポケモンを喰らう。
それは会って直ぐに分かった事だ。
なんせ初めて会った時ボスゴドラはポケモンを咥えながら歩いていたのだから。
そんなボスゴドラが自分に付きまとうようになり、自分を食べるつもりなのかと考えたりもしたがそんな素振りは全く見せない。
ただ笑って、くっ付いて来て、お節介で、本当に何を考えているのか分からなかった。
もういっその事聞いてみようか。


『…何で…何で僕に付きまとっているんです?』

『付きまとうって…そないな人聞きの悪い事言わんといて〜な…、まぁ…気に入ったからやな』

『…どこがです?』

『ん〜…なんちゅ〜か〜…危なっかしいねん、お前。せやからほら…あ〜…母性本能?がくすぐられるっちゅーかな』

『…あなた雄でしょう…』

『そんなん関係あらへんて、まぁ、あれや、傍に居てやりたいみたいな感じや』

『……何ですかそれ』


聞かなかった方がよかっただろうか、聞いてよかったのだろうか、何かがごちゃごちゃになる感じがする。
嬉しいのだろうか、鬱陶しいのだろうか、苛立っているのだろうか、こんな感情は初めてだと思う。
ずっと1人でいて、ずっと1人で生きていて、このまま独りでもよかった。
その方が気楽で、何も考えずに済んで、ただ毎日食べて寝て食べて寝て、その繰り返しでよかった。
なのにこれは何なのだろう、一体何なんだろう。どうして…


『おぉ?どうしたん?腹でも下したんか?』

『何でもありませんよ………ラスさん…』


どうして、涙が出るのだろう。


滅茶苦茶ですみません<(_ _)>
<2013/02/19 22:56 皇奨>
消しゴム
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