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忌々しき存在 - 旧・小説投稿所A
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忌々しき存在
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町に出てきたのは久しぶりだ。大体はあの広場に現れる盆暗な餌だけで十分に喰っていけるからだ。
雑踏と喧噪、大陸の方にある別の町で随分前に大暴れしたのを思い出した。あの時の痛快さは忘れられない。
――竜が来たぞ!
――早く逃げろっ!
人間どもは我の姿を見るなり血相を変えて避難し始める。
もう遅いぞ…ククッ
我は混乱して人が団子状態になっているところに上から手を被せた。
中で人間は我の手を殴ったりしているが、全く抵抗になっていない。
掌中の餌を全て片手の中に収めてしまうと、先客を掴んだままのもう一方の手で、辺りで腰を抜かしている人間を数人捕まえた。
「ククッ 今日は大猟だ。」
我の両手の中では、合わせて十数人の人間が泣き喚いて命乞いをしている。我はいつも一度に3人か4人ぐらいしか捕まえないので、両手いっぱいに餌を掴むのは久しぶりなのである。
「さてと、あいつの所に戻るか」
我は町の中でバサッと羽を広げると、そのまま勢いよく翼をはためかせ、体を浮かせた。
風によって崩れた数軒の家を眼下に見据え、我は住処へと羽ばたいていった。
「戻ったぞ。」
「…」
我が戻ると、緑竜は住処の壁に凭れ掛かっていた。我とは目を合わそうとせず、ただ天井を眺めているばかりであった。先程の動揺などは目立って感じられなかった。
「食事の時間だ」
我は獲ってきた人間を持ったまま、緑竜に近づいていった。
「ククッ 旨そうな匂いがするだろう?」
我は持っていた餌を、緑竜が凭れていない方の壁際に乱雑に置いた。餌共は戸惑った様子で我を見上げていた。
この洞穴は自然に出来ていたもので、マグマか何かの影響かどうかは分からないが、他の洞穴より暖かかったので此処に住むことにした。竜一頭の住処にしても広いと感じるほど開放的であり、外界の光は洞穴かなり奥の方まで差し込んでくる。
「…」
緑竜はずっと黙っており、石像のようにびくとも動かずにボーッと虚空を眺めていた。が、ふいに
ギュルルルゥ…
腹の虫は無言の本音に耐えきれなかったのか、緑竜の腹から洞穴内に元気そうな声が響き渡る。我が緑竜の方を向いてニヤッと口角を上げると、慌てて我から眼を背けた。
「うぅ…」
「食欲は抑えなくても良いのだぞ。竜の本能として正しいのだからな。」
「グルルッ…ぅ…くそう…」
緑竜は近くに転がっていた大きな岩に拳をぶつけた。パキッと音がして岩には割れ目が幾筋か通り、拳がぶつかった場所は少し凹んでいた。
「ククッ このままでは立派な竜にはなれぬぞ。」
「ならなくていい…」
緑竜は眼を逸らし、岩を見ながらそう呟く。
「ならば…このまま“飢え死に”しても良いというのか?」
低い声で言った。緑竜の碧眼は輝きを失っていく。
「…」
緑竜は口を微かに動かしていたが、結局は何も言葉を発せないまま俯いた。
「逃げるな!」
我は餌の匂いが出口の方へ向かっていることを察し、振り返りながら叫んだ。餌は我の方を見ながらぴたっと足を止めて固まっていた。
「ククッ 気付いていないとでも思ったのか?」
上から見下ろして睨みをきかせてやると、餌は皆体をガクガクと震わせながら元の位置に戻っていく。
「じ、じゃあ…」
「む?」
餌がちゃんと逃げないようにしばらく睨みを利かせていると、緑竜が我に話しかけてきた。振り返ると、緑竜は少しだけ眼を輝かせて我の眼を見ると、こう続けた。
「人間以外の動物は…食べれるの?」
「獣臭くて喰えたものではない」
即答すると、緑竜の眼の光は陰り、そのまま俯いてしまった。単純明快な奴だな、そう思いながら心の中でククッと笑った。
「もう嫌だ…」
「無駄なことは考えるな。お前は餌を喰えばいい、それだけの話だ。」
「うぅ…」
我はもう一方の壁に居た餌を、腕を伸ばしてかき集め、緑竜の目の前に寄せた。絶望の感情が見えそうな程、捕らえられた人間共は落ち込んで突っ立っていた。
緑竜は目を合わそうともしない。
「何も考えずに、深呼吸してみろ。」
「…うん…」
スゥー…ハァー…
緑竜の吐いた息によって、立っていた人間が次々にバランスを崩して倒れていく。
人間は脆弱だ、個人個人はもっと脆弱だ。
改めてそう思いながら、何もせず突っ立っている奴を軽く爪で弾いてやると、宙で海老のようにびくんと反り、そのまま地面に倒れ込んだ。その滑稽な姿を見ていると、我はニヤリとせずには居られなかった。
「まずは、何も考えずに下を見ろ。」
「…うん。」
緑竜は恐る恐る下の餌の方を見た。
「…!?」
虚ろな目で緑竜は餌を眺めていたが、不意に眼を少し見開いた。
何とか動揺を隠そうとしているが、そわそわした様子を見る限り、何かあるようだ。
「む?どうしたのだ?」
「いや、何でもない…」
微かに声が上擦った。ちらりと机の上の餌を見てから、顔を逸らした。
緑竜が最後に見た人間を見た。
なるほど、こいつか…
…ということは、
「ふーん、なるほどな。」
我はそう呟くと餌の中の一人を指の腹で摘んで、緑竜の目の前に差し出した。
餌は無駄な足掻きをしていた。潰してやろうか、とも思ったが、止めておく。
緑竜の眼は活きのいい魚のようにあちこち泳いでいた。
「こいつ、お前の知り合いだろ?」
夜中にこっそり投稿w
<2013/03/27 01:41 イオン×長引>
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